綿向山で秋山を愉しむ

音羽バス停付近から見る綿向山(中央右奥)
と竜王山(左)。綿向山の右手前は水無山
平成25年11月 9日(土)
【天候】曇り時々晴れ
【同行】単独


 近頃何だか秋と春の季節が短くなっているみたい。とりわけ秋はつい最近までエアコン
を使っていたのに、それをしまうヒマもなくもうヒーター出すの?といったような感じ。
いきおい、小春日和、しかも週末という日は貴重である。今日11月9日。穏やか。一転、
明日は荒れ模様とか。行ける時に行っておかないと今年の秋を見逃してしまう。そんなこ
とで出掛けた先は9年ぶりとなる綿向山。鈴鹿の名山です。

 7時には出発...が、またもや遅れて8時過ぎ。単独行は自分以外に後押ししてくれ
るものが無いから、意志薄弱な者にとってはなかなか予定通りにはいかない。(^^; 竜王
ICで名神を降り、ナビにいわれるままに進んで音羽の交差点で右折する。おっと行きす
ぎて、ナビに入力した西明寺まで来てしまった。

 さすが人気の山、御幸橋の駐車場は既に満車。橋の手前の第二駐車場に空きを探して駐
車する。準備をしている最中にもマイクロバスがやってきて、登山客を吐きだし始めた。

 10年も立てばほとんど忘れている。こんなだったかなあ?橋を渡って川沿いに遡って
いく。左に夫婦松。こんなのあったかなあ?右手の雑草茂る空きスペースなどありとあら
ゆる空地には駐車場用の白線が引かれている。明日11月10日は標高に因んで「綿向山
の日」。それだけ参加者が多いのだろうが、天候が芳しくないとの予報。決行できるかジ
モティーにとっては気が揉めるところではある。(荒天により中止となった模様)
御幸橋上流の堰堤から秋色の竜王山

 左手の竜王山のきれいに色づいた山肌を見つつ砂防堤横を階段で上がって林道に出る。
その先の石灰岩接触変質地帯は覚えている。火成岩である花崗岩によって熱変性して大理
石に変わった露頭が林道を造った時に顔を出したものだろう。しかし何の変哲も無いサビ
色の岩。素人目には何時まで経ってもなんだか分からない。(笑)

 先週の朽木村ほど酷くはなかったらしいが、こちらも土砂崩れの跡が幾つか残る。それ
横目に徐々に山懐へ。右に曲がるとヒミズ谷出合小屋。右に以前歩いた水無山北尾根コー
スが分岐するが、今日は直進して初めての表参道コース。ヒミズ谷にかかる鉄橋を渡る。
この先よく手入れされた杉林の中を延々と大きなジグザグを切りながら登ることになる。
大嵩神社表参道コース。植林下、坦々と道は続く

 大きいジグのお蔭で勾配は緩く、余り疲れずに歩くことができる。しかしながら杉林の
中は単調でいくら歩いても、ヒミズ谷の沢音が次第に小さくなるだけで景色が変わらない。
ときたま植林の中に残された雑木の紅葉を楽しむ程度。そんな単調さにリズムをつけてく
れるのは所々に設置された○合目の標識で小休止のポイントになる。因みに1合目で標高
545m、山頂まで3720mだそうだ。3合目で水木林道と出合う。ここで先行してい
た団体さんをパスさせてもらう。水木林道は竜王山の登山口からつながる林道で、そちら
の方から初老のご夫婦がやってくる。地元の方で、綿向に登るのもこれが最後かなとおっ
しゃる。いやいや、なんのなんの、まだ矍鑠としてらっしゃる。(笑)

 少しばかりダート林道を進むと再び山道にそれる。やがて左手に小屋が見えてきた。あ
ざみ小屋とある。固有種のワタムキアザミが有名なので名づけられたらしい。周囲の木々
が黄葉していい雰囲気だが、折り返しすとまた植林の中だ。

五合目避難小屋付近のウリハダカエデ。向こうは竜王山
 やっと展望が開ける所が五合目。屋根がベンガラ色に塗られた瀟洒な五合目避難小屋が ある。谷を隔てた竜王山の展望が良い。父親に連れられた先着の小学生が「ヤッホー!」 あら、返ってきたのはこだまならぬさっきの団体さんの返す「ヤッホー」だった。(笑)  ようやく単調な植林から開放されて、感じのいい雑木林も現れてきた。しばらく植林と 雑木林を繰り返しながら、小さな尾根に上がった所が行者コバ。日野綿向行者尊が祀られ ている。昔、修験者はここで居住まいを正して山頂にお参りしたのだと説明書きにある。 周囲は清々しい雑木の林。ブナの黄色、ウリハダカエデの赤葉。今までが単調な植林だっ たから雑木のとりどりの色が薄日を浴びてとりわけ綺麗に見える。
行者コバを過ぎると鮮やかに一変する
 山腹につけられた狭い道は右側の深い谷を巻いて小橋で隣の山肌に取り付く。この辺り、 一幅の山水画の風情がある。大きく折り返して尾根の向こう側へ出るとまもなく8合目で、 水無山北尾根コースと合流地点。標高は985m。もう1km足らずで山頂である。金明水 の分岐を過ぎると、後は綿向山の西斜面を折り返しながら高度を上げていくのみ。西に水 無山、その向こうに近江盆地がやや霞みながらも眺められる。三上山の先に琵琶湖の湖面 もうっすらではあるが認められる。何度か折り返して最後は”心臓破り”の階段といわれ る70段ばかりの階段。踊り場が二箇所。ほんとに息が上がる。そんな階段を嫌がって、 横に踏み跡ができている。確かになぜか階段より楽な気がする。鳥居が見えてきた。シン ボルの青年の塔と並んで大嵩神社が鎮座している。  ちょうど12時の到着。ほぼ2時間要したことになる。広い山頂には3、40人はいる だろうか。景色を眺めている人、食事中の人、四方山話に夢中な人。思い思いに楽しんで いる。中には長身の外国人も。当方は一つ空いていたベンチ代わりの丸太に陣取って、鈴 鹿主脈をメインディッシュに食事をしようと荷を降ろす。  久しぶりに食後のコーヒー。久々に持参した双眼鏡を目に当てる。何といってもメイン の雨乞岳がでかい。山頂の白いものは何だろう。山名板だろうか?その左の平らなテーブ ル状の山体がイブネらしい。雨乞岳の右隣は鈴鹿のマッターホルン鎌ヶ岳だ。更に水沢岳、 鉄塔の山の右は宮指路岳、アンテナを載せたのが野登山、そして仙ヶ岳と続く。下に見え るのは野洲川のダム湖、その南に白い豪華客船のような建物が見えるが何だろうな?(ダ イヤモンド滋賀CC)更に南にはまだまだ山並みが三重、四重と波打っている。そのうち、 一際、ピラミダルなのは錫丈ヶ岳だろうか。視界が伸びれば白山や御岳はおろか南アルプ スの塩見岳まで見えるんだとか。確かにさもありなんと思わせる。  気がついたらまったり1時間も山頂にいる。帰りの高速の渋滞も気にかかる。そろそろ 下山にかかろう。大嵩神社の祠の前から綿向山の北尾根に出ると笹が茂る細い尾根で、こ こから竜王山までの稜線コースがこの時期、綿向山では一番いいのではなかろうか。風が 強くなってちょっと寒いけれど...。前回は潜ったブナの珍変木は今回はパス。すぐに 竜王山とイハイガ岳の分岐。右手の重厚な雨乞岳ともここでお別れ。100m強の一気下 りに入る。
綿向山北東尾根から和南川源流方面。まさに錦繍
 前方に見える山々はほとんど植林が無く、自然林の色づきがなんとも渋い。それと裏腹 にこんなに下りがきつかったっけ?前回はそれほどでもなかったように記憶しているのだ が、これも歳のなせる業かなあ。(^^; この下りで捻挫する人が多いと聞くので単独行、 とくに慎重に足元を確かめながら降りる。木の根が自然の階段。ロープが設置してあるの で大いに助かる。
秋酣のブナ林を竜王山に向けて劇下り
画像では表現できませんが、かなりのものです

 登り返してホンシャクナゲの群生するP962付近を抜けると、傾斜もが落ち着いてき
て細い尾根を行くようになり、小刻みなアップダウンを繰り返す。東側が雑木、西側が植
林の境目となり、やがて小さな無名の展望岩の上に立つ。振り返ると綿向山の北尾根とは
もうかなりの高低差だ。そして山中の真っ只中にいる自分を発見する。

 早くも来年の蕾を準備したアセビが目立つP913辺りだったか、三峯分岐と書かれた
私製道標がある。地形図を見ると確かに尾根が二分しているが、右に分かれる三峯とはな
んなのだろう。竜王山への直進路は植林の中に入って行き少し判り難いところがある。

 P913から300mも行くと崖の上の窓のような展望地に出る。遠かった鉄塔がもう
すぐそこに見える。左(南)に折れると中電巡視路を示す黄色い標識が目に入った。

 鈴鹿はシロモジの木が多い。その薄く透明感のある黄色い落ち葉の照り返しのおかげで
登山道自体が明るく思える。対照的に派手な鮮紅色はウリハダカエデ。これも多い。オン
バノフトコロと面白い名のついた鞍部辺り、雑木林が良い。

 鉄塔の立つ場所(P842とその東)は風がやや強く寒いがいずれも展望抜群。ことに
歩いてきた表参道コースが良く分かる。五合目の避難小屋がほぼ同じ高度に見え、道沿い
の植林がヘルメットの庇のようにもっこりと。反対の琵琶湖側も素晴しい景色が展開して
いる。近江富士の向こうはもう琵琶湖で、手前の尾根がほぼ同じ高さに伸びた先が竜王山
だ。しばし景観を楽しんだ後、再び林の中に入る。今までテープらしいものがなかったの
に、中部電力の巡視道である為か俄然多くなる。歩くこと10分ばかりで前方から話し声
が聞こえてきた。
竜王山の三等三角点『竜王山2』
 摩滅して彫られた字が消えたのか元からなかったのか。丸い石が鎮座する。水神の御神 体だろうか。その前から歩いてきたコースが望める。短い二本足も大したもんだ。(笑)  ところで三角点はもう10m西側の林の中だったような。落ち葉に囲まれているのは四つ の角が欠けた無残な姿の三等三角点である。一応、写真を撮っていると、三名の中年男女 がやってきた。漏れ聞く会話から判断するに彼らも”三角点教”の信者のようだ。一人の 男性の手には調査書類みたいな紙。本格的ですなあ。(笑)
千畳平はさながら落ち葉の絨毯
 竜王山から南側に中部電力の黒いプラ階段。これは電力会社共通のものらしい。ひとし きりきつい下りを行くと、千畳平と呼ばれる広い斜面に出る。昔、安楽寺があったという が、この辺り、落ち葉で隠されたのか踏み跡がやや不鮮明。但し、ネコ鉄塔からこっちは 巡視路の為かPPテープが適度にあるのでそれを追うとよい。やがて再び斜面。踏み跡は ここが一番分かり難かった。斜面に大きくジグを切って道はつけられているが、雨などで 土砂が流れ、痩せて細くなっているのだ。道らしき痕跡を辿ると、やがて桧の林になって 眼下に林道が見えてくる。竜王山頂からほぼ20分。なんとなく見覚えある登山口には標 識と登山届ポストがある。林道を経由すると、五合目小屋にもあざみ小屋にも行けるよう だ。往路で話をした初老のご夫婦は林道を利用したのだろう。  ダートと舗装を繰り返す水木林道を15分ばかり下ると、農業公園の水車を右に見てま もなく村道とのT字出合に着く。ここは右に行っても左に行っても元へ戻れるが左が近道。 西明寺を参拝していくなら右である。左を選択して長閑な民家の前を通り、柚子の木の横 を抜けて近道をするとまもなく駐車場が見えてくる。至る所に幟も用意されて、明日の綿 向山の日の準備はおさおさ怠りないよう。後は天候が持ち応えてくれるかどうか...。 久方ぶりの綿向山。気軽に秋を愉しめるやっぱりなかなかいいお山でした。  帰路、ナビに任せたら八日市ICに案内されてしまった。違うだろ、竜王へ行かないと 駄目でしょ!トヨコさん!(爆)
【タイムチャート】
08:10自宅発
09:50〜10:00御幸橋駐車場
10:15ヒミズ谷出合小屋
10:57林道出合(3合目)
11:15五合目避難小屋(5合目)
11:31〜11:32行者コバ(7合目)
11:42水無山北尾根合流(8合目)
12:00〜12:55綿向山(1,110m,昼食)
13:05竜王山分岐
13:30P962
13:44〜13:46展望岩
13:51P913
14:10オンバノフトコロ
14:15〜14:20P842(高圧鉄塔(鈴鹿幹線))
14:30〜14:38竜王山(825.8m(三等三角点『竜王山2』))
14:59林道水木谷線出合
15:20御幸橋駐車場



綿向山のデータ
【所在地】滋賀県蒲生郡日野町、甲賀市(旧土山町)
【標高】1110m
【備考】 鈴鹿山脈主脈の雨乞岳から西に突きだした部分にあるピ
ークです。地元の方々によって良く整備されており、そ
の標高から11月10日は綿向山の日とされ、賑わいま
す。幾つかの登山道がありますが、表参道は余り面白く
なく、水無山北尾根コース、竜王山からの縦走がお薦め
です。
竜王山のデータ
【所在地】滋賀県蒲生郡日野町
【標高】825.8m(三等三角点『竜王山2』)
【備考】 綿向山の西尾根に派生するピークです。山頂には雨乞い
の祭祀跡と杉の木が残っています。南麓の千畳平には奈
良時代に大安楽寺があったと云われています。尚、綿向
山からの縦走路は、シャクナゲと雑木と展望の清々しい
尾根道です。
【参考】2.5万図『日野東部』



綿向山山頂から眺める鈴鹿主稜の山々

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