天狗山〜陽春の山にカキオコで気分も満腹 |
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カキオコと山、そして20年に一度という祭見物をしようという欲張りな企画がK さんから上がった。去年であったかB級グルメのカキオコを初めて食べてから、ちょ っとファンになった小生。雨で1週延びた4月の吉日、同行させてもらったのである。 JR大阪駅の中央改札前のキオスクに集合。定刻前に集まったので、予定より10 分早い新快速で姫路、そこから播州赤穂行で播州赤穂。更に乗り継いで赤穂線は寒河 に向かう。神戸を過ぎると沿線の風景は正に春爛漫。山々にはタムシバに代わってヤ マザクラが華やかである。寒河まで二時間超。新幹線なら東京まで行ってしまう時間 だけれど、こういう沿線を眺めながらが本当の旅だろう。(笑) 寒河駅は日生駅の一つ手前の駅で、改札口なんて洒落たものは皆無の無人駅。降り たのは我々3人とジモティらしい中年男性1人だけである。駅前の桜並木は満開で、 その横に公衆トイレと案内板がある。その案内板を確かめて、橋を渡ってR250を 横切り山際に向かう。目指す天狗山は前山に隠されて見えないのだそうだ。
も見える。石段を上がった境内は狭いながらもなかなか立派な神社である。そして何 といっても『南極の石』が公開されているのが面白い。説明板によればS59年の第 25次南極観測隊の砕氷船しらせの通信士だった方が昭和基地から持ち帰ったものと いう。直径50cmほどの石は正式には何だか知らぬが、素人眼には礫岩のように見え た。 さて、天狗山へは本殿左に幅半間ほどの立派な道が整備してある。おりしもコバノ ミツバツツジが盛りを迎えて道の両脇を彩ってくれる。このツツジも良く見れば微妙 に色合いが異なり、薄いピンクから少し濃い赤紫まであって面白い。加えてヒサカキ の花も盛りを迎えていてムンムンする独特のガス臭が漂う。
ところで、登山道はまるで緑のトンネル。両側は瀬戸内気候で温暖な所為か深いヤ ブだ。サルトリイバラ、コシダ、ツツジ、アカマツ、ネズミサシ、ソヨゴ、ウバメガ シ、ヒサカキ等々が密生し、登山道がないととても歩けたもんではないだろう。道と は本当にありがたいものである。 寒河の簡易配水施設を右に過ごすと爪先上がりの急登。標高差120mを直線一気 に登りきるという寸法。ロープを垂らした急斜面も幾つかある。息が荒くなり、額に は一気に汗が噴き出す。その代り寒河の民家の屋根はあっという間に眼下となって、 グラウンドの向こうに瀬戸内海が見え始める。テラス風になったザレ場で小休止。い い景色だ。 山頂まで1.2kmの標識を過ぎると第一の急登は終わって水平道に近くなる。こう いう急登と次に台地というのを山頂までの間に三度ほど繰り返す。ただ、最初の急登 をこなせば後はそれほどでもない。 緩斜面での藪は深いがその間を行く登山道は良く手入れされている。しかも登山道 の最初からうるさいほど赤いペンキで岩や雑木に矢印、○が記されているので迷う心 配は全くなし。途中に休憩をはさんで1時間余りで小天狗(Ca360m)の看板を見 る。のっぺりとしたドーム状の山頂で、そこから北側にようやく天狗山本峰が顔を出 す。 深い鞍部があるのかと思ったら10mと少しくらいだろうか。(助かった。(^^; ) 本峰に向かって標高差約30m、最後の登り返しである。小さな露岩を越え、東方面 に下る踏み跡を見送ると、天狗山山頂の標識が出、その先のちょっとした露岩が山頂 であった。
度か金属標識の四等三角点に出会ったことがあるけれど、こう云っては何だが、石標 より有難味が薄い気がする。でも一応タッチしておこう。(笑) この山頂の露岩、登 山口の神社のもともとの磐座かもしれない。もくもく盛り上がった感じがいい。岩の 上は立っていると時折、よろけるほどの強風がある。それに抗して立てば、南は小天 狗の向こうに小豆島が長々と、東には家島諸島、西に鹿久居島が浮かぶ。反対に向き を変えると、中国山地東部の低い山並みが延々と続いている。唯一分ったのは和気ア ルプスの和気富士だろうか?播磨北西部の登ったことのある山も幾つかあったに違い ないが、他は全く判別できない。(^^; そういうわけで同定は諦めて、低い岩の南側 に座れば風が避けられるので、瀬戸内海方面を見ながら軽い昼食とする。なんといっ ても下山後はカキオコが待っているのだ。(笑) 山頂の西側には天狗山の周回コースの案内図がある。三ツ池奥池まで40分、下池 10分、成林林道20分とあるから都合1時間強というところ。北に周回コースは下 って行く。低木の密集の中の急勾配。この付近のミツバツツジはまだ蕾が多い。ほん の200m程度の高低差なのに微妙な温度差が影響するのか。やや深い鞍部に降りて コースに付けられた赤いペンキの目印を追って登り返す。 柔らかくうねるように上下する三ツ池までの山道を『三ツ峰越』というそうだ。地 形図を見ても主な起伏が三つある。一ノ峰、中ノ峰、三ノ峰。高木がないので時々現 れるザレ場に出れば、展望が良い。振り返れば天狗山とその前衛の小天狗がいい塩梅 で望めるようになる。三ノ峰に来ると淡いコバルト色の三ツ池がぽっかりと全体を現 す。その三ツ池に向かっては、やや迂回するようにザレ場から下って行く。乾いてい ても、濡れていても滑りそうな感じだが、前日に雨は適当なお湿りになったらしい。 すぐに青い水面は左横手になる。やがて奥池と中池の間の堰堤に出、成林林道の始端 の三ツ池の説明板前に立つ。
奥池は明治15年(1886)、中池は天保6年(1835)、下池は承応3年(165 4)に完成とのことである。下流に田畑は少なく、山は低木しかないので、用水以外に 鉄砲水を防ぐ目的で造られたのであろう。堰堤を進み、中池を右に見て池の管理道を 進めば、池から流れ出す沢が作った渓谷沿いの林へと赤ペンキの印がある。 沢は小さな滝やナメを作りながら下るに従って水音が高くする。谷はこんな小さな 流れなのにV字状を呈して随分と険しい。それもほぼ直線で、大雨ならば奔流が一気 に流れ下るだろう。流れを阻む露岩上を行く険しい道には足の置き場まで示す赤い点 までつけられている親切さ?で助かる。ヤブツバキが点々と鮮やかな赤いアクセント。 前方が開けると日生町のグラウンドの先に海がある。 150mばかりの内に50mを下る。『鳥ノ巣』の表示を見つけ見上げると曽爾の 鎧岳に似た岩崖がある。下山地の休耕田からは湖南の太郎坊にも似て登高意欲をそそ る姿だ。南方向から直接登るのは難しそうだが、地形図から見ると三ノ峰付近から尾 根を南下すれば行けそうだ。但し、踏み跡があるかどうかは定かでない。この辺りは 道を外すと半端でないブッシュである。(^^; U字溝を横切ると傾斜も落ち着いて、幅広になった地道にはミツバツツジが満開。 暖かい日を浴びて充満するヒサカキの匂いに陽春を感じる。休耕田の先に民家が現れ、 寒河峠からの昔ながらの村道との出合はすぐそこである。
幡社まで戻ってくる。R250に出て少し東方面に歩くと、目当ての○まちゃんがあ る。二時過ぎとて外で並ぶということはなかったけれど、それでも食べて出ていく人 を補充するかのように次々と新たなお客さんが入店する。運よくテーブルが空いてい た。メニューには種々バリエーションが記載されているが、勿論、全員、オーソドッ クスなカキオコを注文。まずはビールで乾杯。焼き上がって半分お好みソース、半分 岩塩で味付られたカキオコを頬張る。下山でまた空いたお腹に次々と収まって行った。
今回はこれで終わらずまだ続きがある。姫路で下車して20年に一度、射楯兵主神 社で行われるという奇祭、三ッ山大祭を見物して帰ろうというのだ。JR姫路駅から 北へ15分。壮麗な総門を潜ると、カラフルな三つの置山が目に飛び込んでくる。小 袖山、五色山、二色山と呼ばれる置山は高さ16m、直径10mという巨大なものだ。 山の側面には、俵藤太の百足退治、源頼光の大江山酒呑童子退治、能見宿禰と当麻蹴 速の相撲といった風景がそれぞれ描かれている。なかでも奇観は小袖山。着物が側面 一面に張り付けられているのである。説明によれば、全国の神様を射楯兵主神社の御 祭神が招待する神事だそうだから、全国の神様に来てもらう小袖なのであろう。置山 の上には招待する神々が宿る社が設けられ、その向かいの門の上には招待主の祭神が 宿る社がある。これは神様が山頂の岩や樹木に降臨するのを象徴していると云われる。 その山の中の様子がどうなっているのか一寸見てみたい気もする。境内の枝垂桜も見 ごろ。まことに祭り日和である。
人の遠足がメインだったかも。(笑) お腹以上に気分も満腹の一日でした。
■同行: 北山さん、みずさん、もぐさん(五十音順)
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天狗山山頂から南方向。小天狗の向こうに鹿久居島、遠く小豆島が望める。まるで東洋のエーゲ海だ |