三久安山〜ブナの若緑に酔う北尾根

伐採尾根付近からみた三久安山
平成25年 5月12日(日)
【天候】快晴
【同行】別掲


 5月の定例オフはSさんの主催で奥播磨の三久安山。藤無山の南に対峙する山である。
宍粟五十山に選ばれたことで登山者が多くなったという。かくいう小生も初登りは3年前
だったか。その北尾根は知る人ぞ知るブナの尾根。その新緑の満喫しながら藤無峠に下る
というコースが予定されているという。北尾根は未踏だけに楽しみである。

 昨日の本格的な雨とはうって変わって絶好の行楽日和と天気予報はいう。けれど意外や
中国道は混んでいない。7時に家を出て9時20分には山崎ICを降りることができた。
ところが肝腎の集合場所の山崎の道の駅が見つからない。あれ?行き過ぎたと思い、引返
して東側を注意しながら走ると、幹事のSさんの姿が目に飛び込んできた。聞けば道の駅
は3月末で閉鎖されていたのだった。道理で...。(^^;

 メンバが集まった所でR29を北上する。音水湖畔の旧引原小学校の円形校舎が見えた
ら右に折れて、せせらぎ渓流公園の看板辺りで藤無峠へ車をデポしに行くメンバと別れ、
それ以外のメンバで三久安林道を先行する。つり橋やキャンプ場の建物を横目に進むと、
不動明王を祀るお堂がある。昔、この辺りに木地師の集落があったというから関係あるの
か知らん。

 車で行けばあっという間なのだけれど、林道を歩くとなるとしんどい。傾斜もそこそこ
ある。色あせた花がらがぶら下がるミツマタと杉林の谷間は無風で暑いが、渓流の水音が
暑さをいくらか癒してくれる。ヘアピンカーブを上がると路肩に先行車が数台。と、その
上は木材搬出のため通行止の標識。あれれ?と思ったが、標識をどければその先は広場に
なっており、重機が置かれているものの車の転回は可能で、その先に宍粟五十山の標識が
立つ、見覚えある登山口があった。

登山口は木材の搬出基地と化している

 辺りに伐採木が散在している。以前、三久安山から周回して新しい四等三角点『新道』
経由で降りてきた方向も伐採されて様相が一変している。その先はどうなっているだろう。

 道標に従って幅広の作業道からミツマタ畑?を抜ける。ジグザグ道で一気に高度を上げ
ると、周辺はムシカリ程度の高さの木の他、大きな木はなく、枯れたススキが目立つ広い
荒蕪の地である。南に阿舎利山がその全容を現す。

 あら?あちこちでワラビが顔を出している。下は茎の細いものしかなかったけれど、上
へ行くに従って、市場で売っているような逸品もあちこちにニョキニョキとある。皆さん
夢中に摘み取って、すぐにレジ袋にズシリとくる重さに。いい土産ができた。(笑) その
うちに車をデポしに行ったSさん一人が追いついてきた。UさんとOさんはこの時期の花
を見に別コースを採って、山頂で合流することになったそうである。

 日陰もない南向きの斜面だから、胸突き八丁を登る時、暑いの何の。何度眼鏡を取って
顔を拭いたことか。いつもはいやな植林下も、直射を遮りヒヤッとしているので今日は大
歓迎。植林と荒地の境目をフーフーいいながら小刻みにジグを切ってこなしていくと、振
り返れば、いつの間にやら周囲の山々と肩を並べるようになっている。阿舎利山の向こう
に一山も顔を出してきた。
荒地付近より阿舎利山(右)と一山(奥)

 植林上部のウリハダカエデの林で一息入れて、お互いの収穫を確かめる。「これだけあ
ればもう要らんわ」(笑) そしてやおら尾根へと取り付く。黒いケーブルが半ば地面に埋
もれて上へと延びている。そうだ、古い共聴アンテナがあったはずだと思い出す。そのア
ンテナを過ぎると傾斜も落ち着いて、四等三角点『新道』があるピークはもうすぐそこで
ある。涼風が頬に心地よい。

 『新道』のピークを下る。植林が影を潜めて辺りは雑木林に変わる。ブナやミズナラ等
の広葉樹が主体。黄緑の若葉が目に優しい。岩だらけの短い馬の背を抜けると再び急な登
り。東西に伸びる主稜の左斜め前方に三久安山らしい高みが見え始める。徐々に太いブナ
が現れ、野鳥の声もあっちこっちの梢から落ちてくる。

 『新道』のピークからほぼ小一時間、きつい斜面をジグを切りながら南の尾根に取り付
く。歩く人が増えたようで以前より踏み跡が明瞭になっている。傾斜がやや楽になったら
三久安山の南のピークで、溝谷方面との分岐のピークでもある。ここからは三久安山名物
のブナ尾根だ。しかもかなりの大木が文字通り林立する。素直な樹が多い。その若葉を愛
でながら鞍部を登り返す。右手の柔らかい曲線の斜面に立つブナを眺めていると、上から
先行者の話し声が落ちてくる。二度目の三久安山山頂はもうすぐそこである。

明るい三久安山山頂。向こう側がこれから辿る北尾根

 昼食準備をしていると、東尾根の方からMTBを担いだ単独兄さんが上がってきた。見
覚えがあるのだが、一瞬、思い出せない。と、「貴公子さん」と声が懸かる。「さとゆき
です」ああ、さとゆきさん。低山徘徊派時代のお仲間だ。何年ぶりだろうか。以前、GW
だったっけ。湖北の赤坂山でもばったりお遭いしたけれど、一度あることは二度あるんだ
なあ。ということはもう一回あるか。(笑) 

 みんなでわいわいとランチを楽しんでいると、30分ばかり遅れて正午頃、花見物の別
ルートを採っていたUさんとOさんが無事上がってきた。肝腎のお花は残念ながら蕾ばか
りということであった。
盛りのムシカリ(オオカメノキ)

 何人かの先行者がいた山頂も最後はわれわれのみ。恒例、記念撮影の後は本日のハイラ
イト、北尾根の縦走である。三久安山を語るならやっぱりこの北尾根なのだそうだ。山頂
からの斜面を下ると早くも目当ての太いブナが現れる。地面はブナやミズナラの落ち葉の
絨毯にブナの殻が一杯。小さなブナの実生もあちこちに見られて、これなら世代交代もう
まくいきそうである。

新緑のブナ、ブナ、ブナ林

新緑のブナ、ブナ、ブナ林


鞍部でしばしブナ林鑑賞

 若緑に彩られた高い樹の梢からは今までに増して野鳥の声が降ってくる。とりわけイカ
ルが多い。特徴のある間延びした三音が響く。そしてアオバト。これは芦生で聞いたこと
があるが、飛ぶ姿を見たのは初めてであった。

 西側は桧の植林が現れるが、東側はずっと素晴らしい明るい自然林。これはたっぷり時
間をとって下らなきゃもったいない。嘆声を漏らしながら今の時期しか見られない緑を堪
能する。というわけで、進んでは止まり、止まっては進むので、下記のタイムチャートは
あてになりません。(笑)

 まあ、当たり前といえば当たり前なのだが、案外、アップダウンがある。その中の10
12mピークには赤白の測量ポールが立つ。三角点があるのかと思ったら宍粟市の地籍図
根点。『鹿杖』とある。地籍調査と書かれた指導テープがずっとあったのはこれの為だっ
たようである。

 1067mのジャンクションピークは大きな斜面を持つ。100mの標高差を登りきる
と、その大きな斜面に比べれば意外に小さなピークである。しかしここは重要な方向転換
点だ。ここで東へと折れねばならない。油断すると北西尾根に進んでしまいかねない。見
れば確かに明瞭で気持ちよさそうな尾根ではある。

 東側の尾根は今までとうって変わって細尾根である。地形図を見ると、もう大きなアッ
プダウンはないようで、ホッ。左右も開け、まだまだ葉の茂っていない木々を通して、さ
っきまでいた三久安山を右(北)から眺めることが出来る。左(北)側には快晴の青空の下、
大きさで辺りを圧倒している氷ノ山がある。

雄大な氷ノ山。窪みにまだ雪が残る

 重要と云えば次のCa1010mピーク付近も微妙な方向転換点である。北に引き込まれ
ないようにしなければならない。のっぺりしているのでここの方がより注意が必要か。コ
ンパスで確認して東へと辿ると、いきなり伐採地に出た。正面に藤無山がドーンと居座る
その大展望は息を飲むばかりだ。山腹を雲が影を落として通り過ぎてゆく。皆さん、しば
し立ち止まって眺める。右には三久安山。

伐採尾根の真正面に雲の影を映す藤無山が鎮座する

 藤無山を正面に見つつ、伐採された土と岩がむき出しの尾根筋を進む。その先の四等三
角点『阿舎利』も金属プレート。おそらく三久安山の南西のある『東三久安』と同時期に
設置されたに違いない。なんだか石の標識より有難みが薄いなあ。(笑) そこから再び植
林の中へ入って更に東方向へ進む。南方向にもテープがあって惑わされるのに少し注意だ。

 植林を抜け、地面に倒れて役立たなくなった鹿ネットを跨ぐと、枯れたカヤトに覆われ
た廃林道のような道に出る。もう林道が下に見えており、最後に道なりにジグザグに行く
と最終ポイントの藤無峠である。しかしこの藤無峠、ただの切開きで古い峠が持つような
風情はまったくないのが残念。勿論、古仏も置かれてはいない。

藤無峠。この辺りの路面は良好だが、
ここまで一般車では厳しい部分もある

 車をデポした所まで少し歩かねばならない。道幅はそこそこあるが、ダートの道は轍と
落石と所々がガレているので、普通車は底を摺る覚悟が要りそうだが、これでもれっきと
した県道なのだそうである。藤無山への登山口を過ぎて、湿地で蛙の声を聞く頃、路肩の
膨らみにデポ車が二台見えてきた。峠からは凡そ15分ばかりの道のりであった。

 狭い林道は暫くすると舗装路となって道谷の奥の疎らな集落を縫って立派な県道に出て、
やがてR29に合流する。しばらく走って往路のせせらぎ渓流公園の看板前で解散。一ッ
風呂浴びに行くメンバー、帰路に着くメンバーそれぞれとなって、小生は道の駅までOさ
んに便乗させてもらう。途中の道の駅で購入したアーモンドマーガリンを土産にお別れす
る。幹事のSさん、同行の皆さん有難うございました。そうそう、道の駅ではブナの苗も
買ったけれど、大阪の暑い夏を越してくれるかな。少々心配でもある。



【タイムチャート】
07:00自宅発
08:25〜08:30旧道の駅山崎駐車場(集合地)
09:15〜09:20せせらぎ公園入口前
09:50〜09:54三久安山引原登山口
10:45〜10:48植林地の上部のウリハダカエデ林
11:00〜11:02四等三角点『新道』(981.6m)
11:35ジャンクションピーク(Ca1,110m)
11:46〜12:46三久安山(1,123.2m(三等三角点『小原』))
14:35〜14:371,067mピーク
14:53〜14:55伐採地
15:05〜15:06四等三角点『阿舎利』(982.5m)
15:20藤無峠
15:35車デポ地

※註) 三久安山から藤無峠までの北尾根は立ち止まりが多い為、所要時間の参考にはなり
    ません

■同行: 裏人さん、大加茂さん、スナフキンさん夫妻、二輪草さん夫妻、
     ハム太郎さん(五十音順)

■今回のルートはこちら


三久安山のデータ
【所在地】兵庫県宍粟市(旧波賀町)
【標高】1,123.2m (三等三角点『小原』)
【備考】 北播磨の名山藤無山から南に生野高原などと並行して延
びる山塊に位置する山で、山頂周辺や1000mを越え
る尾根上にはブナの自然林が残ります。以前は林道を利
用して東の一宮町溝谷から登るのが一般的だったようで
すが、宍粟50山に指定されたのを契機に、西の波賀町
引原からの道がメインになりつつあります。
【参考】2.5万図『音水湖』



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