竜宮山、経堂の空、雨森山〜大路次川西側の山を繋ぐ

し尿処理センター横から眺める竜宮山東峰
平成25年 4月11日(木)
【天候】晴れのちにわか雨
【同行】みずさん


 以前、オフでお世話になった妻恋地蔵さんがその著書「低山趣味U」で歩かれた猪
名川の上流、大路次川の西側に凹凸する低山の山並み。今日は久しぶりにそんな山域
のマイナーな山を巡ろうというMさんの趣向に便乗する。登るは竜宮山に経堂の空、
そして雨森山の三つ。この内、雨森山だけは近年、『内馬場の森』として整備されて
いるが、他の二山はHPにも記述の少ないマイナー山だ。ひとっ子一人遭わない代わ
りにイノシシには二頭きっちり出遭ったのでした。

 阪急川西能勢口駅で落ち合った後、R173で北上、竜化で知明湖の周辺道路に入
り、吊橋近くの路肩の膨らみに一台をデポ。更に北上してホテルセルべーヌの看板の
ある側道に流出し、新しくできたし尿処理センター付近に駐車し準備する。この辺り
は十年位前になろうか。よくハヤ釣りに来たものだ。川沿いの車道を西へ戻る。前方
にこんもりと見えるのはどうやら竜宮山の東の峰らしい。

竜宮山への取付き林道

 セルベーヌを過ぎると大路次川に流れ込む小川付近に山へ入り込んでいく林道があ
る。これが竜宮山への取付き。夜半の雨でぬかるんでいるが、すぐに古い簡易舗装の
となる。この舗装はバブル時代の別荘分譲の為の様で、林道から見える数軒の建物は
ひっそりとしていて人の気配は感じられない。敷地の中にイノシシの罠まで設置して
ある。

 まもなく林道分岐がある。右が山頂へ続く林道であるが、竜宮山の東の峰から忠実
に尾根を辿りたいので左の道を行く。沢音を左下に聞く深い落ち葉のダート道だが車
の轍があるところを見ると山主さんがたまに来られているのかもしれない。

 杉檜林が現れた。地形を見ながら尾根に上がる好都合の場所を探す。もう少し上が
ってみようと大きく右にカーブするとまた林道分岐がある。右手に延びる道が尾根に
近づいているようなのでそちらに向かうと、すぐに肩くらいの高さのササの密集とな
って道をなさなくなった。と、突然、5、6m先の繁みをガサガサと通り過ぎる大き
な音。イノシシだろう。別荘地に檻がが仕掛けてあったのが頷ける。声を出して人間
がいることを改めて分らせておこう。(^^;

 幸いササの勢いが弱いので助かる。左右に踏み分けながら道の跡?を辿ればようや
く斜面に出くわした。踏み跡はないがとりあえず高みに向かって行く。まばらな杉の
間にコナラ、ソヨゴ、馬酔木、ホオノキ、アベマキ、イヌツゲなどが生える林は大し
たヤブもなく歩きよい。ただ倒木だけが邪魔だ。(笑) 支尾根に乗ると古い白布が見
つかった。やっぱりここから登る人もいるらしい。(笑)

 白布は間隔を空けてパラパラとある。竜宮山東尾根の390m峰への主尾根に出る
と、なんと踏み跡が現れた。それを辿ると痩せたササ原に「山おやじ」と呼ばれる台
場クヌギの林立する斜面だ。南から東方面が開けて展望が良い。下に大路次川沿いの
平井の集落。その背後で頭をもたげているのは知明山から北に続く四等三角点の山『
国崎』(410m)だろう。しばし立ち止まって展望を愉しむ。

枯れ笹の繁みの中に炭作りの名残の山おやじが

山おやじの群れ。奥に経堂の空が見える

 踏み跡が消えて勾配が落ち着くとその先に倒木だらけの丸い高みがある。立ち木に
「竜宮山392M 01.1.21」と古いマジック書き。しかし疑問が....。この立
ち木、生きているらしいが10年以上も経っても同じ太さ? 更に確かに高さは同じ
程度だがここは三角点のある竜宮山ではない。(笑) もっとも三角点のあるピークが
地元で呼んでいる山とは限らず、また地形図に記載されている山名が正しいとも限ら
ない。現にこの山は北浦山とも呼ばれる。ややこしいものだ。

倒木だらけの竜宮山東峰にて
山ランのハイカーが残したらしい

 東峰と三角点峰とほぼ同じ高さであることからも分る通り、この先は小さな起伏が
ある程度でる。倒木が多く、鞍部には痩せたササが繁茂し少し歩きづらいものの、古
い残置テープもあってそれを辿りつつ進むと、なだらかな高みの笹原を分けた辺りに、
一角が少し欠けた三角点標石がある。笹が枯れ気味であるのですぐ見つかったが、繁
茂していれば見つけにくかったであろう。近くの木に山名プレートは2枚。その内の
一つは去年の元日のもので、干支の山に登った記念プレートらしい。予想通り展望は
全くなく、山頂から10m程度離れて大きなヤマザクラが盛りをやや過ぎて、花びら
を散らしていたのが印象的である。

笹やぶの中に竜宮山山頂の三等三角点『中谷』があった

 展望がないから一服しただけで先へ進む。この山は下山が難しいようだ。南西方向
の尾根は幅が広く台地状を呈し、笹原の中に踏み跡もはっきりしない。ただ、赤い残
置テープがあるので参考になる。南西から西に進路を変えて慎重に進むと、地形図に
も乗らないような小さな沢の源頭風の地形の中に、石を積んだ炭焼き窯跡のような者
がある。炭化した土がその前一面にあるので炭焼き窯だったと思うが、この辺りに多
いマンガン鉱山の坑口かもしれない。

 突然、西方向に見晴らしの良い斜面が伐採された上に出る。ここもクヌギの木が残
してあるようだ。吹き上げてくる風に抗して眺めれば、北方向に並ぶのは三草山、滝
王山、堂床山で、その向こうの二つ並ぶ三角錐は、この前登った清水東の愛宕山に違
いない。羽束山も西に意外に近い。ミニチュアカーのように見える車が走るのは能勢
の上杉に通ずる車道だろう。
竜宮山南尾根の伐採地上から北方に猪名川三山
右から三草山、滝王山、堂床山
左に先日登った清水東の愛宕山の双耳峰が鋭い

 この辺りから尾根は南に方向を変えていく。洗掘された廃道らしきものがある。辿
ろうとしたが落ち葉と倒木が多いので避けている内に、いつの間にか残置テープが見
えなくなった。兎も角も南へと下る内に、立ち木が皆伐された急斜面に出くわした。
下ろうとしたが、なにせ皆伐なので手掛かりがないところへ持ってきて、サルトリイ
バラやモミジイチゴは伐採から逃れて健在。斜面が崩れやすい上に、滑って掴もうも
のなら痛い目に遭う。これは危険なので登り返してもう少し尾根を忠実に辿ることに
してヤブっぽい中、再び先ほどの続きらしい廃道に出遭った。今度はしばらくそれを
利用し、そろそろ下界も近いはずと見送って、地形図の寺のマークを目指していくと
ドンピシャ、墓地の裏に飛び出すことが出来た。ホッと一息ついた途端に今度は雨が
落ち始めた。何時の間にやら青空は姿を消して、慌てて地蔵堂で雨を除ける。

善久寺の墓地裏へ飛び出す

 雨が上がったのを確かめて善久寺から坂を下る。経堂の空の山並みが目の前である。
県道を東へ少しで阪急バスの民田バス停がある。経堂の空へは東側に南北に延びて、
銀山に向かう古道から林道を伝って登るのが楽だが、大きく迂回することになるので、
民田のバス停辺りから真南方向の稜線がタワになっているので、そこから尾根に出て
みようということになる。丁度御誂え向きに、集落内を抜けるコンクリート道がある。
防火用水槽を右手にして進むと、まもなく小さな栗園だ。

 栗園の周りはぐるりと植林で動物除けの電柵が張り巡らしてある。抜けられるかや
や不安があったが、電柵沿いに踏み跡があって、右手に廻り込んでゆけば、幸い切れ
目が見つかった。後はひたすら尾根を目指して標高差100mを登るのみである。

 登るに従って植林帯は雑木林に代わる。先行するMさんがこの付近でイノシシを目
撃したそう。当方は音だけで姿は見ず仕舞い。鉄砲登りはシャリバテの身には少々き
つかったが全くヤブもない。登りついた先は目指した鞍部の西側、300m等高線が
北に飛び出したCa320mの高みで、公共の基準点標が埋まっている。

 経堂の空は双耳峰で、東峰の427m峰まではCa380m峰とほぼ同じ高さの西峰
を経る尾根歩き。ここも山おやじが残り、その枯葉が深く堆積した古い踏み跡が残っ
ていたり、消えたりを繰り返して続いている。時折、南方向が広がり、ずんぐりした
雨森山北峰と日生中央の街並みが見渡せる場所がある。

経堂の空の西の稜線から雨森山北峰

 南向きの暖かい斜面にはもうモミジイチゴの白い花が見える。雑木のうるさい小枝
を払いながらCa380m峰までは基準点から15分ほどである。この峰の東の鞍部が
内馬場からの林道との最近接点で、下山はこれを狙ったのだが....。

 ヌタ場を抜けると西峰は近い。軸だけ残ったササをかき分け登り易い所を探して、
最後の急登をこなすとだだっ広い小笹と雑木林の西峰の山頂が待つ。ここも東峰も平
坦で、経堂の空という名前通り、昔は寺院かそれに類するものがあっても不思議では
感じがする。もう標高427mの東峰はほんのすぐそこで、ここよりちょっと高く見
える。しかし、東峰に立てばこちら西峰が高く見えるから不思議な経堂の空の双耳峰
である。

 東峰は幾本かの喬木と枯れササに覆われた台地。最初に来たのは平成16年だから
9年ぶりの山頂である。山名プレートは一個のみ。ヌタ場の周囲の木の幹に残る動物
の痕跡も少なくなっているけれど、踏み跡もほとんど消えていて、入山者もあまり多
くないと見える。その分静か。相変わらず雨がぱらついてカサコソと落ち葉を叩く音
とシジュウカラの鳴き交わす声のみ。雨を常緑樹の下に避けて遅い昼食とした。

9年ぶりの経堂の空山頂

 さて、次の雨森山へ向かう為、内馬場からの林道を目指す。西峰に戻ってその西か
ら南に下る。50mも下れば林道に出るだろうと期待したところがなかなか現れない。
これは後から考えれば、西峰から西のCa380m峰の鞍部を目指すつもりが、結果的
に林道が南にあることに引っ張られて、やや早く南に折れすぎたのが原因であろう。
そんなことでこの付近で等高線が一番詰まった所を下ったことになる。(笑) それで
も南に向かっていれば雨森山との鞍部に出るはずだし、すり鉢状に谷が狭まってきて
いるのでその先にきっと何かがあるだろうと期待しながら下ると、微かな踏み跡が現
れた。それはだんだん明瞭になってきて、ついには今は廃道になっている、谷をへつ
る1m幅の水平道になり、ポンと飛び出した所はなんと雨森山の登山口の真正面であ
る。思ってもみない想定外のドンピシャだったのであるが、ここには内馬場からムネ
ガ窯へ向かう林道、雨森山の登山道、我々が歩いてきた廃道、それにもう一つ、廃道
と並行して東側に林道が分岐していたのには、なにか狐につままれているようで驚い
たのである。普通、どこでも昔より道がはっきりする山が多い中で、道が不明瞭にな
ったという山も少ない。(笑) とはいえ、何はともあれ結果オーライであった。(^^;

左の四差路から歩いてきた方向を振り返る
ほぼ同方向から東へ延びる林道があった

四差路から北方向
左がムネガ窯への林道、直進すると雨森山へ

 驚きはもう一つあった。東側の大路次川から遊歩道があるのは知っていたが、こち
ら側も綺麗に整備されている。目立つ木々には樹木名のプレートまでぶら下げてある。
踏み跡も1m位に広げられこれはもう遊歩道だ。だから今までの二山とは大違い。少
し雨が強くなったので足取りを速めたこともあるけれど、歩みがはかどるわ、はかど
るわ。(笑) 雑木で鬱蒼としていたのも間引かれたのか、下草も整理されて見違える
ように明るい。あっという間に北側のCa380mピークに到着。緩くうねる鞍部から
小広場に整備された山頂はすぐ。結局、林道出合から15分ばかりで、欠けのない綺
麗な三等三角点の顔を見ることが出来た。今日二つ目の三角点である。

ここも何年か振りの雨森山山頂。整備が進んでいる

 丸太のベンチにザックを降ろして一息入れていると薄日が射してきた。水蒸気で白
っぽいが青空も顔を出している。清々しくてなかなか気分のいい所だ。日生中央付近
の住宅地が一望される。東は知明山から高代寺山、妙見山など能勢の山々が起伏する。
北には雨森山の北峰の奥に、経堂の空が柔らかい稜線を見せている。低かろうが高か
ろうが、どんな山でも登ってきた山を眺められるのは気分がいいものだ。しばし眺望
に時間を費やす。

 そろそろ下山とザックを背負ったていたら、また上からポツポツ落ちてくる。南側
に延びる遊歩道を辿る。長く延びるフェンスに沿いに東に折れてようやく下りになる。
コバノミツバツツジが盛り。大きなものはひょっとして桜より綺麗ではないか?東に
延びる尾根沿いは結構急傾斜だが、九十九に折れる道が助けてくれる。国道を走る車
の音が大きく聞こえてくる。R173のトンネルの上を歩いていることになるのだ。
ちらり北側の次のトンネルの口が見えた。

遊歩道を華やかに彩るミツバツツジ

 こんなだったかな?やがて林道ほども幅広の道になった。知明湖の水面が見え、下
に白いガードレールが見えてくる。湖畔の周回道路に立った『内馬場の森』の看板は
もうすぐそこにある。
雨森山の東登山口に降りてきて大団円

 ここまで一切人には遭わなかったから、路肩に停められた一台の車は釣り人のもの
らしい。竜化吊橋を渡ってデポした車までは10分ほどであった。

 ひとっ子一人遭わなかった竜宮山から経堂の空、雨森山と三つの峰を繋ぐ今日の山
行。春の息吹を感じると同時に道の有難さを実感する歩きでもありました。手足には
またまた擦過傷が数ヶ所。さぞかしお湯で滲みることであろう。(笑)



【タイムチャート】
09:36〜09:45能勢し尿処理センター(駐車地)
09:52林道入口
10:39〜10:40東の峰(Ca390m)
10:49中央の峰(Ca380m)
10:55〜10:58竜宮山(392.2m 三等三角点『中谷』)
11:15〜11:22竜宮山南西尾根の展望地
11:48〜11:52善久寺の墓地
11:55民田バス停
12:10基準点のある峰(Ca320m)
12:25Ca380m峰
12:32経堂の空西峰(Ca420m)
12:37〜13:00経堂の空東峰(427m)(昼食)
13:05経堂の空西峰(Ca420m)
13:22〜13:23林道出合(雨森山北登山口)
13:39〜13:55雨森山(383.7m 三等三角点『内馬場』)
14:12雨森山東登山口
14:25車デポ地



竜宮山(北浦山)のデータ
【所在地】兵庫県川辺郡猪名川町
【標高】392.2m (三等三角点『中谷』)
【備考】
猪名川町の最北東部に当たるヤブ山です。猪名川町民田
付近からは綺麗な独立峰に見えます。東側に途中まで古
い林道が延びている以外、はっきりした継続的な踏み跡
はありませんが、一帯は台場クヌギの宝庫で、池田炭が
焼かれていた痕跡を残します。
経堂の空のデータ
【所在地】
兵庫県川辺郡猪名川町
【標高】
427m
【備考】
日生ニュータウンの北に延びる山稜の最高峰で、雨森山
と北側に対峙します。「経堂の空」の名は北麓の民田で
の名前で、内馬場では「大山」と呼びます。東峰と西峰
があり、訪れる人も少ない静かな雑木林歩きが愉しめま
す。但し、テープ類は一切無く、地図とコンパスは必携
です。最寄は能勢電日生中央駅から『彫刻の道』を進み
広谷林道に入るのが最も楽です。
雨森山のデータ
【所在地】
兵庫県川辺郡猪名川町
【標高】
383.7m(三等三角点『内馬場』)
【備考】
日生ニュータウンの北に延びる山稜の一峰です。民有か
ら猪名川町に管理が移管され、『内馬場の森』として整
備されました。そのお蔭で山頂広場からは素晴らしい展
望が得られ、北摂の山々から大阪市街まで望めます。
【参考】
2.5万図『妙見山』



■大路地川西側の山〜竜宮山・経堂の空・雨森山GPS軌跡   
(罫線は10秒=約300m国土地理院電子地図サービス、フリーソフト『カシミール』を利用しました)

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