扇ノ山〜暑気払いにブナの森で森林浴

上山山頂から見る扇ノ山(奥)、手前が大ズッコ
平成25年 8月18日(日)
【天候】晴れ
【同行】単独


 今年は四国で史上最高の気温も記録して文字通りの酷暑。07年から気温が35℃を越
えると猛暑日と呼び慣わすようになったが、この分では40℃を越えた時を酷暑日とでも
呼ぶようにしないと追いつかない程である。これでは家に居てもたまらない。暑気払いを
兼ねて、どこかで森林浴とでも洒落込もう。

 と云っても、この時期だから歩き始めも千m以上でないとやりきれない。自ずと候補は
絞られる。少々遠いが8年ほど前に訪れた扇ノ山に出かけてみよう。約3kmのブナの森の
プロムナード。期待通り、人気も少ない静かな森が出迎えてくれました。

 初めて扇ノ山を訪れた時はかなりの時間がかかったように思うが、北近畿豊岡道が延伸
したお蔭で、3時間足らずで海上集落への分岐に着く。狭い林道を延々と登って上山高原。
更に1kmばかり進むと、兵庫県と鳥取県の県境で「水とのふれあい広場」がある。車はこ
こに置く。

 広場から100mばかりでこれも見覚えある河合谷の登山口がある。初めはちょっと鬱
蒼とした感じだが、湧き水の水溜りを木道で抜けると整備された遊歩道になる。右にガマ
の生えた小さな池を経て、上山高原からの道(車で上がって来た時に見た登山口に出るの
だろう)を合わせて、まずは地形図の1159Pである『小ズッコ』へと向かう。植生は
徐々にブナやミズナラの自然林に変わっていき、500mも進むと全国有数のブナの自然
林の中に誘われる。それほど太いものはほとんど無いけれど、一抱えほどのブナの森。そ
れも豪雪地帯らしくすっくと伸びた木は見られず根性ブナが多い。歩いていると、日に透
き通る緑の葉、風にゆらゆら揺らめく木漏れ陽、風にすれる葉音、高所から降ってくるオ
オルリはじめ野鳥の鳴き声。今日、期待していたのはこれこれ。(^o^)/
ムシカリの葉を透かして

木漏れ陽の道

 地形図で標高点表示のある『小ズッコ』は表示もなくどこがそれだかちょっと分からな
いが、GPSが示すそれらしい場所で小休止。タイミング良く?GPSの電池が切れた。
交換しておく。

 緩い勾配の道を上がっていく。この辺り、ブナ、ブナ、ブナのオンパレード。猛暑の影
響なのか葉が少し白っぽく感じる。その中をまるで道案内をするかのようにヒラヒラと、
アサギマダラが前を飛んでゆく。そのフワフワとした飛翔に幻惑されながら緑の中を辿れ
ば、前方に樹叢に覆われた大ズッコの高みが見えてくる。傾斜が増してきてようやく山道
を登っている実感がしてくる。左右にムシカリが目立つ。それも多くの野鳥が生息してい
る理由の一つかもしれない。

根性ブナ
 大ズッコもはっきりここが山頂と分からない高み。多分指導標識の近辺が標高点の場所 だろう。展望皆無でここも通り過ぎるのみ。一旦、ぐっと下って登り返すと扇ノ山への最 後の登りになる。やがて鳥取側を俯瞰する展望台が現れる。条件が良ければ大山や日本海 が望めるらしい。が、前回もそうだったように、大気中の水蒸気に阻まれて遠くは白くか すんでいて、せいぜい鳥取平野らしい平地が分かる程度である。  ここまで来れば山頂はもうすぐそこ。『山頂の門』と呼ばれる立ち木のアーチをくぐる と避難小屋の建つ見覚えのある扇ノ山の山頂に着く。眺望は南側が比較的いい他は思うに 任せない。南のゆったりと翼を広げる氷ノ山や陣鉢山と続く山並みの他は、畑ヶ平高原の 畑地、『八東ふる里の森』らしい山間の緑地が垣間見える程度。
久方ぶりの扇ノ山山頂

扇ノ山から氷ノ山

 山頂に幾つかあるベンチに腰掛ける。日光の直射を避けられれば良いのだが生憎と木陰
もない。大阪じゃとても耐えられないが。吹き通る風が乾いて涼しいのでそれほど苦には
ならなかった。

 先着していた男女二名が山頂を後に河合谷の方へ戻っていく。先行車は二台だったので、
大ズッコ辺りですれ違ったご夫婦をいれてこれで誰もいなくなったか。(笑) 前述の如く
日差しはきついが流石に吹き抜ける風は爽やか。こんな時季でも熱いカップ麺をすすって
山頂を独占していたが、それも10分足らず。熊避け鈴の音と共に『八東ふる里の森』方
面から単独小父さんが上がってきた。

 写真を撮ってあげたのが縁で話を聞けば、日本百名山を踏破し、現在は二百、三百名山
を中心に登っているという電力会社OBの恵まれた方だ。今日は早朝5時に徳島を出てき
たという。ほう、四国からでも日帰りできるのだ。高速道の恩恵まざまざというところ。
ついで姫路公園方面からも暑い暑いと単独小父さん。また賑やかになった。(笑)

 ゆっくり1時間ばかり山頂にいてお先に下山とする。帰路は大ズッコへの登りが少しあ
るだけで後は水平か下りばかり。ルンルンの3.2kmだ。展望台からは往路と一緒で鳥取
方面はやっぱり霞んでいて視界は伸びない。ブナの他にはムシカリとナナカマドが目立つ
道を下ってくると、目の前のブナの木に黒い物が蠢く。あら?ミヤマクワガタ。どこかに
クヌギがあるんだろうか。

 扇ノ山、日本三百名山の一つでそれも日曜なのに静かなもので、帰路すれ違ったのは大
ズッコ手前での一組のご夫婦だけだったか。その一組以外に周囲に誰も見ず、広いブナ林
には何か獣がいるような雰囲気がそれとなく感じられる。ツキノワグマも生息する地域で
ある。近くの岡山県でも今年は熊の出没が多いと聞く。ゾクッ。「ビビリアン」の小生、
思わず周囲を見回す。熊鈴を揺らせ「六根清浄」と独りごちて兎に角何であれ人間がいる
ことを知らしめておく。

 登山道から少し離れたウラスギを今回も見に行く。京都北山近辺のアシウスギに比べた
ら、横綱と十両位の違いはあるが、それでも周囲3mくらいはあるだろう。根元の洞に誰
が置いたか小さな石仏が倒れていた。
ウラスギ

 山頂近くでは声も聞かなかったのに上山分岐を過ぎるとエゾハルゼミが鳴きだした。近
いとギーギー、結構うるさいものだ。熊笹が出てくると登山口は近い。最後の丸木階段を
下りてカンカン照りの河合谷林道に飛び出す。暑うー。
 
 「水とのふれあい広場」では家族連れがそうめんを湯掻いて湧水で冷やしている最中で
ある。スイカも一玉冷やされている。(ウーム、食べたいなぁ。)邪念を振り払ってパイ
プから勢いよく噴出す水で顔を洗う。手の切れるほどの冷たさ。飲めば甘露、甘露。まこ
とに美味い水である。

 人心地ついたら上山高原へ移動する。上山高原は扇ノ山から流れ出した溶岩が創り出し
た高原である。そのシンボルでこんもりとした上山の頂に置かれている三等三角点を途中
下車して拝んでおくためだ。「水とのふれあい公園」から林道を降りてくると、上山高原
の避難小屋付近の空き地に見慣れぬ小型バスが止まっている。ボディに兵庫県植物観察云
々の文字が見え、ホウッと思ったことであるが、夜、SNSでUさんがこれに参加してい
たと知る。こんなのを知ると世間は狭いというか、ほんと奇遇を感じる。

 バスの駐車地から100mばかり過ぎた所に立つ上山三角点の案内標識の向かいには、
トイレと駐車用の空き地、それに上山高原の案内図がある。車を止めて用意をしていると
フリードスパイクの小父さんがトイレ休憩にやってきた。地元の方だそうで、あまりに暑
いので涼しい所を探してやってきたのはいいけれど、車を止める格好の木陰がないのだと
おっしゃる。大阪も酷暑だが確かにこちらの暑さも半端じゃない。ここも六甲くらいの標
高があるのに日差しは痛い位だ。そんな四方山話のついでにスパイクの中を見せてもらう。
後部座席を寝かせると全くの水平で、側面に棚もあり、車泊にはもってこいの造りである。
愛車ももう10cm車長が長ければ小生の身長でも斜めに寝なくて済むんだが...。(笑)

 さて、小父さんと別れてすぐ山頂が見えている上山へ。高原は家畜の放牧地になってい
た関係上、喬木がほとんどない。従って当然、上山へも直射日光ガンガン。帽子をかぶっ
ていて良かった。低い小さな尾根沿い、枯れ笹とワラビらしい羊歯の原に擬木階段が埋ま
っている。それをゆっくり登っていくと10分程度で頂上に出る。キリギリスがあちこち
で鳴き交わす中、枯れた笹原に三角点もすぐに見つかる。

 10mばかり左手に枯れた松そのままで造られた高さ2mばかりの展望台があったので
登ってみるとなかなかの景観である。上山高原の全貌が見渡せ、今まで見えなかった扇ノ
山や大ズッコの本体が眺められるではないか。ただ、北側に海が見えるかもと思っていた
が、牛ヶ峰山だろうか、そこそこ高さのある因但国境の山々に阻まれてそれは適わない。
東側は霧ヶ滝渓谷だが、溶岩が浸食を受けたのかかなり急峻に落ち込んでいるようである。
雲ひとつ無い晴天、かんかん照りに草いきれ。水も持って来ずだったので長居は無用、写
真を撮ったらすぐに折り返す。
上山から。下に公衆トイレと愛車が見える。奥は牛ヶ峰山

 車内でぬるい湯のようになったお茶と残しておいた赤飯お握りで小腹を宥める。中国道
が混まないうちに帰るとしよう。八鹿氷ノ山ICができたおかげで助かる。(しかも現在
は春日ICまで無料なのだ。但し、遠坂トンネルは有料)しかし案の定、早くも宝塚西ト
ンネル先頭14q渋滞と電光掲示板が示す。三田西ICで一般道に逃げる。5時過ぎ帰宅。
しばしの暑気払いだったが、やっぱり帰ってくると大阪は暑いわ。(笑)

【タイムチャート】
06:10自宅発
09:25〜09:40水とのふれあい公園(駐車地)
09:45河合谷林道登山口
09:58上山高原分岐
10:05〜10:11小ズッコ(1159m)
10:15大石分岐
10:36〜10:39大ズッコ(1273m)
10:40上池分岐
10:55畑ヶ平分岐
11:02〜11:50扇ノ山(1,309.9m 二等三角点『扇ノ山』)
12:15大ズッコ
12:39小ズッコ
12:57河合谷林道登山口
13:00水とのふれあい公園(駐車地)



扇ノ山のデータ
【所在地】 鳥取県鳥取市、八頭郡八頭町、若桜町、
兵庫県美方郡新温泉町
【標高】1,309.9m(二等三角点)
【備考】 氷ノ山の北西、兵庫県と鳥取県にまたがる山です。かの
加藤文太郎は兵庫立山と名づけています。古いアスピー
テ型の火山が浸食を受け、文字通り、扇を広げたような
なだらかな山容をしており、ドーム状の小ズッコ、大ズ
ッコ及び山頂周辺は、近畿では見られない規模のブナの
自然林です。ただ、京阪神からのアプローチは遠く、不
便でマイカー利用が無難でしょう。
■日本三百名山■近畿百名山■関西百名山
【参考】
2.5万図『扇ノ山』



トップページに戻る

inserted by FC2 system