やっぱり春が似合う虚空蔵山

池の堰堤下から虚空蔵山塊
山腹に白く見えるのはタムシバの花
平成25年 3月30日(土)
【天候】晴れ
【同行】単独


 ここのところ、しばらくご無沙汰していた自分の好きな山をまた訪れたりしている。
今日は摂丹界にそびえる虚空蔵山。舞鶴道を北上すると三田西ICを過ぎた辺りから富
士山型の優美な姿を見せる山である。都合5回くらい登っているはずだが、今回は久方
ぶりに表参道から登って北尾根で下るという粗々のコースを組んだ。だが、その思惑通
りにはなかなか行かないもの。なぜだか途中で脱線したのでありました。(笑)

 表参道から虚空蔵山に最初に登ったのは97年だから、なんと16年ぶりのことにな
る。その時は村道にある虚空蔵山の標識が立つT字路付近の路肩に駐車させてもらった
けれど、今は藍本駅前に一時駐車場(¥500)がある。暖かいだろうと思いきや車を降
りると意外にまだ冷たい風が強く吹き抜ける。

 山へはJR線路の向こう側(西側)に出なければならないが、生憎、それらしい道がな
い。しようがないので藍野駅の跨線橋を利用させてもらうことにする。(笑) 神さびた
酒垂神社の社前を通り過ぎ、理髪店の前の辻を真っ直ぐいくと虚空蔵山の標識に至る。
西に折れて真っ直ぐ、「魚釣禁止、魚はいません」と表示された池の畔を道なりに、舞
鶴道の高架を潜って左に折れると、近畿自然歩道の看板が出る。最初の山行を少し思い
出した。あんまり変わっていない。なんだか懐かしい。

 舗装がすぐに途切れ、小沢沿いの石くれの歩き難い道は、平たい岩のなめである石舟
を見てから、この小沢を横切るとますます歩き難い石ころだらけになる。ジグザグを切
って高度を上げる。人工林にアベマキ、ソヨゴ、ヒイラギ、ヤブツバキ等の混淆林は、
とりわけヒサカキの花のガス臭が濃厚である。

 額に汗がにじみ始めた頃、やや傾斜が緩くなると虚空蔵堂の石段が見えてきて、右手
から裏参道(関電巡視道を兼ねている)を合わせる。虚空蔵堂の境内はすぐそこだ。境内
のベンチで一休みして喉を潤す。途中で追い抜いた家族連れも上がってこられた。

 山頂まで800mの標識がある。ここから本格的な山道だ。ジグザグを切ってぐんぐ
ん高度を上げる。地形図を見れば山頂まで二度急登があるはずだがその一つ目である。
境内から聞こえていた先ほどの家族連れの声も聞こえなくなって、周囲は鳥の声と自分
の足音のみになる。440m等高線を越えると、今まで高く見えていた南のCa450m
峰と肩を並べるようになる。東に張り出した台地状の尾根に乗る。役の行者像が「ご苦
労さん」とでもいう風に出迎えてくれる。

赤い涎掛けを巻いた役行者像に挨拶

 再び厳しくなる登り。馬酔木の花が鈴なりである。左からの関電道と出合うと山頂ま
では300mだ。前方に虚空蔵山が現れる。山頂をガードするような丹波岩をトラバー
スしていくと、一組のパーティが下りてきて、その先、山頂の山名板のある岩の上には
意外や誰もいない。(山頂の岩の北側に若いパーティが食事中だったらしい。)その岩
の上に南側に新たに風景案内板が設置されている。残念ながら今日はやや霞んでいて案
内板のようには瀬戸内海は見えない。雄岡山、雌岡山がせいぜいという視界の伸び加減
である。それでも箱庭のような相野や三田のニュータウン、須磨田三山に千丈寺山、有
馬富士などが見渡せて気分は爽快だ。

久方ぶりの虚空蔵山山頂

 三人組の壮年男性パーティと若い夫婦らしいペアが上がって来たので、岩の上を譲っ
てやや北側の岩の上で少し早く昼の店を広げることにする。11時半だ。

 岩の上で日向ぼっこに余念のないヒオドシチョウをからかいながら食後の緑茶も喫し、
まったりと50分ばかりも憩って、さてと腰を上げて北尾根縦走に取り掛かる。山頂の
少しばかりの繁みを抜けるとまた露岩がある。虚空蔵山の592m標高点は山名板のあ
る岩の上ではなく、30mばかり北側のこの岩にあるようだ。そういえばちょっとばか
り高く見える。ここからは南の岩からは見え難かった西から北側の山が良く見える。上
山、和田寺山から西寺山やとんがり山など。一際高いのは西光寺山らしい。

 山の上なので下界の様にはまだまだ行かず、殻を破ってやっと青みを増した木々の芽
が清々しい雑木林を快調に進んで、陶の郷分岐を過ぎる。白地に赤い山友会の古いプレ
ートが目に入ると、踏み跡は西方向に急降下する。よく山歩きする人にはお馴染みの黒
いプラ階段があるので関電の巡視道なのが分る。深い落ち葉に隠れ馴染んで、もうほと
んど違和感がない。

 渦巻くように下りたその底は丹南線bP4の高圧鉄塔が立つ鞍部である。鉄塔の脚の
コンクリートに単独小父さんが腰かけている。小野市から来た方で油井方面から北尾根
を辿ってきたとのことで、道が良くなっているのに面食らったそうだ。そういえば当方
も北尾根はもう5年ぶりになる。確かに踏み跡は明快になっている。

 そんな立ち話をして、歩行再開。目の前にそびえていた八王子山への登りになると、
『オロ峠、八王子山』と書いた何処かの山倶楽部の標識と分れて、明快な巡視道は八王
子山の脇をすり抜けるがごとく右に延びる。ふとここで八王子山に登らずにトラバース
しようとイージーな気分が湧き上がった。深い考えは何も持たずに右に進む。後で気づ
いたがこれが間違いのもとだった。以前は確か『右 草野、左 八王子山』とか何か標
識があったような気がするが、無くなっていたのか見落としたのか。ともかくその時、
右に巡視道を選んで尾根道を外したのに気付いていなかったのは間違いない。いずれ尾
根道と合流するだろうと高をくくっていたが、行けども行けどもどんどん下って行くの
だ。こりゃおかしいと気づいたのは大分進んでからだ。それでも道が水平になると、ど
うせまもなく合流するさと更に先を急ぐ。15分も進んだか。丹南線bP5の鉄塔に出
た。なんとここには昼食中の女性ペアがいた。聞けば下山後、薬師の湯へ行くのだと云
っていたけれど、無事入浴出来たろうか。今いる所は今田側とは逆方向なのだけれど..。

 常緑樹が多くてなんとなく暗い感じ。水平道で間もなく尾根道と合流するかと思えば
また下り始めて期待を裏切ることが続く。それが初めて尾根から下りてきた踏み跡と出
合った。合した道は東方向へ一気に下り始める。そういえば淡い記憶では確か油井への
尾根道でも、山上山方向へ急降下があったような。そうだ、やっと縦走路と出合ったの
だ。なんて自分を納得させながら降りて行けばすぐに分岐がある。右は草野駅と私製プ
レート。それなら直進はとしばらく辿ると、まもなく谷の源頭となって少し荒れている。
やっぱり縦走路と出合ったのではないらしい。ここに至ってもう合流は諦めて、さっき
の草野駅へのショートカット道で降りることに決めた。多分、源頭を抜けていれば丹南
線bP7(当初の尾根道で横切ることになる高圧鉄塔)に出られたであろうが、まっいい
か。

 分岐に引き返して草野駅方面へ下る。すぐに丹南線bP6の鉄塔。鉄塔脇をへつると
コシダの繁る小道が続いている。と、タムシバの白い花が咲くはるか下に池の青い水面
が見える。地形図で確かめると496.1m山の東の池らしい。道はその池へ吸い込ま
れるような急傾斜を右に左にとなだめつつ下って行く。お蔭で膝にもそれほど負担なく
アッという間に池の側を周回するらしい踏み跡に出ることができた。

池の堰堤から虚空蔵山北尾根
さっきその横を通り過ぎた鉄塔が見える

 池の管理道路へ最短距離であろうと左から回ることにする。10m余りでおそらく弁
天様の祠だろうか、小さな祠が岩棚に鎮座しているのを見つける。しかし、その先が少
し荒れているように思えたので、反対方向から向こう側に出ることにして戻るとこれが
正解で、木の幹に指導テープがあり、池に流れ込む石ころだらけの枯れ沢を渡ると、ま
もなく堰堤に出ることができた。堰堤下にはパイプで出来た関電の仮橋がある。その先
には林道終端だ。ホッと一息ついてお茶をゴクリ。池を振り返ると今さっきまで居た鉄
塔がえらく高い所にあった。(笑) 

 人工林の中の林道は真っ直ぐ東へ続く。なんの見どころもない植林帯の中で、唯一記
すとしたら神社の祠があったことくらいか。社頭のこじんまりした石燈籠には文化年間
の製作だと刻まれているから、ほぼ200年前だ。おそらく愛宕社と思われるが、林道
が出来る前には古い間道でもあったのだろうか。祠からはすぐに民家の屋根が見え、古
い梅の木が白い花を咲かせているのだった。

村道出合地点から振り返る

 JR草野駅はそこから10分もかからない。ところが駅の手前まで近づくと、折悪し
く列車接近の案内ミュージックが流れだした。生憎、上りホームへは跨線橋を渡らねば
ならない。まだ時刻は早いし急ぐ旅でもないわ。と列車を逃がす言い訳をする。電車の
姿が消えたプラットホームでダイヤを確かめると、次は30分後にしか来ないのだった。
(^^;

 日溜まりベンチで虚空蔵山北尾根の山並みを眺めていると、虚空蔵山の頂に後から登
って来た夫婦らしいペアもやってきた。やっぱり草野へ降りてきたらしい。電車に乗っ
たのはそのペアと小生、そして、幼女をおぶった父親の5人であった。

 藍本駅前の駐車場を出てまだ2時半である。当然地道で帰ることにして、ちょっと千
丈寺山の南の登山口である北浦天満宮付近を覗いてやろう。というわけで、ドライブが
てら三田市の北浦天満宮にやってきたが、大分以前に山から降りてきた時とは当然様変
わりしている。というか、林道工事で踏み跡そのものが見当たらない。多分、建設中の
林道を遡った途中に山道に入る手がかりが残っているのだろうが、立入禁止の標識もあ
ることとてそこまで確かめはしなかった。帰宅してネットで調べるとやはりそうらしい。
正直、「あんまり触ってほしくないなあ」とは無責任な部外者の感想である。聞き流し
ていただきたい。(^^;

 久しぶりに訪れた虚空蔵山。やっぱりこの時期が似合ういい山でした。



【タイムチャート】
08:10自宅発
10:00〜10:10JR藍本駅前駐車場(駐車地)
10:30表参道登山口
10:50〜10:55虚空蔵堂
11:02〜11:03役行者像
11:28〜12:18虚空蔵山(592m)(昼食)
12:25陶の郷分岐
12:38〜12:40高圧鉄塔(丹南線bP4)の鞍部
12:55高圧鉄塔(丹南線bP5)
13:05〜13:17尾根道出合
13:20高圧鉄塔(丹南線bP6)
13:35
13:38〜13:40林道終点
13:52村道出合
13:58JR草野駅



虚空蔵山のデータ
【所在地】兵庫県篠山市・三田市
【標高】592m
【備考】
兵庫県三田市と篠山市を分ける、所謂摂丹国境に位置し、
JR線からも近い為、人気の山です。西側の山麓は有名
な立杭焼の里です。東西南北から登路がありますが、J
R利用の場合は福知山線の藍本駅もしくは草野駅が便利
です。
【参考】
2.5万図『藍本』



虚空蔵山山頂から東南方面。右に遠く六甲連山、中央に羽束山、
千丈寺山の間に大船山が覗き、手前にやや首をかしげた焼山も見える

■虚空蔵山GPS軌跡   表参道コースから草野コースの組合わせ
(罫線は10秒=約300m国土地理院電子地図サービス、フリーソフト『カシミール』を利用しました)

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