岩神社から攻める烏ヶ岳

行者山山頂にて。役行者の祠は崩壊していた
平成25年 1月20日(日)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】別掲


 猪鍋オフ、明けて二日目は三田の烏ヶ岳へ登る。烏ヶ岳には過去数度お邪魔しているが、
いずれもナナマツの森からのアプローチ。今回は西から烏ヶ岳南尾根の鞍部へ登り、尾根
沿いに山頂へ。北の行者山から『展望の道』で下り、ついでに妙見山に寄っていくという
趣向である。

 一泊した渓谷の森公園から県道を南下、一旦、猪名川町に出て三田方面へ西進する。羽
束山の麓、木器の集落を抜けて県道37号線を更に西に行くと、切詰峠を過ぎた辺りに市
之瀬公会堂へ入る一車線幅の生活道がある。散在する農家の間を200mも行くと、獣除
けのネットと通行止兼用のゲートが現れて、岩神社の鳥居と公会堂の建物が左に見える。
公会堂といっても要は集会所だが、車は建物の前に2、3台は置けるだろう。ゲートを開
けて数日前の雪で濡れた落ち葉が折り重なる林道を行く。左手は2m程度の幅を持つ浅い
川(武庫川の支流山田川)で、地形図を確かめると水源は溜め池らしい。歩いている道は
その管理道でもあるようだ。吐く息は真っ白だが、風がなくて意外に暖かく、すぐに皆さ
ん上着を脱ぐことになった。
岩神社前の市之瀬公会堂。右の道がアプローチ

 数百mも進んだだろうか。左に池を見てしばらくすると右にゲートと鉄条網で閉鎖され
た道が現れた。これが烏ヶ岳の南の鞍部へと伸びる谷に沿ってつけられた道らしい。ここ
まで大した登りはなく植林ながらアベマキやコナラが多い雑木林だ。もう一つ上流にある
池の、波紋も無い青い水面を木の間隠れにやや遠くに眺めつつ、幅広の道からようやく山
道らしくなった小道は傾斜を増していく。鋭い棘のあるモミジイチゴや枯れ木がややうる
さいが総じて歩きやすい。時折古いテープが見つかるが、中には幹が太って巻き込まれた
ものもあり、かなり年代物のようである。

左方向の鞍部に向かって明るい雑木林を行く

 胸突き八丁になってきた。ディーゼル発動機だろうか何か古い機械が放置してある。や
や左に方向を変えながら堆積した落ち葉と、ガラガラした浮石が多く歩きにくい斜面をこ
なしていく。立ち枯れした雑木の幹は脆く、握った手に無意識に体重をかけると根元から
折れて危ない。足元にも手元にも注意しながらも額に汗が滲む頃、ようやく鞍部に登りつ
く。先人のごく小さな私製プレートがある。マジックで南は『切詰』、北は『烏ヶ岳』と
表示がある。烏ヶ岳も急峻だが、南峰もかなりのものでこれで霧でも流れれば、痩せた松
の木と相まってさながら南画の世界である。小休止して北の烏ヶ岳の山頂を目指す。まだ
山頂まで約100mの標高差がある。露岩の多い尾根だが、やや赤っぽい岩は適当に風化
しフリクションもあって滑る気遣いはない。その露岩の一つに登ると、雑木越しに西国番
外札所の花山院が建つ菩提山や清水山方面が広がってくる。眺めていると冷えた空気が心
地良く、適度に熱気を冷ましてくれる。結構傾斜はきついがお蔭でそれほど息を切らすま
でもなく、ほどなく細い雑木に囲まれた狭い烏ヶ岳の山頂に到着する。日の射さない北斜
面のくぼみに僅かに雪が残るけれど、昨日の母子の雪の量に比べれば、同じ三田市内なの
かと思ってしまう。(笑)

 我々以外誰もいない。というか結局、今日も昨日も誰にも遭わなかったのだった。(笑)
北側に高みがなくなったせいか、北風が一気に強くなる。展望もないのでほんの少し立ち
休憩しただけで北に向かう。ここからは一般のハイキングコースで、小さな鞍部にある金
比羅道へ出る急坂道を分けて行者山はすぐそこ。数年前には健在だった役行者の祠もバラ
バラになって放置されている。その前の猫の額ほどの広場は風がなく暖かい。ここで期せ
ずしてお握りタイムとなる。前夜の宿泊先、渓谷の森のロッジで女性陣に作ってもらった
お握りが美味い。

 下山はさらに北へ『見晴らしの道』経由。時々顔を見せる大船山が大きい。よく整備さ
れた山道をとっとと下れば七々松新池の畔で、吊橋を渡れば高平ナナマツの森の中心部だ。

 ちょっとお昼まで時間があるので、ここから北へ妙見山へ寄って行こうということにな
る。地形図でいうと、ナナマツの森の北、鳥居マークが記されたCa310mの山である。
しばらく北東へ遊歩道をたどり、右手に小山の繁み沿いになった頃、先頭はおもむろに山
肌にとりついた。「?」と訝しむも、5mも小枝を払って登るといい道が現れた。ショー
トカットしたようだ。現れた道は昔ながらのものらしく、ゆるゆると小山の山すそを辿る
と、小山と妙見山の間の小さな峠へと我々を誘う。そこには古い木組の小屋に木の卒塔婆
と六地蔵が立つ。江戸時代末期のものらしい六地蔵のお顔を覗くと、それらはまことに素
朴なもので、「作右衛門」などと奉納した人の名が彫られているのをみると、近在のゆと
りのある農家の主が地元の石工に彫らせたものであろう。

素朴な六地蔵が並ぶ

 我々はここからほぼ東方向に当たる妙見山へ上がる。標高差は40mほどだ。道はない
が藪はなくどこでも歩ける。適当に登りよい所を見つけて上がって行くと、葉を落とした
林の隙間を通して、北側に上槻瀬の奥の民家が見えてくるようになる。すると大垣布に似
た赤い布が北から上がってきているではないか。但し、そちらも大した道はないようであ
る。(笑)

 やや南に方向を振ると妙見山の山頂で露岩が幾つかごろりとある。周囲がぐるりと一段
削られていて、どうも曲輪の跡のように見受けたが、果たして、上槻瀬砦があったのだと
いう。確かに、三田から篠山へ抜ける街道筋を扼するには格好の場所ではある。

 妙見神社は山頂のすぐ下にあり、小ぶりだがそれなりの建物に鎮座していて、ここから
は参道が遊歩道を兼ねて里へ下りている。途中から大船山と『つくしの里』が俯瞰できる
場所がある。砦の守備兵もこの辺りから監視していたのだろうか?そんな空想に耽りなが
らジグザグの急坂を下れば、すぐに里に出て、時間は正午少し前。ブラブラ行けば『つく
しの里』で”つくしうどん”を食べるに丁度いい時間であった。

 二日にわたるボタン鍋オフ。今年も無事、大団円。毎年セットアップしていただく多く
の皆さんのご尽力に感謝です。

妙見神社参道から上槻瀬の里
手前右に『つくしの里』の建物、奥は大船山



【タイムチャート】
08:48切詰峠西
08:53岩神社(市之瀬公会堂前)
09:00〜09:02林道分岐(鉄条網)
09:30〜09:35烏ヶ岳南の鞍部
10:06〜10:10烏ヶ岳(528.3m 三等三角点『』)
10:20〜10:35行者山(Ca500m)
11:00七々松新池
11:10妙見山西の取付き
11:15〜11:20六地蔵
11:25〜11:27妙見山(Ca320m)
11:34〜11:35妙見神社
11:44上槻瀬

■同行: 裏人さん、幸さん、高やん、たらちゃん、二輪草さん、ハム太郎さん、
     ひろぴぃさん、水谷さん、もぐさん(五十音順)


烏ヶ岳のデータ
【所在地】兵庫県三田市
【標高】528.3m (三等三角点)
【備考】
羽束川が作った狭い野を挟んで、大舟山の西に相対する
里山で、地形図上は無名峰です。三田市が整備した麓の
「高平ナナマツの森」は、昔はどこでも見られた里山の
風景が良く保存されています。四季を通じてファミリー
ハイクには最適でしょう。最寄はJR三田駅から籠坊行
の神姫バスで上槻瀬公民館前です。
【参考】
2.5万図『木津』



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