観音峯山〜梅雨晴れにまたまたベニシャク
観音峯の展望台より梅雨晴れの大峰主稜

平成25年 6月16日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 6月の山の会の定例会。久々の奈良は天川村の観音峯である。大峰の前衛峰というより
は洞川の裏山という感じだが、途中の展望地からは正面の弥山や稲村ヶ岳など遮るものの
ない展望でしばしば大峰の山々にはまるきっかけとなる。最近は貴重種のベニバナヤマシ
ャクヤクの自生地としての方が有名で、開花時期には多くの登山客が訪れる。今日は我々
もその「ベニシャク」目当ての山行である。

 集合は虻トンネル東口の観音峯登山口の駐車場。9時集合ということでその15分前に
到着したところ、既に参加の皆さんは全員そろっている。というより驚いたのはもう駐車
場が満杯だったことだ。過去数回この時期に訪れているが、年々、訪れる人が増えるよう
である。(^^;

 何とか駐車位置を確保し、山上川に架かる吊り橋を渡って緑滴る林の中に入る。道標に
従ってよく整備された登山道を登っていく。昨日の雨で少ししっとりした山の中、植物も
生気を取り戻したように見える。しかしその分湿度が高くて、人間は何度も額の汗を拭わ
なくてはならない。コアジサイはやや盛りを過ぎて、花に顔を近づければかすかに芳香が
残っている程度だが、フタリシズカはまだ蕾が多い。

 『観音の水』で口を湿した後、ゆっくりジグザグに高度を上げ、登山道からほんの少し
逸れると最初の展望台だ。木々が成長して視界が若干狭められたものの、目の前には白倉
谷を隔てた緑濃い弥山などの山並みがある。

 一息入れて再び登山道に戻る。杉檜林から自然林に変わって、昔、何かの建物があった
かような平坦地を過ぎると、そろそろ石灰石の石クレが地面に目立ち始める。ハウチワカ
エデの林の下に鳥居が見えれば神社跡。石段の下に立派な休憩舎がある。石とモミジの自
然の取り合わせ。日本庭園の趣があるので秋の紅葉はさぞかしと思われるが、いまだ秋真
っ盛りに訪れたことがない。同行の皆さんもそうらしい。秋は他に誘惑も多いからしよう
がないか。
緑に染まりそうな神社跡

 石灰石の土壌は花の種類が豊富といわれるが、この辺りにはヤマシャクヤクが多い。小
さなソラマメの鞘を三つドッキングさせたような緑色の鞘が、夏を過ぎると割れて、中の
種子が赤と黒のコントラストを見せる。花も綺麗だがこの姿もなかなか捨て難いものであ
る。

 『観音の岩屋』は以前見物したことがあるので今回もパス。鬱蒼とした林の中、トラバ
ース気味に進んで大きく右に迂回して山肌に取り付く。急斜面をつづら折れで登る。何度
も汗をぬぐって林を抜けるとロープ場。これを抜けると石碑の展望台だとやれやれと思っ
た時である。早くも道横に目当てのベニシャクが花開いているのが目に入る。今年も開花
時期にドンピシャだったようだ。(^_^)~~

 昨日来の雨で拭われた山々の緑が濃い。展望台の石碑の周りは思い思いにそんな景色を
楽しんでいる人で鈴なり。石碑には望める山々の名前が彫られているので初心者でも山の
名がすぐ分かって嬉しい。山上ヶ岳、大日山、稲村ヶ岳、バリゴヤノ頭、鉄山、弥山、頂
仙岳。天和山、護摩壇山、金剛・葛城とズラリ。

 この辺りになぜか蔓延っていたジキタリス。あんまり目立たないと思ったら、ボランテ
ィアの人達が処分しているらしい。キツネノテブクロなる別名もあって面白い花を咲かせ
るが、如何せん帰化植物である。

 ベニシャクは展望台より奥、東寄りの尾根に多い。登山道はロープで仕切られている。
前述のジキタリスといい、こんな地元の保護のおかげで個体数もかなり増えている様子。
緑の中のあちこちに柔らかいピンク色が目立つ。その花を間近に見る為に、ロープのない
所で既にできてしまった踏み跡を辿るのは仕方がなかろうが、踏み跡から逸脱するのは若
い苗が踏まれてしまうので遠慮したほうがいいだろう。

現れましたミスベニシャクその1

現れましたミスベニシャクその2

 背を越える熊笹がはびこっていたのも今は昔。すぐに1285mピークの斜面。意外と
この斜面がしんどい。雑木林の中は初夏を感じさせるエゾハルゼミの鳴き声が降ってくる。
斜面をジグザグに登ると観音峯の南尾根。もう三角点まで大した登りはない。普段でも土
がやや湿った感じがするが、昨日の雨もあって余計に湿った感じがある。イナバウアーの
木を過ぎ、コハウチワカエデの林の下を抜けると、広い尾根沿いにやや登った小広い部分
に観音峯の三角点。ここで三々五々、適当に座って食事とする。

清々しい観音峯山登山道の自然林

 座っているとひんやりとして寒いくらいだ。気温は18℃位だったと思う。今日もざる
そば。氷も持参したけれど、カップヌードルでも良かったかも。(笑) それよりここはど
こから飛んでくるのか虫が多い。前回来た時も山友さんが瞼を刺されて腫れたのを思い出
す。(帰宅して当時の山日記をみたら自分も腕を数箇所刺されていた。今回も翌日両腕が
二箇所刺されていて一週間ほど痒かった。)(^^;

 北は植林帯、南は自然林の尾根筋を法力峠に向かって更に東へ進む。この先、峠までや
や大きなアップダウンがあって三つほどピークを越えなければならない。それもあってこ
の先は歩く人も少なくなる。蕾をつけたバイケイソウも現れて、大峰に来た実感が湧く。

 三ツ塚は三角点でも標高点ピークでもないが、エアリアマップに名前があり、今日のコ
ースで最も標高が高い。しかし、山名プレートがなければ知らずに通り過ぎてしまうよう
な地味な高みである。山名板とともに地面には碑伝が一枚あるのは、久しぶりに南側が開
けて、稲村ヶ岳と大日山がすぐそこに見えるからだろう。立ち休憩で一息入れる。

鈴なりだったベニドウダンツツジ

 前回はここを北に向かうバリエーションルートを採ったが今回は東の法力峠へのルート。
さっきまでに比べると尾根が狭まり、石や木の根が飛び出したりしていて少し奥駈道に近
い感じがする。全く迷いようのない明快な踏み跡もあって安心して歩ける。しかし、残念
ながら展望を楽しめる箇所はあまりない。時折、稲村ヶ岳方面が顔を出すくらいなのだが、
一箇所北側の見晴しが良い箇所がある。大天井ヶ岳、吉野方面の四寸岩山や青根が峰、そ
して五条から橿原方面の市街地まで見渡せたのは意外であった。やや急な斜面を木立に助
けられながら下ると、そこは何度も通り過ぎて見慣れた法力峠である。

 峠からは稲村ヶ岳の登山道。村の農道のような広い道である。急坂がないがその分延々
と距離が長い。しかもこの付近は植林帯で面白味もない。ズンズン下るのみだ。それでも
この時季、コアジサイやクサアジサイ、サワギクが咲いていくらか無聊を慰めてくれる。

 五代松鍾乳洞との分岐に着いた時は正直ほっとする。しかし、母子堂でゴールとなるい
つもとは違って、今日は虻トンネルまで下らねばならない。まだまだ先は長いのだ。(笑)
なるべく車道歩きは避けようということで、分岐は左側の鍾乳洞方面へと進む。この道は
二回目だ。左横に続く黒いパイプは取水パイプのようで、時折ゴボゴボという音と同時に
パイプが振動するのが面白い。道が西に向かうようになると、植林を抜けて湿った自然林。
ゴツゴツした露岩で歩きにくい。道端にデーンと大きな岩があって、立派なプレートが嵌
め込まれている。五代松鍾乳洞の記念のプレートらしい。レリーフの人が五代松さんか。
そこからまもなく、監獄のような鉄柵で囲われた鍾乳洞の出入口。中を覗くと照明がつい
ていて誰かが入洞しているようである。正規の入口はここではなく、階段を下って西に行
った所にあるもう一つの出入口で、その前に受付の小屋がある。驚いたことにその先には
東屋風のモノレールの駅舎があって、見学者は下からモノレールに乗ってここまで上がっ
て来れるらしい。うーん、至れり尽くせりだなあ。(笑)

 モノレールと別れて更に西に行く。再び現れたモノレールの軌道(ごろごろ水近くにあ
る宗教施設のものらしい)を跨ぐと山上へと伸びる参道を横切る。一本歯の高下駄が供え
られてあり、役行者の像が鎮座する。

 車の音が大きくなる。下の車道と合流するとゴマ豆腐の店はまもなく。入口の両脇にえ
もいわれぬ芳香のする花が植えられた大きな鉢がある。モクレン科の花のようだが、店の
女性も名を忘れたらしい。(帰宅して調べるとカラタネオガタマだった。) そんなことで
わいわい言っているうちに用意ができた。お茶つき300円のゴマ豆腐。もっちりして美
味かった。

 舗装路は暑い。洞川の旅館街を抜けてようやく洞川温泉センターに到着。公衆トイレの
横にみたらい渓谷の遊歩道入口があった。案内がないので少々分かりにくい。もう少し工
夫が必要だろう。遊歩道、最初は温泉センターの建物と川の隙間の路地という感じで、建
物の裏へ出てやっと杉林の下となり涼しくなる。フーッ。

 木道を伝うと杉林の向こうに鳥居がある。洞川の鬼門を護る神社だそうな。所々、天川
に流れ込む支流を金属網の橋で渡っていく。大岩が出てきたりと意外に変化がある。

 やがて川の向こう岸を走っていた県道が赤い橋でこちら側にやってくると、県道との出
合。後は600mばかりの車道歩きだ。思いのほか車の往来が激しい。余計に暑い。虻ト
ンネルが見えた時は正直安堵した。全行程歩数は2万5千歩だったそうだ。よく歩いたも
のだ。(^^; 幹事のHさん、参加の皆さんお疲れ様でした。

 ベニシャクづくしの掉尾を飾る観音峯のベニシャク。それにしても、南丹市といい、北
摂の某所といい、今年は本当にゲップがでるほど沢山のベニシャクを見させてもらいまし
た。



【タイムチャート】
07:00千里中央(集合地)
08:40〜08:50虻トンネル東口駐車場
09:17〜09:18展望台
09:45〜09:55神社跡の休憩舎
10:25〜10:38石碑のある展望台
10:551,285P
11:10〜11:40観音峯(1,347.6m(三等三角点『観音峯』))
12:11〜12:18三ツ塚(Ca1,380m)
13:10〜13:12法力峠
13:50分岐
14:19稲村ヶ岳登山口

■同行 高やんさん、たらちゃん、二輪草さん夫妻、ハム太郎さん、水谷さん(五十音順)


 観音峯山のデータ
【所在地】奈良県吉野郡天川村
【標高】1,252.7m(二等三角点)
【備考】
大峰山脈の北部、山上ヶ岳の西側の支脈に属する山です。
当山中の岩屋で、南朝の後村上天皇の夢枕に観音菩薩が
立ったことから命名されたと云われます。中腹の観音平
からは、稲村ヶ岳、弥山、八経ヶ岳、頂仙岳等、大峰北
部の山々から金剛、葛城、更に紀北の護摩檀山迄望める
大パノラマが展開します。
【参考】
2.5万図『弥山』、『洞川』



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