低山なるも侮り難し平屋富士

平屋大橋から平屋富士
平成25年 4月25日(木)
【天候】快晴
【同行】別掲


 南丹市の美山町にある道の駅「ふれあい広場」は休日ともなると、バイク野郎やファミ
リードライブの人達で賑わう場所だ。我々も芦生など、この辺りの山に登る時には良く利
用させてもらっている。そのふれあい広場から東を見るとおにぎり形の山があり、その背
後に延びる山並みが目に付く。平屋富士からホサビ山にかけての山並みである。先達の幾
つかのHPでなかなかいいとの情報を得て、かねて気になっていた山だが、Mさんが企画
を立てたのでこれ幸いと出かけてみた。どうしてどうして低山とはいえ侮れず。北方向へ
下山した後半は踏み跡もなくなり、なかなかワイルドな山歩き。おかげで今回も風呂の湯
で擦過傷が沁み、おまけに打ち身の跡という付録ももらった山行きと相成りました。(笑)

 諸般の事情でちょっと遅い出発となって、基点の道の駅に着いたのが10時半過ぎだっ
たか。下山予定の内久保に1台をデポして、戻ってきたのは11時前だ。準備して道の駅
の東口から美山川に架かる赤い鉄橋(平屋大橋)を渡る。東にわだかまるのが平屋富士。
順々に高度を上げて鉄塔の立つ奥の山が望める。長尾交差点で左折して東に向かう。本来
は美山川沿いに行くべきだったようで、少々大回りしたが丁度いい足慣らしだと負け惜し
み。(笑)

 野添谷川に架かる赤い橋が取付きの平屋神社の目印である。下を覗くと、水量は普通と
思えるのになぜか野添谷川の流れが茶褐色に濁っている。上流で工事でもしているのだろ
うか? 石段を上がると、無人と思われた境内から大勢の人の姿がある。地元の老人会の
方々がグラウンドゴルフに興じているのだった。我々が大阪から来たと知るや驚いた様子
であったが、平屋富士からホサビ山へ向かうと聞くと、本殿の左側に道があると親切に教
えてくれる。なるほど本殿に向かって左手の杉桧林に沢沿いのいい道がついている。

取付きのある平屋神社。社殿向かって左の小道に踏み込む

 先達のHPには笹やぶを少し突っ切るといい尾根道になるとあったように記憶するが、
作業道は右の高みを巻きながら水平に続く。とりあえず道なりに詰めてみると、徐々に左
右の斜面が迫りだし険しくなってくる。気温は19℃くらい。湿った沢道はもう少し気温
が上がればヒルが這い出てきそうな感じだ。風がなく一気に汗が噴き出す。足元も浮石な
どで悪くなってきており、前方も大分詰まって来たので、もうそろそろ尾根に上がっても
よかろうということになる。左側の斜面が登り易そう。鹿か何かが上がった形跡もあるの
で、逆トラバース気味にそれを辿れば植林用なのか細く薄い踏み跡が出て、立ち木に捕ま
って尾根に上がると予想通りいい踏み跡がある。

 まずは一段落。額の汗をぬぐって水分の補給をした後で再び歩きはじめる。松や雑木の
枯葉の詰まる尾根は次第に広くなり、別の大きな尾根の斜面に吸収される。額の汗を何度
もぬぐわねばならないほどなかなかの急傾斜である。ポツンと目立つ満開のコバノミツバ
ツツジがあって、そこで左(北東)からの尾根に乗ってようやく傾斜は緩む。南東から東に
方向を変えた所が467m標高点。明るいけれど倒木が転がる何の変哲もない所である。

 この尾根は急坂と平坦を繰り返しながら高度を上げていくようだ。また傾斜が増してき
たが、今度は親切にもトラロープが設置されている。こんな箇所がもう一ヶ所あって、シ
ャリバテにはきつい。さっき正午を知らせるサイレンが響いていたなと時計を見るともう
12時半だ。山頂までもう少しと気合を入れる。

 モミの木が目立つようになってきたと思ったら、上の方に白い標識が目に留まった。地
元の平屋小学校の登頂記念の標識でそこが平屋富士の山頂なのだった。

平屋富士山頂。ちょっとした尾根のコブだ

平屋富士山頂から西方向、春爛漫の平屋地区を
見下ろす。美山川に赤い平屋大橋が見える

 標識には昭和63年とあるのでもう四半世紀も前である。ここまで小学生が登るほど明
快な登山道とはいえなかったから、もう登山行事は行われなくなったのだろうか。あまり
展望はないが、ただ西南の方向だけ開けており、美山川沿いに平屋、野添の集落やその周
りの水田、道の駅からその前の赤い鉄橋まで手に取るように眺められる。そして何より明
るいのが良い。野鳥が鳴き交わす中で昼食。目の前は鈴なりのアセビ。贅沢なひと時であ
る。

 平屋富士は厳密に言えば尾根の中間のコブみたいなもの。一旦下って登り返すと平屋富
士より高くなり尾根もはっきりしてくる。その尾根が大きく円錐状に陥没したような箇所
がある。炭化した土があるので炭焼き窯跡のような雰囲気もあるが、炭焼き窯が稜線上に
作られているのは、ついぞ見たことがない。果たして真実やいかに!

 大阪近辺ではとっくに咲き終わったミツバツツジがここではようやく盛りである。北側
の木立が透けていて、美山川が流れの向きを変え、その向こう岸に大きな集落が見える。
目を凝らすと家屋のほとんどが茅葺屋根であることから、北集落であることがわかる。

 ちょっとしたピークだった。ホサビ山まで50分の私製プレートを見かける。ここでち
ょっと予定が押し気味だったこともあってホサビ山往復はカットしようということになり、
手前の750mのジャンクションピークからピストンせずに直接北東尾根に向かうことに
予定を変更する。これで小一時間の節約になろうか。

 尾根はCa740mのピークからやや東に方向を変える。この辺りは尾根も細まり、自然
林の極楽尾根だ。左右はくすんだ色一色だった木々の芽が伸び始めて、枝の先端が柔らか
い薄黄緑色を呈している。今の時季一日ごとに景色を変えることだろう。右手にようやく
ホサビ山らしき山影を見る。

ジャンクションピークへの尾根の斜面に
広がるいい感じの雑木林

 その尾根が短いがいきなり荒々しい馬の背の岩尾根になる。ことに左側は絶壁に近い切
れ落ち方だ。そこにイワウチワやイワカガミがへばりついている。ちょっと緊張しながら
抜けると、その先の高みがCa750mのジャンクションピークである。山頂は背の低いア
セビが一面に生えている。その周りは裸地で、ホサビ山側、北東尾根側に鉄塔があるから
関電の管理道のようである。ここはアセビの他に潅木もないので展望もよい。見放題に山
に囲まれているけれど、いかんせん土地勘がない。頭巾山も芦生の山々も見えているのだ
ろうが、分かるのは悲しいかなホサビ山以外にはせいぜい西の大岩山、北の白尾山と尖っ
た八ヶ峰くらいである。(^^;
アセビ咲くジャンクションピーク

 下山は前述のとおりホサビ山は通らず、地形図を見て、ジャンクションピークから北東
側の尾根を歩き、696m標高点手前にある点線路を下ることにする。果たして地形図通
り点線路があるかは分らなかったが、関電の高圧線が横切っており、多分、管理道がある
だろうと踏んでのことである。アセビの繁みを抜けてコンパスを確認して696mの標高
点方向を目指す。関電巡視道特有の黒いプラ階段がある。明瞭な尾根がほぼ水平に伸びる。
非常に歩きよい。まもなく高圧鉄塔『大飯幹線』bV0の直下に出る。大飯幹線?おお、
原発の電気か。

ジャンクションピーク北尾根にある大飯幹線bV0から
茅葺の里の北地区。白尾山から八ヶ峰の山並み

 更に歩を進めるとやや下り基調となって、696m標高点100m位手前だろうか。植
生が雑木林から植林に変化し始めた辺りで関電の火の用心マークが現れた。地形図通りこ
こから下るようだ。しめしめ、これで楽に下りられるとほくそ笑んだのも束の間、あれ、
踏み跡がないではないか。しかもかなりの激斜面である。しかし辺りを探すうちに落ち葉
に隠れた薄い踏み跡があるのが分る。すると黒いプラ階段も土に半分埋もれて見つかった。
ホッと一息。後は管理道が所謂、盲腸線(片道だけの行き止まり)でないことを祈るのみ
だ。(^^;
北尾根の火の用心標識から下降する
落ち葉で巡視道はわかりづらい

 ジグザグに付けられた管理道がなければ、この斜面下りはきつかろう。ぐんぐん下って
また雑木林。プラ階段は完全に枯葉に埋まってしまっている。普通、関電の管路道はよく
手入れされているはずなのだが、この辺りはヘリポートもある(現に平屋富士からの尾根
筋でヘリの爆音を聞いた)ので手抜きしているのかもなあ、なんて軽口をたたくうちに
69の高圧鉄塔下に出る。そこからは山腹の所謂、へつり道。歩きいいけれど標高がほと
んど下がらない。途中に大きなカツラが一本そびえる、やや暗い谷の源頭部があった。上
手くすれば来年くらい花がみられるかなという若いヤマシャクヤクが数本踏み跡沿いに見
つかる。

 再び尾根に出た。隣の尾根に出たらしい。また高圧鉄塔があり、このまま順調にいけば
と尾根沿いに進む。すると真新しい火の用心マークが見つかった後でパタリと踏み跡が消
えた。勿論関電のプラ階段も現れない。狐につままれたようである。ただ、火の用心標識
付近で赤い残置テープを一つ確認していた。尾根右の植林帯に誘導したいかのようだった
が、進路は尾根上を維持することにして、そのまま行ける所まで進むことにする。

 さっきから下から湧いてくるように聞こえ始めていた川の流れの音が、一段と大きくな
ってきた。カエルの鳴き声も聞こえてくる。立ち木にすがりながらの激斜面だが、藪でな
いので助かる。不安なのは下降点が美山川の流れが屈曲する南側だから、果たして崖にな
ってはいないかということである。ただ、今居る尾根の左(南側)は広い感じの植林の谷な
ので、その時は谷へ逃げられるという安心感はある。兎に角どんどん足場を見つけて下っ
ていくと、先を進んでいたKさんが、意外や下に林道があるという。そうか、これで大丈
夫と思った矢先だ。案の定、もう少しという所で阻まれた。林道によくあるパターン。切
通しの崖だったのである。止む無く左の谷方向に少しトラバースするも、こちらも2、3
mはありそうな、降りるのが難しい切通しである。(^^;

 仕様がないので急斜面を登り返すしかないのであるが、これがまことにつらい。(笑) 
水平距離で20mほど戻り、下り易い箇所を選んで再び谷へ斜面を下りていくと、今度は
切通しがない。安堵。が、油断大敵だった。下の林道まで最後の高さ1mばかりを一気に
行こうとした。で水平面に着地した正にその時、脚に踏ん張りが効かないことに気付いた。
トントンとたたらを踏んだ挙句、最後は膝が折れて手と頭で地球を受け止めてしまう仕儀
となったのだった。(xヘx;) 痛っ!

ここの左側の急斜面を下ってきたが、
こんないい道の起点とどこで別れたのやら...

 幸い少し湿気を含んだダートだったので、右前額部に少し痛身が残る程度で大事には至
らず。もし舗装路だったらヤバかったなあ。ほっと胸を撫で下ろす小生である。(^^;

 しかし、降下地点から10mも遡った所にいい山道があった。どこでどう間違ってこれ
に乗れなかったのやら。そうしたらこんな痛い目に遭わずに済んだのに...。本当に狐
につままれたようである。

 地形図にない林道である。最初に降りようとした所は高さ5mはありそうな切通しで、
その先も下りるのが困難な個所が続いている。地形図で見ても谷に降りる以外に方法がな
かっただろう。500mばかり美山川(由良川)を遡るとやがて舗装路となり、辺りは別荘
分譲地の様相を見せる。分譲地の石垣の上には家はなく、道端に水仙が誰にも愛でられる
ことなく咲き乱れているばかり。内久保造林組合のゲートがある大滝橋を渡った先のR1
62には『美山光の郷』なる石碑まである。皮肉にも各地に残るバブル崩壊の遺跡である。

 歩いてきた山並みにさっきまで居た鉄塔が見える。下から見ても結構急峻な尾根である。
一寸余韻に浸りながら、車をデポした内久保に着いたのは16時過ぎ。700mばかりの
アスファルト歩きであった。

 低山侮るべからず。それを地で行く平屋富士。諸般の事情でスタートが遅くなって、ホ
サビ山をカットしたが、それも含めてまたやって来たい。そんな思いにさせる美山の手垢
ついていない山でした。



■今回のルートはこちら
【タイムチャート】
09:00千里中央(集合地)
10:55〜11:03ふれあい広場(駐車地)
11:15平屋神社
11:41〜11:43467m標高点西側の尾根
12:00〜12:06467m標高点
12:30〜12:55平屋富士(Ca570m)(昼食)
13:22〜13:28Ca710mピーク
13:38〜13:40Ca740mピーク
14:10〜14:26ホサビ山北西のCa750mジャンクションピーク
14:29高圧鉄塔(大飯幹線bV0)
14:35火の用心マーク(尾根下降点)
14:48〜14:53高圧鉄塔(大飯幹線bU9)
15:11高圧鉄塔(大飯幹線bU8)
15:45林道始端
16:10内久保バス停横(車デポ地)

■同行: 北山さん、呉春さん、水谷さん(五十音順)


平屋富士のデータ
【所在地】京都府南丹市(旧美山町)
【標高】Ca570m
【備考】
美山町の『萱葺の里』で人気の北地区の南に盛り上がる
ホサビ山から西に延びる尾根の途中、標高570m辺り
で地形図の載らない程度に小さく盛り上がった山です。
尾根の南北が急峻な為、西の平屋地区から眺めると富士
山形に見えます。雑木に囲まれた山頂部分で視界が広が
るのは西のみですが、美山川沿いに集まる平屋、安掛、
野添地区や田畑が眼下に広がります。登山口は平屋神社
で、低いながらなかなか急峻で骨があります。
【参考】
2.5万図『島』『中』



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