曾孫普賢岳〜伯母峰峠から笙ノ窟尾根 |
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大普賢岳の南にある水太覗や、東側の和佐又の見返り台地から大普賢岳を望むと、恐竜 の背のような急峻な凹凸が見られる。台高と大峰を繋ぐ唯一の尾根である笙ノ窟尾根に属 するこの凹凸は、西から子普賢岳、日本岳(孫普賢岳)、曾孫普賢岳と呼ばれている。急峻 で危険な為、縦走するにはかなりの経験が必要といわれているが、鳥羽口だけでもちょっ と覗いてみようという企画が上がった。高所に弱いが怖いもの見たさ半分、小生もおずお ず手を上げた。生憎、梅雨明けしたはずの空は不安定で、二度までも雷雨に遭遇したが、 なんとか当初の目的地、曾孫普賢岳は踏むことが出来た。但し、筆記道具は忘れ、雷雨に カメラはザックの中。更にザックにはザックカバー。Tちゃんの画像を一部拝借している ことをお断りしておく。戻り梅雨なのか前日までのかんかん照りが嘘のようだ。上空に寒気が入ってあちこちで にわか雨があるという予報。大峰方面に向かう途中で見る奈良と京都の境目付近は、雨が 降っているらしく灰色にかすんでいる。 連休初日の影響か、予想外に一般道が混んでいたところへ持ってきて、助手席シートベ ルト不着装で警官に呼び止められたりしたので、予定の9:00を大きく過ぎた9:35 頃、ようやく集合場所の和佐又ロッジの駐車場に到着。Tちゃんらはちょっと痺れを切ら せていたんじゃないだろうか。すみません。m(_ _)m 取って返して一旦山を下り、大台ドライブウェイを伯母峰の休憩所前へ移動する。改め てここから出発だ。去年、伯母ヶ峰を探索した際に利用した無線中継所用の管理梯子を再 び登って樹林の中へもぐりこむ。笙ノ窟尾根(七窪尾根)の尾根芯を伯母ヶ峰の時とは逆 に西の方へ向かう。ここは和佐又口から登った時以来二度目の道なのだが、ほとんど覚え ていない。概ね尾根の南側は植林、北側は自然林。すぐに無線中継所の建物が二棟ある横 を過ぎる。この頃だったか、何となく周囲が暗くなってくる。高度1000mは越えてい るはずなのに蒸し暑く、一雨でも来そうな雰囲気がムンムンだ。垣間見える周囲の山々は まだ輪郭がはっきりしているのだが...。
ゆっくり高度を上げていくと分岐を示すテープが現れ、南北二重山稜のような地形の南 側(左)に踏み跡が消えていく。和佐又口への道だ。東屋のある尾根先端へ直降下してい く道だったような記憶がある。 丁度、国道の新伯母峰トンネルの真上あたりで小休止して汗を拭いていた時だったか。 パリパリと葉に当たる雨音が聞こえ始めた。木々が天然の傘になってくれてほとんど肌に 雨粒を感じない。しかし、雨音がザーザーと連続音になると、流石に堪えきれなくなった とみえて、地面の枯葉にも見る見る雨染みが広がり始める。 どうせ夏だし上は半袖シャツ一枚だ。着替えもあるし、着れば暑いのでレインスーツは 持参せず、雨具は今日は傘だけ。ただしカメラは濡れては困るのでザックに入れ、ザック カバーをセット。少し小降りになったのを見計らって前進する。風が出てきたので少し稜 線を外して北側に出た所でついにゴロゴロ雷鳴だ。とたんに雨脚が強くなる。茂った梢の 下で再び様子見。これは途中でエスケープした方が良いかもと皆で胸算用したが、不思議 と稲妻は光らず雷鳴も割りに遠い。10分ほどで空が白くなり雲が切れてなんとなく薄青 い部分が覗き始めた。 斜面のトラバースは濡れた土でズルズルと歩きにくいので、尾根に上がりなおして尾根 芯を忠実に進む。ヒメシャラの白い花があちこちに落ちている。そこに日が差してきた。 まだ小雨が降っているのに所謂、狐の嫁入りである。空気が入れ替わって少し湿度が弱ま ったように感じられる。ガスが上がってきて流れていく。
尾根を下っていく。多分、和佐又山の上の、石碑の建つ見晴らし台地に出るのだろうと思 われるが...。この辺りが笙ノ窟尾根と伯母ヶ峰・和佐又道との分岐らしい。雨が降り 続けばここでエスケープしていたところなのであるが、幸か不幸か?雨が上がった。とい うわけで折角なので笙ノ窟尾根をもう少し辿ってみることに衆議一決。 昔は蔓延って進むのに難渋したに違いない笹も今は枯れて、山靴で踏めばポキポキ折れ るほどでいたって歩きやすい。だから尾根のどこでも歩けるが、ちゃんと先達のテープが あるのでそれに従っておく。尾根の中央に大きな岩が鎮座する高みに出た。岩を越えて向 こう側へ出るのが大変だなと思案するまでもなく、左下にちゃんと巻き道がある。いった ん下って登り返すと、あそこまで行けばとりあえず平坦になると思い、そこまで行けばま たその先に登りがあるという逃げ水のようなだらだら尾根になる。ここらの標高はまだ1 300m程度、まだ200mは登らねばならないのだから当然といえば当然なのだが、運 動不足の山ノボラーにとってはまさにボディブローのように徐々にスタミナを消耗させら れる尾根である。(^^;
佐又ロッジの関係者が整備したらしい。帰りはこれを使うとロッジに早く帰れそうだが、 笙ノ窟付近にこんな道があったかな?と少々不信もある。道標を過ぎると尾根は一転、今 までの穏やかさはどこへやら、一気に荒々しさを増して苔むした岩と岩が折り重なり、見 上げるような登りになる。1505m標高点ピークへの急斜面である。時には手足もフル に使わねばならない。まるで浮き出した血管みたいに岩に絡みついた木の根を足がかりに して、比較的登りやすい部分を選びながらジグザグに辿る。普段から湿気が多いためか朽 ちたものが多く、立ち木は当てにならない。そのうちにシャクナゲの低いブッシュが現れ た。これがまた越えにくい。(^^; シャクナゲは枝がねじ曲がりしかも強靭ときているか ら始末に悪いのだ。その上、立ち止るとハエやブヨが払っても払っても寄ってきて耳元で 煩わしい羽音を鳴らす。「エエーイ、しゃらくさいやっちゃ!」いらつくなあ。(^^;;
かりの狭い岩棚状の山頂があった。ガスで展望は遮られるが、目の前に鋭い日本岳があり、 更に高い小普賢岳の向こうに大普賢岳が隠れているのが分かる。大普賢岳ファミリーの揃 い踏み。見とれて足元がお留守になると危険だ。足下は絶壁でスパッと切れ落ちている。 更に眼下、日本岳との間のナイフリッジはすごい。数十pも幅はあるだろうか。シャクナ ゲやトウヒなどの立ち木で隠されてはいるが、今、凄い所の鳥羽口に立っていることは間 違いない。北側の岩壁下部に巻き道があるというが信じられない。(笑) この1505m ピークはファミリーの中で一番低いので曾孫普賢岳と呼ばれている。大普賢岳のメインル ートにある日本岳のコルには1505mと書かれた道標があるが、これはこの標高点のこ とに違いない。明らかに間違いである。目の前の日本岳はまだ40mばかり高い。 登れる所は降りられるというが本当だ。降りは滑って危なくいのではと不安があったが、 案ずるより生むが易しとはこのことだ。狭いテラス上でもし踏みしめた時に滑ったら怪我 は免れないと思われる部分は少々コースを変えてみる。慎重に足場を確かめて何とか下り きって再び道標の前に戻る。と、再び俄かに暗くなったと思ったら一気に強い雨が降り出 した。山頂から降りた後で運が良かった。(^^; 道標に従って南に向かう。大した下りはなく等高線に沿って新しくつけられた雰囲気の ある小道である。傘をさしても歩ける。でも地面が露わな斜面をトラバースする部分は、 使わないと降雨に伴う土砂で早晩踏み跡が消えてしまいそうである。(^^; 200mばか り行くと、あっけなく見覚えある大普賢岳の登山道に出た。先の道標に笙ノ窟とあったか ら笙ノ窟の上にでも出るのかと思ったが、そんなわけないか...。(笑) ここにも新し い道標があった。 メインルートと出合った場所は笙ノ窟のかなり東側。幾つかの窟が並ぶ入り口付近。登 った曾孫普賢岳は丁度指弾の窟の真上付近のようだ。岩ばかりだったはずである。(笑) 適当な所で食事にしようとしていたら、雨だったり適当な場所もなかったり(立ち止ま っていると虫がワンワンとまとわりつくのだ)。そんんこんなでのびのびになってしまい、 結局、和佐又山のコルの床机でということになる。これが雨も止み、青空も出て涼しい風 が吹き通って非常に快適であった。 見返り台地まで戻ると、親たる大普賢岳はもったいぶってまだガスの中であったが、小 普賢岳、日本岳、曾孫普賢岳は三拍子揃って姿を見せてくれた。(冒頭) 些か時間があるので入之波温泉山鳩湯に寄り道する。到着したらまたまたにわか雨であ った。(三連休とも大気が不安定で、むしろ山歩した土曜がこれでも一番安定していたの ではあるまいか) 助手席シートベルト不着装で呼び止められたり、Tちゃんの車に小さな落石があったり と予期せぬアンラッキーが次々に起きた今回。雨にも負けず1505Pへ無事行けたので まあ良しとするか。皆さんご迷惑をかけました。(^_-)
■同行 たらちゃん、ハム太郎さん、水谷さん(五十音順)
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