八ヶ尾山〜旬のヒカゲツツジに会う

八ヶ尾山の西尾根岩稜部のヒカゲツツジと八ヶ尾山西峰
平成25年 4月17日(水)
【天候】曇り
【同行】北山さん、裏人さん


 この時期、里の桜が散り始めると、丹波の山々はタムシバ、ヤマザクラ、ミツバツ
ツジが笑い始めた山肌に彩りを添え、やや遅れてヒカゲツツジが盛りを迎える。なか
でもヒカゲツツジのツツジ類には珍しいクリーム色の花は異彩を放つ。多紀アルプス
周辺の山々の岩場はその名所で名高いが、そんなヒカゲツツジを東多紀アルプスに訪
ねようというKさんの企画に乗って、小生には未踏の八ヶ尾山に訪れてみた。一週間
前には蕾多しの報告を聞いていたが、7、8分咲の絶妙のタイミングに出会えたのは
真にラッキーだった。

 9時きっかりに江坂を出発する。Uさんの急遽の参加で車が2台となったので、1
台を下山地の小原にデポ、スタート地点の筱見四十八滝に戻ったのは11時。先着の
車が1台のみである。

 そそくさと準備をして直ちに出発する。調べてみたら6年ぶりの四十八滝である。
鎖類は新調されているが一帯はほぼ6年前と同じ素朴な姿だ。変に観光地化するより
よっぽどいい。(笑) 手洗滝を手始めに、肩ヶ滝、弁天滝と濡れた岩を伝う。長滝は
登山道の左下。今日は敢えて見に行かずパス。(笑) 続いて鎖場を経てシャレ滝に出、
展望岩で一服する。

 うす暗いゴルジュの中を詰めると一番の高さを誇る大滝で、高さ20mと兵庫登山
会の標識がある。しかし、流量がほとんどないから迫力はない。更に詰めると例の訳
のわからない滝終点の標識。相変わらず標高613.2mとある。何処の標高なのだ
ろう?この辺りはせいぜい500m程度なのだが....。それを左上に見て、谷を右側
に巻いて登ると長い鎖場のある大岩が現れる。岩の左はヒカゲツツジの群落で無数の
花が盛り。見惚れていると足元が危ない。高さ10m足らずをよっこらせと登れば、
一気に高度感が味わえる岩のテラスが左にある。ちょっと寄り道して汗を拭う。南か
らの風が入っているのかモワーッと蒸し暑く、額は汗たらたらだったが、ここまで来
ると下から吹き上げる風が心地よい。岸壁にはへばりつくようにヒカゲツツジ。やっ
ぱりこの花は岩場が似合う。ここまでゆっくり歩いて1時間弱だ。

満開のヒカゲツツジを眺めながら岩登り
新しい鎖が設置されていた

 展望岩から下りて更に流れを遡る。するとごつごつした岩場から一転、周囲はなだ
らかな雑木林だ。下界では桜も終わったというのに、ヤマザクラが赤い芽と同時に花
を咲かせ、まだタムシバの花が白い。雑木たちも芽吹いたばかりだ。鹿が鋭い警戒音
を上げる。だだっ広く下草もないので何処でも歩ける。水の枯れた小沢沿いに進んで
行くと三叉路。『多紀連山ふるさと自然のみち』と書かれた道標が立つ。西に行けば
周回と峠山方面。東方向の道に道標はないが八ヶ尾山方面だ。

四十八滝の源頭台地の三叉路
ガイドはないが奥が八ヶ尾山へのルート

落ち葉の絨毯を踏みながら明るい雑木林を進む

 一面、落ち葉に降り敷かれた中に表土が所々露出した遊歩道っぽい踏み跡がある。
昔、キャンプ場が出来た時、整備してその後放置された道らしい。もう少し先の峠へ
の登りには、コンクリート擬木の丸木階段が残る箇所もあって若狭駒ヶ岳の遊歩道と
同じような流れを辿っているようだ。

 途中、左からやって来た道に移るとやがて、北でも東でもどちらにも進めそうな平
地に出。中央の小高い所が地形図のCa600m峰だろう。左の峠に登ってもよいし、
右から巻き気味に行ってもよい。今日は直接Ca600m峰へ登る。西の鞍部からやっ
て来たらしい踏み跡と合わせると、ようやく顕著になった尾根筋は右にカーブしなが
ら続いていく。
570m標高点峰付近から八ヶ尾山

 尾根の北は桧林、南は雑木林である。進行方向に八ヶ尾山らしき一際どっしりした
山容が目に付く。しかし意外に遠いなあ。地形図を見るとまだ1km強の距離がある。
しかしなだらかな尾根は歩き易く、10分ばかりで570m標高点だ。今は盛りのコ
バノミツバツツジが一本。今年初めてツツドリの鳴き声を聴いた。

 細い踏み跡がドンと下り始める。登りに入ると八ヶ尾山の岩稜が待っているという。
その核心部に入る前に、もう1時前なのでそろそろ食事にしておきたいのだが、風が
冷たかったりしてなかなか適した所がない。もう少し先、もう少し先にはあるだろう
と、シャリバテの身で鈴なりに咲くアセビの急登は少々つらかった。(^^; で、とう
とう岩稜まで来てしまう。しかし、これが良かった。岩の間の窪みで風を避け、目の
前に八分咲きの初々しいヒカゲツツジの花束を眺め、眼下は藤坂の集落。これ以上な
い絶好のシチュエーションなのだった。

満開! ヒカゲツツジ

 荒々しい岩稜がもっと続くイメージがあったけれど、昼食を食べた辺りが核心部だ
ったようで、小金ヶ岳に比べれば優しい感じだ。ヒカゲツツジとアセビ、ミツバツツ
ジのコラボレーションを愉しみながら、登った小高い所(Ca640m)には地元の八
ヶ尾クラブが設置した『西峰』のプレートがある。二、三人が立てば満員の西峰を下
るとアップダウンの最後の鞍部で、標高差50mをゆっくりと詰めれば、太く大きな
満開のアセビを潜った先に、ややあっけなく予想外に広い八ヶ尾山の頂上が待ってい
た。
八ヶ尾山山頂

八ヶ尾山山頂から多紀アルプス。主峰三嶽が綺麗

 岩がちの尾根筋だったので、この広いなだらかな山頂が奇異に思える。以前はササ
が繁茂していたらしいが、今は整備されて高い木もなく360度の展望台だ。西に多
紀アルプスがほぼ一直線に続き、峠山、小金ヶ岳の向こうに、一際どっしりと三嶽が
控える。その北のお握り形は鹿倉山らしい。東には毘沙門山に雨石山が荒々しい山容
を見せている。そして山頂の南側に石の祠があって、平成18年建立、水分神社の石
標はこれも八ヶ尾クラブの方々の建てたものらしい。山頂をぐるりと一巡りすると、
北側にも踏み跡があって、これは北東から東の谷へと下りていく踏み跡だろう。モミ
ジイチゴやサルトリイバラなど棘のある植物が芽を出しているので、こちらを利用す
るには少し苦戦するかもしれない。(^^;) 10分ほど憩って下山にかかる。

 南に向かって八ヶ尾クラブが立てた下山口の標識がある。これに従って南尾根を下
る。東西に延びる多紀アルプスを南に下るのだから激斜面を覚悟していたけれど、よ
く整備されていることもあり、思い外歩きよい。もっとも登りに使うには一本調子の
なのでやっぱりそれなりに覚悟が要りそうだけれど。(笑) 真新しい指導テープもあ
って整備されているのは山頂の水分神社の参道を兼ねているからだろう。地元の八ヶ
尾クラブの方々が自然を壊さない範囲で整備されていると聞く。我々トレッカーにと
っては有難いことだ。

 下ることしばらくで、その八ヶ尾クラブが架けた『思案岩』と看板が出る。座るに
便利な平らな岩で、登るか降りるか思案する岩だとか。でもここまで来たら頂上はほ
んのすぐそこ。登らずには帰れまい。(笑)

 ミツバツツジ、馬酔木、些か時期が遅れたタムシバ、ヒカゲツツジとこちらも目を
楽しませる彩りがある。そんな眼福を愉しんでいると、やがて踏み跡は右に左にジグ
を切り始める。弁天池がちらりと水面を見せるがすぐに隠れる。すると『猛虎岩』、
『屏風岩』のプレートが出た。『猛虎岩』とはいうけれど、何処から見ても失礼だが
あんまりそうは見えない。(^^; だからではないだろうが、その晩の阪神は巨人に大
完敗だった。(^^;;

 赤松が多い尾根から外れて沢の源頭状の地形に代わると、傾斜も緩んで山道は幅広
の作業道に代わる。流石に山頂付近と違って周囲の木々の若葉は青みが濃い。ムワッ
と空気も暖かくなってきて麓まで近いことが分る。GPSがまだ登山口まで距離があ
ると示しているのに、地道の林道が見えてきて屏風のような岩の横からポンと飛び出
してしまった。あれ?真相はてっきり弁天池の横に登山口があるものと勘違いして、
その座標を入力していたのだった。(^^;

岩の下に弁天を祀る祠横につまご坂登山口がある

 八ヶ尾倶楽部の設置した標識があり、下った急坂は『つまご坂』と呼ぶとのこと。
岩に囲まれて祀られているのは弁財天。弁天池はここから200mほど上流のようで
ある。尚、池から西へ峠を越えて筱見四十八滝へも難路だが行けるそうだ。

 後は下流に置いた車に戻るのみ。一息入れてブラブラと東の小原の里へ向かう。昔
は炭焼き釜だったような、石室のような倉庫がある。今は放棄された茶畑がある。そ
して猫の額ほどの水田でもうカエルが鳴きはじめている。流れの横の大きなイチョウ
の下にUさんの車が見えたのはそれから間もなくであった。

 週末に野暮用などもあって、今年は旬のヒカゲツツジに出会えないかと諦めかけて
いたけれど、ピンと張りのある花の群れに出会え、最高の時期に歩けた。岩稜あり、
柔らかい谷の源頭ありと変化に富んだ八ヶ尾山。またお気に入りが増えた。案内頂い
たKさん、同行頂いたUさんに感謝です。


【タイムチャート】
11:00〜11:05筱見四十八滝(駐車地)
11:30〜11:35展望岩
11:40大滝
11:52〜11:55滝終点標識上部の展望岩
12:05滝周回コース三叉路(八ヶ尾山分岐)
12:30570m標高点峰
12:51〜13:10八ヶ尾山西の岩稜(昼食)
13:27西ノ峰(Ca640m)
13:43〜13:53八ヶ尾山(677.6m 三等三角点『大芋T』)
14:14猛虎岩
14:35〜14:40つまご坂登山口
14:50大イチョウ(車デポ地)

■今回のルートはこちら


八ヶ尾山のデータ
【所在地】兵庫県篠山市
【標高】677.6m (三等三角点『大芋T』)
【備考】
多紀アルプスの東端に最後に盛り上がる峰です。西に筱
見四十八滝の岩稜部などを持ちながら、山頂部は一転な
だらかです。以前は一面笹原であったようですが、それ
が枯れたおかげで丹波と北摂一円の山々が一望できます。
四十八滝からのコースの他に、地元の八ヶ尾クラブの尽
力で弁天池林道からの登山道が整備されています。
【参考】
2.5万図『細工所』



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