七夕に歩く熊渡から狼平、ついでに頂仙岳

狼平の弥山川の畔で咲いていたオオヤマレンゲ
平成25年 7月 7日(日)
【天候】曇りのち晴れ
【同行】別掲


 大峰の盟主、弥山、八経ヶ岳に登るには、行者還トンネル西口や東口から奥駈道を辿る
近頃のメジャーコースの他、いくつかあるが、その中に双門コースの起点である熊渡から
弥山川の左岸のカナビキ尾根を辿り、旧来の坪内や川合からの道に合流するコースがあっ
て、Tちゃんが七夕に登りましょうとネットで案内を出した。小生としては未踏でもあり
興味津々。ただ近畿の最高峰に登るとなるとその標高差は1300m近い。日頃の運動不
足ではとても日帰り周回は難しそうだが、標高1600m程の狼平くらいまでなら何とか
なるだろうと手を上げる。途中には三角点のある未踏の頂仙岳もある。集合は道の駅吉野
路大淀に午前4時と超早いのが難点?だが、久しぶりに前日車泊の形態を採って解決する
ことにした。(笑)

 今回は車泊グッズとして知る人ぞ知るニトリの六折りシングルマットレスを購入。これ
が5ナンバー車の車幅にぴったりなのである。愛車のラクティスで身長178cmの小生が
寝る場合、後席を前倒しし、前席を一杯まで前方に引き寄せて、空いた空間に詰め物をす
る必要があるが、詰め物は昨年、香住で蟹を買った時の発泡スチロール製のトロ箱を利用。
これを倒した後席のヘッドレストではさむと頗る具合が良い。これで無料簡易カプセルホ
テルの出来上がりだ。午後7時に道の駅に着くと、夕食はコンビニで買った幕の内弁当と
缶ビール。肴は魚肉ソーセージ。長い夜の為にはトランジスタラジオとタブレットを用意。
前者で野球中継やラジオ深夜便などを聞き、後者で電子書籍を読めば、無聊を癒すにはも
ってこいである。道の駅なので自販機もきれいなトイレも完備。これで風呂でもあれば最
高なんであるが...。(笑)

 午後9時頃に雷雨。空気が入れ替わって涼しくなる。駐車場には小生以外にも車泊して
いる人がいるようだ。深夜、トイレに行ったら歯を磨いている若者がいた。

 一時間位寝ては目を覚ましを繰返して、そろそろだろうと3時45分頃起きる。さっき
からバタンバタンとリアゲートを開け閉めしている音が気になっていたが、やっぱりTち
ゃんが荷物をSさんの車に積み替えている音だった。(笑)

 午前4時過ぎ、道の駅を後に天川に向かう。東の空がうっすら白んでいる。辺りに朝霧
が漂うが空に雲はほとんどないようだ。道はガラガラ、熊渡まで32kmの道のり。ほん
の30分ばかりで起点の熊渡に到着する。ざっと目分量で路肩の駐車スペースは8台位か。
先行車は2台だけである。
早朝の熊渡

 心配した駐車スペースを確保して一安心。準備を整えてから川迫川に架かる橋の上で澄
んだ流れを見ながら朝食。小生はバナナ、ソイジョイ、クリームパン(小)各1個といった
ところである。その間にも車が次々行者還トンネルの方へ走っていく。今日の弥山はオオ
ヤマレンゲの見物客が半端でなく多そうである。

 山々はガスに包まれて半袖ではちょっと寒いくらい。都心では想像だにできない。左手
には弥山川を隔ててトサカ尾山が盛り上がっている。上空は何時の間にやら曇り空。午前
5時を少し過ぎた頃、出発。こんなに早くスタートするのはアルプス以来ではないか。(笑)
通行禁止のゲート前に白川八丁の手書きの案内図がある。遭難多しの中吉野警察署の注意
書きが近畿屈指の難コースであることを物語っている。

 林道はそれほど荒れていないが左右から木々が覆い被さりうす暗い。大きな落石や山抜
けの跡も生々しい。道路端に南無阿弥陀仏と彫られた墓石のようなものがあったが、林道
工事の犠牲者供養のものだろうか。

 やがて開けた台地状の分岐地点に出る。左へ下ると名うての双門コースである。カナビ
キ尾根コースは林道を直進するが、その林道も双門分岐からすぐの金引橋で終点。ガード
レールの欄干、左右から雑木が被さっていかにも荒れた感じを思わせる橋である。

金引橋奥の林道終点の取付き

 印は無いが金引橋の先、予算が枯渇し中断された工事現場みたいな部分から山道が始ま
る。人工林の間を九十九折れに上がっていくので、見た目の傾斜の厳しさから想像するほ
どきつくはない。やがて小さな谷間の道になるとやたらに暗い杉林の中である。今にも雨
が来そうな暗さかげんに、単独だと多分、廻れ右していたかも。(^^; 間伐や枝打ちがさ
れていず、上部で枝が密集していた為らしい。因みにカナビキ尾根に乗るまでにこんな暗
い箇所がもう一箇所ある。途中に”十辺坂”と記された小さい標識があったが、そんな折
り返しの続く小道を登った先の小さな鞍部で一息入れる。

 鞍部からはしばらく自然林の広い尾根上の道である。時々踏み跡が別れるが上部でまた
合流する。ここまで自然林と杉林が交互に現れたが、自然林ではミズナラやネジキに混じ
ってヒメシャラの小ぶりの白い花が落ちている。

 周囲は再び杉林となって、ツルアリドオシの白い小花がばら撒かれたように咲きこぼれ
ている尾根に登るつくと道は角度を変えて、岩がちの細い馬の背を抜けると今度はブナや
ナツツバキが目に付くようになる。下から涼しい風が吹き上げてくる。火照った体に心地
よい。

 湿った土が滑って歩き難い急傾面を行く。雨に流されて踏み跡が薄いトラバース部分も
あるが、先行テープが頻繁にあるのでそれに忠実に従えばよい。新芽の先が目にも鮮やか
な黄緑をしたモミ類が現れると標高はほぼ1400mくらいか。忠実にジグザグを踏んで、
上方に大きなブナの林が見え始めると、ようやくつらい登りも緩んで、坪内・川合古道と
の合流地点はすぐそこであった。
カナビキ尾根出合。黄色の案内板にマジック書き
立木下に白い標識が立てられてある(帰路撮影)

 大峰で馴染みの黄色い案内標識には右方向は坪内・川合、左方向は弥山。それに丁寧に
熊渡と手書きが加えられている。それとは別に金引橋への道標も大木の前に新しく立てら
れている。周囲は下草も少ない広葉樹の森。エゾハルゼミに混じって野鳥の鳴き交わす中、
東へ延びる標高差50m程の緩斜面がナメリ坂らしい。落ち葉の絨毯の間に適度な間隔で
立ち木がある。ブッシュも無く、まるで作庭したような自然林は気分の良い所だ。

綺麗な緑。ナメリ坂付近にて

 ナメリ坂を登りきると、ダラダラと徐々に標高を上げていくのであまり疲労感を感じな
いで済む。但し、広い台地状の地形になるので、ガスが湧く場合は要注意だ。

 疲れはあまり感じないが、そろそろシャリバテかなあ。なにせ夜明けに朝食だったから。
そんなわけで1598Pは西側を巻いてくれるので助かる。

 次の高みは頂仙岳である。これも道は西側を巻くのだが、三角点峰でもあり、弥山と八
経ヶ岳の鞍部からの姿が印象に残る山であるので、これは一応登っておこうかということ
になる。地形図を見ると西側から登るのが最短、但し急登。南側の方が距離は若干長くな
るものの、標高差もなくて登り易いようだ。そんなことで取付きを調べるべく頂仙岳側を
注意しながら進む。結局、テープは西に一ヶ所、南に一ヶ所見つかる。帰路に何れかから
アタックしてみることにする。

 頂仙岳を過ぎて、高低差のあまりないトウヒやモミの広い尾根を歩くと、やがて案内板
のある辻が見えてくる。高崎横手出合で狼平、弥山辻との分岐。案内板によると、この坪
内・川合道は元々、天川から北山への生活道で、生活の変化で廃れ草生していたのを、近
年整備しなおしたものだとか。また案内板の付属地図には、どちらへ行ってもぐるっと近
畿の最高点を約3時間で周回してこれるとある。でも運動不足の身にはこれは些かきつい。
ということで、狼平でまったりすることで勘弁してもらおう。(^^;

高崎横手分岐。左が狼平、右が弥山辻へ

 左に折れて洗掘された小道を弥山川の谷へ下っていく。まもなく流れの音が聞こえてき
た。ちょっと歩き難い路だが標高差50mばかりを下っていくと吊橋が視界に入ってきた。
双門コースは下り禁止の立て看板を横目に橋を渡ると、弥山川の右岸の30m先に瀟洒な
狼平の避難小屋があった。

緑滴る中に建つ狼平避難小屋

ビロードのような苔

 建物の中には大きなザックが数個置かれている。ビールの空き缶があるところを見ると
ザックの持ち主、先夜はここで泊まったのだろう。小屋の横には弥山に延々と続くという
木の階段。バイケイソウが一斉に花を開いているけれど、山すそに見えるオオヤマレンゲ
はもう咲き終わりだ。

 朝食が5時前と早かったので10時前だが早々とここで昼食。弥山川を30mばかり遡
行したナメの横。やや青みがかった透明な流れ。真っ黒なおたまじゃくしはカジカだろう
か。適当な川原の石に腰かけて久しぶりにラーメンを啜ることにした。

 腹がくちたらちょっと散歩。狼平小屋の横にオオヤマレンゲが一株。苔むした大岩の向
こう側にも一株。これももう花は終わっている。些か落胆の体だが、先のナメの辺りの岸
辺に一輪、盛りのがあった。弥山まで行かずともまあこれで良しとしよう。(笑)

 昼食に散歩と近頃に珍しく1時間以上もまったりしてしまった。といっても時計を見る
とまだ11時前なのである。そこで帰路は少し時間をかけて、当初から目的にしていた花
を探すことにする。小屋から高崎横手出合までの登り返しから頂仙岳の辺りまで、きょろ
きょろ、鵜の目鷹の目。が、発見できず。アバウトな位置情報しかないので仕様がないが
また情報収集して出直すことにしよう。

 頂仙岳の南まで戻って来た。先達のHPを見ても、頂仙岳に決まった登山路はないらしい。
ということはどこからでも登れるということでもある。但し、大峰山脈は基本的に南北に
伸びているので、南か北からの方がなだらかである。頂仙岳も例外ではなく、前述した如
く、南側から登った方がなだらかである。そこで往路で見つけておいた南側のテープから
踏み込むと、トウヒ、ウラジロモミの間に鹿道らしい薄い踏み跡があって、時折先行テー
プも認められる。しめしめと高みに向かってひたすら北へと行くうちに次第に傾斜は増し
て、頼りの獣道も消えた。倒木を踏んで、歩き易い部分を探しながら更に進めば、前方に
苔むした大きな岩が現れた。右に巻くことも考えたが、岩と岩の間に数mの隙間があるの
で突破すべく踏み込むと、そこはシャクナゲの群落である。今度は左手に見える高みに向
かって手も使ってよじ登っていく。もうその辺だろうと、行く手を塞ぐ雑木を掻き分けた
先、ぽっかり空いた空間が思惑通り頂仙岳の山頂であった。

頂仙岳山頂

 小さな裸地の他、新しい山名板と綺麗な三等三角点のみの、狭く簡素なそして静かな頂
きである。展望はないと聞いていたが、東北方向のみ開けて、青空の下、大日山、稲村ヶ
岳、山上ヶ岳、大普賢岳と続く大峰主稜が眺められたのは望外だった。

 一服してさて下山である。北方向に白いテープと踏み跡らしきものがあるが数mも辿る
と茂みの中で判然としなくなる。他に確かな踏み跡もなさそうなので、最短距離の真西方
向に下ることにする。山頂付近はいずれの方向も急傾斜で立ち木はほとんど腐食していて
すがると危険。しかも腐食土が滑る。藪のない歩き易そうな所を選んでずるずるという感
じで下る。鹿の糞が転がっていたので多分、辿ったのはかすかな獣道だったのだろう。そ
んな急斜面も高低差で20mも下るとやや落ち着いてくる。下るにつれて獣道もややはっ
きりしてきて、やがて正規の登山道が見えてきた。ただ、合流した地点にはなんの印もな
い。こんな感じで先達もそれぞれ適当に下っているからであろう。(笑) 

 後で知ったのであるが、我々が登る数日前にこの頂仙岳で遭難騒ぎがあったらしい。登
った単独女性が下山の方向を間違えて沢に滑落、ヘリに救助されたとのことである。確か
にこれという踏み跡は皆無で、時折獣道らしい薄い跡があるのみである。ただ、西側を登
山道が走っているので、コンパス等で西方向をキープして下れば間違いは起きないだろう。

 頂仙岳の北側付近は『なべの耳』というらしい。H23年だったかの台風で流された双
門峡の河原避難小屋への道があるとのことだが、この辺りにもくだんの花の目撃談がある
とかであちこちと探してみる。でもやはりそれらしいものは見つからず。こんな探索を繰
り返して時間をとりながらの歩きなので、下掲のこの付近のコースタイムは全くあてには
ならないのでご承知おきを。(笑)

 「あれっ?もっと遠かったはず」と思うほど唐突に、「金引橋」の道標が立てられたカ
ナビキ尾根出合に戻ってくる。そこから真北に見える1518m無名峰の向こうに『天女
の舞』と呼ばれる風光明媚な台地があるとのTちゃんの情報で、一息入れた後、その15
18Pを目指す。大きなブナが林立してなかなかのいい雰囲気である。ただ、この151
8P、固有山名を持っていてもいいほど、意外に大きな山体をしている。なだらかな60
m程度の標高差の癖に結構しんどいのだ。例によって特別な踏み跡はないので、現れた植
生保護実験地を囲う鹿ネットに沿って、それが途切れると次は赤いプラ杭に沿って登る。

 「よっこらせ」。ようやく登った山頂のブナに「1518P」のこれも真新しい標識が
かかる。どうも金引橋の道標と同一人物が設置したようである。山頂は北に延びていて突
端に立つと『天女の舞』らしき台地が下に見える。が、HPによれば展望の良いシダ原と
のことだから、そうでなく、別なのかもしれない。

1518m標高点ピーク

 当初はここから1518Pの北尾根を辿って下る予定とのことだったが、手元に情報が
少ないこともあって、往路を下山するのが早かろうと予定を変更する。そこでカナビキ尾
根出合まで戻ることにしたが、1518Pの山体の大きさに惑わされて少しうろうろする
破目になった。坪内・川合道に最短距離で出ようと南東方向に下ったが、その辺りでは古
道も南東に走っており並行していた為に、思ったようにすぐには出合えなかったのだ。ト
ラバースして方向を変えると、まもなく登山道を示す古い黄色い看板がちらりと見えた。
それにしても1518P、本当に何か山名があってもおかしくない山である。それより困
りものはブヨが多いこと。気がつけば、スキンガードを塗り忘れていた両耳の後ろをやら
れていた。(^^;

 出遭った古道は忠実に1518Pを巻いて、平らなブナ林を200mばかり東へ行くと
カナビキ尾根出合。ここで北(つまり左)に90度方向を変えて、あらためてカナビキ尾
根を下る。

 大体、山道はアップダウンがつきものだけれど、カナビキ尾根は水平区間はあるものの、
下り一辺倒。ということは登る時はひたすらずっと登りだったわけで、しんどかったのも
うなづけるわけだ。登りは2時間かかっていたものが下りは1時間20分の所要時間であ
る。登りでは見過ごしていたショウキランなども見つかって、同じ道でも下山時はまた違
った味わいもある。とはいえ、人工林の中を何度も折り返していると些か飽きてくる。下
から川の水音が聞こえてきた時は正直ほっとしたものだった。

 しかしながら今回はこれで終わりではない。まだ熊渡まで30分強の林道歩きが待って
いる。流石に脚の疲れが見えてスピードは出ない。林道の東側は弥山川の切れ落ちた谷。
時折、木々が途切れて深い深い谷底を垣間見ることができるが、こういう脚疲れの時はそ
ういう所に近づくものではない。いつ何時、脚がもつれてへたりこみ、バランスを崩さな
いとも限らないのである。(^^;

 やたらサンショウの木が多い林道。モミジイチゴも多い。ちょっと摘みながら歩く。種
の多さに閉口するが、あっさりした甘さが疲れた体にいい感じである。そんなことで疲れ
をだましだましやって来たが、ますます脚は重くなってくる。朝は寒いくらいだった空気
が、下界に比べたらよほど涼しいのだけれど、少々もわっとする熱気に換わったこともあ
ろう。弥山の支流を回りこんで、ようやくR309のガードレールが遠くに見えてくる。
やれやれ。長かったなあ。もう歩かなくて済むわ。が偽らざる気持ちでした。(^^;

 道の駅に戻り、何はさておきコーラを流し込む。下山後のコーラ、最高!です。新しい
コースを教えてくれたTちゃんと、現地までのアプローチの運転のSさんに感謝。それに
しても青い空にはもくもく入道雲、まだ梅雨明けじゃないの? 狼平の涼しさは幻か。車
が示す外気温は35℃でした。



【タイムチャート】
04:00自宅発
04:40〜05:10熊渡(駐車地)
05:45〜05:49双門コース分岐
05:51金引橋
06:40〜06:50小コル
07:50〜07:54坪内・川合古道出合
08:361,598P
09:10〜09:15高崎横手分岐
09:35〜10:45狼平(昼食)
11:10〜11:12高崎横手分岐
11:25頂仙岳南側取付き
11:40〜11:50頂仙岳(1,717.6m(三等三角点『朝鮮岳』))
12:02頂仙岳西側の坪内・川合道合流
12:301,598P
13:00坪内・川合古道出合
13:19〜13:251,518P
13:51〜13:53坪内・川合古道出合
15:10金引橋
13:22熊渡(駐車地)

■同行 さかじんさん、たらちゃん(五十音順)


 頂仙岳のデータ
【所在地】奈良県吉野郡天川村
【標高】1,717.6m(三等三角点『朝鮮岳』)
【備考】
大峰山脈の主稜、弥山、八経ヶ岳の北に位置します。弥
山や八経ヶ岳から見るとピラミッド型の山容が望めます。
その姿の割に展望には恵まれず、わずかに北東方向に稲
村ヶ岳から大普賢岳の山並みが望める程度です。東麓は
白川八丁と呼ばれる大峡谷、西の肩を天川村から北山村
に通ずる古道が走っており、ほぼ唯一のアプローチです。
【参考】
2.5万図『弥山』



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