ぬくもりの郷から登る和田寺山

今田町下小野原付近から和田寺山
平成24年 1月21日(土)
【天候】曇りのち雨
【同行】別掲


 またボタン鍋の季節がやってきた。今年も1月末の週末、Mさんらの尽力でいつもの篠
山市の『丹波渓谷の森公園』のロッジに一泊してのSRCのボタン鍋オフが開催された。
今回は例年になく1日目、2日目と両日にわたっての山行も完歩し、Pさんの名誉会員加
入とあいまって、例年にましての充実一泊オフとなった。

 その第一日目の山は焼き物で有名な立杭の里を挟んで、虚空蔵山と対峙する和田寺山。
虚空空山からそのどっしりとした姿や、よく訪れる今田町の薬師の湯から眺める雑木に覆
われた姿が印象に残っていた山だ。しかもいつもボタン肉を仕入れる猪肉屋のほんの近く
である。宿泊先の渓谷の森公園ともそれほど離れておらず、登るに最適の選択ではあるま
いか。

 JR新三田駅、9:17着の快速で待ち合わせ、Nさんの車にTちゃんと共に便乗させ
てもらって、集合地のふるさと公園へ向かう。ふるさと公園といっても、要はこんだ薬師
温泉のあるぬくもりの郷一帯のことだ。温泉施設の玄関前にいたら、折よく向こうからM
さんの車もやって来た。

 準備を整え、まずは温泉施設の建物沿いに東に歩いて取り付きを探す。天候は低気圧が
東に抜けても気圧の谷が居座ったままだそうで、宝塚あたりを走る電車の車窓にも雨粒が
走っていた。幸い、三田以北ではまだ路面も乾いているが、空は分厚い雲に覆われて、い
つ降ってきてもおかしくない。そんな中、しばらく山裾を探っていると、100mも歩い
た右手に広く浅い沢筋のような、廃林道のような、薄いながらも人の手が入った跡らしき
ものがある。勿論、目印とてないが前進を阻む茨なども少ないようだ。ここから取り付く
ことにして雑木林に入る。しばらくすると広い沢筋から分かれて、右に曲がり込むような
別の浅い沢筋がある。その辺りの入り込みやすい斜面から登り始めることにする。

温泉施設横の道を探りながら、この辺りから取りつく

 北摂や丹波によく見られるイヌツゲ、ミツバツツジ、コナラ、アセビ、ソヨゴ、アカマ
ツ、ネズなどが繁茂する林だ。下草はお決まりのコシダ、ウラジロである。葉が繁茂する
秋口や梅雨時は見通しがなくとても登れたものではなかろうが、今は冬枯れで見通しが良
く明るい。倒木や抵抗する木々の枝を避け、歩き良い斜面を選りながら登っていく。不思
議なことに体一つ通過できる空間がある。ほんの少しの区間ながら踏み跡じゃないかと思
われる部分もある。昔は山仕事に良く歩かれただろうから、その痕跡があっても不思議で
はない。上に見えた小さな支尾根に乗るとうっすら踏み跡が現れたリ消えたりし始めた。

 風はなく暖かく、結構傾斜はきつい。うっすら額に汗をかいたところで、木々が疎らな
箇所を探してウインドブレーカを脱ぐ。冬枯れの木々を透かして、左手(東)方向に和田
寺山と思しきなだらかな高みが見え始める。それに続く尾根も大分近づいてくる。

なんとなくある薄い踏み跡を辿る(和田寺山北東部)

 更に登っていくに従って、疎らだが古い白い布や赤い布も目につきだした。いわゆる大
垣布って奴か。それを追って上へ上へと行く内に和田寺山山頂に続く尾根に乗る。ここが
曲がり角というわけか、古ぼけた白い布が二つ、平行に灌木に結んである。しかし全く目
立たない。だがここから先、踏み跡は俄然濃くなった。尾根もしっかりしており、迷いよ
うなく和田寺山へと導いてくれるだろう。ということは逆コースを採った場合、急に道が
判然としなくなったら北方向に降りろということだ。(笑)

 踏み跡は546m標高点ピークをかすめて東へ続く。雑木の林の中に一抱えもある岩が
二つ並んでいるのが目印になる。ここまでくると、和田寺山はのっぺりとしてどこが山頂
だか分からない形状となって、ほとんど平地の林を歩いているような錯覚を覚える。踏み
跡もはっきりしていることと相まって、どんどん歩ははかどる。それでも前方に木立がや
や高くなった部分があって、山名プレートが幾つかぶら下がっていることで、ここが和田
寺山の最後部の591mの標高点であることを知る。ここまで展望は全くない。

地味な和田寺山山頂。ここまで全く展望ゼロです

 雨が降らぬ内にと早めの食事を摂った後、下山は和田寺方面(山頂から北)に下ることに
する。こちらもしばらくは顕著なピークもない和田寺山の広い山頂部を行くことになる。
杉桧の植林も現れてやや暗い感じがするが、やはりこちらがメインルートだ。往路の薬師
の湯方面からの登りに比べれば、テープの数、踏み跡の広さや確かさなど雲泥の差がある。
南の上山への分岐を過ごして北東方向へキープする。やがて一気の下りになる。一直線で
降りていくことから、昔ながらの道ではなく、山頂への直登道として最近つけられた感じ
がする。粘土質の土は落ち葉と相まってよく滑る。立木があるので助かるが、中には太く
ても枯れたものがあるので、安易に体重をかけるとアッということになるから油断がなら
ない。皆さん一度はスリップしたのでは? かくいう私も危うく尻セードするところだっ
た。(^^;

 近畿自然歩道と同様の、何だかこの山にそぐわないほど立派なオフィシャル道標が現れ
る。一息つくがまだまだ劇下りは続く。

 そのひたすらの下りにやはり展望はない。唯一、ようやく傾斜が緩んだ伐採地で、立杭
谷を挟んで東隣に対峙する虚空蔵山の全容が望めた程度である。その伐採地の先には真新
しい展望台が造られており、案内には和田谷展望台とある。目の先の可愛いピラミダルな
小山の頂にも東屋が立っており、これは小丸山展望台と呼ぶらしい。確かに小丸山と呼ぶ
べき小さな山である。
和田谷展望台。展望台先に小丸山展望台が見える。奥は虚空蔵山

 その小丸山へ出る道もあるが、急角度に折れて和田寺へ下りていく道もある。折角なの
で和田寺も見ておきたいのでそちらを採用する。急傾斜を下っている時にポツポツきてい
た雨は少し強くなる。九十九折れを下ると、舗装路に合流し、左に赤い幟が並ぶ石段があ
り、奥に和田寺の本堂が見えた。

 本堂の石段を登る頃には雨は傘が要るほどの強さになる。薬師の湯から登って往復せず
にこちらに降りたのは正解だったろう。薬師の湯方面は全くのバリエーションルートで、
尾根から薬師の湯方面の北へ折れる地点は、小さな古い白布が二つあるばかりで非常に見
落としやすいこと。しかも降りてゆくに従って踏み跡が消えている。登るのはまだしも下
るのは余程、地形を読めないと難しいように思われることが理由だが、ピストンしていれ
ば、多分コース取りに時間を要し、雨が降り出す前の下山は無理だったに違いない。

 和田寺はもともと東光寺と呼ばれ和田寺山の頂にあったが(最初のまま東光寺が山頂に
あったのなら山名は当然東光寺山のはず)、源平合戦の兵火で焼け今の地に降りたのだと
いう。東光寺山とくれば近くの西光寺山が頭に浮かぶ。和田寺山の北には西寺山がある。
そして西光寺山には金の鶏の伝説があるが、相互に何らかの関係があったように思うがど
うだろうか。

 しばし休憩を取った後、石段を下る。結構長い参道が続き、マムシ注意の看板が至る所
にある。東光寺と呼ばれた頃の唯一の遺物である観音板碑を左に見る。頭痛に霊験あらた
かだとか。お地蔵さんもそうだが観音さんも歯痛に頭痛に身代りにと忙しいことだ。(笑)

和田寺山本堂を振り返る
和田寺山の東尾根登山口は右、小丸山展望台への遊歩道は左

堂から500mは下って来た頃だろうか。左手に小広場が見えてきて奥に和田寺山に北
東尾根経由で登るコースの登山口があった。右は和田谷展望台から正面に見えた小丸山展
望台への遊歩道入口になっている。ここには数台の駐車スペースとともに案内図もあり参
考になる。因みに一帯は『せんじゅの森』として最近整備されたものだそうである。

 右に和田寺の庫裡と霊園を見、車道脇にポツンと建つ山門をくぐる。身長3m弱の立派
な仁王像が我々を見下ろしていた。その前の車道を歩き、現れた分岐を左(北)にとって
進むと県道に出、薬師の湯方面へ行くバス停があった。次のバスまで30分。距離は2km
強。この雨の中、雨宿りする所とてない。歩いた方が早いだろうと、朝、車で走った同じ
道をテクテクと歩くのはちょっとつらいが、なんだかだと話しながら歩けばその内に到着
するというもの。和田寺山の北の山裾をぐるりと回り込むことになったが、バスが到着す
るほんの少し前に駐車地へ戻れた。『いきなり黄金伝説』風に言えば「バスに勝ったどぉ
〜。」万歳!!
入手した天然猪肉

 薬師の湯で一汗流して、最寄りのスーパーで買い出し。次いで東に走り、戦国期、波多
野氏の居城のあった八上山の下を通って、県道を川西方面に南下する。城東トンネルを抜
けると大野山の北麓、渓流の森公園に着く。雨はその間も止むこともなく、さりとて強ま
ることもなくシトシトという感じで降り続く。カーラジオの予報では回復するというが、
明日は大丈夫だろうか?若干の不安もないではなかったが、夜からのメンバも合流するす
る頃には、そんな不安もいつの間にやら頭の隅からも消えていたのだった。




【タイムチャート】 
10:00ぬくもりの郷駐車場(駐車地)
10:05取付き
10:47〜10:48ぬくもりの郷への下降点
10:55545m標高点の北地点
11:10〜11:30和田寺山(591m)
11:55〜12:00和田谷展望台
12:08〜12:20和田寺本堂
13:50ぬくもりの郷駐車場(駐車地)

■同行: 裏人さん、たらちゃん、二輪草さん、水谷さん、もぐさん(五十音順)


和田寺山のデータ
【所在地】兵庫県篠山市(旧今田町)
【標高】591m
【備考】 立杭焼で有名な立杭を挟んで、虚空蔵山と対峙する山で
すが、展望がない為、虚空蔵山ほどの人気がなくマイナ
ーな山です。古くは東光寺と呼ばれる寺が山頂にあり、
戦火で焼けた後、東麓で再興されたのが今の和田寺です。
寺一帯は『せんじゅの森』として整備され、登山道も整
備されていますが、そのほかのルートは未整備で、地形
図とコンパスが必携です。
【参考】
2.5万図『比延』



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