一粒で二度おいしい大井戸山・竜ヶ岳

多可町清水付近のR423から清水坂を挟んで対峙する竜ヶ岳(左)と大井戸山

平成24年 4月29日(日)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】単独


 今年のGW。明日から天気が今いちという昭和の日。さて、どこ行こうか。あそこはど
う?ここはどう?あれやこれやでなかなかまとまらない。そんな時、どこかで小耳に挟ん
だ一度に二つ、名のある三角点峰へ登れるという話。どこだっけ?そうそう今年の干支の
山。竜ヶ岳。鈴鹿にある同名の山ではなく播丹界の山である。そしてもう一つは大井戸山。
取り急ぎネットで取付きを調べ、地図を出力して出発。前日に行先が決まらずその物色の
為、5時起きしていたのが幸いして、当日決めしても7時過ぎには家を出られた。(笑)

 中国道は大して混んでもおらず、順調に滝野社ICを下りて西脇市内からR423を北
上する。勝手知ったる千ヶ峰への道だ。その千ヶ峰の登山口を左に見て更に北上、『竜ヶ
岳、大井戸山登山口』の小さな案内を見てすぐに右に折れる。清水の集落の中を道なりに
進むと、県道とは名ばかりの78号線は雲門寺の前を過ぎる辺りから自然に林道になる。
トンネル工事現場を右に見て桧林の中を走る。枯れ枝が堪る一車線のコンクリート舗装道
である。『大井戸の森』の標識を見た後、その先大きくヘアピンを切ると舗装が途切れて
いる。この先の林道の状態も分らず、路肩に2、3台置けるスペースがあるのを幸い、こ
の辺りに駐車することにした。(結果的には地道の状態もよく、左へのヘアピンの先はま
たコンクリート舗装で、一般車でも十分、林道終点まで行けた)

 念のためタイヤに石を置いて歩き出す。ダートの林道を300mも遡ると、左に林道の
分岐があった。『一号物件』と記した標識があるがてっきりこれが清水坂へ通ずる林道だ
と勘違い。100mばかり登った所でどうもおかしいと気づき引き返す。10分ばかりの
ロス。こういう時はどっと疲れるものだ。(^^; 本当の分岐はそこから3分足らずで、右
に『大井戸の森』とここにも看板があり、何のことはない、分岐のヘアピンにはちゃんと
親切にも竜ヶ岳登山道と標識があるではないか。

 林道終点は思ったより近く、広場には3台の先行車がある。と、1台の軽がまた上がっ
てきた。中年のご夫婦、なんでも先日使った杖を律儀にも戻しに来たのだそうだ。見れば
杖置場には数本の杖が備え付けてある。

林道終点。清水坂への道が始まる

 最初は傾斜も緩く、踏み跡が錯綜している部分もある。ただゴロゴロと石の転がる桧林
の下のどこを歩いても、登って行けば同じ場所に出るようだ。くすんだ人工林に白い花が
点々と小さな雪洞のように浮かぶのはミツマタの花。流石、杉原和紙の町である。横を綺
麗な沢水が流れている。水場が好きなミソサザイのさえずりが響く。ヒルが出るとネット
にあったのはこの付近に違いない。幸いなことにまだその気配はなく、出そうな区間も短
い。道は間もなく沢から右に離れて、ジグザグに傾斜を増した斜面を登り始める。『地籍
調査』と記されたピンクテープが要所にあって目立つ。

 やがて斜面の上方が明るくなって風が通り始め、峠に近いことがわかる。まもなく石組
が見えてきた。典型的な峠のイメージを残す清水坂だ。『弘化三年午○、往来安全』と刻
まれ、連弁模様まで刻まれた石地蔵が小さな石組みの中に置かれている。紙垂(しで)が
飾ってあるところを見ると、今も大切にされているようだ。向かいにはさらに大きな石組
みがあるが何があったのだろうか。

昔ながらの峠の風情が残る清水坂

清水坂のお地蔵様、弘化三年の銘がある

 峠に古い道しるべはないが、ハイキング用の道標が賑やかに設置されている。峠の東側
は丹波氷上郡の三原だからここは旧国の境で、丹波側も道は現役のようである。まず大井
戸山に向かうことにする。モミの木が目立つ旧国境の尾根筋はすぐに706m標高点ピー
クへの急な登りになる。清水坂は凡そ標高620mだからほぼ80mの標高差。風が止ま
ると一気に額から汗が流れは始める。小さくジグを切って小さなピークに上がると氷上高
年低山会の立派な焼板の道標が出た。峠道以外に三原からの新道が出来ているらしい。地
形図を見ると清水坂の南の尾根を登ってくるようだが、そちらを覗くとかなりの急登であ
る。清水坂が谷沿いだからヒルを避けて新しいルートを開拓したのだろうか?(笑) そこ
からすぐに706mピーク。(道標のピークが706mピークかも知れないが...)

 そろそろ露岩が現れて来る。ゴジラの背のように列をなしたものから大岩まで。歩き難
い露岩帯には巻き道があるので安心。(笑) 歩ける所は歩き、越えにくそうなのは脇道に
逃げる。(^^; 気づかぬ内に人工林から雑木林に代わっっている。麓ではとっくに散って
しまったミツバツツジがここでは今盛りである。そのミツバツツジの花の色と幾分違うピ
ンクの花がある。崖にあるので近づき難いが、落ちた花を眺めるとアケボノツツジではな
いか。台高や鈴鹿でしか知らなかったので少々感激の面もち。しばらく眺める。

桜と見紛うアケボノツツジが満開

 木の隙間から左手にアンテナを頂いた篠ヶ峰が間近に見えていたのが見えなくなったの
でコンパスをとり出すと、知らず知らずの内に西向きの尾根に導かれている。さっき登っ
たCa750mのピーク(加美町だったかが設置した図根点がある)が屈曲点だったらしい。
篠ヶ峰を示す案内などなかったので気が付かなかったらしい。

 大井戸山まで500mを切った。相変わらず尾根筋には露岩が多い。この付近が最も荒
れていて倒木が目立つ。北側の植林帯に逃げてやり過ごすと、大井戸山と書かれた白いプ
レートがぶら下がっている。その先に露岩の小さなピークがあった。登ると初めての大展
望が広がった。杉原川沿いに広がる家々と田畑。その先に長々と続く千ヶ峰をはじめとす
る山々がある。右手の尾根の先にはお握り形の大井戸山が間近にある。

狭い大井戸山山頂

 ごつごつした岩に足をかけ、見上げると柱が見える。2、3人も立てば満杯の狭い露岩
の山頂に立つ大井戸山の山名柱である。足元に四等三角点が埋る。木に囲まれて展望がな
いので、先ほどの小ピークに戻ろうと考えていたら南の方向から人声が流れてくる。30
mほど進むと、林道終点の車の主達らしい10名くらいの男女グループが賑やかに昼食中
であった。だがそれよりも先の小ピークに勝る展望に驚いた。急激に下降する尾根の先は
送電線のある684m標高点ピークで、その右の麓の真新しい建物は『ラベンダーパーク
多可』のようだ。杉原川沿いにはR423が延び、西側には長々とまたに山、千ヶ峰、飯
森山が続き、一番奥には笠形山がある。

 腰を降ろすに手頃な石もある。こんな風景を眺めながら、当方も食事とする。額の汗に
心地よい風が吹きあがってくる。見れば西側の急な斜面にピンクの花が風にヒラヒラとお
いでおいでしている。ここにもアケボノツツジが咲いていたのだ。カメラに何枚も収めた
けれど、ずっと風で揺れていたからすべてピンボケだった。(^^;

 ここで小一時間を過ごして清水坂へ戻ることにする。先発したグループは岩を登り下り
して愉しんでいるようだ。脇道で追い越して先に出る。気になっていた屈曲点ピークにあ
る篠ヶ峰への分岐を確かめると、始めははっきりしないが30mばかり急降下すると尾根
であることがはっきりするようであった。

 清水坂から今度は北へ。道標は60分の行程とある。今12時半だから、かかっても1
4時過ぎには戻ってこれそう。最初は緩い登りの桧の植林帯である。

 幅1m程度の登り道が緩々と延びる。やや広い尾根で展望もなく、傾斜に強弱が少ない
こともあって単調なきらいがあり、故に面白みがないと山行記には書かれるのであろう。
でも見方を変えて、森林浴を楽しんでいると思えばそれなりである。(笑) 少し傾斜が強
くなった辺りでやや左に方向を変えて、まだまだ緩々と登り基調は続く。

 こちらには丹観協(丹波観光協会)の道標が要所に立つ。787mの標高点ピークはポ
コポコと三つある小山の内の真ん中の、この丹観協の道標のある高みだったか。一寸記憶
が怪しい。この辺りからようやく雑木を透かして西側が時折望めるようになる。すると、
今まで全く視界がなかった東の丹波側が途切れて、遠くに氷上らしい市街地がこじんまり
と見える。眼下はサイプレスゴルフ場のグリーンである。竜ヶ岳の東尾根がそのゴルフ場
の北の壁をなしていて辿ることが出来そうだけれど、ほとんど植林のようで面白みはなさ
そうである。

 西の播磨側がアセビの林になる。787mピークから10分足らずでCa810mの屈曲
点ピーク。もうここからはほぼ水平の尾根道。東北方向へ向きを変えて、やがて前方に山
頂を示すらしい標識が見えてきた。

竜ヶ岳山頂は西に開けている

 前述の如く、清水坂の案内に竜ヶ岳まで60分とあったが、普通なら小生のように40
分くらいだろう。竜ヶ岳といかめしい名の割には柔らかい感じの山頂には誰もおらず、干
支の山を示す標識と三角点がなければ通り過ぎてしまいそうである。(通り過ぎると北の
鳥羽坂まで縦走できるようである。(60分)) ここまでミヤマシキミ以外、目を引く
花は少なかったけれど、下界ではとうに散ったミツバツツジが西斜面に一本、満開出迎え
てくれる。

 山頂からの眺めはよくないと聞いていたが、大井戸山ほどではないにしても、西側が伐
採されていて明るく見晴らしは良い。南側に大井戸山が控え、その麓には新しいトンネル
工事とバイパス道の赤茶けた工事現場が見える。ここからも千ヶ峰の連山は一望で、北の
加美アルプスらしい隆起と大きな粟鹿山が目立つ。

竜ヶ岳山頂から大井戸山。トンネル工事の進むバイパス路が麓に見える

 小腹が空いたので定番の赤飯おにぎりを一つ。15分ばかり山頂にいて引き返す。屈曲
点ピークを降りる頃、人の声が上がってき、大井戸山で一緒になったグループが登って来
るのとすれ違う。いい眺めでしたと挨拶。最後尾の小父さんはそれから5分ばかり遅れて
やって来た。(笑)

 結局、山道で遭ったのはこのグループの方たちだけの静かな山歩きだったと、駐車地点
に戻って装備を解き、一息つきながらコーヒーを入れている間、余韻に浸っていたら、耳
障りなバイクの音がこんな思いを途切れさせる。間もなく数台のモトクロスバイクが上が
って行った。(-ヘ-#  とはいえ、三角点峰二つが踏めて、思いもかけずアケボノツツジの
サーモンピンクにも出会えて、思いのほか充実した山歩きでありました。



【タイムチャート】 
07:20自宅発
09:25〜09:35林道 Ca370m付近(駐車地)
09:45〜09:52道を間違う
09:57〜10:00林道終点(Ca470m)
10:18〜10:23清水坂(Ca620m)
10:33〜10:34三原分岐表示
10:36706m標高点ピーク
11:02篠ヶ峰分岐の屈曲点ピーク(Ca750m)
11:11〜11:15展望岩の小ピーク(Ca780m)
11:20〜11:50大井戸山(794.2m 四等三角点 昼食)
12:07篠ヶ峰分岐の屈曲点ピーク(Ca750m)
12:18706m標高点ピーク
12:29〜12:31清水坂
12:56〜12:57787m標高点ピーク
13:05屈曲点ピーク(Ca810m)
13:11〜13:23竜ヶ岳(816.7m 三等三角点)
13:29屈曲点ピーク(Ca810m)
13:35787m標高点ピーク
13:52〜13:53清水坂
14:06林道終点
14:16林道 Ca370m付近(駐車地)



大井戸山のデータ
【所在地】兵庫県多可郡多可町
【標高】794.2m(四等三角点)
【備考】 播磨の多可と丹波の氷上を結ぶ古道清水坂の南に位置し
ます。清水坂からの狭い尾根は露岩が続き、山頂の南の
展望岩からは笠形山や千ヶ峰といった播磨の名山や丹波
の山々が居並びます。
竜ヶ岳のデータ
【所在地】兵庫県丹波市・多可郡多可町
【標高】816.7m(三等三角点)
【備考】 清水坂から播但国界を北に辿った先に大きく根を張る山
で、名前と裏腹のやさしい山容をしています。西側の展
望が良く、千ヶ峰から加美アルプス、粟鹿山など、播、
丹、但の山々が望めます。
【参考】2.5万図『丹波和田』『大名草』


大井戸山の山頂北端から南方向。右のまたに山と市原峠を挟んで一際高い千ヶ峰。ずんぐりした飯森山の左奥に笠形山

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