伯母ヶ峰逍遥(2)〜南北尾根を歩いて北峰

伯母ヶ峰北峰(点名『多古辻』)
平成24年 9月29日(土)
【天候】小雨のち曇り
【同行】別掲


 なんと二週続けての伯母ヶ峰である。「あんたも好きね」といわれそうであるが、これ
にはちょっとした理由がある。伯母ヶ峰には三等三角点(点名『人見』)の置かれた主峰
(1,268m)と国土地理院の地形図にある伯母ヶ峯(1,266m標高点)、それにも
う一つの三等三角点(点名『多古辻』)が置かれた伯母ヶ峰北峰と呼ばれるピークの三つ
があるのだ。今回は前回行きそびれた伯母ヶ峰北峰に行ってみるのをメインに、前回は東
西稜線を歩いたので今回は南北稜線を歩いてみようという趣向。この辺り、車の便がいい
割に古い自然林が残っており、いわばコストパフォーマンスに長けた尾根歩きができるの
だ。(笑)

 8:30。何時もは混んでいる川上村の道の駅も閑散としたもの。トイレを済まして待
っていると、Tちゃんの車。やがてMさんの車も到着して、今日の総員4名が定刻に揃う。
早速、前回と同じく大台ドライブウェイ途中の閉鎖されたドライブイン前へ向かう。台風
の影響で、天気予報は時間経過と共に悪い方向へ傾いている。それでも何とか15時くら
いまでは持ちそうだというわりに、もうフロントガラスには水滴がつき始めている。

南尾根取付きの林道。左側が尾根末端

 ドライブインに1台デポして2kmばかり南に車で移動すると、左の斜め逆方向に林道が
延びていて、入口の通行遮断ゲート前が小さな空き地になっている。ここが今日の取付き
だ。小さい尾根が林道始端から始まり、その右横を忠実に1.5車線幅のダート林道が北
へ延びる。電信柱があるのは伯母ヶ峰にある関電か農水省の施設の為のものだろう。反対
の林道右側(東)は深い谷だ。時折、右の視界が開けて台高の山々が凹凸の激しい山波を作
っているのが目に入る。その中の一際大きな山体は白髭岳だろうか。近くの笠の形の山は
キワダサコかもしれないが、悲しいかな、よくわからない。時折、パラパラと小雨が落ち
てくる。付近の山々の姿もはっきりしているからまだ大丈夫とは思うものの、下り坂であ
ることは間違いない。なんとか昼過ぎまではこの程度で収まってくれることを祈らずには
いられない。

 作業小屋の前に打ち捨てられた古い青色の四輪トラックの前を通り、大きく湾曲するよ
うに林道は東寄りにカーブする。地形図にもある高みが近づいてくる。ということはそろ
そろ地形図の点線路が現れる頃だ。するとそれらしい踏み跡が左手へ降りてゆく。但し、
テープなど目印は皆無である。感覚的に少し早目の出現に思われたし、道が下ってもいた
から林道のもう少し先も偵察してみる。それに代わる踏み跡らしきものはなかったから、
多分、点線路はこれだろうということになる。すると一旦ぐっと下った道はすぐ登りに変
わり、間違いないことが分かった。

林道から伯母ヶ峰への分岐

 ここは上北山村と川上村の村界尾根。概して左の上北山村側はカエデ、ホウノキ、ミズ
ナラの自然林、右の川上村側はヒノキの人工林である。なぜか煙草の吸い殻や古い飲み物
の缶が目立つ。山仕事の名残だろうか。それにしてもこんな落し物は頂けない。

 時たまバイクの音がするのは尾根の下をドライブウェイが走っているから。最初のピー
クは左に巻き道がある。周囲は雨が降ったこともあってしっとりとした林である。所々、
鹿の寝床が目立つと思ったら、ほんのすぐ近くで甲高い鹿の警戒音が響く。

 再び尾根に出ると防火帯なのか林道ほど幅がある道。次のピークは地形図の伯母ヶ峯(1,
262m)の南のCa1,220m峰で、伯母ヶ峰南峰と呼んでもいい位の山である。急斜面
にはフィックスロープも用意されている。とはいえ2、30m登るだけだから大したこと
はない。登りきると木立の向こうに伯母ヶ峯の姿が現れる。そこから一気に下った鞍部に
はドライブウェイへのショートカット道の私製道標があった。確か以前、大台ケ原からの
帰りに、伯母ヶ峰に登る取付きの梯子がドライブウェイの法面に架かっていた記憶がある
のだが、そこへ降りていくのだろう。(下山後、車で探してみたがそれらしい降り口は見
つからなかった)

 伯母ヶ峯へも急斜面である。ここにもフィックスロープが用意されているが、なんと丸
太の階段がある。砂利混じりの滑る路面だからこれは助かる。ちょっと息を切らして、や
や右方向に進めば一週間前にもやって来て見覚えのある伯母ヶ峯東の尾根出合であった。

 伯母ヶ峯から西へ歩いて前回同様、ジャンクションピークへの東の取り付きから露岩が
目立つ小さな尾根を緩やかに登ること数分でジャンクションピークなだらかな頂上に着く。
「上北山村営林」のセメント標識とプラスチックの骨だけになったウチワが地面に立てて
ある。北尾根はここから始まる。テープも疎らにあるが、素直な尾根なので間違いようも
ないだろう。
伯母ヶ峰北尾根はこんな感じ

 ブナやミズナラの大木が尾根を彩る。踏み跡はしっかりしているが一般ハイカーはほと
んど入っていない感じである。今までほとんど展望はなかったのだが、大普賢岳が遠望で
きる箇所が一つだけある。またどの辺りであったか、伯母峰峠西の関電のアンテナ施設が
意外に近く見えたのに驚いた。北尾根と云っても実際は北西に延びているからである。

北尾根途中から大普賢岳

 やがて細長い尾根の西側に長細い平坦な台地が並行する箇所に出る。赤錆びた古い檻が
放置されていて、その横に鹿の寝床があったのは何かちょっとシニカルである。

 広かった尾根が岩がちの痩せ尾根に転じ、傾斜が増してくる。同時にシャクナゲやヒメ
シャラ、シロヤシオが多くなってきて、いかにも大峰や台高の山らしくなってくる。いつ
も思うのだが、ミツバツツジやヤマツツジを見慣れている者にとっては、シロヤシオの大
木の幹の太さはとてもツツジの仲間とは思えない。ここのも直径20cmはあって、赤松の
幹と見紛うほどのものがある。

 奥駈道に似た踏み跡を木々の幹にすがりながら一登りすると倒木があって、それを過ぎ
ると存外早く伯母ヶ峰北峰の頂であった。三角点標石横に私製の白い山名板が立てられて
いる。台高や大峰でよく見る某山の会のものに似ているがフクロウマークではない。意外
に広い山頂はグネリと曲がった大きなブナ、ミズナラの大木が目立つ静かな場所だ。山頂
を一巡りしたら、適当に腰を下ろして食事タイムとする。

 天候が悪くならないうちに下山しようということで20分ばかりの休憩で往路を戻る。
台高の峰山と同様に、復路に高度を上げるので帰りの山に登っているような何か不思議な
感じがする。それでも復路は早い。あっという間にジャンクションピークで、今日は下山
点を示すテープに忠実に植林と雑木の間を下りていく。5分ばかりで伯母ヶ峰の登山路で
ある。あとは前回と同じ道を伝ってドライブインに戻るだけである。

 結局、空も最後まで泣き出すのを我慢してくれた。これで伯母ヶ峰を十字形に歩いて極
めた事になる。前回もそうだったが今日も全く人に遭わない静かな山歩き。ヤマケイの『
大阪250山』にも記載があるのに、なぜか地味な二週連続の伯母ヶ峰の山歩記録である。

追伸

 吉野町楢井付近の国道を走っていると、彼岸花が今は盛りと咲き乱れる場所があった。
少し時間があったので寄り道した。集落の中も彼岸花が咲き乱れていた。

吉野町楢井付近にて



【タイムチャート】
06:40自宅発
08:24〜08:45川上村道の駅
09:25〜09:30林道始点(駐車地)
09:55〜10:00尾根道分岐
10:28〜10:35大台ドライブウェイへの分岐
10:44和佐又・伯母ヶ峰道出合
10:46地形図の伯母ヶ峯(1,262m)
11:00ジャンクションピーク東側取付き
11:03ジャンクションピーク(Ca1,240m)
11:44〜12:08伯母ヶ峰北峰(1,187.9m 三等三角点『多古辻』)
12:35〜12:37ジャンクションピーク(Ca1,240m)
12:43北尾根へのジャンクションピーク西側取付き
13:06伯母峰峠登山口
13:10大台ドライブウェイ休憩所前


■同行 たらちゃん、たるるさん、水谷さん(五十音順)


伯母ヶ峰北峰のデータ
【所在地】奈良県吉野郡川上村
【標高】1,187.9m(三等三角点『多古辻』)
【備考】 大普賢岳から東に延びる七窪尾根の延長上に位置する伯
母ヶ峰の西側から北へ延びる尾根の先端にあるピークで
す。山頂は意外に広く、面白い形をしたブナやミズナラ
が佇立しています。また尾根上もブナやミズナラの古木
が多く、踏み跡がしっかりしている割に歩く人は少ない
ようで静かです。
【参考】
2.5万図『大台ヶ原山』、『弥山』
エアリアマップ『大台ヶ原』



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