伯母ヶ峰逍遥(1)〜伯母峰峠から西尾根

南尾根道との合流点にて
平成24年 9月23日(日)
【天候】小雨のち曇り
【同行】別掲


 9月23日は月例オフの日である。ところが間が悪いことに好天が続くのにこの日だけ
が雨マーク。幹事のTちゃんはそれでも日中は雨が上がるとみて決行を決意する。この辺
り幹事としては悩ましい所である。その思いに反して、前日の夜半から降り出した雨は朝
には雨音も強い本降りである。はたして決行は吉と出るのか。

 前日の昼過ぎから、天候が下り坂の前兆であるうろこ雲が空を覆い始めていた。案の定、
夜半から崩れだした空から、雨滴が間断なく車のフロントガラスを叩く。こりゃあ中止か
な、駄目なら入之波温泉でもと思いつつ、とりあえず集合場所の川上村の道の駅へ行くこ
とにする。

 Mさんをまずピックアップして、途中で大和上市駅に寄りHちゃんを待つ。すると大阪
であれだけ降っていた雨が、なんと奈良県に入ったら空がやや明るくなり、駅に着く頃に
はほとんど上がってしまったではないか。この分なら結構出来そうかもと期待を抱かせる。

 道の駅には集合時間の10分前くらいに着いただろうか。雨を懸念したのか数人のキャ
ンセルが出たが、今日参加するメンバ全員がもう揃っており、我々を合わせて総勢は8名、
すぐに出発だ。

 上北山村のHPによれば、先月ようやく迂回せずとも通行可能になったという大台のド
ライブウェイ。路肩のそこここに落ちた石や岩屑が堆積しているのを見る内に、迂回を余
儀なくされた原因である山崩れ現場を通過する。路面にはまだ鉄板が敷かれ、覗くと怖い
くらいの斜面でまだ工事は続いている。我々の前を先行する大台ヶ原に向かう大型バスが
羊腸の道に難渋している。道の駅でイレ休憩していたバスだ。路肩が広まったところで先
行させてもらい、お蔭で少し余分に時間を要したけれど、予定の伯母ヶ峰の休憩所(閉鎖
中)の前で車をとめる。標高1000m近く。肌寒い。幸い、雨は上がっているが周囲の
山は濃いガスの向こう側である。やや雲が切れ、風が出てきたのは天候回復の兆しとみて
良かろう。傘はザックに入れたが一応、レインウェアも持参して行くことにした。

 車道を少し戻ってトンネルの前のT字路を通過し、迂回路になっていた林道を100m
も行くと、法面の崖に今日の出発点となるパイプ製の長い階段が設置されている。以前は
もうちょっと手前に梯子があったような記憶がある。朽ちてしまったのか今は影も形もな
い。
伯母峯峠トンネル西の取付きにて

 まずは記念の集合写真を撮って階段を登る。これが非常に急峻。エンジンのかかる前の
体には結構息が切れる。Tちゃんによると63段あったとか。登りきった崖上から下を覗
くと足がすくむ。早く林の中へ入ろう。(^^;

 そこからは見慣れた黒いプラ階段がジグザグに付いている。パイプ製階段は関電が巡視
の為に工事したもののようだ。お蔭で大して汗もかかずに七窪尾根に上がることができる。
そこからキレット状に窪んだ伯母峰峠はすぐそこで、見覚えある関電の小施設がある。こ
こで不思議なのは、峠のキレットの北側に古いコンクリートの欄干があること。隧道出入
口の土止めなのだろうか?(実は隧道出入口のではなく、道路法面上部の土止めだったと
は後日判明)

 進行方向やや左側に峠から尾根への続きの踏み跡がある。上がると左手は植林(北)、右
手(南)が本来の雑木林で、明快な道が境目にある。雑木はブナやミズナラ、ハウチワカエ
デといった樹木が主体。白いガスがその間を流れ視界は10mくらいだろうか。その雑木
林が抜け落ちたように無くなって展望の効きそうな箇所がある。しかし、立入禁止を示す
黄色いテープもある。ガスで遠望も利きそうになく、確かめるのは帰りにしよう。(^^;

ガスで幻想的な伯母ヶ峰西尾根を往く

 徐々に高度を上げて、やや左前方の桧の植林の斜面を直上する切り開きとその斜面を巻
く小道とのY字路らしき箇所にやって来た。左の斜面を上がれば、伯母ヶ峰北峰と呼ばれ
る三角点ピーク『多古辻』へと続く北尾根を結ぶジャンクションピークへと上がれるよう
だ。ジャンクションピークへは、このピークを巻いた小道を進んだ先(東側)にもう一箇
所、取り付きらしく思われる箇所がある。どちらかといえば東側(小さな露岩が幾つかあ
る)が登りよい。取り付きを示す赤テープが一つある。

 幻想的なガスが流れる中、ミズナラやブナの大木が次々に現れる。その古びて苔むした
ウロから、ヒョイと一本タタラでも出てきそうなそんな雰囲気である。そんな中、ポツン
と一本、ねじれた白い花弁を持つ花が目に付く。花博士のSさんよれば、ハグマの仲間の
テイショウソウとのことで、手持ちの図鑑に載っていない植物だ。斑の入った丸い葉はな
かなか美しいものであった。そんなことで、いつの間にやら国土地理院の地形図上の伯母
ヶ峯(1,262m)を越えてしまったようで、南からの道との合流点までやってきてしま
う。ゆっくり歩いて1時間の行程で、ここで小休止をとる。

 ところでこの伯母ヶ峯と記載された1,262mピークのことである。小さな頂に黄色い
プラ杭があるのみで山名を示すものは皆無。折角、国地院が指定しているのにプレート位
あって良さそうなものなのに些か冷淡な扱いではないか。(笑) 以前あった熊捕獲用の檻
もなくなっている。GPSなどでよほど注意していない限り、只の無名ピークとして通り
過ぎてしまうだろう。

 合流点を過ぎると、尾根は馬の背の狭い岩稜となり、よほど大峰や台高らしくなってく
る。注意してみるとシロヤシオが多く、シャクナゲも散見されて春は殊のほか華やかなの
ではなかろうか。ブナ、カエデ類も多く勿論、秋もいいだろう。

 どこでもそうだが、ここも以前はもっと茂っていたクマザサが全て枯れて今は薄茶色の
茎のみになっている。歩き良いのではあるが、何か全国的となると不気味な感じもする。
5分も歩けば農水省の伯母ヶ峰中継局の建物が現れる。建物横の天然杉の古木は今も健在
である。

 前回よりも踏み跡は濃くなっている。明瞭な踏み跡とテープに導かれて、ガスがたなび
く中を進む。このガスでは北側の大迫ダム方面を見はるかすべくもない。そうして前方に
こんもりとした高み。10mばかり斜面を登ると、埋設部までむき出しになった三角点が
岩がちの狭い頂にシャクナゲやヒメシャラ、トウヒのような針葉樹に囲まれて立っている。
伯母ヶ峰本峰とされている『人見』に到着だ。国地院の伯母ヶ峯より5mばかり高い。は
っきりした踏み跡はここまでのようで、その先はマニアの世界だ。少し遅くなったけれど
ここで昼食を摂り引き返す。
伯母ヶ峰山頂の三角点『人見』

 帰路は例のジャンクションピークに寄ってみる。東側の取付きである支尾根の細い始点
から登り始める。といってもこちらからなら2、30m登るだけで山頂に行き着いてしま
う。山頂の目印は上北山村のセメント杭となぜかウチワのプラ製の骨である。北尾根方面
は下草もなく、こちらも植林と雑木の境を行くようだ。次回辿ってみたい。

伯母ヶ峰北尾根とのジャンクションピークにて

 山頂付近の木の幹に和佐又山を示す私製標識がある。迂回路が出来る前は縦走路はここ
に登ってきていたのかもしれない。それに従うように一つ赤テープがあって、植林と自然
林の境界を下りて行くように示しているが、もっとも下山は南側に下ればどこでも迂回路
へ出られる。滑らないように降りていくと、ガスが切れ始めるタイミングに遭遇した。丁
度今いる高度が境目で、それより上はまだガスの中なのだけれど、晴れてみるとなんとク
リアな視界であるか。まるで白内障の手術の前後みたいだ。(笑)

 さて、次は往路で気になっていた『危険、立入禁止』の黄色いテープとロープで囲われ
た場所を怖いもの見たさで覗いてみる。そこは切れ落ちた土の崖で、はるか3、40m下
にドライブウェイが走っている。ハイカーの転落防止と同時にドライブウェイへの落石防
止を兼ねたもののようだ。往路ではガスで見えなかった向かいの山並みが雨で待機中のチ
リが洗われて、すこぶるクリアに目に飛び込んでくる。真正面の綺麗なピラミッド形の山
は、左側の高みにドライブウェイが通じている様子から、辻堂山なのかもしれない。

 休憩所まで戻ってきた。まだ大普賢岳はガスの中であったが、日が射してくる。雨にも
降られずなんとか無事に定例オフは終了。Tちゃん、幹事ご苦労様でした。おっと、早い
ものだ、次は吾輩の番であるな。(笑)



【タイムチャート】
07:40千里中央(集合地)
09:10〜09:25近鉄大和上市駅前
09:55〜10:00川上村道の駅
10:30〜10:45伯母峰峠休憩所
10:50伯母峰峠登山口
11:00伯母峰峠
11:40北尾根へのジャンクションピーク東側取付き
12:00地形図の伯母ヶ峯(1,262m)
12:02〜12:10南尾根分岐
12:16〜12:18農水省伯母ヶ峰中継局
12:40〜13:00伯母ヶ峰(1,266.7m 三等三角点『人見』)
13:15農水省伯母ヶ峰中継局
13:26南尾根分岐
13:46〜13:55北尾根へのジャンクションピーク東側取付き
13:59〜14:01北尾根へのジャンクションピーク(Ca1,240m)
14:06北尾根へのジャンクションピーク西側取付き
14:48伯母峰峠登山口


■同行 幸さん、たらちゃん、二階堂さん、二輪草さん夫妻、ハム太郎さん、
    水谷さん(五十音順)


伯母ヶ峰のデータ
【所在地】奈良県吉野郡川上村、上北山村
【標高】1,266.7m (三等三角点『人見』)
【備考】 大普賢岳から東に延びる七窪尾根と大台ヶ原の間に盛り
上がるピークで、地形図の伯母ヶ峯は1262mの標高
点ピークになっていますが、その東の三角点峰が主峰と
されています。尾根上はヒメシャラ、シロヤシオ、アケ
ボノツツジが多く、自然林の中の静かな山歩きが楽しめ
ます。和佐又山への林道途中から登るのが正規ですが、
大台ヶ原ドライブウェイ途中の売店付近から登ればショ
ートカットできます。アプローチは公共機関が不便な為、
マイカーが便利です。
【参考】
2.5万図『大台ヶ原山』、『弥山』
エアリアマップ『大台ヶ原』



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