石榑峠から往く三池岳

三池岳(屈曲点ピークの北東の無名ピークから)
三角点は左の峰にある
平成24年 4月15日(日)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】単独


 以前、竜ヶ岳から石榑峠に降りて来たおり、反対側のNTT中継所跡の取付け道路から
現れた二人連れの青年と一緒になった。聞けば釈迦ヶ岳まで往復してきたのだとか。この
春初めて暖かい好天となりそうな休日の、あれこれ行先を考えている内に再びそこへ出張
ってみる気になった。ただ地図を見てみるとアップダウンも多そうで、とても小生の鈍っ
た体力では釈迦ヶ岳までは無理そうである。(笑) というわけで行程は竜ヶ岳からも見え
ていた手前の三角点峰、三池岳までとした。実際、三池岳から眺めた釈迦ヶ岳はやはりま
だまだ彼方。やっぱり三池岳までで十分でありました。(^^;

 名残の桜を求めて繰り出す行楽の車が多いのではと懸念されたものの、若干多い程度で
渋滞もなく八日市ICを出てR421を東進する。永源寺を過ぎるといよいよ山の中。永
源寺のダム湖周辺の山々の色も春めいて、至る所でヤマザクラの白さが目立つ。杠葉尾の
集落には銚子ヶ口の登山口があるが、車のテールゲートを開けて今しも準備をする小父さ
んがいる。

 石榑トンネル手前を左折して旧道に入る。羊腸もかくやと思われる蛇行道はブラインド
カーブだらけといい、狭さといい、とても国道だったとは思えないけれど、舗装の程度は
良い。ぐんぐん高度を上げていくと目の前に竜ヶ岳の大きな山容が現れてくる。最後の大
きなカーブを曲がると県境の石榑峠だ。広くもない峠にはもう6台ほど先行車が止まって
おり満車の状態である。Uターンして50mばかり戻り、路肩が広まった部分に車を止め
る。

 取付きのザレ場を竜ヶ岳へと準備を終えた人から次々と登って行く。しかし南へ向かう
のは小生だけのようでちょっと淋しい。(笑) ゲートが閉められたNTT中継局跡への管
理車道を200mばかり登ると建物跡の大きな敷地だ。建物の跡形もなく綺麗に整地され、
今はヘリポートに使われているようである。その場に立つと三重県側が大きく開け、伊勢
平野の向こうに伊勢湾も霞んでいる。視界が良ければ素晴らしい景観に違いない。

 縦走路は敷地の奥の斜面、なぜか古タイヤが並べられた部分から続く。近づくと目立た
ないが案内標識もある。案内標識といえばこの先、三池岳までの距離を16分割して現在
何番目なのか、更に現在地の緯度経度も案内してくれる標識が立っている。但し、緯度経
度は標準の世界測地系ではなく、旧体系の日本測地系のようなので注意が要る。

石榑峠・三池岳間に立てられた指導標
かつて道迷いが多かったのかもしれない

 いきなり花崗岩質のザレた白っぽい崖の上に出る。崖っぷちを歩けと言われれば怖いが、
トラロープ付きの新しい踏み跡が崖っぷちから1m余り離れた部分にできていて助かる。
振り返れば竜ヶ岳の抱くような大きい山容があり、山襞にはまだ残雪が覗く。その左手遠
くの三角錐は君ヶ畑の天狗堂だろうか。

 その後は緩い登りで792m標高点の小さな高みを抜けると、崩壊防止に植えたのか松
が整然と植えられた段差の間を通過する。道はややはっきりしない部分もあるがすぐにま
た明瞭になる。と今度は大きく下降を始め鞍部からは一転きつい登りだ。右下はるかから
谷を流れる水音がしていたように思うが、この辺りでだったか純白の梅型の花が道の両脇
にばら撒いたように咲いているのを見る。この時期の山でよく見かけるバイカオウレンだ。
しかも花が少し大きめ。踏まないように歩くのが難しいくらいの数である。

768m標高点の南側の斜面から眺める雄大な竜ヶ岳

 再びトラロープのある厳しいガレ場をこなして今度は広い鞍部に出る。落葉樹の疎林は
落ち葉で少し道が分かり難いが、やや地面が露出した黒っぽい部分を追えばよい。鞍部中
央付近には例の6/16の標識がある。それを過ぎるとまた登りとなって768mの標高
点ピークだが、これは頂きのすぐ西側を巻いていく。古いエアリアマップにはクマザサが
深いと書かれていたが、今までもこれからも全て枯れて褐色の茎が目立つばかりで歩き易
い。7/16の標識がピークのすぐ近くにあり、この付近まで来るとようやく三池岳らし
い峰が尾根筋の向こうに東西に横たわっているのが望める。左手にはR421らしいワイ
ンディングロードがくねっている。と、下からバイクの騒音が湧きあがって来る。石榑ト
ンネルがちょうどこの付近の下を貫通しているのだ。ここで約半分の行程。アップダウン
が多く距離のわりにやや疲れてきた。(笑)

 稜線は西に方向を変えてまたまたザレた斜面の登下降になる。ここがこのコースで一番
危険かもしれない。同じ鈴鹿の高畑山のナイフリッジに似て、南側がザレてスパッと切れ
落ちている。やや北側に逃げてザレ場の登りにかかると、真ん中辺りにちょっと見では今
にも落ちそうな大石がある。大丈夫なんだろうが何となく避ける態勢で、真新しいトラロ
ープを探りながらしばらくあえぐとそこは屈曲点ピーク。黒々とした大きな杉が3本ある
ので目印になる。
南から見た屈曲点ピーク(Ca920m)
山頂の大杉が目印になる

 再び南へと方向を変える。946m標高点ピークまで来ると14/16の標識がある。
歩いている最中から鹿の鳴き声がしていたが、まだ黒々とした新しい鹿の糞が固まって落
ちている。この辺りにいたのだろうか。やれやれやっと三池岳らしい東西に長い山頂が目
の前だ。その前に最後のザレ場がある。花崗岩質の白い砂は崩れやすい。その先はイヌツ
ゲやアセビ、ツツジなどの疎林。踏み跡が錯綜して少し分かりづらいが、南に向かえばぽ
っかりと西峰に飛び出す。三池岳と彫られた立派な石標が設置してある。南側は傾斜は緩
いがこれまたザレた斜面。でもそのおかげで展望はすこぶる良く、鈴鹿主稜を構成する釈
迦ヶ岳、御在所岳、雨乞岳の山並みが延々と続く。その手前は八風峠のある緩やかな雑木
林のうねり。西の方には雪を頂いた山並みが霞みに浮かぶ。多分、比良や湖北の山々に違
いない。だとしたらその手前には見えないけれど琵琶湖があるはずだ。

 誰もいないと思ったら先着の若い男女ハイカーが二人。東に見えるピークに三角点はあ
るという。まずは三角点に挨拶すべく踏み跡を辿って50mばかり。小さな裸地に綺麗な
三角点が見つかった。八風キャンプ場から上がってくる明快な踏み跡が東側にあるほかは、
アセビとシロヤシオに囲まれほとんど展望はなく西峰が見えるのみ。というわけで小憩し
てすぐに西峰に戻ることにする。ところで、山名の由来となった池は何処だろう。(八風
キャンプ場への道をしばらく辿るとあるとは後に知る)

覆っていた笹も完全に枯れた三池岳山頂。奥は竜ヶ岳

 男女ハイカーは食事の準備中。邪魔しても何なので、少し離れた小岩の横に居を定めこ
ちらも食事の準備だ。三池岳は八風キャンプ場からがメイン登路のようで八風峠から上が
って来る人が多い。(石榑峠からここまで小生がすれ違ったのは屈曲点ピークの南付近で
遭った一人だけだった。)件の男女二人組と小生だけだったのが大休止中に2組増え、少
し前からどこかで声がすると思っていたら、おりしも10名位の団体さんが蟻の行列宜し
く一列になってやって来るのが遠くに見えたので、そろそろおいとましようとやおら腰を
上げる。

 ピストンの帰路は普通、ほぼ下り一辺倒になるものだが、今回は違う。下り基調ではあ
るが何度も登りがある。荷は軽くなったが体は重くなるし脚も重くなる。(笑) 小憩の言
い訳に、振り返り振り返り風景をカメラに納めながら峠へ。往路で歩いているので未踏の
緊張感からも解放されてのんびり下る。適当な所でコーヒーブレイクしようと思っていた
が、ザックを下ろすのが面倒になる内にNTTの跡地まで来てしまう。風が弱い適当な所
で今度は本当に小休止してコーヒーブレーク。湯をフィルターに注いでいる間に寄って来
た虫を手のひらで追った拍子にガタッ。しまった!肘が引っかかってコーヒーが転倒して
しまった。なんということを!

 失意?で撤収し峠に降りて来ると、あれからも車は増えたようだが、小生の後から来た
人もおらず、帰路もすれ違った人は一人もいなかったから、みんな竜ヶ岳に向かったよう
だ。ひと気の少ない鈴鹿の縦走路。じっくり歩くにはなかなかいい道でした。



【タイムチャート】 
07:15自宅発
09:10〜09:20石榑峠(駐車地)
09:28〜09:29NTT跡地
09:41792m標高点ピーク
10:15768m標高点ピーク
10:43屈曲点ピーク
10:57946m標高点ピーク
11:05〜11:06三池岳西峰
11:07〜11:10三池岳東峰(971.8m 三等三角点)
11:12〜11:46三池岳西峰(昼食)
11:54〜11:55946m標高点ピーク
12:08屈曲点ピーク
12:38768m標高点ピーク
12:58792m標高点ピーク
13:05〜13:20NTT跡地
13:23石榑峠



三池岳のデータ
【所在地】三重県いなべ市
【標高】971.8m(三等三角点)
【備考】 竜ヶ岳と釈迦ヶ岳に挟まれた鈴鹿山脈中央部に位置する
山です。山頂付近に『おきく池』他の池がある為に三池
岳と呼ばれるようです。三角点峰の西側からの展望が良
く、伊勢湾や御在所岳をはじめとする南鈴鹿の山々が望
めます。石榑峠からの縦走路はかつて熊笹が一部覆って
いたようですが、今は歩き易くなっています。
【参考】2.5万図『竜ヶ岳』『御在所山』


三池岳標識ピーク南面から八風峠方面。左が三池岳三角点ピーク、その横奥が釈迦ヶ岳で最奥には御在所岳が霞む

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