佐仲ダムから三尾山そして黒頭峰

三尾山の東の稜線から夏栗山と黒頭峰(右)
平成24年 4月 1日(日)
【天候】晴れたり曇ったり
【同行】単独


 ここのところ、一度は行かねばと気になっていたにもかかわらず、なんとなく機会に恵
まれずに登り残していた山を訪ねてみたい気になっている。そんな山が各地にあるが、兵
庫丹波では西多紀アルプスの黒頭峰だ。過去何度か機会はあったが、雨で中止だったり、
予定を変更したりで今まで登りそびれていた。今日はその懸案解消?に黒頭峰へ。黒頭峰
だけだと距離も短い。そこで鏡峠からの中央分水界歩きと絡めてみた。
小生にとってはこのくらいが負荷的にも丁度いいレベルかも。(笑)

 丹波の山にお邪魔するのはいつ以来だろうか。2年前の向山のヒカゲツツジ以来ではな
いだろうか。もうそんなにご無沙汰しているとは。月日は本当に矢の如しである。

 8時半頃には出発するつもりが、いつもの遅れ癖。小一時間も遅れて9時過ぎの出発と
なってしまう。しようがない。高速料金を奮発しよう。(笑) 今日は佐仲ダムから林道経
由で鏡峠に登り、中央分水界の岩稜を愉しんで三尾山で食事。佐仲峠に下って黒頭峰をピ
ストンした後、佐仲ダムへ降りるというコースを採るつもりだ。舞若道の丹南篠山口IC
で降りて佐仲ダムを目指す。この佐仲ダムもオフ以来、十年ぶりくらいではないだろうか。
見覚えあるハイマート佐仲への道を左にしてダム湖畔の道へ出る。鏡峠越えの古い道しる
べを過ぎた辺りには釣り客の車がずらりと止まっていて、その最後尾に車をつける。途中、
パラパラと小雨がフロントに滴を残したが、準備している最中も冷たい風と共にパラパラ
と来る。気分が萎えるなあ。(^^;

 山懐へ向かって歩いていると釣場の管理事務所から小父さんが出てきた。「山登りです
か?気を付けて」気さくに送ってくれる。ダム湖の最奥には遊歩道の案内があるので眺め
る。自治体が良くやることだが、予算がついて造ったはいいがその後は放ったらかし。自
然に還った施設も少なくないようだ。路肩にあるオフィシャル道標は佐仲峠まで1.6km、
三尾山2.5kmだという。林道はしばらく植林だがその上は自然林。ギブシの蕾、名の知
らぬ雑木も芽も膨らませ加減。昨日の雨で溢れた水が路面を洗い、左の谷川の水音が騒が
しい。まだまだ冷えるけれど、何となく春の到来を感じさせる風情である。

 また道標が見えてきて右に地道の林道が分岐している。以前、オフで歩いた道だ。鏡峠
に行くにはこれが一番早くかつ楽。一台白い車が止まっているのは先行者がいるようだ。
ここから佐仲峠1.0km、三尾山1.9km。

 反対方向へ戻る感じで登って行く。初めはそれほど荒れた感じはしないが、遊歩道と共
に整備されたらしい展望台への案内標識を過ぎると轍がえぐれ、崖からの土砂崩れ跡があ
って車は入れない。この辺りまで来ると南側に周囲の山並みが顔を出しはじめる。今日訪
れる予定の黒頭峰や夏栗山の姿もある。丹波にあって珍しく優しい山容だ。やがてやや広
くなった林道の終点は分岐から20分ほどの行程である。ここから本格的な山道、といっ
ても高低差はほとんどない。木の枝を地面に集めて"通せんぼ"された分岐を右に見て左に
巻いていくと間もなく道標が出る。『分水界の径』。500mと標高は低いがここは中央
分水界の尾根である。
久方ぶりの鏡峠。お馴染みの兵庫登山会の標識がある

 まずは右に折れて鏡峠へ寄っていくことにする。すぐに急斜面になるが、下から話し声
がして、上がって来るご夫婦らしい二人組に道を譲る。林道分岐に置かれていた車の持ち
主らしい。ズルズル誰か滑った跡があるが確かにそれほどの傾斜である。周囲より30m
近く深くくぼんだ鏡峠。標高は425m。北は中山へ。こちらは歩いたことがある。南は
小坂へ通ずる。車を置いたダム沿いの古い道しるべのある所に出るのだろうが、今は中途
部分が廃道と聞く。峠の東は鋸山を経て栗柄峠へと続く。ここも前に歩いたけれど、数多
のアップダウンのあるロングコースで、歩き終えた時、膝が少々笑った覚えがある。(^^;

 取って返して佐仲峠を目指し稜線を西へ歩く。雨か?分厚く溜まった落ち葉を叩く音が
する。見れば米粒みたいな白い粒。あられであった。

 谷の源頭を巻く形で北へ方向を変えると、その谷沿いに下って行く道がある。案内板に
あった遊歩道だろうか。それを見送って広くなった尾根を再び西に向かって歩く。前方に
三尾山らしい険しい山が見え始め、下から高速道の車の音が這い上がってくる。

 525m標高点はいつの間にやら過ぎたようで、狭いゴツゴツした岩の尾根となる。そ
の中にテラスのように張り出した岩がある。登ると素晴らしい展望で、東の鋸山、北の妙
高山や五台山方面。西の三尾山東峰(前三尾)、南は黒頭峰と夏栗山が広がっている。名
物ヒカゲツツジの蕾はまだまだ堅い。岩からそのまま西へ向かおうとしたがちょっとした
段差で降りるのが困難。目の前に兵庫登山会の『覗岩』の標識。思い出した。そういえば
以前もここで展望を愉しんだ岩だった。少し戻って岩から降りる。

稜線の展望岩から三尾山東峰。ヒカゲツツジの蕾はまだ堅い

 ちょっとしたピークが幾つか控える。その度にアップダウンを繰り返す。その中でも顕
著なピークを越えると佐仲峠とのT字路だ。ここから5分ばかり雑木林の登りをこなせば
三尾山城のあった本峰である。全周見渡すことができる広場の中央にはお馴染みの立派な
御影石の碑がある。いつもそこにザックを置いて食事するのだけれど、風上側の視界がに
わかに悪くなったと思ったら5mm大のあられがザーッと音を立てて落ちだした。先着して
いた鏡峠ですれ違ったご夫婦も木の下に退避、こちらも林の中に退避しようとうろうろし
ていたら小降りになる。しばらく様子見していたら空も明るくなった。もう大丈夫だろう。
石碑横にザックを下ろす。
三尾山本峰から東の稜線。鋸山の奥に三嶽の堂々たる姿

 食事を終えて後半部へ。佐仲峠への道は相変わらずかなりの急斜面だ。踏み跡横の手頃
な立木には幹がつるつるになったものもある。(笑) 一気に下ると、昔は茶店があったら
しい平坦な斜面となり、古い石地蔵が鎮座する峠だ。

佐仲峠。この尾根の尻尾に乗ると
黒頭峰・夏栗山へのいい道がある

 一息入れて黒頭峰を目指す。取付きはテープだけでやや分かり難いものの、身の丈ほど
の台地の上に上がって見ると明確な小道がある。U字状に深くえぐれた部分もあって、昔
ながら繁く歩かれた痕跡が残る。ここで思い出すのは亡父のこと。徴兵で篠山連隊に入営
した後、盃ヶ岳や黒頭峰に演習で登らされたと生前話していたが、佐仲峠のことも知って
いたので多分この道で登っていたのだろう。そんなことを思うと、初めて歩く道もなんだ
か懐かしいような。

 夏栗山との分岐道標のある鞍部を過ぎ、小さな尾根に乗り、左へ方向を変えて進む。三
尾山に比べて常緑樹が多く、ちょっと暗い印象を受ける山道だ。コの字型に踏み跡は谷の
源頭を迂回する。その先は黒頭峰の頂上直下の登りである。先程までの明確な踏み跡が見
当らなくなる。きつい傾斜の直登である上に、粘土質の土が良く滑ることもあって、何処
を登っても一緒だからだろう。ただ、白いPPテープとこの辺りに多い大山振興会の白い
ポールが真っ直ぐ頂上に誘導するので、基本はそれに従っていけばよい。ただ直登は滑っ
てきつく、適当にステップを切りながらの苦闘である。

黒頭峰の三角点

 頂上付近に出て右に10m。ちょっとした切り開きの中に三角点の標石がある。見慣れ
たものよい大きいなと思ったら二等三角点だった。点名は『黒頭山』だ。黒頭山、黒頭峰
(くろずぼう、くろつぼ)とは面白い山名であるが、慶佐次さんの『兵庫丹波の山』の記
述によると、地元では黒頭峰を雄山、夏栗山を雌山と呼んだことから男すなわち黒、頭す
なわち「つぶり」で「黒つぶり」。夏栗山は雌すなわちしなやかな女を現す娜で、「娜つ
ぶり」からの転訛らしいという。なるほどと思える説である。

 展望がほとんどないので2、3分憩った後は下山。元来た道を引き返す。まずは難所の
急斜面。立ち枯れの木が多いので掴まった木に安易に頼ってはいけない。一度は直径10
cmはあろうかという木がボキッと折れて倒れたのには驚いた。なんとか尻餅つかずに斜面
を下れた時には、思わずホッと溜めた息が出た。

 佐仲峠に戻っても誰もいない。お茶で小休止して佐仲ダム方面へ戻る。永年の出水でえ
ぐられているが、ゴロゴロした石をセメントで固めた古い簡易舗装の痕跡が残る道だ。昼
前までが嘘のような青空に日の光が暖かい。右手の谷は徐々に深くなって水量を増やして
いく。ヘアピンを抜けて、前方に道標を見た時である。もう少しで舗装路に変わる寸前の
地点。地面に異様なものがあるのにぎょっとする。もう少しで踏みそうになったのはなん
とタヌキの死骸だった。死後一週間くらいだろうか。病死したのか目立った外傷はない。
ただ毛に血らしきものが少しこびりついていた。

佐仲林道で死んでいたタヌキ

 舗装路になると間もなく往路の林道分岐である。止まっていた車がないのはやはり鏡峠
手前で遭い、三尾山頂でも一緒になったご夫婦の車だったらしい。やがてダム湖の水面が
見えてきて、今日の山歩も無事終了。腹が減ったのでレギュラーコーヒーを沸かして赤飯
お握りで小腹を宥めておく。急ぐこともないので地道で戻る。午後三時を過ぎた丹波の山
野は朝とはうって変わって春めいた風情でありました。



【タイムチャート】 
09:10自宅発
10:30〜10:40佐仲ダム湖畔(駐車地)
10:57林道分岐(三尾山1.9km道標)
11:16〜11:18林道終点
11:22『分水界の径』出合
11:27〜11:29鏡峠(425m)
11:57〜12:00覗岩
12:35〜13:18三尾山最高峰(586m 昼食)
13:35〜13:37佐仲峠
13:49夏栗山分岐
14:04〜14:06黒頭峰(620.6m 二等三角点)
14:16夏栗山分岐
14:25〜14:29佐仲峠
14:49林道分岐(三尾山1.9km道標)
15:07佐仲ダム湖畔(駐車地)



黒頭峰のデータ
【所在地】兵庫県丹波市(春日町)
【標高】620.6m(二等三角点『黒頭山』)
【備考】
西多紀アルプス三山の内の一つです。三尾山とは対照的
に、夏栗山と共にずんぐりした山容をしています。また
植生も若干異なるようで、常緑樹が多く見られます。展
望はあまり良くありませんが、その為か訪れる人も少な
く静かです。佐仲峠と南麓の高蔵寺から登路があります。
三尾山のデータ
【所在地】兵庫県丹波市(春日町)
【標高】586m
【備考】
西多紀アルプスの主峰で、三つの峰からなるので三尾山
の名付けられたようです。峨々たる山容をなし、晩春、
岩陰に咲くヒカゲツツジの名所でもあります。戦国時代
は山頂に山城が設けられ、今でも郭の跡などの名残が見
られます。麓の国領温泉は一軒宿ですが、日帰り入浴も
可能です。
【参考】2.5万図『宮田』


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