涼しくも暑く、暑くも涼し丸滝谷から金剛山

沢の岩にポツンと咲いていたイワタバコ
平成24年 8月26日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 立秋を過ぎて、ここ豊中でも明け方は少しは涼しい風が吹くようになったものの昼間は
まだまだ灼熱地獄。こんな残酷暑の時季の山歩きは千m級以上の稜線歩きか沢歩きが涼し
くて良い。というわけで山の会の八月の例会は金剛山の沢歩きである。といっても舞台は
本格的な沢ではなく登山靴でも遊べる金剛山の丸滝谷である。ここはいつの頃であったか
一度歩いたことがある。(HPを紐解いてみれば06年の4月で6年前であった。)しか
しほとんど覚えていない。覚えているのは最後にスリルに富んだ難所があったことである。
このところ少し山から遠ざかってグダグダ生活を続けている私にとっては、最後の急登は
些か堪えたけれど、涼しいけれど暑く、暑いけれど涼しい山歩きを久方ぶりに堪能させて
もらった思いである。

 8時半、Mさんを自宅にピックアップして、近畿道経由で集合場所である石筆橋へ向か
う。沖縄付近にある台風の影響か、空は秋を思わせる澄んだ色をして、それを背景に葛城、
金剛の起伏もくっきりとしたスカイラインを見せている。格好の山日和だ。水越トンネル
手前でR309の旧道に入る。流石は東の高尾山、西の金剛山だ。既に片側にずらりと駐
車の列。よくまあこのくそ暑いのに....。(笑) かく云う小生もその同類ではないかとい
うことはすっかり忘れている。

 200mばかり入ったキャンプ場の廃屋前付近の木立の下が日陰で良かろうと駐車スペ
ースに選び、準備をしている間にも、次々に車が上がってくる。その中に見慣れたHちゃ
んの車もあった。

 欄干がガードレールでできた石筆橋まで戻って待っていると、やがてSさんの車もやっ
て来た。10時15分。参加者全員が集まった所で杉林の中、コンクリートの林道をミン
ミンゼミの鳴き声を聞きつつ緩々と歩き始める。すぐに太尾西尾根の分岐が左にある。例
年の今頃ならヤブミョウガの白い花が盛りなのだが、最近草刈があったようであまり見当
たらない。

 右手に近づいてくる大きな谷が石ブテ谷。それにかかる砂防ダムの大きな堰堤を見て、
左にカーブしていくと林道の終端。15分ばかし歩いたことになるだろうか。鉄板の橋が
架かっているがこれが丸滝谷ルートの入口である石ブテ東谷。丸滝谷はこの谷の支流であ
る。沢靴持参の人はここで靴を履き替え。しばしの休憩。

金剛山でも屈指の清流ではないだろうか

 沢靴メンバは流れの中を、登山靴の人は谷の左岸を進む。鬱蒼とした杉林の中に入ると
涼しい。クサアジサイの薄いピンクの花、モミジバハグマの白い蕾が目立つ。川沿いにポ
ッと明るい朱色はフシグロセンノウらしい。やがて小道が沢を右に左にするようになり、
あるいは沢の中の石を拾うようになると、そろそろ小さな滝が現れ始める。沢自体は花崗
岩主体で明るい。石に苔もついていないので適度なフリクションもあり、思ったほど滑る
こともなく、浮石に気をつけていれば問題はない。更に、背丈を越えるくらいの滝には巻
道とロープも用意されているので安心。とは言え、どうしても飛沫はかかるのでカメラ類
の精密機器は防水の用意をしておいた方がいいだろう。

丸滝谷でも最大級?の滝
名前あるのかな?

 人工林の多い金剛山にあっては比較的自然林が残されたコースである。途中、谷がやや
広やかになる辺りは両側から高い雑木の梢が天井を形作ってくれる。流れの真ん中の岩に
一株、イワタバコが見つかった。1cm程度の青紫の花が数輪。雫に濡れたつややかな葉の
緑と好いコントラストだ。更に遡上した先の濡れた岩肌にはイワタバコの群れがあって、
こちらも数株花をつけていた。

 名は知らないが高さ5m位の滝が見える勘助屋敷との分岐。谷を分けるのが中尾の背で
私製道標がぶら下がっている。丸滝谷をここを右に進む。まだ音を立てて流れるくらいの
水量がある。この辺りからほとんど沢の中が道になる。(^^; されど流れが浅いので適当
に石を拾って行けば、深みにはまって靴の中がびっしょり濡れるっていうこともない。下
の丸滝の分岐をさらに右へと進んでいく。次第に険しさも増したU字谷の中は風が通らな
い。じっとしていれば涼しいのだろうがなにせ湿度が高い。汗がメガネを伝う。タオルで
顔を拭う回数も増える。必然的に渇きを癒す回数も増えてくる。おやおや500ccのペ
ットボトルがもう空になった。

 丸滝谷も大分奥まってきて、水の流れも細まってくる。すると30mほど前方の岩壁に
Hさんが取り付いているのが見える。いよいよ本コース最大の難所、上の丸滝である。ち
ょっとシャリバテ気味だったので、登る前にSさんのシソジュースでパワー補給させてい
ただく。シソジュース。かつて南アルプスの北岳へを登っている最中、どうにもこうにも
足が上がらなくなり、最悪、みんなと別れてリタイヤしようとさえ思った時、これを頂い
て正に起死回生の妙薬だったことがあるのだ。

 さて、ここは高さ15mほどの岩崖を上がるのだが、とはいえ足場の窪みが明確にあり、
ロープもしっかりしていて、以前来た時より格段に登りやすくなっている感じがする。か
えって岩崖を直登して着いた岩棚から斜め上にへつる部分の方が危ない。おっとウチワを
落としてしまった。直後を登って来るSさんに拾ってもらう。感謝。

 上の丸滝の上は水がない。半チムニー状の滑りやすい急斜面。別名、蟻地獄ともいうそ
うだ。持久力のない我が体には殊の外きつい。おまけに沢で濡れた登山靴が今度は土まみ
れ。それもいとわず蟻地獄を抜けんともがく小生。前へ前へと足を出していると、さしも
の急斜面も終わりを告げるのか木立の向こうが明るくなってくる。笹も出てきて踏み跡は
斜面を斜めに巻き始める。やっとという感じで飛び出したのは、植林された稜線上のちょ
っとした鞍部である。中尾の背のプレートがあるので途中で別れたコースとここでまた合
流するようだ。食事中のグループが居て、先程の人声は彼ららしい。涼風が時折吹いて、
疲れた体に心地よいので5分ほど小休止だ。Tさん持参のパイナップルで小腹を宥める。

最後の急登山を喘ぐと山腹の台地に出る

 大日岳には上がって来た所に立って右手の小高い方角へと登る。植林下であまり面白み
がないが、大きな登りがないのでシャリバテの身には助かる。金剛山の山中の交差点とも
呼ぶべき『六道の辻』を過ぎ、太尾尾根のコースと合流して、大日岳方向を示すプレート
に導かれて少しきつくなった最後の登りをこなすと、何度か訪れたことのある大日岳の頂
上である。一応ピークなのだが、登山客にとっては通過点なのだろう、国見城址の賑わい
と対照的に格段に人が少ない。コオニユリが一株咲く平坦な頂は元は無線中継所があった
場所と聞く。今は木立で見晴らしは効かないが、一部、PLの塔方向が良く見える個所が
ある。山頂の立木にかけられた古い寒暖計。気温は23℃を示す。天然のクーラー、下界
から見れば別天地なのだが、とはいえ日なたはやっぱり暑い。(笑)

 大日岳からは5分足らずで売店裏の高みに出ることが出来る。整地されて所々に素朴な
ベンチも置かれた草地から今日は大阪平野が一望。阿倍野に建つ日本一の高さを誇る予定
の阿倍野ハルカスもよく見える。大阪湾から淡路島、六甲の山並みが見え、関空島が浮か
ぶ様まで眺められるのはちょっと珍しいかもしれない。これぞ山の醍醐味、今までのつら
さが雲散霧消のひと時である。

 到着したのはお昼には少し遅い午後1時過ぎ。それでも国見城址の広場近辺には人が多
い。タイミングよくベンチが空いた。昼食のためにそちらに移動。今日はとろろざるそば
におにぎり。サーモスに詰めた氷を出汁に入れてと。冷やっこくて美味かった。これから
暑い時は癖になりそう。(笑) Mさんの誕生日記念のケーキのお披露目もあってまったり
過ごす小一時間である。

 さて、下山ルートは数々あれど、長いけれどその分、楽であろうと青崩道を選択。国見
城址の時計台からセト方面へ。降り口の斜面にトリカブト。Sさんが教えてくれる。こん
な所に咲くとは知らなかった。(^^; ヤマブキソウやヤマシャクヤクの群落が見られる林
を左下に見て、電信柱が目印のワサビ谷への降り口を過ぎてと、この辺りはかつて幾度か
あった金剛オフで教えてもらって勝手知ったるコース。しかしながらいろいろバリエーシ
ョンに富む金剛山であるが、一部の谷筋と頂上付近を除いて植林が大部分を占めるのが些
かいただけない。青崩道もご多聞に漏れず、途中のセトを境にほとんど植林で変化がない。
展望も大和葛城山が見えるスポット以外は思うに任せずここはとっとと下るばかり。おか
げで靴の中の指先が少々痛くなってきた。(^^;

青崩道の登山口

 左手に国道沿いの青崩の集落が見え、国道を飛ばすバイクのエンジン音が聞こえだすと
さしもの長い青崩道もようやくフィナーレ。公衆トイレの裏の林道へ飛び出す。ほぼ一時
間半の長丁場?であった。

 あれだけ並んでいた車も半分くらいか。ここで8月の月例オフはお開き。一風呂後に打
ち上げに行くグループあり、帰宅のメンバあり。小生はちょっと野暮用で残念ながら今日
は後者である。お礼が遅れたが、この場を借りて皆さんありがとうございました。




■同行: 幸さん、たるるさん、ハム太郎さん、ひろぴぃさん、水谷さん、
     Sachiさん (五十音順)
【タイムチャート】
09:35〜09:45旧R309石筆橋東付近(駐車地)
09:50〜10:00石筆橋(集合地)
10:15〜10:20石ブテ東谷入口
11:45〜11:50上ノ丸滝
12:20〜12:30中尾ノ背コース出合の棚地
12:36六道の辻
12:50〜12:55大日岳(1,094m)
13:10〜13:47国見城址背後の丘(昼食)
14:21坊領山分岐
15:14青崩道登山口



金剛山のデータ
【所在地】大阪府南河内郡千早赤阪村、奈良県御所市
【標高】1,125m
【備考】 大阪府と奈良県の県境にあって大阪府の最高峰で、金剛
生駒紀泉国定公園に指定されています。大阪全域から葛
城山と並んで望むことが出来ます。山上に香楠荘があり
宿泊も可能です。近鉄富田林駅、南海河内長野駅からバ
ス便があります。
【参考】
金剛葛城自然歩道ダイヤモンドトレール地図



   トップページに戻る

inserted by FC2 system