尼子山〜カキオコ前にひと山稼ぐ

千種川河畔から尼子山
平成24年 2月 5日(日)
【天候】うす曇り
【同行】別掲


 真冬は寒い山へは行く気もしない。(笑) その上、今年は例年になく雪が多い。自ずか
ら南へ転進を図ることになる。そしてこの寒い時季は牡蠣の季節でもある。過去には坂越
へ焼き牡蠣を食しに行ったが、今回は日生のカキオコ。但し、一応、山の会なのでその前
にひと山稼ぎます。雄鷹台山や宝珠山に登った際に綺麗な姿が目立った尼子山です。

 数日来の寒波が嘘のように鳴りを潜めた感のあるこの日曜。風もほとんどなく暖かい。
冬の関西1デイパスでやって来た二年ぶりの坂越。もう風景は見慣れてしまった感がある。
(笑) プラットフォームに立った目の前に屏風のようにあるのが二年前に歩いた雄鷹台山
から砂山に連なる山並みだ。その山並みと千種川で隔てられて、独立峰の趣豊かなのが尼
子山である。これに取り付くにはまずは千種川を渡らねばならない。集落内を進み坂越中
学校横から橋に出る。横では今度は車も通れるらしい新橋が建設中である。対岸べりを左
に折れると、旧道なのか遊歩道があって、車を気にせずとも済むので助かる。この辺りか
ら見る尼子山は確かに坂越富士といった風情。山上部が明らかに人工的に均され、砦が築
かれていたことが良くわかる。

 ユニチカの工場を右手に千種川の堤防上の車道は赤穂線の高架を潜り、下高野の集落へ
と入る。下高野は古い集落のようで、どことなく懐かしい昭和の農村風景が残っている感
じがする。辻に親切にも自治会が立てた道標がある。それに導かれて行くとすぐに大きな
銀杏の木が目立つ真宗本願寺派の誓願寺。その前を抜けて左にカーブすると自然に尼子神
社の境内に出る。左手に尼子山への道標があり、まだ真新しい社殿が高台に見える。

尼子神社。登山道は向かって左

 社殿左手に小道があり道標の道と合流して常緑樹の中を行く。まもなく登山道横数mに
尼子将監の墓がある。小さな土塀を取り回した中に三基の墓が建つ。向かって右は『釈』
とあるので真宗のお墓。多分江戸時代のもの。後から子孫が建てたのであろう。左も右と
よく似たものなので、中央の磨滅した五輪塔の名残がその墓だろう。この墓の主である尼
子将監義久は永禄9年(1566)、富田月山城を毛利勢に開城し、毛利氏に幽閉された
後、関ヶ原以降も生きながらえていたから、これが義久の墓とは考えられないが、この城
が毛利氏に攻められて落城したのは間違いなかろう。しかしながら、出雲の本貫の地なら
まだしも、赤松氏から奪った土地で、祭神として尼子神社に祀られるのだから、尼子義久、
よほど地元民に慕われた人だったのかもしれない。

 よく手入れされた登山道にやがて左『はげ山』の表示。地形図で云えば尼子山の南にポ
ツンとある74mの標高点ピークであるが、はげ山の名に似合わず灌木が茂り、あまり展
望がないとのことを先達のHPで知っていたのであえなくパス。(笑) ただ山道はそれか
ら先がきつい。ロープが設置してある石混じりのザレ場が幾箇所か続く。四合目の休憩所
道標の所で小休止して上着を脱ぐ。休憩所といっても踊り場風の小さな露岩がある位だけ
れど。(笑)

 一旦、緩んだ傾斜が再び傾斜を増す。いつの間にか隣の山と肩を並べる高さになってい
る。あちらも高い木がないけれど、その分、コシダが良く茂っているのが見てとれる。(笑)

登山道途中からの展望

 また少し額に汗をかいて、四合目から10分ほどで七合目の道標に行き着く。立入禁止
のロープがあるがその周辺の岩に立てば素晴らしい展望が得られる。寒い日が続いたのに
今日は春霞がかかったように風景が白んで遠目は効かぬが、向かいに赤穂海浜公園の観覧
車が覗き、海に浮かぶカキの筏も認められる。直下には千種川が蛇行し、河川敷の野球場
や陸上のトラックが一望される。以前歩いた宝珠山から高代山の山肌は、山火事の跡が大
分癒されて、植林された木々が大分大きくなっている様子。それが遠目には仏の螺髪のよ
うに見えて面白い。

 これまでも下から想像するほど岩場らしい岩場はなかったが、ここでようやく小さな岩
場に出くわす。といっても、丸い岩が張り出し、その横の露岩の上を歩いて行くだけなの
で危険なことはない。再び傾斜は強くなるが、もう山頂部手前に建つ石の鳥居が見えてい
る。

 その石の鳥居にはまだ新しい紙垂が垂れ、その向こうに今度は赤い木の鳥居がある。も
うこの辺りは昔の城跡と思われる平坦地で、石灯篭と狛犬がようこそと出迎えてくれる。

 頂きは昔、砦の他にも建物があった名残だろうか思ったより広い。尼子神社の奥宮も本
宮と共に再建されたらしくまだ新しい。神社と神前にある四等三角点『尼子山』に挨拶し
て山頂部を探索する。山頂西には下からも分かる大きな岩がある。登れるようだがここは
ハンドルネーム宜しく『君子危うきに近寄らず』。実を明かせば高所恐怖症なだけなのだ
が....。(^^;

 神社裏の杉林は幾段もの段差がある。城郭には詳しくないけれど、郭の跡だろう。その
杉林の下に延びる小道を辿ると湧水があるというので見に行くことにする。100m5分
の距離というが結構下る。「⇒」の通りにジグザグに下る内に緑色の古い手押しポンプ発
見。まさかこれではなかろうともう少し下ると本当に湧泉がある。直径1m程度の窪みに
透明な水が溜まり、上からポタポタと今でも滴が垂れている。これがあれば籠城も可能に
違いない? しかし肝腎の水量がとても多人数を賄えるとは思えないのだが、この湧水を
源とした小さな谷がある所を見ると、昔はもっと豊富な湧水量があったのかもしれない。

尼子山の湧泉

 このまま道が続けば降りても良かったけれど、やはり思った通り道は湧水まで。途中に
分岐が一つあったので、「カキオコ」というメインイベントが無ければ辿っていたかもし
れないけれども、来た道を戻るが無難ということもあってここは山頂へ戻ることにした。

 祠の前へ戻ると地元の方らしい初老のご夫婦がおられる。先程の分岐道を知っている方
だったら良かったが、地元といっても近所ではないとのことで、尼子山は初登頂だとおっ
しゃる。挨拶してこちらはお先にと下山にかかる。

 もっと滑るかと懸念があったものの立木やロープで態勢を維持しつつ、広がる景色を見
ながら降りる。ほぼ小一時間で麓の神社。ぶらぶらと坂越の駅まで戻る。

 さて、今日の本命カキオコの聖地日生は岡山県で、そこまで行くには播州赤穂で乗り換
えねばならない。ところがその乗り換え時間が半端じゃない。お蔭で坂越から5つ程度西
の駅なのに1時間近くもかかったのじゃないだろうか。(^^; ま、それはおいて、日生の
駅前は小豆島行のフェリーの乗り場。なんだか『男はつらいよ』に出てきそうな雰囲気の
乗り場だ。そして駅前からしてもうカキオコの看板があちこちにある。まずは観光案内所
でカキオコ地図なるものをもらい、R250沿いに西へ歩く。横は渋滞の車列。これみん
な牡蠣目当て? いや恐るべしB級グルメ。評判の店は軒並み順番待ちの列。目指したの
は『M』なるお店だが、路地を入って見るとやっぱり10人ほどが並んでいる。

 なるほど、こりゃ狭い。カキオコ地図には客席10席とあったが、店は3畳半くらいで
客席の広さは2畳くらい。鉄板横に詰め詰め6席、カレー皿2つが並んだら満杯の小さい
テーブル席が二つ。よくまあこれだけ席を作ったもんだ。(笑)

カキオコ、一丁上がりぃ!

 並んでいる最中に注文が聞かれていたので座った途端、カキオコが出てきた。早い。日
生のお好み焼きは関西とも広島とも違う焼き方なんだという。ここのは薄い生地に千切り
キャベツを放り込み、牡蠣を別に焼いて上に乗せ、また薄い生地をかけるという感じ。蒸
し焼きになるので牡蠣が縮まないらしい。プチプチの牡蠣がそれは美味なのだった。因み
にカキオコは¥800、特盛¥1000、スペシャル¥1500。(H24/2現在)

 駅に戻る途中の海産物屋でクジラの赤みをゲット。これが¥600という安さ。竜田揚
げにしてもらおうと楽しみにしていたのだが、なんとその日の夜から風邪の症状現る。こ
の冬は軽いのを既に2度引いていたからインフル以外はもう大丈夫と思いきや、そうは問
屋が卸してくれなかった。熱は大して出なかったのが幸いだったが、関節通と扁頭痛に筋
肉痛、それに倦怠感が半端じゃない。当然味覚にも悪影響があり、折角の竜田揚げを心か
ら味わえなかったのは言うまでもなし。ついてない。

 だが、待てよ。これが土曜ならカキオコも駄目になっていたはず。その意味じゃラッキ
ーだったのかも。そう考えることにしよっ! また来年もグルメオフに行けますように。



■同行: 北山さん、ハム太郎さん、水谷さん、もぐさん(五十音順)

【タイムチャート】 
9:37〜9:42JR坂越駅
10:25〜10:27尼子神社
10:42〜10:44四合目道標
10:55〜10:56七合目道標
11:02〜11:17尼子山(259.4m 四等三角点)
11:22〜11:25湧水
11:30尼子山
11:46四合目道標
11:57尼子神社



尼子山のデータ
【所在地】兵庫県赤穂市
【標高】259.4m (四等三角点『尼子山』
【備考】 千種川河口一帯の低山の中で、一際目立つ三角錐の山容
を持つのがこの尼子山です。戦国期、山頂には砦が築か
れ、現在も郭の跡が残っています。山上からの展望は良
く瀬戸内海や千種川、坂越の周辺のパノラマは絶佳です。
【参考】
2.5万図『相生』



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