へたれ耐暑登山は三ノ丸で撤退

氷ノ山山頂から見たたおやかな三ノ丸(6/4)
平成23年 7月17日(日)
【天候】晴れ
【同行】単独


 毎年8月に北摂は剣尾山で耐暑登山を敢行している。でも、最近、あの800m足らず
の低山の湿気の多いくそ暑さに嫌気が....。(笑) というわけで今回は1000m近くか
ら登れる山を探すことにした。耐暑というには少し早いかもしれないが、梅雨明け自体が
10日あまりも早かったのでいいだろう。行く先は氷ノ山。夏にはぴったりの名前の山を
殿下コースで登って大段ヶ平方面へ降りて林道でつなぐという周回コースを考えた。北摂
よりはかなり涼しかろうと期待したが現実は....。大型台風からの湿った暖気が流れ込ん
だフェーン現象で近畿北部は軒並み37℃を超え、大阪より暑い始末。初手からの3km
の林道歩きにへろへろになりながらも、なんとか三ノ丸まではクリアしたけれど、避難小
屋の陰で座ったのが運の尽きでそれから先は登る気力が切れた。我ながら『へたれ』の極
み。紅葉の頃、リベンジせねば。しかし堪らぬ暑さではあった。

 少しでも早く涼しめの間に登るのが常道なのに今日も出るのが6時半と遅くなってしま
う。山崎からR29を北上し、戸倉峠の手前で県道48号を大屋スキー場方面へ。若杉峠
を越えて下ると想像より大きい若杉の集落が見えてくる。その先、栗の下BS近くまでや
って来ると横行渓谷の案内板が出て、一見よろずや風の中間簡易郵便局がある。左折。大
屋川沿いのかなり奥まった場所に寄り添うような横行集落を抜ける。ここまでは全但バス
の路線バスが入るようだ。

 道はここから一車線だが若丹国境の五波峠並みの、驚き?の完全舗装。ところどころ落
石があるが全く問題なし。ただガードレールがないのとヘアピンが多いので対向車には注
意がいる。『ぶなのしずく』『平家ヶ城』の休憩所を過ぎて羊腸の道を登りきると、やが
て左に東屋が現れて、広域林道(瀞川・氷ノ山林道)とのT字路になった横行林道終点の
「横谷渓谷終着駅」に到着する。右に行けば大段ヶ平で、左へ行けば殿下コースの登山口
だ。広域林道はこの辺りは舗装路。東屋の前に数台駐車できる広場がある。

横行渓谷終着駅の広場に駐車

 T字路に広域林道の詳細図があるので見ておく。殿下コースの入口までは1時間以上の
林道歩きになりそうだ。横行渓谷の最上流部の谷にかかる橋を渡る。一抱えもあるブナに
絡みついたイワガラミ。その白いガクだか花弁だかをヒラヒラさせて吹き渡る風はカラッ
として心地よいが、ジリジリと照りつける太陽が大敵だ。なるべく木陰と行きたいが、林
道は氷ノ山の南斜面沿いに付けられておりあまり逃げ場所がない。とりあえず汗を拭き拭
き黙々と足を動かすのみである。

登山口と間違えた「ブナを植えよう」駅の桟橋

 40分も歩いたか。そんな林道歩きに辟易してきた頃である。道端に現れた「氷ノ山に
ブナを植えよう」駅の標柱の近くに、途中で追い抜いていった大阪ナンバーの軽自動車が
止まっている。ようやく養父側の登山口に着いたのかとホッとする。とそこへくだんの車
の主の小父さんが現れて、おもむろに車に乗り込み、ゆっくりと消えて行った。見れば木
製の板敷もあって登山口らしい雰囲気もあって迷わず踏み込んでみる。ところがどうだ。
斜面を登って現れた小さな山腹には、添え木だけ残って肝腎の苗木がことごとく枯れてし
まった木を植えた痕跡のみ。平成13年植林祭の白い標柱がむなしい。そしてその先はチ
シマザサのブッシュの中へと踏み跡は消えている。なんだ、植林祭の為の単なる作業道だ
ったのだ。これにはどっと疲れた。(笑) 道理でくだんの小父さん、今から思えば目礼し
た時に意味深な顔をしていたはずだ。それならそうと言ってよね。(笑) 貴重な時間をロ
スしたことより、気力消耗が倍増したことが小生には堪えたのである。

 林道は舗装されていたりダートだったりを繰り返す。黒滝橋を渡って大きくカーブを切
ると5分ほどで「林道山頂」駅に到着。駅といっても案内標柱があるのみだが....。この
林道の最高点なのだそうで標高1250m、台高の高見山とほぼ高さだ。説明にはここか
ら氷ノ山山頂付近に伸ばす計画だったが、自然保護運動の高まりで断念、裾野を迂回する
ルートにしたとある。当たり前だろう。氷ノ山近くには舂米側にR482がある。税金で
不要不急なものは造らぬことだ。

 ここからは下り。やや歩くスピードが上がる。その横をほんの時たま、車やバイクが通
り過ぎる。ダートで土埃を舞い上げるので、一寸大人げないがこちらは露骨に嫌な顔をし
てやる。

 「国境」の駅。標高1180m。国境といっても宍粟市と養父市の境だから同じ兵庫県。
すなわち現在の県境ではなく昔の国名で云う但馬と播磨の境である。時折、南側が開け、
播磨側の青い山並みが広がる。土地勘がないので確かではないが、三室山や後山といった
山々だろうか。そして遠くからエンジンの低い唸り声が聞こえ始め、建物が見えてようや
く目指す殿下コースの入口へと到着した。建物はトイレでエンジン音はそこからのものだ
った。
殿下コース入口。氷ノ山山頂までは4.2km

 案内図によれば、三ノ丸まで1.8km、氷ノ山までは4.2kmだという。生来のヘタレ
虫の囁きによって、この時点でもう氷ノ山まで行く気は失せている。だがやっぱり未知の
ピークだけは踏みたいもの。ヘタレ虫が幾ら妨害しようとも三ノ丸までは行かないことに
は沽券に係わるだろう。(^^; 

 エゾハルゼミの蝉しぐれが降り注ぐブナ林の中の幅広の切開きである。最初は急登だが
徐々に落ち着いてくると右手から上がってくるこれも幅広の道がある。

 下草にササが増え始め、その中に大きな自然杉が現れてすぐだ。仙人門なる標識が前方
に立てかけられているのが眼に入る。門とはミズメらしい大樹が大人でも潜れるほどの根
上がりになったものだ。サロンパスの木などと面白いことも書かれているが、枝を折ると
サロンパスの匂い(サリチル酸メチル)がするからだそうである。潜ると何か御利益があ
るかな?肩こりが治るかも。下らぬことを考えながら門をくぐった。(笑)

ミズメの木の根上がりでできた仙人門

 風はないが日陰がうれしいブナ林を抜けるとスズタケの繁茂する荒れ野となる。風が吹
いてくると流石に高度1200m。心地よいけれど、なにせ正午近くで周囲は笹原、太陽
を避ける木陰とてない炎天。モワーッとした草いきれが容赦なく襲ってくる。そこへ一陣
の風。頭に外気を入れようと帽子を脱いだその途端、すかさず首筋に文字通り射るような
直射日光だ。それでなくてもグロッギーなのに、帽子がなければとてものこと、ここまで
林道を歩いて来れなかったに違いない。慌てて帽子を被りなおす。まことに帽子様々であ
る。(^^;

 緩々とした登りを何度も立ち止まりつつ歩いてようやく戸倉から上がってくる坂ノ谷コ
ースとの合流点までやってきた。案内標識には氷ノ山山頂まで3.4kmとある。
「?」
殿下コース入口で山頂まで4.2km、三ノ丸まで1.8kmとあったが、まだたった8
00mしか歩いてないの?嘘でしょう?どっと疲れが倍増したが、歩くうちに赤い屋根が
笹原から頭を出しているのが眼に入る。ホッ!避難小屋の前に立ち、ザックを降ろし、少
し影が出来ていた小屋入口の階段に思わずへたり込むように腰かける。ポカリの残りを一
気飲み。しばらく動けん。(^^;

 コンビニで買ってきた鯵ほぐし弁当。そのままじゃ喉を通らぬので水をかけて、所謂、
水漬けにして掻き込む。濾紙が水を吸いこむみたいに細胞に水分が廻っていくみたい。(笑)

 落ち着いたところでGPSを覗くと山頂はもう少し先だという。50mほど北に行くと
三の丸の標柱と見晴らし台(櫓)があった。

笹を切開いた三ノ丸山頂に櫓

 これは氷ノ山山頂より好展望ではないだろうか。高い木も全くないし、何より山頂部が
十畳程度と非常に狭いので視界の邪魔者がないのだ。どちらを向いても山々山である。北
側は勿論、なだらかな氷ノ山で頂上の避難小屋やトイレがある。その山頂右にチラッと顔
を出すのが蘇武岳らしい。陣鉢山や青ヶ丸の向こうには扇ノ山だ。その左にはうっすらと
日本海。そして山並みはるか奥に大山らしい起伏があるのを見たのは初めてだ。南を向く
と、いかにも山らしい形をした三室山や後山がある。流石に北近畿、中国地方では第二の
高峰に連なる一峰だ。三角点がないのが不思議なくらいである。

 櫓から見えた東屋へ行ってみる。舂米側のスキー場へ降りる道沿いにあるが、利用客が
少ないのか些か荒れ気味に見える。笹原のなだらかな頂にさっきまで居た櫓が見える。そ
の笹原の中に生える背の低い針葉樹は大山でも有名なキャラボクだそうだ。

抜けるような青空
東屋からスズタケに覆われた三ノ丸の山頂

 三室山を正面に見ながら来た道で三ノ丸を下る。おびただしいナツアカネ。ツイーッと
こちらを避けて飛び回っているが、中には頭に当たるやつがいる。(笑) 秋が近づくにつ
れて、どんどん里へ下って行くのだそうだ。

 下りは足元に気を付ければいいのっみなので、登りの疲れが嘘のよう。これなら氷ノ山
まで行けるぞと思うが引き返す気はさらさらなし。(^^;; ちょっと気になったのはブナ林
の中の途中の分岐。多分林道へ降りるのだろうと帰路の林道で気をつけていたら、行きに
山頂駅近くで2台並んで止まっていた内の1台の車が消えて背後の繁みが見えるようにな
り、そこにいい山道が隠れていたのだった。

 山頂駅を過ぎると下り基調となって楽。だが敵は直射日光。ラッキーなことに木陰が所
々あって、その陰に隠れながら下って行く。風も吹いてきて思ったより涼しい。

 氷ノ山は山が大きいので水が豊富である。林道の法面からもパイプを通じて水がほとば
しっている所がある。手を切るくらい冷たい。地中を通ってきたようで飲めそうだが、万
一腹を下しても詰まらないので遠慮したけれど、きっちり顔を洗わせてもらった。ああ、
気持ちいい。一気に蘇生した気持ちだ。

 そんなこんなでやっとこさ駐車地に戻ってきた。東屋が無人だったのでコーヒーを沸か
す。おやつは予備食の魚肉ソーセージ。谷が近いのでミソサザイがすぐ近く啼く。他には
蝉の声が聞こえるのみ。当初の計画はあえなく潰えたが、紅葉の頃にでもリベンジせねば。

 帰りはR9で和田山方面に出て帰る。途中、コーラを買おうと朝来のSAに寄り道。車
を出た途端、ムワーッっと体の周りを包み込む暴力的な熱気。車の外気温計の表示38℃
は本物だった。(笑)

林道沿いに咲いていたエゾアジサイ



【タイムチャート】
6:30自宅発
9:15〜 9:30横行林道終点T字路(駐車地)
10:08〜10:25氷ノ山にブナを植えよう駅
10:30林道山頂駅
10:42国境の駅
10:43〜10:44殿下コース入口
11:06〜11:07仙人門
11:25坂ノ谷コース出合
11:40〜12:20三の丸(1,464m)(昼食)
12:30坂ノ谷コース出合
12:56殿下コース入口
13:12林道山頂駅
13:48横行林道終点T字路(駐車地)



三ノ丸のデータ
【所在地】兵庫県養父市(旧大屋町)・鳥取県八頭郡若桜町
【標高】1,464m
【備考】 氷ノ山から南に派生する尾根上にあり、鳥取県側からは
二ノ丸と呼ばれています。山頂部は広くスズタケに覆わ
れていますが、それだけに展望は360度遮るものはな
く、大山、日本海の他、但馬、因幡、北播磨、美作、丹
後などの主だった山々が一望に見渡せます。登路は殿下
コース、舂米コース、坂ノ谷コースと多彩です。
【参考】2.5万図『氷ノ山』



三ノ丸から北方のパノラマ画像。右が氷ノ山山頂、中央奥に扇ノ山、中央手前は陣鉢山
中央奥に日本海や左奥の鞍部に大山が覗くが画像では判り難い

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