竜ヶ岳〜手軽に登る鈴鹿の展望台

1053m標高点付近から竜ヶ岳北斜面
平成23年10月16日(日)
【天候】晴れ
【同行】単独


 暦が変わるか変わらないかといった頃だったろうか。ゴロゴロと雷鳴が空気を震わせ、
屋根を叩く音が聞こえるほどの雨。翌日曜は天気が回復するとのご託宣もとても信じられ
ないくらい。土曜は雨模様の一日だったから日曜くらいはと期待したのだが、内々の事情
も絡んでこれではテンションの上げようもない。

 朝。目覚めると東の空が明るい。日が上がると晴れ渡った雲一つない空が広がっている。
過去の経験上、これはどこかに行かないと後で悔やむパターンだ。とはいうものの、前日
から何処へ行こうという検討もしていないし、ましてや準備など皆目していない。アクセ
スが良くて、そこそこ展望も良くて満足感も与えてくれる所はと....。それが未踏ならな
おのこと良し。そんな時、頭に浮かんだのは今まであまり足を向けていなかった鈴鹿方面
である。近頃は新名神や石榑峠のバイパストンネルが完成してアクセスも格段に良くなっ
ている。エアリアマップを引っ張り出す。そこで目についたのが竜ヶ岳。峠からも近く、
三角点もあって展望良好とある。条件にピッタリ!ここに決定。

 出発は遅めの8時。先週の荒島岳なら、もう歩き始めて30分近く経っている刻限だ。
昨日の炊き込みご飯のお握りを作ってもらって急遽出発。早く行こうといつもは乗らない
豊中ICから名神にのる。八日市ICからR421(八風街道)で東進。雨乞岳の登山口
である甲津畑への分岐を見送って、永源寺ダム湖畔に沿って走る。隠れ里のような政所の
集落を抜けると、真新しい石榑峠のトンネルが見えてきた。はて?旧峠道はと。トンネル
手前でUターンして20mほど戻り、直前に見つけた狭路の分岐点に車を寄せる。タイミ
ングよく分岐にサイクリングの兄さんが二人。「峠行くのはこの道ですかねぇ?」の問い
に頷く兄さん達。「向こうにも道が見えますけどあれは?」聞けばキャンプ場への進入路
とのことである。礼を云って木立の中の狭路に乗り入れる。

 新旧の国道分岐はほぼ直角である。少し躊躇したのはてっきり分岐はY字路だと先入観
があったからなのだが、如何にも林道然とした国道らしくない感じも進入をためらった一
因かもしれない。昔から酷道とは聞いていたけれど、これは奈良から南紀へ抜ける国道よ
りひどいのではないか。(^^; 今年まで供用されていた国道だけに路面状態は非常にいい
がほぼ一車線。しかも路肩に深い側溝があるので車輪を落とすと大変だ。三重県側が封鎖
されているから、対向車は林業関係者か今から降りて来る登山者の車に限られる。離合に
気を使う確率が低いのが救いではある。(^^; ガードレールには峠までの距離が表示され
ている。結局5km以上こんなワインディングルートが続いた。

 高度が上がってくると目の前に堂々とした山塊が眼に入ってくる。これから登る竜ヶ岳
だろう。中腹付近に岩が幾つか見えるがそのいずれかが重ね岩らしい。右に大きくカーブ
すると行き止まりの看板と数台の先行車が見えた。
酷道の名を成さしめた石榑峠の
悪名高い幅2mのコンクリート壁
 県境には悪名高い通行車横幅制限のコンクリート。今は封鎖されている。向こうは三重
県いなべ市。こちらは南近江市。右に登っていく取付道路の先に無線中継局の建物はなく、
コンクリート基礎のみが残っている。準備をして鈴鹿山系縦走路の案内標識が立つ階段を
上る。のっけから数mのロープ場で、花崗岩のザレた斜面は非常にもろい。左に迂回して
アセビやリョウブ、コナラ主体の灌木帯に入り、深く洗掘された道を進む。車を降りたら
風が強かったので慌てて長袖シャツを羽織ってきたのだが、意外や風はそれほど冷たくな
くやや生ぬるいくらいだ。体が温まって来るとすぐに暑くなってきた。灌木帯を抜けた所
でシャツはザックに再び仕舞うことにした。
重ね岩の間から鈴鹿主稜を望む
 花崗岩が風化した砂礫の小丘を越える。再び洗掘された花崗岩のザレ道。六甲や湖南に
よく似た風景で白く明るい。ほぼ一気に登って来た感のある道が山腹を巻くようになる。
その先が開けて灰白色の岩が現れた。標高830m 重ね岩』とある。手元の高度計は9
30mを示しており、100mばかり間違っているようである。重ね岩は名前の通り、岩
を重ねたような形状をしている。強風なのでバランス崩さぬよう注意して岩の上に乗って
みた。いつの間にやら結構高度を稼いでいるではないか。車で登ってきた道がうねうねと
眼下の樹間を走る。路肩に置かれた工事車両。中継局跡のコンクリート敷地が目印となっ
て石榑峠の位置も良くわかる。峠で低くなった鈴鹿主稜線が再び高くなって、釈迦ヶ岳、
御在所岳と続いているのも瞭然である。おっと帽子が飛ばされそう。一度飛ばされたら、
帽子を拾いにはちょっと行けそうもない。(笑)
振り返れば無線中継跡地や旧国道が眼下遥かに
遠くに釈迦ヶ岳、水晶岳、御在所岳と
右奥に雨乞岳(竜ヶ岳南端から)
 再び胸突き八丁の急登が始まる。小さなジグザグはあるがほとんど直登。ロープ場も随
所に現れる。手頃な灌木の幹に手を掛けてはガレ気味の脚に合わない段差を越える。また
灌木帯に入ったと思ったらシロヤシオの林だ。今の時期やや紅葉を始めているが、陽春の
5月は満開の花々で一面真っ白に埋まったに違いない。シロヤシオの林を抜けて高度を稼
いでいくと下草の笹が徐々に増えてくる。足元の日当たりのいい場所には、リンドウが薄
青い蕾を三つ四つとつけている。やがて傾斜が一気に緩み周囲が見渡せるようになると、
そこは一面の笹原である。北側の山並みが初めて視野に入る。
山頂に向かって天空散歩が始まる
 竜ヶ岳の山頂はまだ先のようだ。小さな起伏がうねる笹原に一筋の小道が伸びてゆく。
標高1000mの天空散歩である。右側(東方向)に伊勢平野。霞があって海は見えない。
中部国際空港から離陸した旅客機が南へ上昇していく。大韓航空らしい。

 右手に現れた崖に注意しながら10分も歩くと広い竜ヶ岳の山頂に出る。表示盤が中心
に置かれ、その横には三角点標石がある。そして期待通り展望は申し分ない。静ヶ岳の向
こう側には台形状の御池岳がドシッと大地を引き締めている。雨上がりで風も強いので視
界もぐんと伸びるものと期待していたけれど、気温が下がらず靄が少し出たようで、残念
ながら白山や御嶽、乗鞍岳という中部山岳の高山までは見通せない。
広い竜ヶ岳山頂
 山頂には中道、表道(石榑峠)、裏道(ホタガ道)の三本の小道が集まっていて、それ
ぞれから登ってきた登山客が十数人、中でもホタガ道で上がって来る人が多いようである。

 治田峠、ホタガ谷への道標に従って北側へ降りていく。一面の笹原と立木といえばシロ
ヤシオとアセビという風景は、台高の桧塚や桧塚奥峰周辺とそっくり。目の前にはずっと
静ヶ岳があり、その向こうは御池岳。山頂からは遠く見えたが、10分ほどで1053m
標高点ピーク横を抜けると三叉路。左は鈴鹿の縦走路。金属製の物置みたいなものを左に
見てしばらく進むと1041m標高点付近に出る。ピラミダルな竜ヶ岳の真ん中に縦じわ
(谷の源頭)があるのが良く見える。
板抜けるような青空をバックにシロヤシオ
 適当な所で戻り、なるだけ風が遮られて日当たり良好の、食事をするに良さげな場所を
探す。あら?いつの間にやら陽だまりを探すようになっている。(笑) 縦走路脇の笹原の
斜面にあった猫の額ほどの平坦地は1053m山が風を遮ってくれる。目の前にはドーン
と竜ヶ岳の北面。大休止場所としてはかなりいいシチュエーションだ。今日は食後のレギ
ュラーコーヒーも楽しんでゆっくり過ごすとしよう。

 1時間近くの大休止後は、さて、登り返し。眼前の竜ヶ岳がえらく高く見えるが、標高
差は実は60mほどしかない。たおやかな笹原に雲の影がさし、行き交うのを見つつほど
なく山頂に出ると、入れ替わってはいるけれど、やっぱり数組の登山客が思い思いに屯し
ている。こちらは三角点付近に陣取って、エアリアマップを広げて見えている山を確かめ
る。強風で地図を広げるのも一苦労であった。それにしても北側の無残に曝された石灰石
の採掘鉱山は痛々しい限りである。

 喉を湿らせて往路を引き返す。下ってみてかなり急勾配であったことを実感する。登り
がかなり苦しかったのも道理だと、自分の運動不足を勾配の所為にする。(^^; 峠に立つ
と釈迦ヶ岳方面から若者2名。6時過ぎから登っていたそうな。若いって本当に羨ましい
なあ。(^^;;

 ところで、鈴鹿セブンマウンテンというものがあるそうである。あまり固執する気はな
いけれど、これでようやく三座目だ。高速料金が高いのでそうそう来るわけにはいかない
けれど、鈴鹿はいい山が多い。これからもちょくちょく付き合っていただこうか。(笑)


【タイムチャート】
8:00自宅発
9:40〜 9:55石榑峠(駐車地)
10:35〜10:45重ね岩
11:22〜11:32竜ヶ岳(1,099.6m 三等三角点)
11:48県境三叉路
11:54〜11:561,042m標高点ピーク
12:10〜12:551,053m標高点ピーク南付近(昼食)
13:05〜13:21竜ヶ岳(1,099.6m 三等三角点)
13:50〜13:52重ね岩
14:18石榑峠(駐車地)



竜ヶ岳のデータ
【所在地】三重県いなべ市
【標高】1,099.6m (二等三角点)
【備考】 鈴鹿山脈のほぼ中央部に位置します。端正ながら女性的
な姿をしており、山頂部分は笹原で西に琵琶湖、東に伊
勢湾、北に御池岳、藤原岳、南に釈迦ヶ岳、御在所岳。
遠く白山や御嶽、乗鞍岳まで望め、鈴鹿の展望台と呼ん
でも過言ではありません。登路はホタガ谷、石榑峠から
中心です。
【参考】
2.5万図『竜ヶ岳』



パノラマ画像

たおやかな笹原に雲の影が行きかう。奥は大日向
山頂から北方向。左から静ヶ岳、銚子岳。奥に御池岳、右に藤原岳。遠く養老山系が霞む

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