西谷の森公園〜まさに山笑う里山散策

峠の東屋付近から公園の最高峰(Ca350m)
平成23年 5月 3日(火)
【天候】薄曇り
【同行】末娘


 自室のPCで勝新の『悪名』シリーズを見つつ和んでいたら、末娘が
「今日暇?」と聞く。
「うん。まあ」と小生。
「手軽に歩けるとこ知ってる?」
「うん。まあ」
 宝塚の奥の千苅ダム近くにある大岩ヶ岳なんぞ気軽に歩くにいい場所。目的地はそこと
いうことで10時半出発。ところが世の中はGW。今日はそのGW後半の連休初日で、且
つ高速道は何処まで行っても1000円という割引であるから巨大な駐車場と化している。
おかげで一般道もべた混みでにっちもさっちも。R176バイパスから抜け出ようと、い
つもは使わない阪神高速を川西小花ランプまでたった1km程度に金を払ってしまった。(^^;

 気が付けば旧R176。突然、ナビがそこを曲がれと云う。いつもはこのナビあほちゃ
うか?と逆らってばかりいる小生も、こんな日だから幹線道路は駄目だろうと思っている
からここは従ってみようという気になる。それが正解だったようで、いつのまにかよく使
う県道川西篠山線を走っており、第二名神工事中の狭い県道324号で西谷へ出ることが
できた。とはいえ、ここまで30分も余分にかかっている。もう12時なのと4時から見
たいTVもあるという他愛もない理由から、大岩ヶ岳まで行かず、その東登山口手前の『
西谷の森公園』へ目的地を変更する。

 実は公園が整備される直前、この辺りは歩いたことがある。『黒岩』という岩があって、
馬の背状の岩尾根もあるということを教えてもらっていたのだ。冬の最中だったと思う。
馬の背にいた時だったか人声が聞こえ、それが獲物を追うハンターの声で、銃声も聞こえ
て度胆を抜かれたのである。

 管理事務所でパンフレットを頂く。裏面が案内マップになっていて便利。これを見なが
らどう歩くか思案。東の尾根道から最高点の展望台へ。馬の背を経て峠の東屋から西へ下
って茅葺の農舎とグルッと巡る設定とした。公園入口の右手に東の尾根の案内がある。展
望台まで1150m。案内図にも距離が書かれているが合算すると1260m。「計算合
わんやないの?」なんて野暮なことは云わぬことにしよう。(笑)

東尾根登山口

 東の尾根は緩やかな登り。もっとも事務所の広場で標高140mだから最高点まで高低
差は110m余りなのである。南向きの尾根なので明るい。すぐに懐かしい山の匂いが辺
りを覆っているのが分る。足元にはワラビが顔を出し、カサコソとトカゲが慌てて草むら
を逃げる。薄青い色をした保与谷池を取り巻く若緑の山肌には、点々とヤマザクラの白さ
やコバノミツバツツジの赤紫が目立つ。萌黄色や黄緑に盛り上がる山は正に山笑う風情。
陽春。生命力が溢れていて本当にいいなあ。病み上がりの小生しみじみと。ワーンワーン
と途切れない羽音に虫嫌いの末娘はブツブツ文句。大きなハナアブがいつまでもついてく
るのですこぶる閉口している模様。(笑)

 大原野分岐を過ぎて、展望台まで410mの標識横にいいベンチがあったので弁当を開
く。ここも虫が飛んでくるけれど、山へ行って虫が飛んでこない方がレーチェル・カーソ
ンの「沈黙の春」を髣髴としてかえって気持ち悪いのだ。

 峠の東屋への分岐を越えて小山に登ると「ツツジの咲く丘」。「コース外」のプレート
には覚えがある。コシダの中に小道があるのは竜王山への踏み跡だ。やっぱり一山、名の
ある山に登っておこう。尾根の踏み跡を辿って宝塚市の三級基準点のある小ピークには天
狗松への分岐がある。ビニールに入れられたボール紙製の私製案内板がぶら下がっている。
そこから竜王山との鞍部へ少し下がると、地面に何かほの白いものが目についた。目を凝
らすとギンリョウソウがニョキニョキ群がっているのである。北摂でギンリョウソウを見
つけるのは少し珍しい部類に入るだろう。

展望台から意外に端正な竜王山
左奥に大船山が見える

 そこからやや厳しくなった斜面を10mも登ると竜王山の頂上。三角点はないけれど、
兵庫県の三級基準点の金属プレートが埋まる。猫の額ほどの広場には数年前と変わらぬ祠
と文化年間の立派な石灯籠が建っていて、北尾根に沿っていい参道が続いている。祠の裏
には熊手が立てかけてあり、地元の方が今も大事にされていることが推し量られた。

 さて、ツツジの丘に戻って改めて展望台の山へ。六角東屋分岐近くだったか、道端に一
株だけヒメハギが咲いていた。頂上には一組のご夫婦が展望を楽しんでいる。さっき聞こ
えていた声の主らしい子供らの姿は見えない。早速ながら木製の展望台へ上がろう。黄砂
がひどいが、大岩ヶ岳、古宝山、大峰山、大船山、羽束山、天狗松などがぐるりと囲んで
いる。この頃ご無沙汰だけれど、みんな、昔お世話になった山々だ。(笑)そんな山々を
眺めながらペットボトルのお茶でのどを潤した。

展望台上から公園の東半分。歩いてきた東尾根と
保与谷池、手前は馬の背への中央尾根
遠くに古宝山と大峰山が黄砂に霞む

 下りは今日のハイライトの中央尾根。パンフレットを見て今日初めて知ったのだけれど、
黒岩と呼ばれる岩と馬の背は違う岩らしい。展望台直下の岩が黒岩というらしいのだが、
わざわざ名を付けるほど目立つ岩でもないなあ。(笑) 滑らぬように足元に気を付けて下
る。岩の横の白い采配のような花はマルバアオダモだろうか。

 まもなく馬の背。長さは20m足らずだと思うが、赤っぽい灰色の岩である。危険防止
の為にロープと金属杭が片側に設置してあるのがちょっと艶消しだが...。(笑)

マルバアオダモが目立つ馬の背を行く

 ちょっとした小山の上にある峠の東屋から西へ。盛りを少し過ぎた感じのコバノミツバ
ツツジの下を下って行くと小さな沢で、遊歩道の左右に段ボールや稲わらで作った小さな
小屋がいくつか建っている。アンパンマンの絵が描かれているところを見ると、小学生や
幼稚園児が子供会か何かで隠れ家用に作ったみたい。小生にも覚えがあるが、秘密の隠れ
家作り、さぞかし面白かったやろねえ。

 藁葺農舎には綺麗なトイレがあるのでお借りする。近くのビオトープではこの頃拙宅の
周りでもトンと聞かなくなったカエルの声。ジーンファームに入るとエビネが満開。ここ
ではさまざまな里山の植物を育てているんだそうだ。(ふーん、そうなのか)その時だ。
突然、ウィーンと唸る大きな音。換気装置が作動したらしいがびっくりした。(^^;

 農舎の南には水田があって、田植えの準備で忙しそう。畔にヤマザクラ。花を咲かせて
田植え時期を知らせるんだろうなあ。

 西の駐車場の前から事務所前へてくてく車道を歩く。
「何キロ歩いた?」
「3kmくらいかなあ。大したことなかったやろ?」
「そんなことない。」
「ええ?ほんとはもっと歩かんとダイエットにならんで」
他愛もない会話が続く。短いながらもリハビリと麗らかな春を満喫できた半日でした。




【タイムチャート】
10:20自宅発
11:50〜12:00西谷の森公園駐車場(駐車地)
12:03東尾根コース入口
12:17〜12:33展望台まで410m標識(昼食)
12:40ツツジの咲く丘
12:45〜12:48布見竜王山(標高368m)
12:55ツツジの咲く丘
13:00〜13:05東屋のある山(標高350m)
13:15〜13:16馬の背
13:18〜13:20峠の東屋
13:30〜13:40茅葺の農舎
13:55西谷の森公園駐車場(駐車地)



黒岩と馬の背のデータ
【所在地】兵庫県宝塚市
【標高】Ca340m
【備考】 神戸市の千苅貯水池の東に位置する里山が、兵庫県立宝
塚西谷の森公園』として整備されました。そのシンボル
が中央尾根(南尾根)にある黒岩と馬の背です。馬の背
は規模は小さいですが、その名の通り小野アルプスの紅
岩の様に馬の背状に露出した岩です。
布見竜王山(西部竜王山)のデータ
【所在地】兵庫県宝塚市
【標高】368m
【備考】 黒岩のハイキングコースの途上、東尾根のコブ(ツツジ
の咲く丘)から北に延びる尾根上に位置する里山で、山
頂には竜神を祀った祠と兵庫県の三級基準点が置かれて
います。
【参考】
2.5万図『武田尾』




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