空と風に初秋を感じて中山谷山から櫃倉林道支線

中山谷山北尾根にて
平成23年 9月11日(日)
【天候】晴れ
【同行】水谷さん


 今日は連休以来の芦生である。櫃倉谷から坂谷遡行と沢遊びをするSさんら一行へサプ
ライズをとMさんと目論んだのだ。給油、食料到達と少々手間取り、芦生に向かったのは
8時を廻っていた。現地集合は10:15なので、心持ち焦ったものの、10時過ぎ、須
後の駐車場に滑り込む。直ぐにMさんの車もやってきた。停めた向かいにSさんの車があ
り、既に一行は出発したようだ。こちらは取って返して五波峠へ向かう。上手く遭遇と相
成るだろうか。(笑)

 今年のGW初めには通行止だった五波林道だが、GW後半には復旧したとのこと。走っ
て見ても路面状況は以前と変わらず、倒木の影響だったようだ。峠には2台の車とともに
マイクロバスが一台。手持無沙汰の運転手に聞けば八ヶ峰から古道を染ヶ谷へ向かったと
のことだった。

 峠から東の尾根に登る。過去に何度も歩いた道だが何時来ても清々しくなる尾根だ。日
差しは強いが見上げる空は高く澄んで、吹く風は涼しい。ヤマボウシの鈴なりの薄赤い実
を摘まむ。気づかぬうちにも季節は初秋へと移ろいゆくようである。そんな初秋の風にブ
ナの葉が早くも舞い散り始めている。先日の台風12号の影響なのかコハウチワカエデや
リョウブが根こそぎ倒れている。意外に根が浅い。お蔭で周囲は更に明るい。

相変わらずの清々しい尾根

 ユズリハの群生地を抜ける。古道が走っていたような雰囲気のある窪みに沿うと中山谷
山の分岐はすぐである。右に折れて小さなピークを一つ越え、その先の小高い高みが74
7m標高点ピーク。進むに従って尾根は顕著になる。倒木更新の大きなブナの幹が脆くも
四散している。道なりに左に導かれていくとやがて緩い斜面になる。左手を眺めると先ほ
ど別れた若丹の尾根が坂谷の向こうに起伏している。と、話声がするとMさん。Sさんら
がもう到着しているのだろうか。だがそれっきり話声は聞かれず、どうも空耳だったらし
く、中山谷山の山頂に着いても人の気配はなかった。時刻は11:30である。

 一行を待つことにして腹ごしらえ。今回もざるそば。赤飯おにぎり。考えてみれば炭水
化物ばっかりだ。今日も持参の氷で麺つゆを冷やす。今回の某『7・11』のざるそばは
『ほぐし水』入り。これはちょっとした親切である。(笑)

 ブナの高みでエゾハルゼミが鳴く。それ以外は野鳥のさえずりと風に葉の鳴る音がする
のみ。思わず昼寝がしたくなってくる。そんな眠気に逆らってSさん一行の到着を待つが
上がってくる気配はない。結局、12時半まで待ってみたが遭えず仕舞い。三角点の上に
伝言を置こうかと話し合ってみたが、中山谷山をパスする可能性もあり、駐車場の車にメ
モを置いておこうということになった。

 さて、須後への下山。コースはいくつか考えられるけれど、夕方から用事があるという
Mさん。以前歩いたことのあるオクノタンへの尾根の途中にある766mピークを経て、
その南東方向に延びてきている櫃倉林道の支線へ下るのが最短だろうとコース選択する。

 中山谷山の東方向も綺麗な尾根が続いている。かつては背丈ほどもある笹藪が続いてい
たらしいが、今はその痕跡も消えつつあり、明るい裸地の広場もできている。ほとんど平
坦な尾根筋を15分ほど歩いて屈曲点ピーク。東からほぼ直角に南に向きを変える。南に
向かう尾根筋は最初広いのでやや分かり難いが、徐々にはっきりしてきてヌタ場を左に見
る頃には細い尾根になる。倒木などを避けて小刻みなアップダウンを繰り返して766m
ピークの登り。登りついた所がそうだと思ったら偽ピークで、標高点はもう少し先である。
頭に矢印が刻まれた京都大学のコンクリート標識が立つ、林の中の小さな高みである。

 ここから奥ノ谷山(オクノタン)へ向かう場合は明快な尾根を西へ向かえばいいいのだ
が、今回は正反対に東へ向かうことになる。勿論、ここまでと同じくテープ類は一切ない。
これまでの尾根上は藪も消滅していて薄いながらも踏み跡があって歩きやすかったのだが、
その踏み跡も消えがちでこれはほぼ間違いなくバリエーションルートだ。(笑) それでも
桧と雑木が相半ばの植生下に、最初は何となくケモノミチらしいものがあったが、それも
傾斜が出てくるにつれて消えて、サルトリイバラやハナヒリノキなどの低木の障害物が増
えてくる。そんな下降始点付近の小さな裸地に一本、ツチアケビがニュッと朱赤色の実が
ある。この時期鮮やかな色が少なくよく目立つ。まるで弁当に入れられる赤ウインナーだ。
しかし、そんなことより肝腎の下降ルートだ。(笑)

赤ウインナーのようなツチアケビが

 林道に出るには最初東へ進み、途中で南あるいは南東に方向を変えて進まねばならない。
コンパスで確かめつつ進むが、南東へ進路変更しつつも下草で煩わしいので、つい東へと
進み過ぎたようだ。斜面が急となりしかも藪が深くなってきて、肌にへばりいて不快なク
モの巣攻撃も頻繁にあって、人が入った形跡がほとんどなくなってきた。下から沢の音な
のか風の音なのかよくわからない音が上がってくる。直線でいえばもう150mも進めば
林道に出るはずなのだが...。このままでは谷に降りてしまい具合が悪いので、周囲を
確認できる場所に立つ。南方向に尾根らしき出っぱりが見える。とりあえずそれを目指し
てトラバースしながらやや登り返すとそこはやや若い桧林だ。埋もれた古い滋養強壮剤の
小瓶など人の痕跡も久々に散見され、ジグザグの作業道らしき跡もあって一気に歩き良く
なった。歩く内に地形は緩やかな尾根の形状になって来て、うまく意図したルートに復帰
したようだ。初めから人工林を選んで歩いた方が良かったかもしれない。(笑) そうして
南東方向に進むうちに林道始端が見えてきた。久しぶりのアドレナリン。ほっと一息。(^^;

林道終端にきっちりと飛び出した

使われなくなった林道は
徐々に自然に還っていくようだ

 この林道、最近は全く使われていないようで自然に還るに任せてあるようだ。となれば
途中崩壊して歩けなくなっていることが心配になる。大きくカーブするごとに前方に目を
凝らす。足を動かすたびにボロギクの白い冠毛がワーッと飛び立ったり、シダの蔓延る中
を分けて進む。蛇が数匹うろうろするシーンもあってびっくりする。そして比較的大きな
沢が右から合流してくる辺りは道が川だか、川が道だかよく分からない。(笑) 

 小さな支流を集めて、沢音も大分、谷川らしくなってきた。大きくジグザグに切り返し
て谷へ下りていくと、林道も地道からコンクリート舗装に変わり、一安心。以後、幸い歩
けないような崩落個所にも出くわさず、無事、櫃倉谷林道と合することができた。

櫃倉林道本線に合流した

 後はテクテク須後に向かって歩くのみ。日なたは暑いので木陰を選って歩いていく。三
度ほど櫃倉谷の流れにかかる橋を渡ると内杉谷の林道と合する。須後に着くまでに夫婦と
思しき初老の外国人ペアとすれ違ったのみで静かなものだ。須後には林道始端に降りてか
らほぼ1時間で到着する。

 まだSさん達は戻ってきていない。手帳を一枚破く。中山谷山山頂で1時間待ったが会
えなかった旨、伝言に記して車のワイパーに挟んでおいた。戻った五波峠には我々の車以
外に車は全てない。Sさん一行にはコンタクトできなかったけれども、プチバリルートも
あってそれなりに遊んだ一日。涼しい風が吹いて、日差しを除けば山はもう秋の風情なの
だった。




【タイムチャート】
8:00自宅発
10:00〜10:10須後駐車場(集合地)
10:30〜10:40五波峠(駐車地)
11:02〜11:03中山谷山分岐
11:11747m標高点ピーク
11:30〜12:26中山谷山(791.8m(三等三角点))(昼食)
12:40Ca770m屈曲点ピーク
13:00〜13:05766m標高点ピーク
13:35櫃倉林道支線始端
13:58櫃倉林道出合
12:03〜12:35奥ノ谷山(811.0m(三等三角点))
14:16内杉林道出合
14:42須後駐車場



中山谷山のデータ
【所在地】京都府南丹市(旧美山町)
【標高】791.8m(三等三角点)
【備考】 京大芦生研究林地域の西側に位置します。五波峠から杉
尾坂と繋がる若丹尾根のやや南側にあり、ブナやリョウ
ブの自然林が包みます。数年前はササが覆っていました
が、花が咲いたとかで、今は枯れて歩きやすくなってい
ますが、歩く人もまだ少なく静かな山歩が楽しめます。
尚、この山域はテープ類や標識もないのでコンパス、地
図を必携してください。
【参考】
2.5万図『中』



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