神鍋山で噴火口を覗く

神鍋山遊歩道の石仏
平成23年11月27日(日)
【天候】うす曇り
【同行】単独


 香美町でカニを堪能したあくる朝。昨日の進美寺山に続いて、自宅に帰るついでに軽い
山をもう一つというわけで、今日はスキーのメッカ神鍋山へ向かうことにする。標高差は
100m程度。超手軽とは云え、神鍋山もちゃんと三角点のある山なのだ。(笑)

 竹野から県道1号を南下、R178の森本に出て、更に日高町へ向けて南下する。蕎麦
で有名な床瀬を抜け、木々が黄や茶色に染まる峠道を降りてゆくと白い但馬ドームが見え
てくる。駐車場をお借りするべくまずは道の駅『神鍋高原』を目指す。ついでにここで登
り口の情報収集だ。受付横で地図付きのパンフレットを手に入れ、それに従って温泉施設
『ゆとろぎ』の方へ向かう。陸橋を潜ると目の前に、一見、巨大古墳と見紛うばかり、な
だらかな丘のような神鍋山が横たわる。その東側の大半はアップかんなべスキー場のゲレ
ンデである。無人のリフトが動いているのは間もなく迎えるシーズンの為の予行演習らし
い。このゲレンデを歩けば簡単に頂上に着けるけれど、ちょっとはばかられるので、ゲレ
ンデの端にあった舗装路を辿ることにする。すぐに『噴火口』と案内標識が出てきた。こ
の道で正しいようで、西から上がって来た(こちらが正規らしく、登山口と書いた小屋が
ある)舗装路と合流する。

登山口から神鍋山方向を見る

 2m幅の遊歩道はスキー場の斜面を巻くように緩やかに延び、路傍には石仏が穏やかに
立っている。元々は観音霊場巡りの参道であったらしい。道のすぐそばにイノシシの捕獲
檻が置かれている。本気で捕獲する気なのかな?中に餌がないが。でも何物かと出くわさ
ないとも限らない。念の為、熊鈴をセットしよう。(^^;

 道は市民農園への道を分けて緩やかに折り返す。こんな緩やかでも今日は風もなく暖か
いので、額はうっすらと汗ばむ。だのに西に見える山肌には雪が残っている。そういえば
数日前、氷ノ山に冠雪があったとニュースがあったのを思い出す。

 真っ赤に色づいたカエデがある。茶色はコナラやカシワの木。この時期の落葉樹の林は
いいものだ、などと周囲を見回しながら歩く内に東屋が見えてくる。その向こうは大きく
陥没した草地である。地形図で窪地マークで印された部分をこの目で見るのはなかなか無
いがここがその場所だ。今立っている場所は火口壁なのである。説明板があるので読んで
みる。神鍋高原周辺にはこの神鍋山を含め、太田山、大机山、ブリ山などの火山があって、
その内でも神鍋山は一番若い火山で1万年前くらいまで盛んに噴火していたそうだ。確か
に地面には茶色いスコリアと呼ばれる噴石が転がっている。噴火口は今では草でおおわれ
ているが、周囲750m、深さ50mもあるという。近畿にこんな火山地形があったとは
寡聞にして知らなかった。

神鍋山の火口壁。中央奥の一本松付近に三角点がある

登って来た説明板のある東屋と火口壁を見返す

 上がって来た道を折り返すように火口を巡る周回路があるので辿ってみる。また東屋が
あり、傍に碑がある。昭和37年のスキー大会で遭難した豊岡農業高校の生徒の遭難碑だ
った。そのすぐ横の玄武岩でできた神鍋神社のモニュメントの前を過ぎると、今までの草
地とは対照的に黄色く色づいた雑木の林である。

 雑木林の中ほどには道標があって、市民農園などと方向を示してあるが広い道が続く直
進方向にはない。とりあえず進んでみるとそこはスキー場のリフト終点である。軽四輪が
止まっていて、リフト降り場横の小さな建物に機械を操作する小父さんがいる。もうすぐ
シーズンを迎えるリフトの試験運転に余念がない。邪魔かもと戻ることも考えたが、ここ
まで来たら三角点にも挨拶して行きたい。なにせ目当てのものはスキー場のゲレンデの中
にあるらしいのだ。(^^; 作業の合間を見て、駄目もとでゲレンデを通らせてもらっても
いいか問うてみたら、意外や構わないという。しめしめ、礼を云ってなだらかなゲレンデ
に出る。

 ゲレンデは高い木が一本もないので景色は抜群。目の前に但馬ドームの白い屋根がある。
周囲には神鍋山を取り巻く大岡山や太田山があり、西側は蘇武岳や三川山に続く1000
mクラスの山並みで、先日降った雪が残る。その中腹の斜面は万場や名色のスキー場のゲ
レンデだ。南には山また山の波がうねっている。昨日登った進美寺山はどれだろう。目立
つのは真南に二つ並んだ鋭鋒だが勿論、名前など分からない。

 ゲレンデには高い木が一本もないと書いたけれど、本当は一本だけあるのだ。「一本松」
と標識があり、太い松の下に石仏が一体置かれてある。GPSの指示によれば三角点はそ
の側にあるはずなのだが...。それが中々見つからない。こちらにもリフトの機械室が
あってその周囲も探すがない。そこでもう一度、その辺り一帯に敷かれている合成樹脂で
できた白い保護メッシュに目を移すと...。すると目の前にある網目に見慣れた十字の
刻みが入った石の頭があるではないか。判らないはずだ。標石は地面から頭が3cm程度出
ているだけで、しかも保護網がかかっているから表面上はほとんど出っ張っていないのだ。
見つかってよかった。目的を果たすと東斜面下にある人工雪のゲレンデから流れてくるB
GMの音が急に大きく聞こえてくるようになった。その後は神鍋発祥の地の大きな石碑横
からゲレンデを、右斜めに下ってスタート地点に戻る。
合成樹脂製の保護メッシュに埋もれて三角点が...
麓に人工雪のゲレンデが見える

 行きに潜った陸橋を渡ると道の駅の階上に出る。展示されている四季の花のパネル写真
に見入っていると、係の小父さんが熱心に神鍋の花々について教えてくれる。それほど珍
しいものはなかったけれど、ここではこれ一株しかないと云っていた植物は何だったっけ。
もう忘れてる。 (^^;

 神鍋山を後にして車を走らす。昼食は手打ち蕎麦にしようと高中に向かったが、ここも
有名になったもんだ。お昼時で駐車場も満杯。生来、あんまり待つのが好きではないので
別の所。そういえば遠坂トンネルの青垣町側出入口の下の旧道に、紺色の幟がはためいて
いたのを思い出す。今もやっているのか少し不安だったけれど、それが親水公園の傍に建
てられた『今出せせらぎ園』と呼ばれる町おこしの施設であることを今日知った。

 農家をイメージしたいい雰囲気の建物。お昼時を少し過ぎていたにもかかわらず、六分
目ほどの客の入り。シンプルな手打ち蕎麦を注文すると、蕎麦かりんと共に具たっぷりの
ボタン汁のお椀が出てきて驚いた。本日のサービスだそうだ。ボタン肉が美味い。勿論、
メインの蕎麦も美味かった。また機会があったらやって来よう。

 昨日はカニ、今日は少しだけどボタン肉。のんびり山と共に、旬の味を楽しんだ週末と
相成ったのでした。





【タイムチャート】 
10:22登山口
10:42〜10:45説明板のある東屋
10:50〜10:55神鍋神社
11:05〜11:10一本松(四等三角点 439.5m)
11:20登山口



神鍋山のデータ
【所在地】兵庫県豊岡市(旧日高町)
【標高】469m(四等三角点 439.5m)
【備考】
現在は豊岡市に含まれた旧日高町の300〜500mの
高原地帯にあります。約1万年前に噴火を繰り返したト
ロイデ型の死火山で今も噴火口が残ります。なだらかな
斜面はスキー場に適しており、関西でも有名なゲレンデ
の一つです。
【参考】
2.5万図『神鍋山』



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