フカンド〜静かなり北山の奥座敷

フカンド山頂にて
平成23年10月 2日(日)
【天候】曇り時々晴れ
【同行】別掲


 前週歩いた天狗岳の南尾根。その中の一峰である927m標高点ピークから南東に延び
て久多に沈む尾根があって、その中間に三角点峰がある。エアリアマップで確かめるとフ
カンドという面白い名がつけられている。漢字で書くと『深洞山』となるようだ。名から
して少々気になる山は、佐々里方面からはアプローチが遠いが久多峠からは近い。標高差
も少なく、お手軽山歩が出来そうだ。一度出かけてみるべし。(笑)

 京都府道38号線。この道を走るのはここ1ヶ月で4回目。その間にも季節は着実に移
ろい、かやぶきの里のソバ畑もその間に花が咲き、そして散ってしまった。佐々里峠には
2台の車が止まり、ザックを背負って出発準備に余念がない男女がいる。小野村割岳にで
も向かうのだろうか。下って名物喫茶店のある広河原を抜け、廃村八丁の取付きの菅原の
先で久多方面へ左折。杉檜林の中、高度を上げていくと路肩に久多宮の町の看板が出る。
久多峠(能見峠)である。路肩には先着の軽四輪、ハイエースなど3台の車がある。山仕
事だろうか?それにしては大阪ナンバーなのがいぶかわしい。(笑) 猟? 時期が早いけ
どねえ。適当に車を寄せて出発準備である。

看板横にテープと踏み跡あり
 久多宮ノ町の標識横に尾根に上がる踏み跡と赤テープがある。地形図通り10mも登る ともう尾根上だ。周囲はまだ細い杉桧林でモミも混ざる。細長い松ぼっくりみたいな実が 落ちている。その中に桧にしては大ぶりの葉をもつ樹が混ざる。アスナロ(ヒバ)で、近 畿で見かけるのは少し珍しいのではないだろうか。右手(東)には久多の民家が眼下はる か下に小さく見える。その手前には南の桑谷山方面に向かう高圧鉄塔がある。鹿の高く物 悲しい鳴き声が遠くから聞こえる。  緩やかに登って一つ目の無名ピーク。右方向へ行きそうになるが、踏み跡は斜め左へ降 りていく。急坂を下るとアセビの目立つ平坦地で、歩く内に人工林と自然林がゆっくりと 入れ替わっていく。ナラ、リョウブ、イヌブナに混じってアシウスギにしては小振りな樹 が時折、左右に現れる。この辺りもご多分に漏れず枯れたナラが多く、中にはキクイムシ の木屑の微粉末を根元に積み、茶色に変色した葉を名残惜しげに梢に着けたままの木もあ る。そんな枯れたナラの木株にカエンタケが二株。触れただけでかぶれるといわれる猛毒 のキノコで只今全国蔓延中であるとか。これだけナラ枯れが起きるとそりゃあ蔓延するは ずだ。
久多峠からは所々薄いが歩き易い尾根道がある
 二つ目の無名ピークを越えると前方にフカンドを擁する山並みが木の間越しに姿を現す ようになる。灌木が茂る薄い踏み跡をまた鞍部へと下り、しばらくすると今まで概して緩 やかだった尾根が俄然、傾斜を増す。それを宥めるように斜めにトラバースしたり、立木 を利用したりして高度を稼ぐ。低い気温を予期して着込んできた長袖が暑いなと感じる頃、 先ほど見えていた久多へと伸びていく東尾根に出合う。それと合して左(西)に方向転換 すると、緩やかな尾根歩き。降り積もった落ち葉のクッションが膝に優しい。10分もす ると喬木が間をおいて生える小さな台地に出、枯れた笹の軸が疎らな原の真ん中に欠けの ない綺麗な三角点標石を見る。フカンド山頂。標高853.5m。先達の2、3年前の山 行報告を拝見すると、山頂には好き者が多いのかマイナー山に似合わず、賑やかに山名板 が懸けられていたそうだが、今では撤去されたらしく、山ランのものと、どうして懸けた ものか喬木の根元から5m位の、えらく高い場所に西陣山岳会の結成18年記念のプレー トがある位だった。
ササが枯れ明るいフカンド山頂
 鹿の糞が少ない割に寝床はちょくちょくある。(笑) 踏み跡は歩く人も少ないようで、 せいぜいケモノミチ程度だが、笹枯れで下草もなく歩き良い。尾根は狭まったり広がった りして西方面に続く。地形図に臍のように小円で描かれた実際にも丸いピークを越える。 苔むした倒木がると思えば、風雪で灰白色になり、捻じれた幹の縦皺を見せる枯れ杉があ る。枯れ株のそばには季節外れのタチツボスミレが一輪花をつけている。  右に微かなトラバース道のあるピークが現れる。897mピークへと続く尾根と合する 辺りである。斜面には大きなアシウスギ。幹の途中から生えだしたナナカマドが大きくな って、たわわに鮮やかな赤い実を実らせている。迂回せずに少しのアルバイトを我慢する と再び尾根上に出る。よく見るとカーブを促すテープがある。見落とさなければいいよう なものだが、897mピーク側からやって来ると、ついつい直進してしまいがちな場所で ある。帰路には要注意だ。  もうこんもりした897m標高点ピークはすぐそこだ。その手前にはここまでで一番の アシウスギがあって、今も旺盛に深緑の梢を茂らせている。この巨樹も板取りの跡が2ヶ 所残っている。一体、どのようにして板取りの鋸を入れたのだろうか。板の部分だけがバ ッサリと分離されているだけで余分な鋸跡とてない。不思議といえば不思議である。
板取り跡の残る芦生杉
今回一番の巨樹でした
 このアシウスギの巨樹の辺りは数年前なら笹のブッシュだったであろうが、今は悉く枯 れ果てて、歩きやすい台地になっている。緩やかな起伏を少し登ると897mピークで、 頂に埋まるナンバー171の石柱が目印になる。ルートはここから北西方向に変わり、そ の方向ほぼ1.5km見当には、先週昼食の時を過ごした927m峰とこの辺りの最高峰 951m峰の山並みがあるが、我々は今日はここで折り返し。山頂は風が強くて肌寒いの でアシウスギの台地で昼食を摂ることにして897mピークを後にする。
897mピーク
 今日のコースはあまり展望が効く個所が少なかったのだが、時に一部方向だけ邪魔が無 くなる時がある。この時もそうで、東が開けて比良山脈が波打っているのが意外に近い。 一際高いのが武奈ヶ岳であろう。スキー場のゲレンデらしき草原地帯がパッチワークのよ うにあり、蓬莱山の頂上の建物らしきものも認められる。しばし眺めてアシウスギの前。 朽木の幹を椅子替わりにして大休止。  来た道を戻って久多峠と久多下の町へ向かう東尾根の分岐点。細い立木に久多峠と小さ な木のプレートがかかる。行きでは気づかなかったけれど、よく見ると地面にタヌキの落 し物。(笑)  南に久多峠まではもう1km弱下るだけなので、ついつい直進してしまいそうな東の尾 根に少し踏み込んでみる。すると今までよりも頻繁にテープが現れ、中には例の伏見の「 Uさん」のテープもある。ブッシュもなく綺麗な尾根はこちらがメインルートなのかもし れない。地形図を見ると稜線は久多下の町の神社へと下っており、これを下るのもなかな か面白そうだが、如何せん久多峠まで戻る手段が車道を登り返す以外にない。(^^; とい うことで適当な所で折り返す。  久多峠に戻ると、軽四輪などはもう出発した後で我々の車しかない。久多峠はもう一つ、 南の桑谷山の登山口でもある。確かめると関電の巡視路を示す火の用心マークがある。そ の横に立つ木柱にマジックで桑谷山登山口と風雨で消えかけた文字を見つける。追々こち らも歩いてみたいものだ。  帰途は道の駅で鹿肉コロッケ。150円也。ちょっと高くて、売り子の小父さんも「鹿の風味は 分らんけど」と商売気のないことを正直に言うが、味は良かった。次いで亀岡の『ひがん花の里』 に寄り道して曼珠沙華の赤を鑑賞して帰る。めっきり秋めいた風が吹く北山で久しぶりに新しい三 角点を撫でられた一日でした。
亀岡の西国札所穴太寺
近くの『ひがん花の里』にて
■同行: かなぶんさん、呉春さん、幸さん、たるるさん、水谷さん(五十音順)

【タイムチャート】
7:00千里中央ローソン前(集合地)
9:25〜 9:35久多峠(駐車地)
9:43第1ピーク(Ca690m)
10:00第2ピーク(Ca690m)
10:45〜10:50フカンド(853.5m 三等三角点)
11:39〜11:44897m標高点ピーク
11:48〜12:08板取り大杉(昼食)
12:37フカンド(853.5m 三等三角点)
12:45〜13:00東尾根と久多峠分岐付近
13:25第2ピーク(Ca690m)
13:38第1ピーク(Ca690m)
13:45久多峠



フカンドのデータ
【所在地】京都市左京区
【標高】853.5m(三等三角点)
【備考】 京都市の北端、久多盆地の東側の山塊に位置するマイナ
ーな山です。特に展望もなく、目立たない山ですが、北
山の最奥部に当たり、歩く人も少なく、静かな山歩きを
愉しむには最適です。峠からが最短ですが、健脚向きに
は小野村割岳からの縦走も可能です。指導テープがあり
ますが、踏み跡が薄いので地形図、コンパスは必携です。
【参考】
2.5万図『久多』



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