白毫寺から残雪の五大山

五大山山頂からの展望。春日市街と
黒井城址(市街の左)遠くは多紀アルプス
で左端に三嶽が見える
平成23年 1月22日(土)
【天候】曇り時々晴れ
【同行】別掲


 兵庫丹波の山は昨春の向山以来だから半年ぶり位だろうか。その兵庫丹波の山へ、SR
Cの平成23年の第一回オフは中央分水嶺を形成する氷上郡の五大山から三日月山を経て
城山へと辿るコース。存外多かった残雪と、後に控えるスケジュールの加減で千丈寺山西
の大野坂でエスケープすることになったのだが、これで私的には鴨内峠から城山まで繋が
ったことになり、一段落の山行となった。

 年始からの厳しい寒さもこの週末はやや緩むとの予報通り、まだ暗い内に朝刊を取りに
屋外へ出ても、風もなく肌を刺すような寒さは感じない。山道具を車に詰め込んで7時前、
家を出る。とはいえ、舞鶴道を北上すると、車の外気温計は氷点下。丹波トンネルを抜け
ると途端に路側にも除かれた雪が見られるようになった。田畑も雪を被っている。こんな
に雪が残っているとは想定外。新車の慣らし運転を兼ねてやって来たけれど、ノーマルタ
イヤで大丈夫かいな? (^^;

 集合時間の8:35過ぎ。参加者全員が揃ったところで、JR黒井駅前の駐車場に車を
デポし、他の車で出発地の白毫寺へと向かう。東勅使の交差点から先がちょっとややこし
いが、無事、白毫寺の前に到着。丹波アルペンルートなる大層な名前が付けられた案内板
が立つ駐車場だけでなく、山肌にも沢山の雪が残っている。一応、アイゼンを用意してお
こう。

出発点の白毫寺雪景色

 五大山白毫寺は思ったよりも立派な天台宗の寺院。この辺りに多い法道仙人の開基の古
刹で、知らなかったけれど藤と石斛で有名なのだそうだ。山門前の鳥小屋には孔雀が飼わ
れ、池には沢山の大きな鯉が泳いでいる。その池の横に山道が延びておりこれが登山口。
『丹波森の径』の道標もあるので間違えることはないだろう。すぐに鹿除けネットが左に
現れ入口がある。広い山道はほぼ水平に人工林の下に吸い込まれていくが、ネットを開け
て斜面に取りつく。その後、踏み跡が消えたが雪で本来の道を少し外したのだろう。登っ
ていく内に難なく本来の踏み跡に復帰した。登りは大体、尾根を目指して登っていけば大
丈夫なもの。但し、下りではいつもこう行くとは限らないから、その時はちょっと注意だ。
(^^;
残雪の中、330m標高点尾根へ向かう

 登るに従って残雪は深くなる。とりわけ北向きの吹き溜まりでは30cmは優に越えて
いよう。だが、雪自体は締まっているので存外歩き難くはない。むしろ枯れて倒れた赤松
が多く、跨いだり潜ったりの方が疲れる。そんな障害物を除けながらやや急な斜面をアル
バイトして尾根に出、330mの標高点は北側を巻いてゆく。先行者は一頭の鹿かイノシ
シ。くっきりと足跡を残して我々をまるで先導して行くようだ。

 道標が現れた。芝生広場とあるのは「エルムいちじま」のことだろう。こういう道標が
間隔を置いて2本現れる。「エルムいちじま」のハイキングコースだろう。キャンプに訪
れた人たちの簡単な山歩きにうってつけの周回路だ。更に五大山に近づいた所から、「エ
ルムいちじま」の敷地内にある大きな永郷池が眺められる。その辺りは中央分水嶺をなす
鷹取山や愛宕山の山並みとの袋状の平坦地で、美濃地方では『洞』と呼ばれる地形である。
そういえば戦国大名の朝倉氏の一乗谷もこのような袋のような形状をしている。守るには
楽だが、一旦、入口を扼されてしまえば文字通り「袋の鼠」といえる。朝倉氏が有力な戦
国大名に脱皮出来なかったのがこんな所からも判ると何かで読んだことがある。閑話休題。

 丹波の山は山頂直下が急傾斜である。五大山もご多聞に漏れず厳しい登りがある。痩せ
た赤松が多い尾根には所々展望の効く高みがあって、白一色の碁盤のような田畑に囲まれ
た市島の街並みが背後に見え隠れする。その向こう遠くの高山は粟鹿山だろうか。そして
丹波槍といわれる鷹取山の向こうに見覚えのある五台山も姿を現す。

五大山東尾根から五台山の双耳峰(奥)と鷹取山

 中央分水嶺の稜線が見え始めたので、五大山ももう近いと思ったらこれが大きな誤りで
ある。数えてみたらCa450m、Ca490m、Ca520mと、三つも偽ピークがあった。
(笑) 何度も登り返すうちに数十mずつ標高は高まっていく。尾根も次第に岩がちになり、
まさに雪の残る日本庭園。寒さに縮こまったヒカゲツツジがあちこちに見られるようにな
ってくる。次第に南側の斜面になってきた為か、雪が融けて山の地肌が露わになり、しか
も風もなく日が当たるとその暖かさはまるで3月のようだ。寒波襲来とはいえ、春はもう
すぐそこだ。狭くなった岩尾根を頑張って最後の登りを終えると、西側にも風景が広がっ
た。 

 五大山はこれで3度目。狭い山頂の中央には三等三角点『白毫寺』が埋まり、ベンチが
一脚置かれている。寒さで萎れたヒカゲツツジの横で大休止だ。ポカポカと大寒とは思え
ない暖かさにラーメンの湯を沸かすストーブの熱気が相まって、頭上の低い立木の梢から
融けた雪の滴が首筋に冷たかった。ところで、三角点の標石、かなり下まで露出している
が、標高50cmほど低くなっているのではなかろうか。昔は標高570mだったのだろ
うか? (笑)

 相変わらずの大展望がこの山の売りであろう。ヒカゲツツジでつとに名を挙げた向山連
山が目の前にあり、左手に三尾山、黒頭峰、夏栗山の東多紀アルプス。鋸山の尾根を連ね
た先には小金ヶ嶽、西ヶ嶽を従えた多紀アルプスの盟主である三嶽がどっしりとある。そ
の奥のなだらかな高みは北摂の最高峰、深山らしい。南には白髪岳、松尾山、猿藪、高山
と続き、西にはアンテナ群を戴いた篠ヶ峰から笠形山方面。奥で雪を被っているのは千ヶ
峰だろうか。これから下る三日月山の尾根続きには台形状の猪ノ口山がよく見える。多分
この五大山の辺りにも砦か出城があったに違いない。

 小一時間の大休止の後、南側の狭い中央分水嶺の尾根を下って植林帯に入る。さっきま
でポカポカとしていたが、植林下はうって変った感じで冷え冷えとして寒い。そこから目
の前を登り返した所が三日月山で、五大山とほとんど標高は変わらない。ここから中央分
水嶺を辿る場合はやや難しく、普通に尾根伝いに歩けば黒井城方面に行ってしまいがちな
地点だけれど、分岐地点には以前にはなかった道標が立ち、指導テープも完備で間違えよ
うもなくなっている。道なりに左にカーブしつつ雪に獣の足跡の残る踏み跡を下りてゆく。

 左手の木の間隠れに五大山の山並みを見つつの稜線歩きはなだらかで快適そのもの。3
0分ほどそれが続き、そのなだらかさが少し厳しくなった先に思わぬいい道が現れた。『
水源の道』と道標がある。水源まで700m。それより面白かったのは『三明山』と標識
が立っていたことだ。
「?...。辺りにピークはないけどねえ...」よく見たら「三日月山」のことだった。
「『日』と『月』が近づきすぎやろ!」思わず道標に突っ込んでいた。(笑)

 鞍部に到着。道標を見ると春日町大野の八幡神社へ降りることができるらしい。地形図
を眺めると等高線が混んだやや険しい谷道みたいなので、雪もあることとて、当初のコー
ス取り通り、ヨコガワ峰を経て一度降りた経験のある大野坂へ向かうことにした。

 鞍部から杉桧林を2、30m登ると山道脇に見晴らしのいい岩があった。ここも砦の監
視所に使われていたのだろうか。想像の翼は広がるなあ。(笑) 登りは鞍部からの登りを
過ごすと、後はもうほとんど水平という感じだ。テープも頻繁にあるので迷う心配も皆無。
前方で話し声がすると思ったら、先行メンバが立ち止まって小休止しているので、ヨコガ
ワ峰の山頂に至ったのが分かった。
ヨコガワ峰

 ヨコガワ峰はどこが頂だかよくわからない。刈り払われた林の中にポツンと三角点があ
り、標識がなければ、気づかずに通り過ぎてしまうだろう。というわけで、少し憩っただ
けで、ここを後にして、南東に方向を変えて斜面を下りてゆく。

 南向きの斜面なので雪が融け、ぬかるみ状態である。おまけに急坂に倒木や立っていて
も枯れた木が多く、尻餅をつく人が続出。前方に見える千丈寺山が見上げるように高くな
り、眼下に大野坂が見えて来た時はもう滑らなくていいので正直、ほっとした。

雪深い大野坂。道標が設置されていた

 大野坂はこれで2回目。以前には気づかなかったが、氷上高年低山会のものらしい道標
が立てられている。深くえぐれた道は少し荒れ気味だが、昔は白毫寺参詣の善男善女によ
く利用された道だという。斜面にジグザグにつけられたのを下って行くに従って良くなっ
て、砂防堰堤が現れた頃には林道となる。まもなく見覚えのある獣除けネットとゲートが
ある。それを抜けたすぐ山手には社がある。

 白毫寺への参詣道らしく、道脇の桜の古木の下には不動明王の石仏。早くもオオイヌノ
フグリの青い小花の咲く池の堤の横を東へ、塞の神や六地蔵の石仏、千丈寺山や黒井城址
の山並みを左に臨みながら歩く。民家の軒先にはロウバイの黄色い花が匂う。延喜式内社
の兵主神社の大鳥居を見れば黒井の駅はもうすぐそこである。

 無事に全員、JR黒井駅へ戻ってきた。最後に白毫寺へ車を回収に行く。日帰りの小生
と篠山でシシ鍋一泊のメンバとはここでお別れ。大阪へととって返す。途中、空いている
舞鶴道で今度の車に奢られているクルーズコントロールを試してみる。98km/hにセ
ットしたが、坂道でもちゃんと定速を維持してくれる。おお、これは便利だ。って、当た
り前か。(^^; というわけで約200kmの慣らし運転も無事終了したのでした。皆さん、
ありがとうございました。久方ぶりの丹波の山。やっぱりいいです。




【タイムチャート】
6:50自宅発
8:25〜8:40JR黒井駅前(集合地)
8:55〜9:05白毫寺
9:49エルムいちじま分岐道標
9:52330m標高点ピーク
9:56エルムいちじま分岐道標
10:35Ca450mピーク
10:45Ca490mピーク
10:57Ca520mピーク
11:05〜11:32五大山(569.2m 三等三角点)(昼食)
11:45〜11:48三日月山(Ca540m)
12:20水源道出合
12:24〜12:25八幡神社分岐の峠
12:40〜12:41ヨコガワ峰(363.8m 四等三角点)
12:57〜13:00大野坂
13:10大野集落


■同行 呉春さん、幸さん、なかいさん、二輪草さん夫妻、水谷さん、もぐGさん


五大山のデータ
【所在地】兵庫県丹波市(旧氷上郡氷上町・市島町)
【標高】569.2m(三等三角点)
【備考】 日本一低い中央分水嶺といわれる「水分れ」から北に連
なる中央分水嶺の一峰です。山頂からは南方の眺望が良
く丹波、播磨の山々のみならず、遠く北摂の山々まで見
渡せます。氷上町油良、市島町白毫寺、エルムいちじま
から登路があります。
ヨコガワ峰のデータ
【所在地】兵庫県丹波市(旧氷上郡春日町・氷上郡市島町)
【標高】363.8m(四等三角点)
【備考】 五大山から東に延びる尾根上の一峰で、大野坂を隔てて
黒井城山(猪ノ口山)・千丈寺山と対峙する山です。但
し展望は全くなく、歩いていると標識がなければ通り過
ぎてしまいます。(笑)
【参考】2.5万図『黒井』




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