恒例干支オフ〜大文字山から三尾神社の狛兎

三尾神社の真向きの兎
平成23年 1月 4日(火)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 毎年恒例となった干支初詣オフ。今年の干支の卯からいの一番に頭に浮かぶ山は福井の
赤兎山だが、遠いし、この時期は完全な冬山でしかも今年は雪が多い。というわけで候補
からあっさり外すが、さりとて他にいい山が思いつかない。そこで発想を変えて干支に関
係ある所と山を絡められないかと色々探す内に、近江の三井寺近くに三尾神社という社が
あるらしいことが分った。狛犬ならぬ狛兎があるという。そこへ偶々、蹴上から大文字山
に登って三井寺に下山し、三尾神社に初詣するというプランが、新聞社系の某旅行会で5
日に企画されていることを知る。天気が今いちならば京都側に下山して、これも狛兎の岡
崎神社へ参詣するというエスケープも可能だ。旅行会より一足お先に歩いてみることにし
た。

 京都地下鉄の蹴上駅に集合は9:30。遠いように思うが意外や江坂から1時間かから
ないという便利さである。定刻には参加メンバも揃って、蹴上の駅から地上に出て府道を
東へ向かうとすぐに日向大神宮の鳥居がある。石畳みの狭い階段の両脇は民家の軒先だ。
疎水に架かる大神宮橋を渡る。展示用なのか下流にインクラインの台車に乗せられた小舟
がある。

 正月に降った雪が石畳に残って凍っていて、油断するとツルッと滑る。(山は大丈夫か
いな....。雪嫌いの小生の独白)大神宮の正面に出た。境内には誰もいない。大神宮とは
いうものの、境内は狭い。だが、外宮とその奥に内宮があり、社殿は簡素だけれどなかな
か立派なのはやはり京都。内宮の奥に天岩戸があるらしいが、ここは外宮に参拝して引き
返す。

 大神宮前に戻ったところの山道には京都一周トレイルの標識があるので、大文字山へは
それに従えばよい。木々で薄暗い中を進めば俄然傾斜が増して、岩がちの胸突き八丁とな
る。今回の山歩では一番険しかったような....。正月のなまった体には一寸ときつい。(^^;
しかも消え残った雪が滑る。ストックを持って来れば良かったかなと臍を噛む。とは言っ
ても少しの間で、日ノ岡からの山道と合流する伊勢神宮遥拝所との分岐に来ればきれいな
尾根道だ。左に折れてちょっとしたピーク(神明山と呼ぶらしい)を乗り越えてから、一
旦、右に折れて下った鞍部が七福思案所と呼ばれる峠である。

七福思案処

 『思案所』とはよく云ったもので、六差路か七差路になっている山中の要所。古くから
南禅寺と近江や山科を結ぶ古道だったのだろう、南禅寺道は深く洗掘された道だ。ひょっ
として山科に潜居した大石内蔵助も京と行き来したのではあるまいか。こんなあらぬこと
も想像するだに面白いではないか。

 ナラやカシが突然倒れることがあるから注意せよとの貼り紙がある。この辺りの大日山
国有林もカシノナガキクイムシの被害が深刻なようで、薪のように積み上げられた枯れ木
の束が被害の凄さを物語っている。小休止中にGさんから干し柿の差入れを戴いて小腹を
宥めて出発。『山火事注意』の赤い横断幕を左に見て遊歩道のみたいなハイキング道をい
く。水平になったり、坂になったりと徐々に登っていく道は穏やかだ。

 昔はマツタケが沢山採れたろう、赤松が多い山道である。ここまで展望は全くなかった
のだが、一か所、南方向が開けている場所がある。先客が一人が休憩がてら景色を楽しん
でいる。山科の街並みから音羽山や鷲峰山方向が一望できる。ここで一枚上着を脱ぐ。

 『東山トレイルbS0』で右に折れ、大日山と呼ばれる326mピークは右に巻く。大
日山へ登る踏み跡もあるが、それより大日山を少し行き過ぎた辺りの京都市街を一望する
場所が魅力的だ。いの一番に目につく平安神宮の赤い鳥居が鮮やかである。

大日山(326m)付近から京都市街
中央やや下に平安神宮の赤い大鳥居が

 流石、京都の里山である。ミツバツツジの多い尾根道には永観堂から上がってくる道が
最も顕著だが、枝道がいくつも合流してくる。依然、坂道は緩やかで右手前方、木立を通
して大文字山の広い山頂の台地が見えてくる。『東山トレイルbS5』で雪解けでズルズ
ルの斜面を登る。木立を通して子供達の声が聞こえてくる左方向に30mも行けば、三等
三角点が鎮まる山頂で、西から南方向に広がる京都市街が眼前に広がる。今までの山道で
ほとんど展望が効かなかったので、一際素晴らしい。蝋燭みたいな京都タワー。市街に浮
かぶ緑の島のような京都御所。平安神宮の巨大な赤い鳥居も指呼である。小塩山を始めと
する西山。南側の東山の低い山並みの奥には、遠く生駒も顔を見せる。

 子供会らしい団体を含めて多くのハイカーが休息をとる中、丸太のベンチが空いたので
ここでランチタイム。昼食を食べている最中にやって来た小父さんが大阪が見えるという。
視線を上げると、男山と天王山の間の先ほどまでかすんでいた地平に、高層ビル群が林立
しているのがわかる。今よりずっと視界が効いた昔なら、天下分け目の天王山の戦いや鳥
羽伏見の戦いもここから見れば形勢が良く観望できたろう。

 次の目標の如意ヶ岳へは雪が解けてドロドロになった坂を少し降りた所で東へ向かう広
い山道を伝う。すぐに現れる比叡平・池の平と藤尾との分岐点標識を右の藤尾方面に向か
う。道の両側の杉桧林にはまだ一面に雪が残る。風で梢から雪爆弾がバサリと落ちてきて
ぎくりとさせられる。明快な道はほとんど水平で、等高線に沿ってつけられているよう。
それを道なりに進むと、何だか徐々に下りになっていく。これはと不審を抱いて念の為コ
ンパスを取り出すとやっぱり、なんと南に向かっている。如意ヶ岳は通らずに藤尾へ直行
しているようだ。先ほど444mの標高点は無事通過したのは確かめていたのであるが、
これは何としたことかキツネにつままれたみたいな気持ちだ。

 とりあえず戻った方が得策だろうと取って返すことにした。50mも戻ると北側に見え
る尾根に上がる薄い踏み跡があった。テープもあるのでこれで目の前の尾根へショートカ
ットしてみる。すぐに尾根上。踏み跡があるので右に折れて50mも行くと今度はその踏
み跡自体が怪しくなってきた。これはとまたまた戻って今度は逆方向へ数十m。どこから
来ているのか明快な踏み跡に出くわしてホッとする。

 とりあえずこの道を通って東方向へ進んでみよう。人工林の作業道なのかこの道もほぼ
水平に山肌を忠実に辿っていく。結構長い距離を歩いて、もうそろそろ如意ヶ岳山頂にあ
る航空施設の管理道に出るはずと思うのだがなかなか出くわさない。それでももう少しだ
ろうと、くねくねと曲がり曲がってやっと飛び出したのは1.5車線位のダート林道。ど
うも管理道ではなさそう。飛び出し口には「無断立ち入り禁止 山主」と書かれた赤い札
が立っている。こりゃ、やはりメインルートじゃなさそうだ。(笑)

こんな所へ出てきた
無断立入禁止の立札がある

 地形図でチェックしてみたら、どうも如意ヶ岳の南にうねうねととぐろを巻いている実
線の林道に出たようである。そうなら東に向かえば管理道に出るはず。航空施設のある山
頂までは直線で200m程度で、目の前の人工林の中を北に直登できないでもなかったが、
施設のお蔭で山頂にも行くことはできず、もちろん三角点もないので、敢えてというほど
モチベーションも高くない。(^^; あっさりカットして、車の轍の残る林道を歩く。やが
て林道のゲート。人工林でやや薄暗かった辺りが雑木林になって劇的に明るくなったのに
は驚いた。そして、日陰の残雪にくっきりと大きな獣のものらしい足跡。「クマのものじ
ゃないの?」目撃した人は異口同音である。とはいえ、これだけ賑やかな面々の前へ出て
くるクマも居まい。

 10分も歩いたろうか。航空管制施設の管理舗装路が左上から降りて来た。そこから約
100m。琵琶湖と近江大橋に大津市街を見下ろせる所のガードレールの切れ目に三井寺
への目印があった。地形図には3本の高圧線路が描かれているがその最も西側の線と管理
道が重なる地点である。
航空施設管理道路のガードレールの隙間
から三井寺へ降りる
琵琶湖と大津市街がが一望

 斜面を下るとすぐに分岐があるが、下山路はしばらく管理道に沿うはずなので左に折れ
る道を選択する。この辺りに指示テープなどはなく、少し行先に迷うところだ。とりあえ
ず東へ東へと進まねばならない。そんなちょっと怪しかった踏み跡も明確になって、やが
て現れた黄色くペンキが塗られた木のある辻をさらに東へ。すぐにbS5の高圧鉄塔の横
を抜ける。時を同じくしてアラレがパラパラと地面の枯葉を叩き始めた。

 しばらく雑木林の中の平坦路が続き、三等三角点『別所』と藤尾との十字路に出る。私
製の標識には三角点までは5分とあるが、ピークでもないのでパス(三角点教の信者にあ
るまじき行為だ(笑))。

 小さな鞍部から少し登り返すとのっぺりした台地に出た。地形図には354m標高点付
近に長等山の表示があるが、歩いてきた方が標高が高いこともあって、どこがピークだか
よく分らない。東から南への曲がり角の雑木に「354m」と書かれた小さなプレートが
あるだけが頼りだ。まあこの辺りが長等山なのだろう。(笑) そこから南に降りていくと
裸地があって、忽然と白い建物が目に入ったけれど、帰宅して調べたところによれば、朽
木や美山へ行く際によく利用するR161の長等山トンネルの排気塔なのだそうである。

 道は次第に明らかになって明瞭な尾根を行くようになる。途中にポツンと大きな石仏が
あった。碑伝(ひで)が幾枚か備えてある。最寄りの三井寺は大峰修行の三大宗派の一つ
の大本山。ここ長等山一帯も修行に使われていたのかもしれない。その割には険しくはな
いが....。

 そろそろ三井寺分岐だろうと注意しながら歩いていると、やがてそんな注意も必要がな
いほど大きな白い立札がやや左手下方に見えてくる。ハイキング道のテープで示すだけの
分岐ではなくて、小関越とを繋ぐ古い道の峠である。しかし無粋な立札で三井寺境内立入
りは500円志納金が必要云々とあり、ハイカーは小関越に廻るようにとのことであった
が、遠回りなので林道中間にある谷道(杉に三井寺への指示がある)を辿ることにした。

三井寺分岐。奥が下りてきた道

 うす暗い歩き難い小道もだんだんと広く林道然としてきて、三井寺の僧たちの墓所なん
かが散見されだす。その内に広い場所に出くわしたら三井寺霊園とある。

 三井寺霊園のトイレには「ハイカー使用禁止」の貼り紙。宗教施設なのになんと狭量な
と思うが、団体が使用してマナー違反でもあったのか、何か事情があるのかもしれない。
塔頭の間を通ると観音堂への通路に出、総門から茶店前に出て東へ行くと三尾神社が見え
てくる。表に廻ると手水舎がある。もうここからして兎で口から水を流しているのだった。

 三が日を過ぎて平日なのに参拝客が結構行き来している。年末に朝日新聞夕刊に掲載さ
れたからかもしれない。(京阪三条駅には岡崎神社や三室戸寺と共に兎所縁の神社仏閣の
案内が掲示されていた) 三尾明神が卯年、卯の月、卯の日、卯の刻、卯の方から出現し
たということから、聞きしに勝る兎づくし。気がついたものだけでも幔幕は真向きの兎。
御影石製の赤い目をした夫婦兎。親子兎....。御祭神は伊弉諾命、天照大神の男親神だ。

縁結びの『めおと卯』

 二礼、二拍手、一礼で参拝。兎のストラップを購入して神社を後にする。豊かな水が流
れる琵琶湖疏水には鴨が群れている。思えば今日は琵琶湖疏水の入口から出口を山越えし
て踏破したわけである。京阪の三井寺駅はすぐそこ。浜大津駅から三条駅に出て、京橋で
四時半過ぎから祝杯。今年も健康で安全に登れますよう。よろしくお願いします。



【タイムチャート】
8:00自宅発
9:22〜9:32京都市営地下鉄蹴上駅(集合地)
9:48〜9:52日向大神宮
10:12〜10:15七福思案所
10:27〜10:30山科側展望地
11:17〜11:55大文字山(465.4m 三等三角点)(昼食)
12:10444m標高点
12:40〜12:42林道出合
12:55〜12:59大津航空無線標識所管理道出合
13:02三井寺分岐のあるガードレール間隙
13:19高圧鉄塔bS5
13:35四つ辻(藤尾、三角点分岐)
13:41〜13:42長等山(354m)
13:58〜14:00三井寺分岐
14:10〜14:45三井寺・三尾神社
14:55京阪石山坂線三井寺駅

■同行 呉春さん、幸さん、修ちゃん、もぐGさん


大文字山のデータ
【所在地】京都市左京区
【標高】465.4m (三等三角点)
【備考】
京都東山三十六峰を代表する山です。北西の山腹に京の
送り火の『大文字』の火床があり、ここと山頂からは京
都市街の一望できます。ハイキング道は銀閣寺、蹴上、
山科と四方八達しており、遊歩道も整備されていて安心
ですが、如意ヶ岳方面へ出る場合は枝道が錯綜している
ので、地形図とコンパスは忘れずに。
【参考】
2.5万図『京都東北部』



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