寒風から極楽尾根を赤坂山

赤坂山山頂より寒風から大谷山への稜線を望む
中央奥の台地上の山が大御影山。その奥は三重嶽から大日岳の稜線

平成23年 5月 4日(水)
【天候】薄曇り
【同行】単独


 三週間近くにも及ぶ入院生活で衰えた耐力を元へ戻そうとボチボチ始めたリハビリ山行。
往復30分くらいの小さな里山、往復3時間余りのほぼ平坦なハイキングコース、そして
高低差100m余りの里山と徐々に負荷を上げてきたが、そろそろそれ相応の山を歩きた
くなってきた。余りハードでなくてそれでいて展望のいい山。そこで白羽を湖西の赤坂山
に立てた。パノラマ展望と花とこの季節は最高の山である。

 コースはマキノスキー場を基点に寒風から極楽尾根を赤坂山へ向かい、マキノスキー場
へ戻るという標高差約700m、ほぼ5時間のオーソドックスコースである。結果的には
特段の異常はなく、重い荷重をかけたり、頭に衝撃を与えることは避けねばならないが、
通常の山行きも問題はなさそうである。ちょっと安心。だが、油断大敵。躓いて倒れるな
どはもってのほか。今回もこれには神経を使ったなあ。(笑)

 GWの後半、Uターンラッシュが早朝6時頃から始まるとはネットの渋滞情報だったが、
豈にはからんや、6時20分に自宅を出たにしては京都東IC手前辺りで少し混んだ程度
で割にスムーズに通過。大津バイパスもトンネル供用で二車線化が完了していてここもス
ムーズだ。名物メタセコイアの並木を抜けて、予定通り8時半にはマキノスキー場に到着。
係員の誘導で登山者用駐車場に車を止める。無料というのが嬉しい。大阪弁でいう所謂「
しょうもない」場所でも500円とか料金を取る時代。リピートしてもらいたければやっ
ぱりこうでなくっちゃあ。(笑)
マキノスキー場より赤坂山方面を望む
中央が562m峰で右麓のザレ地が赤坂山登山口
左のゲレンデに寒風への登山路がある

 スキー場はオートキャンプの車とテントで色とりどり。目の前に広がる山並みの襞には
まだしっかりと雪が残っている。右手前方の見覚えある赤坂山直登コースの裸斜面を、今
しも数名の登山者が行く。対して寒風方面に向かう登山者は...。

 今は盛りと列をなしたの八重桜の濃いピンクの横を大谷山登山口の標識に従って左に折
れて斧研川を渡る。スキーのゲレンデにパラパラと人がいるのは登山者ではないようだ。
近づいた時に聞いてみたら、やはりワラビを採っているのだった。

 結構、暑い。早く彼方に見える樹林帯に入りたい。この時期でもそう思うのだから、夏
など日陰も皆無でとても登れないだろう。そんな事どもを考えつつ見上げると、200m
ほど前方に数名の中年男女グループ。これが寒風までの登山コースで出合った唯一のグル
ープであった。その中の女性陣が立止まっている。見ればこちらもワラビを探しているの
だった。その間に先行させていただく。

 直登するしかないゲレンデも上部の小屋を過ぎると斜めに登るようになり、ようやく樹
林帯に入ってホッとする。手元の高度計では標高340m。駐車場からはもう200m稼
いだことになる。林の中に続く小道は常にジグザグを切るようにつけられており、これは
かなり古い峠道と見た。

 ゲレンデとうって変わって足元の花々が増える。オオイワカガミ、イカリソウ、スミレ
サイシン、シハイスミレなどなど。そしてポツポツとカタクリの花も散見されるようにな
り、木々は芽吹いたばかりの若緑。山道の左側から沢音が聞こえ、日差しの中にプーンと
ヒサカキ独特の匂い。遠く今年初めて聞くツツドリの声。春の息吹。もうこれだけでも来
た甲斐があるというもの。(笑)
陽光を浴びてカタクリ

 やがて小さな尾根に上がったようだ。道標が置かれている。西山林道分岐である。ここ
でちょっと一休み。タオルで額の汗を拭き、水分補給。寒風まではまだ3.5km。

 杉林が出てきた。途端にひんやり。大体、杉林など植林帯は好きではないのだが、この
天然クーラーは火照った体に心地よい。すると登山道から少し離れて、ぽっかり空いた空
間がある。他のHPにもある展望地で地形図の562m標高点の手前辺りだ。丸太の椅子
も置かれていて、その先に立てばオートキャンプのテントやさっき過ぎた八重桜の列がも
うかなり小さく見える。集落周りの田んぼにも水が張られているようだ。

 562m標高点は杉木立の中の丸い小山で登山路はその肩を行く。その少し先の杉の根
方で立ったまま小休止。さっきから腹の虫が鳴っている。何せ5時半過ぎにトーストとコ
ーヒーのみ。コンビニの赤飯お握りを半分頂く。

 この辺りからだったか、木陰、山陰に雪が残っているようになる。足跡から見ると今日
の先行者は皆無、昨日のでもなさそうな感じがする。とりあえず古い先行者の足跡を辿っ
て不用意に踏み抜かないように用心しておく。

心洗われるブナ林が眼前に展開する

 標高が650mを越えるようになるとブナが現れ始める。褐色のシミのある灰白色の幹
がこれから向かう斜面に文字通り林立し、その枝先は若葉を出し始めたところだ。さわや
かな林のどこかで小鳥が鳴いているけれど、残念ながら名前は分らない。

 大谷山がよく眺められる辺りで小休止。目を凝らすと、大谷山の頂上の山名杭が認めら
れ、その周りに2、3人の登山者がたむろしているのが分る。どうだろう。直線距離でお
よそ1km強というところだろうか。それを見ながらお茶を飲んでいるとさっきのパーティ
がやってきた。
「どちらへ。」
「ええ、赤坂の方へ抜けます。今日はリハビリ登山で...」
訛りから察するに東海地方から来られたようだ。考えればここも鈴鹿と一緒で東海地方か
らも近いのだった。

 深く洗掘された登山道の両壁はオオイワカガミのフェンス。その中にイワウチワもカタ
クリも混じり合って咲いている。ようやく稜線が見え、稜線上の樹木もはっきり視認でき
るようになる。斜度は緩んできたけれど登山道上の腐った雪も増えてきて、道を忠実にト
レースするのが難しい。適当にブッシュに上がるが、こちらはこちらで木の枝が殊の外う
るさく歩き難い。

 さっきのパーティの足跡に合わせて歩いて再び登山道に戻る。もうそこは何度も歩いた
ことのある稜線の近くで、視線を上げると草地に先行のパーティがザックを下していると
ころであった。一息ついて振り返るとスキー場は色とりどりの豆粒をばらまいたようで、
マキノ名物のメタセコイアの並木を白い車が走っているのが見える。霞んではいるが琵琶
湖の汀と安曇川方面の河口に広がる平野がある。南を眺めると三国山や乗鞍岳が見え、そ
の手前に小さな円錐形の赤坂山。並行する二本の高圧線と鉛筆を立てたようなアンテナ施
設は粟柄越のすぐ近くになるはずだ。

 ちょっとまだ昼食には早いので、稜線上の適当な所で適当な時間に食べることにして粟
柄越方面に進むことにする。これからが今日の目的、極楽尾根歩きだ。早速、パンプキン
イエローのオオバキスミレの花が顔を見せ、木陰にはバイカオウレンの可憐な白い顔があ
る。
寒風山付近の残雪とブナ林

 イヌツゲなどの低木の林と草地が交互に続く稜線のアップダウンに一筋の登山路が伸び
ていく。大きな高低差はないが841mピークの肩への登りは、シャリバテの身にはいさ
さかつらい。右手は調子ヶ滝に収斂する大きな谷で、劇斜面の砂防工事はさぞかし大変だ
ったことだろう。

粟柄越に向かって極楽尾根歩き。中央奥は三国山

 794m標高点の北に位置するピークを越えると関電のペア鉄塔(北近江線)が指呼に
なる。赤坂山の頂に立つ人々の服装も分るくらいだ。若狭側から吹いてくる風が強く、そ
れを避けられる場所で昼食をと考えながら歩いてきて、とうとうアンテナ施設まで来てし
まった。少し下るともうメインルートと合流してしまう。ここまですれ違ったのは、寒風
山の肩を下っている時にすれ違った高島トレイルの団体ツアーと2、3のグループくらい
で静かでよかったのだが、ここから先はメインルートを行き来する登山客が格段に多くな
るので、合流地点の道標の手前20m位の窪地で食事とする。座り込んでいるとすぐそこ
に古い鹿の糞が転がっているのに気づく。幸い座り込んだ尻の下にはなかったけれど、人
間が風除けに良さそうだと思った地点を鹿もいいと思ったようだ。(笑)

 ここまで来たからには一応、赤坂山の三角点に拝んでいこう。粟柄越にポツンとある岩
に彫られた馬頭観音さんに挨拶して、こじんまりした三角おむすびに似た赤坂山へ登る。
十数人が休んでいる山頂の三角点は大きく露出し、今計測すれば標高が50cm位低くなる
のではなかろうか。ちょっとオーバーユース気味だ。気楽に登れる割に第一級の眺望が得
られるからだろう。西側、寒風山の奥に大きな山容を見せているのは電波反射板からして
大御影山に違いない。山襞にはまだまだ多くの雪を残している。北に立つ山は雲谷山か。
その向こうは美浜町でその先はもう若狭湾になる。東北側は三国山に明王の禿、それに多
くのアンテナを戴く乗鞍岳。東に霞む一際高い山は金糞岳と横山岳だろうか。黄砂で伊吹
山までは見通せないようだ。こんな360度の大展望を目当てに次から次へと登山者が上
がってくる。人気の高さが分ろう云うもの。中には今流行のカラフルな山ガールも散見さ
れる。(笑)

 さて、帰りはポピュラーな赤坂山道を降りる。いつも最後まで残る雪田を越えると、カ
ヤトの陰に二体のお地蔵さんがある。右の一体は頭が欠けて丸い石が載せてあるが、左の
お地蔵さんの顔は、決して都会的な洗練された感じはないが、柔和で素朴な好々爺然とし
た顔は人を和ませるに十分だ。

粟柄越のお地蔵さん


 高度が下がるに従って、周囲の木々の青さが増していく。にゅっと梢を突き出したのは
満開のマンサクである。雪解け水で水かさのある沢の横を抜けて、傾斜が緩めばブナの木
平。花弁の白さが眩しいタムシバを眺めながら東屋で残りの赤飯お握り片づける。

 さて、地形図にはこの先に四等三角点『粟柄越』484mが記されている。折角だから
探しがてら下ることにしよう。ただ、GPSにはこの三角点の位置をセットしていない。
地形図ではピークに置かれた三角点ではなく高台にあるようなのでそれを念頭に探す。す
ると、関電の火の用心マークに行き着くまでの山道の東側に胡散臭い高みがある、その辺
りにだけマーキングのテープがあるのもそれらしい。ごくうっすらとした踏み跡らしき部
分を試しに登ってみると、案の定、保護石4つに囲まれた綺麗な四等三角点があった。あ
んまり展望はないが、木々を透かして明王の禿が見えた。バッチグー!と古いギャグ。(笑)

四等三角点『粟柄越』木々を透かして
明王の禿が見える

 あとは両脇にシハイスミレ等が群れ咲く尾根上の緩斜面。調子ヶ滝へのハイキング道を
右に見てのんびり歩いていくと、右下にキャンプ場が見えてきて、キャンパーの歓声が海
鳴りみたいに聞こえてくる。前方には往路に登った寒風への緩斜面が大きく広がっていて、
その奥に562m標高点の尾根が大きくせり出しているのが分る。そして最後の荒れた斜
面を下ればゴールのスキー場のゲレンデである。

 午後2時。まだ時間があるので『さらさ』に寄って行こうと思ったけれど、間の悪いこ
とに入場券販売機の前に人だかりがある。グループ客が大挙して入っていくようだ。芋の
子状態も嫌なので諦める。八王子荘に廻ってみても良かったとは車上の人となった後だっ
た。

 久方ぶりに登った感のある山であった。体調に違和感もなし。無理せず、特に下山に注
意しながら行けば大過はないと思われる。耐力もそこそこ。ちょっと自信回復の寒風から
赤坂山でした。
マキノスキー場への下山路
途中にてイカリソウ



【タイムチャート】
6:20自宅発
8:30〜 8:40マキノスキー場駐車場(駐車地)
9:16〜 9:19西山林道分岐
9:35〜 9:36展望地
9:39〜 9:43562m標高点ピーク横
10:35〜10:40寒風(Ca850m)
11:41〜12:10赤坂山・大谷山分岐道標横(昼食)
12:23〜12:30赤坂山(823.8m 三等三角点)
13:15〜13:20ブナノ木平の東屋
13:30〜13:32四等三角点『粟柄越』
14:00赤坂山登山口
14:15マキノスキー場駐車場



赤坂山のデータ
【所在地】福井県三方郡美浜町、滋賀県高島市マキノ町
【標高】823.8m(四等三角点)
【備考】 滋賀県と福井県を画する野坂山地に属します。山頂から
の眺めは雄大で琵琶湖、伊吹山が云うに及ばず、白山が
望める時もあります。また多種の花々が咲き乱れる山と
しても有名で、春はカタクリ、オオバキスミレ、イワウ
チワ、イワカガミが咲き乱れます。南麓にマキノスキー
場があります。
■関西百名山
【参考】
2.5万図『海津』



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