オバタケダン〜若丹尾根しっとり古道山歩

宇オバタケダン山頂より南方向。右に頭巾山、中央左は美山町の白尾山らしい

平成22年10月24日(日)
【天候】曇りのち小雨
【同行】別掲


 11月のSRCの定例オフは若丹国境が舞台である。今年の春に堀越峠から西の頭巾山
まで歩いたが、その時、逆方向にも踏み跡があったのを覚えている。また、堀越峠を京都
側に車で少し下った辺りには棚野坂の標識があった。今回はそこを辿って見ようという趣
向。天気が下り坂でオバタケダンまでで引き返すことになったのだが、しっとりとした古
道に歴史を感じさせる六地蔵。新たな三角点も踏めて、歩いた距離は短いものの、なかな
か中身の濃い山歩でありました。

 予報が刻々と悪い方へ移って、幹事役のMさんはさぞやきもきしたことだろう。結局、
なんとか昼過ぎまでは持ちそうな按配に決行と相成って、当日午前7時、いつもの千里中
央のローソン横に集合。それぞれ途中で参加者をピックアップして、再集合地は美山町道
の駅と決めて、三々五々出発する。京都丹波道路は現在、無料。園部ランプで降りるつも
りが、喋っている内にうっかり行き過ぎてしまった。(^^; まあ最終の丹波で降りて、昔、
芦生へ行く際によく使ったR9、R27と乗り継いで大野ダム湖畔を走るコースを採れば
いい。こちらも道路改修が進んで快走できる。美山町静原を抜けて道の駅に無事到着。す
ると神戸組からの連絡があって、先着車はもう次の集合地点の堀越峠への林道入口に向か
ったそうだ。こちらもトイレ休憩の後、R162で小浜方面へと急ぐ。

 旧国道(林道)の京都側入口にはもう神戸からの参加メンバらの車が止まっている。と
ころが何やら様子がいぶかしい。時ならぬ花束贈呈なんぞをやっている。「???」 実
は、SRC二組目というか、慶事があったのだそうだ。いやあ、お幸せに。(^^)/~

 堀越峠の林道はダートではあるが、今のトンネルができる前の旧国道時代はJRの路線
バスも通ったとかで、勾配もゆるく路面の荒れも少ない。法面崩壊や落石もあるけれどな
んとかセダンでも通ることができる。八分程度上がって、棚野坂の標識のある辺りの路肩
に車を止めて準備を始める。時折、下の国道を走る甲高いバイクの音が響いてくる。

堀越峠京都側手前の棚野坂取付き

 標識の向かいには堀越トンネルへ通ずる道が人工林の中を下っている。本来はトンネル
入口からここへ上がってこなければいけないのだが、今日は省エネ、いわゆるズボラであ
る。(^^;  記念撮影をして、「西の鯖街道整備事業」と書かれた標識横から、伐採木で作
った丸木階段を数段登って、明るい桧林の中を進む。進むに従って古道然としたいい雰囲
気の小道になる。地形に逆らわないので決して急登はなく、不定形のつづら折れ。幾多の
人が歩いたのか、大きく洗掘された溝状の小道は、時には切通しを作る。洗掘された溝の
縁にはオオイワカガミの少し波打ち、やや紅葉を始めた艶々した葉が目立つ。最初の道標
が現れる分岐を左に進み、辺りは徐々に桧林から自然林に置き換わっていく。

 尾根出合の手前で小休止を取って、林道から30分ばかりで一間幅の綺麗な管理道の通
ずる尾根に出た。尾根上の林道を越えた向こう下の桧林でチラチラ動く白い人影がある。
山菜でも採っているのだろうか?時折、話し声が漏れてくる。尾根を少し進むと紙袋が置
かれ、中を覗くと紫色のPPテープが大量に入っていた。あの人たちのものであろう。ど
うも植林にシカの食害防止のテープ巻き作業をされていたようである。

棚野坂分岐.左が棚野坂
右がCa670m峰への道

 管理道を東に進むとすぐに棚野坂の分岐(道標あり)。左が本来の棚野坂の道であるが、
ここは尾根上を忠実に辿る管理道を歩くと、やがて関電の無線中継局の建物が現れる。綺
麗な道はこの無線中継局の為のものであった。ところがここで少し混乱が生じた。地形図
にはアンテナ記号が二つあるが、ここには建物が一つしかないではないか。「??」 だ
が、まもなく納得。実はここは地形図上のアンテナ記号のある場所ではなく、Ca670m
ピークなのである。正確を期すならば、この箇所にもアンテナ記号を地形図にも追記して
もらいたいものである。

 Ca670mピークの短いがやや急な斜面を滑るように降りて忠実に尾根筋を辿る。その
尾根筋を微妙に外して、半間幅程度の道が現れたり消えたりする。これが西畑越の古道ら
しい。山仕事の人かハイカーしか歩くものがなくなって寂れ、笹が繁茂していたらしい道
も、今は下草もなく非常に歩き良い。ブナに混じって赤松も多くみられ、往時はマツタケ
がどっさり採れたろう。

 689m標高点ピークで南よりに方向を変えた尾根は、もう一つのピークで東に方向を
変える。ここには「京都丹波の山」(内田嘉弘著)に記載がある如く『山 九十』の刻字
のあるコンクリート製の境界杭が埋まり、雑木には西畑越の標識もかかる。直進しそうな
所だが、峠から来た場合は左に曲がってちょっとした斜面を下る。鞍部を過ぎると急坂が
待っている。しばらく我慢すると右手にいい尾根が見えてきてそれに沿うように進むと、
どこが最高点か良くわからない、細長いオバタケダンの山頂である。

オバタケダン山頂

 南側が伐採されていて非常に見晴らしが良い。この山域には不案内なので山座同定も覚
束ないけれど、左手の一番近いのがタケガタンの手前にあるピーク。正面の一番目立つの
が鉢ヶ峰か白尾山のはず。右斜めのごつごつしたのが大岩山と思われ、西側の一際高い飯
盛り形の山が頭巾山だろうか。だとすれば長老ヶ岳はいずこ?山頂に電波塔があるからわ
かるはずなのだが....。まあ、小生の乏しい知識で分かるのはこの程度だ。

 風が強いので山頂からやや北に入った所で昼食。豚汁用の湯を沸かしている間に空を見
上げると、東の方は雲の切れ目も見えて明るいが、西の空には灰色一色の雲。こりゃ、来
るかもと思う間もなくポツポツとやってきた。タケガダン往復は諦めた方が良かろうとい
うことになる。

 ポツポツ、パラパラ来ては上がるというのを2、3度繰り返す。幸い本降りにはならぬ
うちに昼食を切り上げる。荷物をザックに積め直し出立準備をしていると、木々の葉を打
つ雨音が強まり始めた。でも、木立の下は有難く、雨はほとんど降りかからないのあった。

 往路は忠実に尾根の起伏を辿ったけれど、帰路は中畑越の古道と思しき踏み跡を辿る。
非常に鮮明な部もあれば、獣道然とした部分もある。689mピークなど主だった高みは
ほとんど巻いていくので、ぐるりと山腹を巻く場合、しかも尾根が屈曲している場合は、
方向感覚がえてして狂ってしまうので注意が必要だ。689mピーク下では思わずコンパ
スを取り出して確かめる羽目となった。(^^; 

嫋やかな若丹尾根にて

 棚野坂に来たなら、やはり六地蔵を見ないでは帰れないだろう。関電の無線中継局があ
るピークの北側を巻いた道から、中継局の建物を木々の間から仰ぎ見て、ほんのしばらく
で六地蔵の辻がある。三叉路になっていて、北に所謂棚野坂を進めば名田庄の坂尻である。
小広い林の中、二体ずつ対になった石仏が三対。枯葉の中にひっそりと立っている。磨滅
も少なく、幡を持ったり、錫杖を持ったり、合掌している姿や、更に顔も割合はっきりし
ており、なかなか美男(仏は本来、中性と云われているが)もいる。その六地蔵の西側は
小さな空き地で、かつて茶店でもあったような雰囲気がある。いかにも古街道の峠という
感じを残す絵になる場所である。そこにあった説明書曰く、「『西畑越』「およそ百年ほ
ど前まで名田庄村・口坂本と美山町・知見の西畑をつなぐ道がここ棚野坂から南に分岐し、
人の行き来があった。ここ古道も荒廃してしまい、オバタケダンまでのほとんどが国境稜
線上の踏み跡をヤブこぎしなければならない。西畑集落まではぼちぼち歩いて約四時間」
とあるが、歩いてきたように藪は完全になくなっている。更に、「棚野坂は鶴ヶ岡の大及
(おおぎゅう)と口坂本の坂尻を結ぶ高浜街道の要衝で往来盛んな鯖街道の峠であった。
しかし、堀越峠の整備が進んだことや、昭和28年の十三号台風による水害のあと通る人
もなく廃道と化し、ついに自然に還った。六地蔵をここに残して」京都の小畑登さんの文
章だ。野田畑峠や権蔵坂など若丹の峠にはこのような説明があって興趣を増すが、小畑さ
んとは京北山の家の先生だったそうで今は故人であるそうだ。

棚野坂の峠の六地蔵

 道標に従って、堀越峠方面に向かう。右手の下斜面に大きなトチノキを見る。棚野坂分
岐で往路と合流して、登って来た堀越峠への分岐も見送り、NTT管理道を通って旧国道
(林道)へ出るルートを採る。中継局へ通ずる電柱が立つ尾根は、大した起伏もなく楽々
歩ける。少し雨が強くなったようで、木々という自然の傘がなくなって、折りたたみ傘を
出したが、すぐに止んだ。

 NTTの堀越中継局のパラボラアンテナと共に、取付け道路の三重にも高くされたガー
ドレールが見えてきた。通常のガードレールでは雪で隠れてしまうのだろう。それだけ雪
が深い証拠だ。そのガードレールの隙間から車道に出て下る。左手が伐採地。先ほどまで
いた関電の無線中継所がもう遠くになっている。車道に一台のフォレスター。作業服を着
た男性が二人お昼寝中。多分、桧に食害防止用のPPテープを巻いていた人達に違いない。

 林道も法面の崖などには思いの外、色々なものが見つかるものだ。ある一ヶ所にはリン
ドウが群れ咲いていたり、珍しくもないがミヤマママコナが突然咲いていたりするのだ。
そんなものを見つけたりしてくねくね道を20分。右下に旧国道が見えてきて、まもなく
それと合流する。5分も行けば、見覚えある堀越峠。もちろん誰もいない。


棚野坂入口で今回のオフは一応お開き。小浜の馬頭観音の御開帳に行くというメンバ、早
めに帰宅しようというメンバ。R162で南北に行先を分ける。お開きを待っていたよう
に、雨脚が強くなる。美山町の道の駅に寄って牛乳プリンを土産に帰途につく。大阪は小
雨程度の雨だったが、帰宅した途端にこっちも雨脚が強くなる。まるで雨雲を連れてきた
みたい。しっとりとした若丹の尾根歩きを楽しんだ半日である。




【タイムチャート】
7:00千里中央駅ローソン前(集合地)
9:25〜9:40棚野坂登山口(駐車地)
10:10〜10:14若丹尾根出合(堀越トンネルコース分岐)
10:16棚野坂分岐
10:20〜10:25関電無線中継局(Ca670mピーク)
10:35〜10:39689m標高ピーク
10:45山90番境界石標のピーク
11:03〜11:43オバタケダン(729.0m(三等三角点))(昼食)
12:02山90番境界石標のピーク
12:16関電無線中継局北側
12:20〜12:25六地蔵
11:32棚野坂分岐
12:35若丹尾根出合(堀越トンネルコース分岐)
12:45NTT中継局管理道出合
13:06NTT中継局管理道・林道出合
13:10堀越峠
13:27棚野坂登山口(駐車地)

■同行:裏人さん、スナフキンさん、たかやんさん、たらちゃん、二輪草さん夫妻、
    pikkuさん、水谷さん、モグGさん、ゆきんこさん(五十音順)


オバタケダン
【所在地】京都府南丹市(旧美山町)・福井県大飯郡おおい町(旧名田庄村)
【標高】729.0m (三等三角点)
【備考】 京都府と福井県を分かつ若丹尾根の堀越峠の東に位置す
る山です。その面白い名前は漢字にすると『小畠谷』で
す。南側の展望に優れ、長老ヶ岳や頭巾山、白尾山、鉢
ヶ峰、大岩山などを眺めることができます。
【参考】2.5万図『口坂本』



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