角川から高島トレイルで武奈ヶ嶽


武奈ヶ嶽山頂の北側から北方の眺め。最も高い峰は三重嶽。奥は大日岳で、左に手前から轆轤山、三十三間山と続く

平成22年10月 2日(土)
【天候】晴れ一時曇り
【同行】たらちゃん、水谷さん


 10月最初のオフは久々の湖北。高島トレイルで未踏部分を補完しようとの今回の企画
は水坂峠から武奈ヶ嶽の部分である。結局、水坂峠から北1km程が未踏で残ってしまっ
たが、それはそれでご愛嬌。角川基点に往復違う尾根を、しかも車道や林道をてくてく歩
かずに廻れるという、おいしい、いいコースでありました。

 湖北武奈ヶ嶽に初めて登ったのは2年前の春。東側の石田川ダムから登って三重嶽まで
歩いたのだけれど、ガスに包まれ展望皆無での縦走だった。さて今回はどうだろうか。こ
の山域は意外に交通アクセスがよく、豊中からほぼ二時間で出発地点の高島市角川に到着
する。まずは駐車地点の選定。地元に迷惑はかけられない。ちょうど顔を見せたおばあさ
んにどこか車の止められる場所はないか尋ねてみる。すると、崖の法面の工事をしていた
車が数台駐車している所なら良いとの返事だ。武奈ヶ嶽に登るというと「気を付けて」と
笑って激励?を受ける。

 教えてもらった角川生活改良センターの前には数台の車が置くことができる。工事の車
の邪魔にならないように車を止めて山歩きの準備。その横を工事関係者が通り過ぎる。「
近くに有名な山でもありますか?」と尋ねるので、「武奈ヶ嶽」という山がありますと返
す。訛りがあったから地元の工事会社の人ではなさそうであった。

角川集落のメインストリートから
石碑のある辻を西へ入る

 集落のメインストリートを南に歩いて行くと谷川を渡る橋があるが、その手前に表面が
磨滅した碑と、先の戦争で戦死した地元の方の立派な墓が二基立つ場所がある。ここが今
回の取りつき。この谷川を遡るとCa310mの峠に出て高島トレイルに合流するという寸
法である。最初はすぐに現れる谷川の左岸沿いにコンクリート護岸の上を歩くが、15m
も歩くと杉林の下にはっきりとした小道が現れる。今は林業用の作業道としてしか使われ
ていないようであるが、昔は立派な峠道があったことをうかがわせる道だ。岸辺の砂地に
トリカブトが群れ咲いている。山で見かけるのより少し色が薄いようだ。

谷川沿いにこんないい道がある

 幾度か浅い谷川を渡渉していく。幅が狭い箇所もあるものの、道は明快に続く。途中の
二股はこれは左手を採る。2mほど下の川原に降りなければならない場所には、なんとロ
ープまで用意されていた。滑りやすいのでこれは助かる。(~_~)

 1km近く遡行しただろうか。そろそろ峠に出てもと思う頃にもかかわらず、谷川の水は
まだ多い。おかしいなとコンパスを取り出せば、いつの間にか北に進んでいるのに気づく。
地形図を眺めると確かに谷は湾曲して北に方向を変えている。何の疑いもなく川の尽きる
所が峠だという先入観がなせる仕業。でも、まあ左に見えている尾根が高島トレイルなの
で慌てず騒がずだ。しかも眺めている辺りが登り易そうだったので、峠に出ることは諦め
て、その尾根に乗ることにした。杉林の下のきつい斜面であるが、登り易い部分を探して
30mばかりも直上すれば尾根である。地形図でいえば318m標高点の東約200mの
地点。高島トレイルの黄色いテープが風に揺れていた。

 すぐに杉林の急登になる。トレイル用の新しい道のようで、斜面でも尾根でも全くの直
登。涼風があったので助かるが夏は汗だくで堪らんだろう。(笑) 左後ろに垣間見える国
道沿いの杉山集落を見つつ、汗を拭き拭き一気に100mばかり高度を上げて東側は杉林、
西側は雑木林の境目となった台地に出る。ほっと一息、この先しばらくはフラットな林で
ある。

 赤岩山の尾根に出会うまでは、こんな緩急を繰り返しながらの尾根歩きだ。時折、東側
が開けて、帰りに下る予定の稜線が見えるので歩みを止めて眺める。木々が茂ってあんま
り展望はなさそうだ。(実際そうだった)息を切らしながら登った先の620m標高点ピ
ークは干上がったヌタ場のある小広いピークだ。ちょっとした窪みがあって、エビネの株
が見られるたが、なんだか獣臭い匂いがする場所でもあった。

 左から近づいてくる杉山コースの稜線が合する湖北武奈ヶ嶽の前山が、前方にようやく
全貌を現し始める。もう一息。赤岩山からの道と出合う前の、このコース最後の急登に向
かう。
高島トレイル途中の岩上から南方向
手前は620m標高点

 ごつごつした岩がちの小道になって来る。オオイワカガミの少し赤みを帯びた光沢のあ
る葉を見かけるようになる。少し大きな岩が現れて、右に回り込むとロープが用意してあ
る。2m程度の高さを登った岩の上はいい展望台で、比良にあるもう一つの武奈ヶ岳が真
正面に大きく裾を伸ばしている。意外やR303も見えて、走る車も豆粒のようである。
東にこんもりと緑に包まれているのは赤岩山だろう。もうしばらくで赤岩山からの小道と
合流するはずだ。

 傾斜が緩んだ先に道標を見つける。角川2.8km、水坂峠3.5kmと表示がある。赤岩
西峰と呼ばれる赤岩山からの踏み跡と合流する地点だが、赤岩西峰とはいうものの、何処
が峰だかピークだか。(笑) まあそれは置いて、ここまで来ればもう登ったも同然だ。山
頂まではもう標高差は100m程度。ゆっくり登っても1時間とはかからないだろう。昼
食は山頂辺りで摂ることにしてもうひと頑張りである。周囲に背の高い木々はなく、カク
レミノに似た葉をもつ灌木が目立つ。しかも一様に南東に傾いでいる。ここ江若国境は日
本海の風をまともに受ける名うての豪雪地帯である。雑木に巻かれた古いテープが高い所
にあるのはその所為だろう。

 やがて灌木帯を抜けて、ツゲやサルトリイバラ、アキノキリンソウの黄色い小花が目立
つ武奈ヶ嶽南面の斜面を登る。振り返ればまた南は展望が広がって、幾重にも重なる山並
みの奥には武奈ヶ岳。比良の山並みの左手には琵琶湖の汀が続いているのが分かる。

 再び、灌木帯。杉山集落からのコースを左に過ごして、広い武奈ヶ嶽の山頂に到着だ。
山頂は高島トレイルの標識と古い山名標識木柱がある小広場。高い木はないが雪に圧迫さ
れたような灌木が周囲を取り巻いていて展望は皆無。ただ、50mほど北へ行けばそんな
灌木帯が途切れ、南を除いた三方向の視界が開ける。北側真正面に大きく裾野を広げた三
重嶽がある。西北にはこちらとは天増川を隔てて、轆轤山から三十三間山へと続く長い尾
根筋が。西北には若狭側も眺められ、若狭カントリーのグリーンや嶺南牧場の緑とその向
こうに細長く上中から小浜の平野部があり、その左手に目立つのは多田ヶ岳だろう。うっ
すらと霞むのは日本海だろうか。東側で目につくのはスキー場のゲレンデを持つ山。箱館
山らしい。

 寒くはないが風が強く、湯を沸かすには不適当なので、灌木を風除けにしようと山頂標
識の小広場に戻る。少し日が翳ってきた。灰色雲にポツポツあるかもしれないと空を見上
げるが、結局、最後まで降らずに終わった。

 ラーメンをすすっていると、目の前の、風雨で字の擦れた山名柱に誰かがマジックで武
奈嶽と書き直してくれているのが目に留まった。しかし、おっそろしく下手な字であるな
あ。(笑)こんな具合に30分ばかし山頂にいたのであるが、こんな秋の晴天だ。一組く
らい他のパーティが来そうなものだが、どうも猫の子一匹見かけない。??

 下山は赤岩西峰の分岐にあった角川(光明寺)コースを採る。その西峰まで戻って小休
止しようと腰を見ればタオルがない。またまた落としたらしい。ちょっと仲間に待ってい
てもらって100mほど戻ったが、とうとう見つからずじまい。これで何本なくしただろ
う?多分、もう6、7本は失くしていよう。(^^;

 角川コースは赤岩山までは石田川ダムへのコースと同じ経路。だから一度歩いたコース
なのだが記憶が薄れている。覚えているのは赤岩山山頂が杉林の中で、全く展望が効かな
いことくらいだ。その石田川ダムコースを左にして、やや枝が張り出した角川への踏み跡
に足を突っ込む。「ん?」もっとワイルドかと思っていたけれど、よく整備されたコース
である。赤岩山近辺は、前述のようにやや枝が張り出した気味な部分もあるが、降りるに
従ってどんどん道が良くなる。境界標識の赤プラ杭打ち込まれた道をジグザグを切って下
っていくと、突然、目の前に洗掘された古道が現れてびっくりする。これはよほど古くか
ら歩かれていた道と観た。ひょっとして小浜街道の脇街道、若狭越の鯖街道の一つであっ
たのかもしれない。なぜなら道のつけられ方も高島トレイルのように直登部分がなく、つ
づら折れで距離は長くなるが疲れが少ない方法を採っているからだ。これなら十分、牛馬
も歩けそうである。

角川への古道を下る

 きつい傾斜が収まって後、現れた杉檜林の台地は広くほとんど水平である。その中、所
々に、植林の為に切られずに残る桜の大木がある。山主さんも風流だと見える。

 この水平台地も457m標高点を過ぎると再びきつい下りになる。と、あんなにいい道
が忽然と消えた。どうも山抜けがあったらしい。それを避ける踏み跡があるにはあるのだ
が、テープはあるものの、経路が固まっていない為に、踏み跡も固まらないのである。ザ
レ気味の斜面を行く時は、ズルッといきそうで少し緊張を強いられる。山抜けの迂回はほ
ぼ50mで、抜けると再び前に増していい道なのだった。

 お寺の屋根が見えてくる。しかし道はそちらには向かわず竹林の中を左に折れていく。
やがて現れた小さな社裏の急な斜面に出て、竹にすがって社頭に廻る。そしてつづら折れ
の社の参道は光明寺の取付け道の中間に出る。登山口のオフィシャル標識があり、参拝者
の為らしい水道の蛇口と日本手拭が幾枚か懸けられていた。

善正寺の参道に出てきた
杭の立つ坂を登れば小社がある

 角川集落のメインストリートの一本北の路地だ。すぐにメインストリートと合流すると
朝、お遭いしたおばあさんとまたお遭いした。そこから駐車地はすぐである。法面工事は
続いている。生コンと共に水を噴射して法面に吹き付けているのだった。工事のオッチャ
ン、生コンでべったりやけど固まらんのかなあ。それより何より、その横の二階家、風向
きでまともに生コンが降りかかっているけど大丈夫かねえ?

 朽木経由で帰途に。例の山野草屋さんに寄る。コアジサイがあったら買うつもりで、実
際に一鉢あったのだけれど、結局、縁起物で正月の飾りもかねてアリドオシを買ってしま
ったのだった。初志貫徹できない小生である。 (^^;

今回も誰にも遭わない山行。ここの所、ずっとこんな感じ。無茶苦茶マイナーな山を選ん
でいるわけでもないのだが...。(笑) 静かな湖北の山を堪能した一日でした。




【タイムチャート】
7:00自宅発
9:00〜9:05角川生活改善センター前駐車場
9:38西の尾根へ直登開始
9:45〜9:48高島トレイル合流
10:32620m標高点ピーク
11:01〜11:08赤岩西峰(角川コース出合)
11:43〜12:26武奈ヶ嶽(865m)
12:50〜12:55赤岩西峰(角川コース分岐)
13:02〜13:03赤岩山(740.3m 三等三角点)
13:32〜13:36457m標高点ピーク
14:00神社
14:02光明寺登山口
14:08角川生活改善センター前駐車場



湖北武奈ヶ嶽のデータ
【所在地】滋賀県高島市
【標高】865m
【備考】 滋賀県には二つの武奈ヶ岳があり、こちらは湖北にあっ
て、三重嶽の南西尾根を形作る山です。以前は三重嶽と
並び秘境の山でしたが、展望も良く、高島トレイルとし
て歩く人も増えたようです。石田川ダム、角川の光明寺、
水坂峠、杉山など幾つかのコースがあるので、ピストン
せずに済みます。(^^;
【参考】2.5万図『熊川』



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