木梶山〜梅雨入り前にひと山歩
馬駈ヶ場(右)への稜線から眺める木梶山(中央左)。中央に見える空き地で食事。左奥は高見山

平成22年 6月12日(土)
【天候】晴れたり曇ったり
【同行】別掲


 毎年、この時季になると愛でに出かけるシロヤシオ。葉が5枚輪生するので五葉ツツジ
とも呼ばれ、清楚な白い花が特徴のツツジである。それが今年はいまだ出かけぬ内に日曜
から梅雨に突入しそうだという。それなら少しばかり遅いかもしれないが、明日の土曜、
梅雨入り前のひと山歩はツツジ見物と洒落こんでみましょうか。

 Mさんの車に便乗させてもらって、6時半出発。8時前に榛原駅でTちゃんと合流。R
166で高見トンネルを抜け、いつもの木梶林道に入る。四駆なので林道の終点近くまで
入ることができるが、鳴滝手前のいつもの駐車スペースに駐車する。ここは台高縦走路へ
上がる最短経路でもある。三重ナンバーの車が一台。主はもう山を歩いておられるのだろ
う。

 木々は枝を伸ばし、その緑は日に日に濃さを増して、その分、山自体が太ったように感
じられる。鳴滝も水量が多く水音も大きい。橋を渡って木梶川の右岸を歩く。水溜りには
ヒキガエルのおたまじゃくし。水の滴る岩陰からはヒキガエルの鳴き声が聞こえてくる。
谷べりのトチの大木は巫女鈴のような花冠が文字通り鈴なりである。そうしてあれこれ見
ている内にいつの間にか地蔵谷出合へとやって来る。ここを渡渉すれば台高主稜の赤ゾレ
山に登ることが出来るが(もう少し先に本来の取付きを示すテープがある)今日はここを
パス。更に進むとまもなく林道終点で、今日の下山予定である木梶山登山口がある。川沿
いの道は狭くなるがはっきりしている。山仕事の杣道に使われているのであろう。イワタ
バコが光沢っぽい葉を垂らす岩の横を伝うと、やがてトリカブトが繁茂する沢の出合にや
ってくる。ここが今日の取付き地点。尾根の突端から登ればいいのだが、前回、木原谷沿
いにいい道があったのが気になって、こちらから登れないか少し辿ってみた。新しい廃材
で補強されたりしていて、今も現役の作業道らしいが、150m近く探ってみたけれど、
取付きを示す目印は見つからない。尾根も高くなってかえって登中途半端にり難くなるの
で、ここは素直に出合まで戻ることにした。

尾根の突端の急登を上がる

 尾根の突端からジグザグに小道がある。傾斜は急だがおかげでそれほどきつくはない。
とは言え、気温は手元で18℃。春先のようには行かず、額にはすぐに汗が滲む。傾斜が
少々治まったところで小休止して水分補給。予め氷を詰めたテルモスにお茶を注いでおい
たのを二口、三口。甘露。甘露。夏はこれに限ります。(笑)

 斜面は緩急を繰り返しながら高度を上げていく。大きなホンシャクナゲが枝を伸ばして
いるが花はない。明るいが倒木の多い桧の林はやがてヒメシャラが混じり始める。太い木
はないが明るい茶色のヒヤッとしたヒメシャラの樹肌の感触が心地良い。

こんな綺麗な尾根が

 にわかに細くなった尾根はブナ、ミズナラ、ヒメシャラの清澄尾根。耳を澄ませるとカ
ッコウの鳴き声が遠くから響いてくる。山深さを感じる一時だ。そしてしばらく緩やかだ
った尾根が再び厳しい登りになる。踏み跡は薄くなるがどこでも歩けるので、かまわず高
みを目指す。上がった所が地形図では乳首のようにポッチリとあるCa1200mの無名ピ
ークで頂にコンクリート製の境界杭がある。

 そろそろシロヤシオの古木が姿を現してくる頃だ。が、残念にも花期は過ぎてしまった
ようで、花ガラさえ地面にない有様だ。もう少し高所に生育する木か、咲き遅れた木に期
待をかけるしかないか。一方、サラサドウダンツツジはまだ地上にも花が落ちておらず、
ほぼ盛りの頃に会えたようである。

 ここで尾根は少し方向を変える。ほぼ南に向けてやや下った後はまた急斜面になる。そ
の先、突然、樹林が開けると馬駈ヶ場手前の草つき斜面だ。東の木梶の緑深い谷を隔てて、
これから向かう木梶山に連なる稜線が一目で見渡せる。(冒頭画像)またカッコウの鳴き声
が遠く近く。ツツドリも鳴き出して、さながらホトトギスの仲間の競演である。その時、
空を覆った灰色雲からポツリと来たようだ。大降りはしなかろうが、今日はこの台高辺り
が晴雨の境目みたいだ。

 草つきから再びカマツカの白い花の下から樹林に入り、登り抜けた所が馬駈ヶ場。なだ
らかな1316mの標高点ピークは樹林に囲まれて展望はないが静かだ。一息入れて台高
縦走路から分かれてきた明快な踏み跡を左へと折れる。

 Ca1300mの木梶尾根分岐も年々分かり易くなっている。直進を指示するテープは千
秋林道から伸びる支線へ誘うものらしい。木梶山は左に折れるのだが、ヤマツツジが折り
よく最盛期を迎えていて、無数の朱色の花を鮮やかに咲かせているのに惹かれる。少しそ
ちらに寄り道する。
見事なヤマツツジが咲き乱れる

 樹林から出た草つきの斜面。景色もいいのでここで昼食とする。木梶山の南500mく
らいの地点だ。今度は往路に歩いた馬駈ヶ場に続く尾根を見晴るかす。正面に地蔵谷出合
の伐採斜面が良く見える。その奥には高見山の大きな山体が青くかすんでいる。木立の先
を飛び過ぎた、鳩くらいの大きさの鳥はまだら模様が網膜に残ったが、カッコウだったの
だろうか。

 それにしてもこの辺りのコバエが異常に多いこと。赤ゾレ山なぞ、食事しているとワン
ワン寄ってきたものだが、ここでも食事を始めて体の動きを止めていると、やっぱりコバ
エが襲来してきた。その中にブヨもいたらしい。しばらくして手首とひじ近くの二箇所か
ら少し血が滲んでいるのに気づいたが、帰宅してからえらく痒くなってきた。(笑)

 木梶山手前のピークで振り返る。概して三重県側の谷が険しく、稜線上の木の枝は三重
県側に傾いでいる。冬期、北西から吹き上げる風が強い為であろう。そして足元のイヌツ
ゲはどれもまるで剪定されたようである。鹿の仕業か?更にこれほどカマツカが多いとは
思わなかった。直径1cm足らずの白い花だがおしべが長く、群れて咲くので目立つ。そん
なのに見入る内に再び樹林帯に入る。コゲラだかアカゲラだか、突然現れた我々に警戒音
を発している。余りしつこくないのは雛がまだ生まれていない為だろう。緩やかな坂を緩
やかに登った先がこれで三度目の木梶山の山頂である。数人も立てば一杯の小さな広場に
は相変わらず展望はないが、もちろん誰もおらず、マイナー山の特権、静けさだけはふん
だんにある。
久しぶりにフクロウ印山名板のある木梶山山頂へ

 ショートカットを目論んで、木梶山山頂から東の梅尾に向かってしばらく歩いた所から、
北にやって来ている林道へ降りようとしたことがある。ところが植えっぱなしの手入れの
悪い若い桧林に視界を遮られ、繁った下枝に散々邪魔をされて、通り抜けに悪戦苦闘した
覚えがある。体はチクチクするしあんな羽目は二度と嫌であるなあ。(笑) ま、ここは大
人しく西の尾根を下るにしくはなかろう。

 ここもシロヤシオの古木が多い。残念ながら時季をはずして花はほとんどない。代わり
ツクバネウツギが白い花を咲かせていたのだが、花を探して梢ばかり視野に入れている
と危ない。足元に40cmほどのマムシが潜んでいたのである。そろそろナガムシもウロウ
ロする季節だということを忘れていた。(^^;

シロヤシオはほとんどおしまい

 尾根が概ね細いので道は迷いようがない。尾根の分岐と尾根から外れる所が一箇所ずつ
あるが、目立つように立ち木に二重のテープが巻かれている。にもかかわらず、以前より
やたらテープが増えたような違和感。つければいいというものでもなかろう。明快な踏み
跡なので曲がり角以外はほとんど不要だろうに。

 最終地点が谷とそれに沿う林道なので降下地点を誤ると崖の上へ出たり、岩の重なる傾
斜のきつい沢へ出くわしてしまったりして難渋することになる。忠実にテープに従って、
最初の尾根の分岐は左へ。それはシャクナゲのやせ尾根に変わり、足下の斜面は杉桧の人
工林となって、もう少し下れば谷へ降り立てることを示している。やがて尾根を左に外せ
とテープの指示が出る。地形図では尾根を直進すれば小さな谷に出るらしい。帰路、確か
めると濡れて苔に覆われた岩が重なる悪場だった。

 人工林の急斜面を下る。作業道を拝借させてもらっているらしく小刻みなジグザグ道で、
やや時間は要するものの、楽に下ることが出来る。せせらぎの音が徐々に高くなって来る
と、木立の隙間から白く泡立つ流れが見える。そうなれば林道に降り立つまでにほとんど
時間はかからない。見覚えのある新宮山彦ぐるーぷの道標が我々が下山するのを待ってい
た。

 登山口から少し下流に戻ると、赤ゾレ山への直登尾根がある取付きを示すテープがある
ので確認する。ここには飛び石があって、木原谷をジャブジャブ渡らなくてもいい。対岸
に渡って少し沢沿いに下って登って行くようであった。

 誰にも遭わない静かな山行。駐車地には先行車もすでにない。シロヤシオには少し遅か
ったが、梅雨前の雑木尾根のグリーンソーダに酔った一日でした。



【タイムチャート】
6:30自宅発
8:00榛原駅(集合地)
8:40〜8:50木梶林道(駐車地)
9:25〜9:35木原谷出合
10:25〜10:30Ca1,200mピーク
11:07〜11:12馬駈ヶ場(1,316m))
11:20〜11:25尾根分岐(Ca1,300m)
11:45〜12:05木梶山南500m(昼食)
12:23〜12:27木梶山(1,230.2m 三等三角点)
13:16〜13:25木梶山登山口
14:02木梶林道(駐車地)

■同行 たらちゃん、みずさん(五十音順)


木梶山のデータ 【台高】
【所在地】三重県松阪市(旧飯高町)
【標高】1230.2m(三等三角点)
【備考】 台高主脈から東に派生した稜線上の一峰です。登山口から
遠くマイナーな山でしたが、木梶林道からのアプローチが
開かれ楽になりました。シロヤシオやサラサドウダンなど
ツツジの古木が多く、ヒメシャラやブナの自然林にも素晴
らしいものがあります。
【参考】
2.5万図『高見山』



トップページに戻る

inserted by FC2 system