冠山〜梅雨明けの越美の名山 |
冠平から冠山を望む。中央やや右下の剥げた空き地が冠平分岐。その上に岩場が見える |
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梅雨空に祟られて、野暮用に祟られて、ここ三週間ばかし山はご無沙汰。なんだかんだ 云っている内に梅雨明けの7月半ばである。その梅雨明け二日目。野暮用の合間を縫って の山行は少々遠征して、一度は足跡を記したかった越美国境の名山、冠山。適当にガスが 流れて、ギラギラの夏の日でなかったのは、鈍った体にはもっけの幸い。下山後、南越前 町は杣山の、ハス祭りが開かれている花はす温泉で一っ風呂浴びての帰還と相成ったので した。 少々遠いので久々の早出、午前6時に集合して名神道、北陸道と乗り継いで、武生IC で下りる。連休の中日、日本海へ海水浴に向かう人が多いのか、敦賀までは車が多かった が、その先は通常の交通量である。途中、県道とは名ばかり、「只の一車線のダート林道 やないか」と揶揄したくなる、植林の暗い道を抜けて、R417に出た時は内心ホッとす る。(^^; しかし、安心は禁物。冠山林道は舗装路だがガードレールのない区間も長く、 ハンドルを誤れば助からない。はるか下には足羽川源流の深い谷が口を開けている。羊腸 の道を辿ってようやく到着した冠山峠には、先着の車が数台。 もうここは標高1000M超え。 太陽の光は厳しいが、流石に風はひんやりと感じる。 それよりアブがブンブン飛び回っていて嫌な予感。まず何はさておき虫除けを噴霧してお かねば...。ゲートの向こうになんと通行止めのはずの岐阜県側からもやって来た猛者の車がある。 慎重に進めば何とかなるような土砂崩れ場所がある程度なのだそうだが、良い子は決して 真似をしてはいけません。(笑)
『峠です!!』そんなことは書かずもがなの看板が立つ越美国境。そこにある冠山の登 山口には、大きな石のモニュメントと藤橋村、徳山村、揖斐川村と刻まれた石碑が置かれ ている。向かい側にはトイレと金草岳への道がある。また機会があればお邪魔することに しよう。(そちら側にはお地蔵さんの祠もあったのだが、返す返すも残念なことに、私と したことがカメラに収め忘れた!) 登山道に一歩足を踏み入れると、『越美山地緑の回廊』の案内図とともに、揖斐川源流 の石碑がある。とすると、ここは中央分水嶺だ。以前、丹波の中央分水嶺をJACのPさ んご夫婦と歩いたことが自ずと思い出されてくる。登山道は草も刈られてよく整備されて いる。ネットの情報によれば福井の山の会の方々のようである。奥美濃や越美の山々はネ マガリ竹が多く、放っておけばすぐに戻ってしまうらしく、毎年の草刈は欠かせないのだ とか。ありがたいことだ。そんな道を緩々と登っていく先に冠山の魁偉な姿が見えるはず なのだが、勿体ぶってでもいるのか、動きの速いガスのベールにで七合目から下程度しか 姿を現さない。
比良の武奈ヶ岳の登山道に似た雑木のトンネルを数mくぐると、ロープのある岩場。先 ほどの穏やかな道からは一転、半端でない標高差100mの急斜面の始まり、且つ最大の 難所だ。見る見る冠平に立つ人の姿が蟻のように小さくなってゆく。同時に周囲の山々が 青く拡がってゆく。しかし見とれてばかりいては足元が危うい。展望観賞は山頂にとって おいて、ここは黙々と登る事にしよう。岩場を三点確保で抜ければ、後は歩きやすい部分 選って斜めに登って行けばよい。 どこかで見た黄色い花が目立つ。キンコウカだ。キンコウカは湿地の植物という先入観 があって、何でこんな所でという思いが強かったのだけれど、岩の割れ目から湧き水があ るのだろう、岩肌の溝などを見ればじわっと水に濡れているのがわかる。そしてコメツツ ジの白い花。これだけの数があれば秋の紅葉もなかなかのものに違いない。ほかには薄い ピンクのギボウシやオトギリソウ。ニッコウキスゲが終わって花の端境期だと思われたけ れどやはり花の多い山域ではある。
1時間近くの山頂たむろの後、下山にかかる。その前に踏み跡があるので西方向に長細 い山頂部を端まで行ってみる。踏み外せば命に係わる恐れもあって、ごつごつした狭い露 岩の上を歩くのには少々おっかなびっくり。雪や風に押しつぶされるのか、大きなホンシ ャクナゲが地を這うように枝を伸ばしている横を進んで先端部分に立つと、向かいに大蛇 クラに似た90度に立ち上がる岩崖がある。思わず○○が上がるような吸い込まれるよう な感触を覚えた。
取って返して登って来た道を下る。浮石が多いので落石や滑落に神経を使う。やはり登 るより下る方が怖いものだ。とりわけあのロープ場の岩の下降はロープがなければかなり 不安を覚えるだろう。少々時間をかけて岩場を降り、例の雑木のトンネルを潜れば冠平分 岐。まっすぐ笹原の一筋の道を辿って笹原の中の円形広場で一息つく。往路ですれ違った ハイカーが言っていた通りだ。思いの外、風が強い。冬季にさらに強い風に吹かれれば、 かなりの寒さであろう。集団遭難があったことも頷ける。屏風のような冠岳とそれから派 生する支脈の間の空間が織りなすのであろう。それは所謂、風衝地形というのだろうか。 笹以外の植物は生えず一種独特の風景で、すぐには立ち去り難い思いが残った。 往路でも冠山の山頂直下まで登った感じがしなかったように、復路も下山したような感 じがしない。往復いずれもアップダウンが数回続く。振り向けば一片のガスもない冠山が 今度は全容を見せてくれていた。
冠山峠の登山口は2時に着いた。時間もあるので一っ風呂浴びようということで向かっ たのは南越前町の花はす温泉である。北陸の幹線路R8からR365へ出て、南条のスマ ートICを過ぎてすぐを東に折れるとまもなく花はす温泉に着く。折りしも「はすまつり」 の最中で多くの観光客で賑わっている。入浴料金は550円とこの種の入浴施設にしては 安い方。ホウノキやエゴノキの植わった奥山風の露天風呂は良かったのだが、女性用は湯 の出ない洗い場や排水口が一部詰まっていたとのことで、些かサービス不良の思いもあっ たようである。改善宜しく、花はす温泉殿(笑) 久々の山行。猛暑にもかかわらず、標高1000mの山歩は涼しく快適であった。山プ ラス温泉。やっぱり最高でんなあ。(^O^/
■同行 呉春さん、幸さん、たらちゃん、みずさん、もぐGさん(五十音順)
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