ジョウブツ山〜三角点までちょこっと山歩き

麦谷林道からジョウブツ山
平成22年 7月24日(土)
【天候】晴れ
【同行】単独


 梅雨明けからこちら、うだるような暑さである。とてもじゃないが低山は行く気がしな
い。(^^; 標高200m位の取りつきから登ってもせいぜい5、600mではやわな体力
が持たないのだ。(^^; で、今回は久方ぶりの明神平。それも麦谷林道で標高1000m
の稜線まで出てしまおうという算段。それも未知の三角点もゲットしてと、虫のいい算段
である。(笑)

 体調がいまいち本調子ではないことに比例して、出発時間はまたしても遅い。やっと7
時半に家を出る始末だ。名阪国道も事故渋滞2km。ついてない。それでもなんとか麦谷林
道。過去、数回登ったことのある林道ではあるが、今回は結構大きな落石もある。行ける
のかいな?ひょっとしてと思うが、まあ通行止の標識もないし大丈夫だろう。釣り客の車
が2台ほど途中まであって、安心したけれども、谷川から離れたその先にはなく、ちょっ
と心細かっくなるが「行け行けっ!」と気合いを入れる。

 登り切った所が二階岳や木ノ実ヤ塚、薊岳への登山口だ。暑いので下から登るのを避け
て、こちらへ回る登山者の車が一台位はあるのではと思っていたけれど、そんな車の影も
ない。(帰途、13時頃に通った時も同様で、結局、今日はここから登った人はいないよ
うである)

 ほぼ水平になった稜線上の林道を進むと、前方にジョウブツ山(両佛山)の電波塔が見
えてくる。思っていたより遠くにある。路面状況は舗装されているので概していいが、今
年の梅雨の影響か、所々小さな崖崩れがある。この新しく崩れた石は尖っている事が多い
から注意がいる。面倒だが車を止めて、轍の部分だけでもできるだけ石を排除しながら進
む。二、三度こんなことを繰り返していると、左の繁みに瀬戸地蔵の白い案内板が出てき
た。そのすぐ先はNTTのゲートである。林道横に数台置ける駐車スペースがある。

 日差しは強いが結構涼しい風が吹く。流石は高度1000m。だが伏兵現る。大きなア
ブだ。ワンワンと周囲を飛び回り、ブチッと音を立てて車の窓ガラスにとまるではないか。
こんなのにまとわりつかれたらかなわぬ。何はさておきスキンガードを手足、顔、首に塗
りこんでおく。
瀬戸地蔵の案内板
ジョウブツ山、峰山の案内も兼ねる

 駐車地から薊岳や大鏡山の山並みを眺めてまずは瀬戸地蔵へ。茂みへ入ってすぐの所の
杉林の下にコンクリート造りの祠があって、赤い前垂れを付けた高さ40cm程度の可愛い
お地蔵さんが佇む。お供え物もあるところを見れば、山仕事の人が時々供えているのだろ
うか?
瀬戸地蔵

 瀬戸地蔵の前は四差路になっている。植林の中を東へゆっくり降りていくのが地形図の
点線路らしく、瀬戸集落へ下る地蔵越の古道らしい。西へ等高線沿いにトラバースしてゆ
く小道もある。最初はこれが両佛山への道かと行きかけたが、もう一本、西側へ斜面を上
がる踏み跡があり、地面に黄色いテープを付けた杭があるのでこれだろうと見当を付ける。

 ちょっとした勾配の斜面だが大したことはない。しばらく進むとちょっとした伐採地に
出た。南の方向に空間が広がり、白鬚岳や登尾、戸倉山、トベットと続くらしい尾根が凹
凸を繰り返しているのが眺められる。その手前が瀬戸川の深い谷だ。それにしても山深い。
山また山の重なりである。

 再び植林。杣道を追っていたら、尾根を少し左に外して、何時の間にやらテープが無く
なっている。これは行かぬと右手の尾根へ20mほどの急登をすると踏み跡に復帰。尾根
上は思いがけずブナのいい林であった。

ジョウブツ山のブナ林

 医者にいつももらう薬が切れたのを契機に、ここのところ、様子見をしていたのだけれ
ど、やはり徐々に体調が落ちていっているような。こんな斜面でも少々息が切れる。週明
けには薬をもらいに行かねば...。私の場合、夏のこの蒸し暑さが引き金になるようで、
毎年この時期、体調が崩す時期がある。ジョウブツ山で成仏しても始まらぬ。そんなわけ
で前述の如く斜面での息切れが出始めたので、峰山まではとても無理と思われ、いずれま
た出直すことにして、今日はジョウブツ山(両佛山)山頂までとした。それでも一つ三角
点峰を制覇できるのでまあよかろう。(^^;

 尾根が広がってジョウブツ山の雑木の斜面。大した斜面でもないのだが、えっちらおっ
ちら休み休み息を切らせて。バイケイソウだらけと聞いていたが、葉っぱが黒く枯れて盛
りを過ぎた花だけのバイケイソウがちらほらあるのみ。独特のガス臭を嗅いで、傾斜の緩
んだ先を行けば、木立に囲まれた高みがあって、そこが綺麗な三等三角点標石が埋まるジ
ョウブツ山の山頂である。山名プレートもいくつかぶら下がっているが、台高や大峰でお
馴染みのフクロウマークは見かけなかった。

ジョウブツ山山頂
ポツンポツンとバイケイソウが咲く

 山頂から南に白っぽいものが見えたので少しばかり行ってみれば、NTTの標識杭が打
たれ、斜面を削り取った敷地にNTTの大きな電波塔施設が建っていた。現在は使われて
いないとか。けれど伊勢辻山なぞこの近辺の山に立つと、格好のランドマークになる施設
である。

 再び山頂に引き返して、ゆるゆると元来た道を散歩する。例の伐採された展望地の木陰
で昼食。ナツアカネが群れ飛び、肩近くの枝先で目玉をくるりと一回転させた。

 相変わらず誰もいない。誰にも遭わない。釣客の車も撤収いた後だ。車でやはた温泉近
くまで戻ってくると、旧小学校前には体験キャンプの子供たちを乗せたバスが到着してい
て、賑やかな嬌声。やっと沢山の人たちに遭いました。(笑)

 時間があるので途中の東吉野村のメインストリートをうろうろしてみた。というのは、
東吉野村を通る東熊野街道の小村、木津川、鷲家辺りは天誅組の終焉の地なのである。明
神平への行き来の途中、車窓から旧跡を見てはいたものの、車を降りてじっくり歩いたの
は今回が初めてである。街道沿いあちこちに高札風の説明板が設置されている。村役場近
くの出合橋付近には、今は面影はないけれど、当時の脇本陣碇屋がある。ここが土佐脱藩
で天誅組幹部の那須信吾が銃弾に倒れた場所。向かいが大和屋という古い旅館で、透かし
彫りが面白かった。

那須信吾が討たれたという碇屋
昔懐かしい赤いポストがある

碇屋向かいの民家は旅館だったようだ

 車に乗って鷲家口へ。炭焼き小屋に隠れているのを密告されたという天誅組の総裁の一
人、吉村虎太郎が従者と共に倒れた辺りに大きな岩があったので、これを墓碑とするとい
う説明と漢詩が掲げてある。

偲 吉村虎太郎先生
雲翳樵径秋愁愴
土佐虎勇銃創重
男兒胸奥須可察
可惜英魂返故郷
     峰止

人心を失った無念さは現代人の想像に余りあろう。

吉村虎太郎墓所の墓碑代わりの大岩

 最後に県道と国道166号との出会いにある湯之谷墓所。松本奎堂、藤本鉄石ら天誅組
の幹部の墓が地元の人々の墓に囲まれて並んでいる。今の日本を見てどう思っているだろ
うか。苔むした墓標を前に、ちょっと聞いてみたい気がする。

 ちょこっと山と歴史散歩の半日でした。



【タイムチャート】
7:30自宅発
10:15〜10:25NTT管理道ゲート前(駐車地)
10:57〜11:05ジョウブツ山(両佛山)(1,307.9m(三等三角点))
11:24〜11:50地蔵越西300m付近(昼食)
12:00NTT管理道ゲート前(駐車地)



ジョウブツ山(両佛山)のデータ
【所在地】奈良阜吉野郡東吉野村・川上村
【標高】1,307.9m(三等三角点)
【備考】 台高北部にあって、木ノ実ヤ塚、二階岳から西に派生す
る稜線上の山です。東側を地蔵越の古道が通っています
が、NTTの電波塔と麦谷林道のお陰で楽に登れるよう
になりました。山頂は展望はありませんが、ブナなどの
雑木林に囲まれて静かです。ところで別名『天狗の俎石』
はどこから付けられたのでしょうか。
【参考】2.5万図『大豆生』



ジョウブツ山の登路途中の展望地から南方向
右手に白髭岳と小白鬚、中央から左は登尾、トベットなどの山並み

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