鶴觜山〜龍野の面白里山

南のCa210mピークから鶴觜山
平成21年12月12日(土)
【天候】曇り時々晴れ
【同行】別掲


 先週、たつの市の新龍アルプスをMさんと縦走した時、東に揖保川を隔てて岩の山が目
を引いた。ネットで調べると鶴觜山を主峰とする山並みであった。そこをまさか一週間後
に歩くとは思いもよらなかった。(笑) Mさんがそこを舞台にオフを企画したのである。
ほんの300m足らずの里山だが、そこは石仏あり、岩稜あり、絶景ありとバラエティに
富む想像以上にいいお山でありました。

 この頃は日曜より土曜の方が高速道路は混むようで、池田付近からもう渋滞の列。ただ、
ビタッと停まりっ放しでないのが救いだ。山陽道は白鳥PAでNさんとも合流して姫路西
ICで降りる。幹線国道のR29で北上、まずは下山予定地の林田町中山下付近の空き地
をお借りして車をデポ。取って返して出発地点の觜崎へ向かい、屏風岩の東側の集落を駐
車スペースを探してあちこちしたらこじんまりとした墓地があった。ちょうど居合わせた
ジモティの小母さんに断って墓地の駐車地をお借りする。

 横長の墓地の奥へ進んでいくと、なんとJR姫新線を跨ぐ橋である。姫新線は橋のすぐ
間際で屏風岩の尾根をくぐるトンネルに入ってしまう。橋の上に居て、もしそこにSLが
走って来たら、凄い煤煙をかぶったことだろうねえ。洗濯物も煤で真っ黒だろうなあ。(笑)

姫新線の屏風岩の下をくぐるトンネル

 墓の裏がもう屏風岩への尾根である。南端の神社から本来は登るらしいが、ここからだ
と僅かにショートカットになる。墓地を横切るともうそこは大きな露岩の上で、付着した
地衣類やコケが昨夜来の雨で水を含み、ヌルリと滑るのが気持ち悪い。岩の上を歩くのは
止して、岩尻のネズやソヨゴの生えた土の上を回りこみながら登る。鹿よけ柵の扉を抜け
斜面を上がっていく内に、背後がもう大きく広がってくる。大きな龍を思わせる揖保川の
流れ、姫新線の鉄橋、旧龍野から新宮にかけての街並み。しかしなんといっても、特筆は
寝釈迦の姿であろう。鶏籠山が頭、両見峠が首、的場山から亀山にかけた起伏が胸から腹
にあたる。更に右に首を回せばムックリと頂上の岩が目立つ祇園嶽。乙女の乳首にも似て
いるなあ。(^^; そこをほんの一週間前に歩いていたのだが、まさか数日後にそれを横か
ら眺めるとは思わなかった。(笑) するとガタンゴトンと列車の走る音が聞こえてきてそ
れが一際高くなった。今しもクリーム色の2両編成のディーゼルカーが揖保川の鉄橋を渡
るところである。ハバタン列車もあるらしいが、もともと1時間に上下2本程度しか走ら
ないローカル線と聞いていたので、列車が走っている姿を見るだにラッキーなのだ。

屏風岩からの絶景。揖保川と寝釈迦

 昭和6年に文部省が立てた「天然記念物屏風岩」と刻まれた石柱の向こうに大きな立方
体のような岩がある。この岩の上が標高168mの標高点で、独標の石柱らしきものが岩
に埋め込まれてある。マグマが岩の割れ目を縫って上昇してきて冷えたものなのだという。
今、足元にしているのがその頭そのもので、岩からはまさに絶景である。遮る物まったく
ないので先程よりも鮮やかに周囲を見渡せる。しかも風がなく文字通りの小春日和の中の
のどかな風景だ。
天然記念物屏風岩

 山塊は徐々に高度を上げて行く。尾根上からはまだ鶴觜山は見えず、手前のCa200m
ピークと岩をまとったCa210mピークがピラミッドの如く並んでいるのが見えるのみ。
右下には皿池や干上がった長池がある。と、屏風岩でお遭いした一週間に一度は登りに来
るというジモティーの小父さんがもう戻ってきた。早いっ!

 Ca210mピークの岩を越えるといよいよ三角錐の端正な姿を現した鶴觜山への最後の
登り。クヌギ、コナラ、ソヨゴ、タカノツメ、赤松などが見られる落葉樹を主体とした混
交林は明るい。ヤブもなく落ち葉が敷き詰められた足元には、赤い実が鈴なりのマンリョ
ウがあちこちに見える。

鶴觜山の明るい南斜面

 鶴觜山の広くなった南の斜面もヤブはなくどこでも登れる。そして山頂南の露岩のテラ
スは景色を愛でながらの昼食には最高の場所。だがその前に30mほど先の山頂の三角点
(四等三角点 点名『池ノ内』)を踏んでおこう。疎らな林の中で展望はないがしばし憩
える静かな場所である。

 まだ11時半なのだが岩のテラスで早めの昼食。小春日和だというものの、やっぱり温
かいものが欲しくなる季節。カップ麺が美味い。遠くで播磨灘が光る。

 鶴觜山の北斜面は思いの外、急峻である。立木を掴んで慎重に下りる。こちら側に来る
と流石に踏み跡はさっきまでに比べると薄い。しかし今までが明瞭過ぎたわけで、我々に
とっては最適のハイウェイだ。コシダが茂る中にくっきりした筋がある。そして結構なア
ップダウンがあり、大きな鞍部だけでも三つある。最後のCa180mの大きな鞍部からCa
230mピークへ登り返すと頂上部はのっぺりとした台地で、やがてCa280mのピーク
を前方に見ながら下れば、姫路市林田町とたつの市新宮町曽我井を結ぶ大きな切り通しの
ある峠に出る。ここには道標があって、右、林田・鴨池、左、大正池とある。確かに杉木
立の向こうに水面が光っている。
切通しになった峠道向こうが林田側で、石仏が置かれている

 今日の我々のコースは峠を北に杉桧林の中の林道を伝っていく。最近あまり手入れがな
されていないような陰気な植林の中だ。カラスの声が余計に陰気さを増す。湿気でジュク
ジュクした林道を辿るとまもなく右手に地形図にもある枯れ池が見えてきた。その枯れ池
の先も手入れの行き届かない杉桧林でさらにうす暗い。昨夜の雨でぬかるんだ斜面を滑り
つつも登るとすぐ小さな尾根筋に出たが、踏み跡はなく、先はヤブっぽい。地形図に点線
路表示のある浅い谷筋も倒木が折り重なっており、こりゃあ難儀しそうだと点線路を辿っ
ての突破は断念。戻って先ほどの切通しの峠道で東に出ることに変更する。後から考えれ
ば265m標高点ピークから高圧線へ向かい関電巡視路を利用する手もあったかもしれな
い。但し、265mピークへの道は確かめていない。(^^;

 切通しを抜けると右手に崩れた石組みが転がっている。良く見ると首のない地蔵坐像と
五輪塔の宝珠らしき破片が置かれているのがわかる。林道を下る途中にも小さな石仏が置
かれていたから、これを見てもやはり切通しの道は林田と曽我井の両集落を結ぶ古い道だ
ったようで、昔は嫁入りなど村同士の行き来も多くあっただろうことを思わせる。こうい
う道を見つけて往時に思いをはせるのもなかなか面白いもので、吾輩は好きである。

 石がゴロゴロして歩き難い道は右下の浅く広い谷を歩いた方が歩き良いねえなどと冗談
も飛び出す。やがて右手に現れた溜め池に姿を映しているのは鶴觜山の北のCa250mピ
ークらしい。が、残念ながら残土が捨てられてある。林道などが通じているとえてして廃
棄物が捨てられることが多く、景観は台無しである。この公徳心の無さ、何とかならない
ものだろうか。

 そんなこんなで間もなく見えてきた林道のゲートの扉を抜けると、そこは姫路市林田町
上構。鴨池の北側、祝田(はふりだ)神社の西の地点である。当初の案とは下山口が異な
るので、車を回航してもらう間、10mほど横の真新しい祠に置かれた石仏などを見物す
る。その間に北から灰色の雲、にわか雨が通りすぎた。

林田町上横の車道に出てきた

 さて、次は折角なので觜崎の磨崖仏の見物に行くことにする。觜崎橋の東の袂から揖保
川沿いにコンクリート堰堤があり、少し先まで車で入ることができる。橋の袂から30m
も入ると、幅2m位の用水路ごしの崖、5mほどの高さの場所に背高1mくらいの2つの
磨崖仏が彫られている。銘があるものでは兵庫県最古の石仏(文和3年(1354))と
いう事である。石仏の廻りに穴が開いているのは、昔は雨避けの祠でもあったのであろう
か。今も信仰が篤いらしく、花が供えられている。説明板によれば霊験あらたかな「疣と
り地蔵」とか。揖保川でイボ取りかあ。親父ギャクだなあ。(笑) そんなバカなことを考
えているが、ちょっと前まではこの石仏上の尾根に居たのだから、やっぱりちょっと罰当
たりだったかも。(笑)

常照皇寺よりも村の鎮守日吉神社のカエデが盛りでした

石仏の堤から屏風岩を見る。手前は姫新線の鉄橋

 揖保川の岸にはクレソンが群生している。一寸つまんで食してみた。ピリッとシャキッ
とみずみずしくて美味かった。

 土産にということで皆さんは醤油を買い求めにオオギイチ醤油へ。社長さんは今日も再
仕込み醤油をおまけしてくれました。まだまだ到る所に面白山は隠れている。そんな気を
新たにする鶴觜山の散策。みなさんご苦労様でした。


■同行 幸さん、たらちゃん、中井さん、ハム太郎さん、水谷さん(五十音順)

【タイムチャート】
7:30千里中央ローソン前(集合地)
9:55〜10:05墓地(駐車地)
10:33〜10:42屏風岩
11:00Ca200mピーク
11:08〜11:10Ca210mピーク
11:28鶴觜山(263.2m 四等三角点)
11:30〜12:00鶴觜山南の展望露岩(昼食)
12:16鞍部
12:33〜12:36切通しの鞍部
12:52〜12:55265m標高点西の尾根
13:03〜13:05切通しの鞍部
13:25林田町上構の車道出合



鶴觜山のデータ
【所在地】兵庫県姫路市、たつの市
【標高】263.2m(四等三角点)
【備考】 揖保川の東、たつの市と姫路市の市境をなす低山塊です。
その南端には天然記念物の屏風岩があり、露岩帯が鶴觜
山まで続き、山頂南の展望岩や屏風岩の上から望む新龍
アルプスの『寝釈迦』の姿は綺麗です。
【参考】
2.5万図『龍野』



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