西林寺山〜西脇の里山で日溜りハイク

西林寺山(寺山)
平成21年 1月12日(月)
【天候】晴れ
【同行】単独


 この三連休は今冬一番の寒さだ、その上に雨だ雪だと予報に脅されて山断念の人も多か
ったのではないだろうか。ところが真っ青な冬晴れの日曜日じゃないの。昼頃「今日行きゃ
あ良かったかな?」と思っても後の祭りだ。それで三連休最後。(明日は行くぞ)と気合
を入れる。だが起床して日の出の時刻を過ぎても外は薄暗いまま。やっぱり外は寒いし、
気分は俄かに萎えて「やめよっかな」と弱気になる。コーヒーを飲みながら様子見し、ふ
と窓を見た時だ。あれ、明るくなって薄日が射しているではないか。現金なもので、気分
も一転明るくなる。そして終始快晴、しかも意外やあったかな一日なのでした。

 今日は目的地が里山。そこで10時前、ゆっくり家を出た。燃料を入れて弁当も買って、
地元の人に道を聞きつつ、11時半前に童子山公園に着く。車をとめたのは童子山公園に
ある西脇市総合市民センターの建物の駐車場。利用者以外の駐車禁止の立札があったが、
祝日だし、がら空きなのでご容赦いただこう。暖房の効いた車から外へ出ると流石にブル
ッときた。白いものが舞っている。空は青いがどこからか飛雪が風に乗ってきたらしい。

 初めてやって来た場合にはえてして取り付きに迷うものだけれど、今回はそんな心配も
ない。取付き予定である実相寺の八十八箇所の祠が山の斜面に並んでいるのが、駐車場か
らも良く見えるのだ。童子山の交差点を渡って実相寺への坂を登る。摩尼山実相寺は真言
宗のこじんまりした寺だ。吹流しの翻るその門口から、墓地の向かって左手の緑の手すり
が設置された急階段へ向かおうとすると、お墓におられた地元の小母さんが声を掛けてき
た。
「山へ登るん?それならそこの道を右へ行くといいですよ」
「はい、どうも。石仏の上からも道があると聞いているので」と返す。わざわざ声を掛け
ていただき有難うございます。m(_ _)m

快晴の下、西国八十八ヶ所の祠が並ぶ実相寺の墓地

 さて階段を登りきるとひな壇のような敷地に小さな神社がある。除暗、遍明と刻まれた
石燈篭が左右にある。ここから右斜めに、公園から見えた八十八箇所の祠が行儀よく並ん
でいる。赤いよだれかけが良く目立つ石仏の千差万別の顔が面白い。その一番はしが不動
明王で、それが尽きると大きな岩盤になる。小道は岩を避けて左に折れて、岩がちの南斜
面の登り道となる。

 なんだ、ポカポカと暖かいではないか。登っていると暑いくらいである。南斜面で風が
直接吹いてこないこともあるが、黒いヤッケと防寒ズボン、とりわけこの裏地がフリース
の防寒ズボンが優れものである。ちなみにユニクロ製。1280円だ。(笑) 汗が出てき
た。

 まもなく尾根に出ると水平道。防火帯でもあるのか道は広い。西の郷瀬町の家並みも木
の間越しに眺められるようになるが、時折現れる露岩の斜面からは南側の景色がいい。そ
れを眺めていて、この尾根、西の杉原川と東の加古川に挟まれ矢じりに似た形状をしてい
ることに気づく。北の山南町の石金山辺りから南に延びる山脚なのらしい。

 いつしか尾根が東に折れる。斜め北に見えていた北山にようやく近づいて行く。徐々に
傾斜はきつくなるが大したことはない。あっという間に山頂。ここは観音寺からのコース
(小母さんが言っていたコースだろう)との合流点でもある。関電の火の用心標識に案内プ
レートが取り付けてある。

 一息ついて北へ向う。こちらはまだ若い桧の植林で、一転して薄暗い中の滑りやすい下
りである。空気が冷え冷えしているのが体感される。50mほど降りて登り返し。一転南
斜面となってポカポカ。日の光がありがたい。その中を258mピークの中腹に見える高
圧鉄塔を目標にえっちらおっちら。この大野支線#4の鉄塔までは北山から10分程度で
あった。やがて到着した258mピークは南北に長い。西林寺への分岐があり、少し進む
とベンチがあったので丁度頃加減もよく、ここで食事にした。

258mピークから西林寺山。遠くに雪を被る千ヶ峰

 このベンチの20mくらい先には大野支線#3の鉄塔があって、その近くに立つと意外
に格好のいい西林寺山(寺山)が目の前にある。山頂横に高圧鉄塔と白い建物が見える。
東の麓は幾つかの池や野球場のグラウンドが目立つ西脇公園である。東は加古川が土砂を
運んで形成した野で古くは都麻乃郷と呼ばれた辺り。その向こうに西光寺山が一際高い。
北西には雪を被った笠形山から千ヶ峰へ延びる連山だ。去年登った黒木山もその手前に見
えているのだろう。というわけで低山の割りに展望のいい山なのである。

 朽ちかけた丸木の階段が現れてどんどん下る。アベマキやミツバツツジの間の分厚い落
ち葉道だ。間もなく鞍部に出て狭い尾根をゆっくりとした登り返しで進む。ずんずん西林
寺山が近づきて来る。そして西林寺山分岐に出ると今度は虎ロープまで用意された結構な
急斜面。食後で少々苦しいが、里山なのでほんのしばらくの我慢だ。大野支線#2の鉄塔
を左にすると東屋のある山頂。白い建物は西脇防災行政無線中継所で、その横に少し摩滅
して文字が分かり難くなった三等三角点が見つかる。

西林寺山より歩いてきた稜線を眺める
手前が258m山、奥が北山。その向こうが西脇市街

 寺山もやや南北に長く、無線中継所用の電力をまかなう電柱が尾根上に延びている。そ
の切り開きがあるが、この先の車道まで延びているのだろう。ここも南側は素晴らしい景
色で、昔、ここには砦があったというがさもありなん。歩いてきた稜線が一望されて、加
古川の水面がキラキラ光り、幾度か通った数曽寺山塊もやや左手に眺められる。ウラウラ
と暖かく、春と間違えたか羽虫が顔に当たった。

 さっきの西林寺山分岐まで戻って山頂の東南側を巻きながら下る。不思議なのが分岐に
ある道標。北側を向いていて南から来た場合は少し分かり難いだろう。因みにこれまで歩
いてきた道は『ながめの道』と呼ぶのだそうだ。

 西林寺山までは920m。西林寺山の東尾根を辿って行く。その尾根の先端はベンチが
置かれた台地状。そこから道は左に折れ、下りていくに従って桧林が現れてくる。ジグザ
グ道の最後はやや鬱蒼とした感じとなるが車道がすぐに現れる。ちょうど地形図の車道が
南に鋭く湾曲する部分だ。
ふるさと林道に出てきた

 『ふるさと林道 坂本日野線』と呼ぶ2車線の立派な道である。しばらくはそれを辿っ
て西脇公園に出てくる。野球場の横の駐車場に案内図があり、現在地を確かめて鬱蒼とし
た林に入ると、やがて鐘楼横から西林寺の本堂への参道へ飛び出した。ここ伯谷山西林寺
山は法道仙人開基と伝えられる古刹。本堂へ折れると左手の斜面に八十八箇所の石仏の祠
がここにもある。100m程度の真っ直ぐな道を進めば本堂で勧請懸けが掛け渡してある。
本堂に上がれるので覗いてみるが、手脚が二対という本尊の観音菩薩像は閉じた厨子の向
こうで望むことは出来なかった。

西脇聖天の境内にある唐子ツバキ

 樹齢2百年という名物唐子ツバキは本堂の周囲にない。どこにあるのだろうと注意しな
がらぶらぶらと参道を下ると、左手に西脇聖天の門が開いており、その横に唐子ツバキの
表示を見つける。大杉や巨桜、大ケヤキなどを今まで見てきているから、どんな大木だろ
うと想像するが、門から覗いてもそんな大木はない。おかしいなと境内にお邪魔し、行き
つ戻りつしたら門の側に表示があるではないか。「ほう、これなのかあ」幹の直径は30
cm位、樹冠の広さは8畳位だろうか?少し肩透かしだあ。(笑) でもやっぱりツバキと
しては大きいのだろうなあ。

 境内にあった説明書きに依れば、この辺りは古くは前述した如く都麻乃庄と呼ばれる由
緒ある土地。杉原川と加古川の流れによって産み出された肥沃な土地だったと思われるが、
氾濫にも度々悩まされたそうだ。それを防ぐ為に難工事の堰造りを行なったという庄屋の
顕彰碑もある。そんな歴史も見ていくとすこぶる面白いものである。

西林寺山境内のセンリョウの実

 西林寺を出て道標に従い右の道へ。市営住宅と墓地の間を行くと、右手に歩いて来た北
山から西林寺山の山並みが見出せる。高圧鉄塔があるのであの辺で飯食ったなあなどと自
分の足跡が良くわかるのもいいものだ。気がつくと今歩いている道は近畿自然歩道なのだ
った。そういえば、あんまり車が行き来しない古い旧道のようだ。

 左手、板張りの二階建て校舎が三棟平行して並ぶのは西脇小学校。なんだか昔懐かしい。
そういえば、私が通った小学校も板張り二階建だった。入学した頃は鉄筋の体育館などは
なく講堂と呼ばれた木造の建物だったっけ。新築なったのは東京オリンピックの前だった
ような....。むむ、古い話だ。
懐かしい木造の西脇小学校の校舎

 さて、小学校の前はR427。西に折れて200mも行けば往路の童子山の交差点であ
る。市民センターの建物の前のベンチに腰掛け、往路の八十八箇所の石仏を遠目に眺めつ
つ沸かしたコーヒーをすする。雪まみれの山もいいけれど、そんな寒い山は避けて、こん
なお手軽、陽だまりハイクが私は好きだなあ。それにしても西脇はしっとりとして落ち着
いたまことにいい町であります。


【タイムチャート】
9:50自宅発
11:18〜11:25童子山公園(駐車地)
11:30実相寺
11:53〜11;55北山(230m)
12:05高圧鉄塔(大野支線bS)
12:10〜12:40258m標高点ピーク(昼食)
12:51西林寺山分岐
12:55〜13:00西林寺山(260.6m 三等三角点))
13:03西林寺山分岐
13:16ふるさと林道出合
13:23〜13:55西林寺
14:15童子山公園



西林寺山(寺山)のデータ
【所在地】兵庫県西脇市
【標高】260.6m(三等三角点)
【備考】 石金山から南に延びる山塊が杉原川と加古川に挟まれて
没する手前に位置する里山です。低山のわりに好展望に
恵まれ、東播磨の山々を一望することが出来ます。東麓
にある西林寺は法道仙人開基という古刹です。
【参考】
2.5万図『西脇』



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