伯母子岳〜涼風吹く展望の山

伯母子岳から西方向。左側の尾根が縦走路のある尾根

平成21年 9月13日(日)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】別掲


 伯母子岳は2002年の蛍オフ以来だから7年ぶりになる。当時は西吉野村の宿泊施設
に一泊して蛍を楽しみ、明くる朝、山深い野迫川村の大股から小辺路を辿って登ったのだ
った。云わば北からのアプローチ。今回は護摩壇山付近から奥千丈林道を車で入る西から
のアプローチとなる。ダート道だとばかり思っていて普通車での林道進入を躊躇していた
けれど、訪れてみれば将来の国道昇格を目論んでいるのか全線舗装で、奈良や和歌山のな
まじの国道よりも良いくらい。しかも遊歩道は完全・完備で、おかげで標高千m越えの涼
しい稜線散歩を満喫させてもらいました。

 奥高野の護摩壇山は京阪神から遠くて、高野山からでさえも1時間程度はかかる。伯母
子岳の登山口はその護摩壇山から更に6kmは奥というわけで、朝6時という早目の出発。
3時間近くかけてようやく林道分岐に到達する。奥千丈林道は奈良と和歌山の県境尾根を
行く1〜1.5車線の林道。途中の皆伐地の斜面は○○が上がってしまうほどの高度感で
恐怖すら感じるほどである。木々の繁りがいかに恐怖感を薄らぎさせてくれるか身に沁み
たことだった。(^^;

 伯母子岳の登山口には数台の車が停められる林道のふくらみがある。もう4台ほどの先
着車がある。当然ながらジモティが多いようだ。道標には護摩壇山まで7km。約2時間
の節約だ。
奥千丈林道にある伯母子岳登山口

 普通の山道と想像していたが、軽四輪なら充分走れる林道のような遊歩道である。それ
もそのはず、旧営林署の立てた案内標識には「護摩壇山・伯母子岳遊歩道」とある。とは
いえ、遊歩道の周りは植林が全くない広葉樹林の自然林で、クマザサを下ばえにムシカリ、
ブナ、コナラ、ナナカマド、リョウブなど、黄葉、紅葉が美しそうな木々が並んでいる。

山道というよりこんな感じの遊歩道だ

 南にウネウネと奥千丈林道が見える。十津川へ抜ける間道に使えるようだ。神納川の深
い谷を隔てては龍神岳。護摩壇山より10m高く、最近、和歌山の最高峰として命名され
たという。山頂にNHKのアンテナ施設があるので良く判る。登山口から10分ほどで最
初の1,294m標高点ピーク。歩くとやはり暑いので長袖シャツを脱ぐ。

 小さなアップダウンが続く。右手に口千丈山からの南西尾根。それを巻いて奥千丈林道
が山陰に消えていくのが眺められる頃、徐々に登り坂となって、今までの明るさから一転、
やや薄暗い林の中へと進んでいく。

 口千丈山は歩いていると全く目立たない。三角点の標石と「紀州わらじの会」の例のフ
クロウのマークが付いた山名標識が埋められているのでそれと分かる程度。前述のように
薄暗い林の中だから、勿論展望もないわけだ。三角点にタッチして小休止。

 1,322m標高点ピークは登らずに右側を巻いていく。その1,322m峰から少し東
のCa1,300mピークがガイド本に「焼山の太尾の頭」と書かれたピークらしい。地形図
にはここから南へ点線路があるが、それらしい道は見つからなかったが、ここで初めて東
側が開けて伯母子岳が姿を現す。牛首ノ峰がその前に立ちはだかり、地形図にあるザレ場
らしい白い山抜けが緑の山肌の中にある。左に夏虫山。遠く大峰の峰々も波打っているの
が望める気分のいい場所である。その牛首の峰に取り付くまでは、しばらく高い木がなく
明るい。コハウチワカエデがまるで植樹された並木道のように整然と並んでいるのが面白
い。その中にはシロヤシオの古木も多く、秋深まれば錦繍の道、初夏は新緑の中のシロヤ
シオの白い花が印象的なのではなかろうか。

「焼山の太尾の頭」から牛首ノ峰を望む

 牛首ノ峰も山頂は登らず左の裾を通る。そして伯母子岳まで1.7kmの道標が立つ辺
りに来ると、一転、大木が現れる。中でも伯母子岳と牛首ノ峰との最低鞍部(深タワ)へ
下る途中にある大ブナは圧巻である。幹周りは3mはあろうかという大木は、威風堂々、
周辺を睥睨しているようである。

登山道脇にある一際大きいブナ


木々の間から伯母子岳。左側が本峰

 道は次第に北から東に振り始め、木の間隠れにチラチラ姿を見せていた伯母子岳へよう
やく指向するようになる。緩急を繰り返しながら、もうそろそろダラダラ下りは止しにし
てよと祈る頃、伯母子岳の九合目付近を迂回して伯母子峠方面へ巡っている遊歩道との分
岐である深タワ。ここで遊歩道に別れを告げて、いよいよ低木主体の自然林の中を山頂へ
の急登だ。下山してきたペアの登山者とすれ違う。今日はじめて遭う登山者で、山頂には
地元のご夫婦だけがいますとの事。好天でもあり、日本二百名山なのでもっと人出がある
と予想していたのだけれど、京阪神からの足の便の悪さが影響しているのかもしれない。

 そうこうしている内にガイド本でカヤトの原とある部分に出る。しかし、カヤトは見ら
れず、キリギリスがあちこちで鳴き交わす草っぱらである。木々がないので、振り返れば
歩いてきた方角が見渡せる。ウネウネとした山並みに鉾尖岳の姿がひときわ目立っている。

 右手に張り出した伯母子岳の南の出っ張りが目立つが、山頂は目の前の奥だ。山頂直下
で急に増した傾斜をあえぐと、どこか見覚えのある標識の立つ伯母子岳の山頂である。で
も本当の山頂はもう少し東の繁みの中かもしれない。どう見ても向こうの方が高そうだが、
なんといってもこちらは三角点がないのが不思議なくらいのほぼ360度の展望地なのだ。
故にこちらを山頂としたのだろう。まあそんな詮索は抜きにして、何はともあれ、先に昼
食。乾いた涼風が心地よい。この時期、こうるさいハエなども少なく快適だ。久しぶりに
ラーメン。『うめぇ〜』(笑)
伯母子岳山頂。右のピークが南峰

 東に大峰の山並みがある。目立つのはピラミダルな釈迦ヶ岳で、すぐ右手、うっすらな
がら大日岳の尖峰も分かる。北には夏虫山が目立ち、その奥のスカイライン上には往路で
利用した高野竜神スカイラインが走っているらしく、観光施設や風力発電の白いプロペラ
も認められる。西には護摩壇のスカイタワー、その左に和歌山の最高峰の龍神岳がある。
手前は牛首ノ峰、口千丈山と歩いてきた稜線、奥に古畑山がある。口千丈山は歩いている
と唯の尾根なのに、ここからみるとなかなか立派な峰だ。(冒頭の画像)

 日が翳った中で、じっとしていると少し寒いくらい。そろそろ往路を引き返すことにす
る。復路では今から山頂を目指すご夫婦、単独兄さんとすれ違う。結局、今日出遭ったの
は計3組のみであった。

 往路で聞こえていた山仕事のものらしいチェーンソーの唸り声がまだ響いている。日曜
なのにご苦労さまです。その唸り音を聞きながら戻ってきた登山道入口。駐車の車はすれ
違った人たちのものと思われるもののみだった。

 帰路、少し寄ってみた護摩壇スカイタワーの駐車場には相変わらず多くのオートバイが
たむろしている。程近い和歌山最高峰に認定された龍神岳にもと思うが、往復小一時間以
上は必要だろう。混まない内に早めの帰阪を考えれば登頂?はまたこの次に。気軽に歩け
る割に静かな奥高野の名山でした。



■同行: たらちゃん、みずたにさん(五十音順)

【タイムチャート】
6:00自宅発
9:45〜9:50伯母子岳登山口(駐車地)
10:03〜10:041,294m標高点ピーク
10:32〜10:35口千丈山(1,330.8m(三等三角点))
10:56〜10:59焼山の太尾の頭(1,322m)
11:16牛首ノ峰(1,341m)の肩(道標あり)
11:40〜11:41深タワ(大股分岐)
12:01〜12:35伯母子岳(1,344m(昼食))
12:48深タワ(大股分岐)
13:13牛首ノ峰(1,341m)の肩(道標あり)
13:55焼山の太尾の頭(1,322m)
14:20口千丈山(1,330.8m(三等三角点))
14:441,294m標高点ピーク
14:54伯母子岳登山口(駐車地)



伯母子岳のデータ
【所在地】奈良県吉野郡野迫川村・吉野郡十津川村
【標高】1,344m
【備考】 奧高野の護摩檀山から東に連なる山塊の中の独立峰です。
昔、長者が山深くに住む美貌の女性に乳母を頼んだとい
う伝説から命名されたと云われるだけあって、たおやか
な姿です。その肩を高野山から熊野へ向かう小辺路が通
じており、山頂からは360度の大展望が得られます。
奥千丈林道からコースはファミリーハイクに最適です。
■日本二百名山■近畿百名山■関西百名山
【参考】2.5万図『伯母子岳』、『護摩壇山』



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