深山北尾根の古道を歩く


雑木林を出て深山宮の石が置かれた山頂へ
平成21年 9月27日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 SRC発足以来、地元北摂での本格オフは初めてではないだろうか。どこがどう違えば
本格オフなのかよく分らないが、ともあれ、北摂でのオフは久方ぶりではある。参加人員
は10名。3人が現地集合なので、残り7人が集合地の千里を経て、現地の篠山市にある
『ささやまの森公園』へ向かう。彼岸花も盛りを過ぎて、田の畦で色あせている頃合いな
のだが、まだまだ蒸し暑い。

 R477からR372で西走し、天引峠を越えて篠山市に入ると『ささやまの森公園』
の標識が出る。それに従い南に折れると山峡、右手に八幡ダムの貯水池が見えてくる。今
日はここから北尾根を辿って展望絶佳の深山へ登り、公園を囲む尾根をぐるりと巡るつも
り。公園の設置によって、昔、摂津の酒所へ向かう杜氏なども通ったであろう深山古道や
大正古道も整備されたと聞く。古道と聞けばロマンを感じるのは私だけだろうか。

 現地に9時半集合と触れを出しておいたが、ばっちり9:20到着。現地集合予定の皆
さんももう到着している。

 まずは管理事務所で登山届に記入しようと窓口へ。記入後、受付のおばさんに念の為に
確かめる。
「マツタケシーズンで立入禁止とあったけど、深山には登れますよね?」
「はい、登れるようにしてますけど深山古道でお願いしています。」
「ええ?尾根は駄目なんですかあ?」
「公園の敷地内はいいようにしてますけど、私有地は駄目なんです」
「二週間前に確かめたら、マツタケが出るのは10月からですから大丈夫です。どう
ぞおいで下さいって云われたんですけどねえ。尾根歩けないと面白くないしなあ」
「はい。残念ですけど...。」
「しようがないですねえ。じゃ、まあ古道歩きで」
東尾根から西尾根周回を目論んでいたのにちょっと話が違ってきた。皆さんには変更の報
告。とりあえず、深山古道で庫阪峠に上がって深山へピストン。戻った峠から歩けるなら、
大正古道で胎内こぐりを見物に行ってみるというコースに変更だ。公園内のメインストリ
ートのコンクリ林道を南に向かう。サギソウの湿原にはアケボノソウやミゾソバが咲いて
いる。そこここに栗のイガが転がっていて、ここのところの残暑は厳しいけれど、季節は
確実に秋なのです。
公園内の舗装路を南へ


 モリアオガエルが卵を産む小さな池を左に杉木立を進む。剣尾山へ耐暑登山の前に寄っ
た時もそうだったけれど、今日も物置にはニホンミツバチの巣があるようで、キイロスズ
メバチが巣を襲撃に飛来している。あんまり近づかないようにして更に奥へ。隠し田だっ
た名残の石垣も残る。かなり高く積んだらしいが、領主の目は盗めてもイノシシや鹿の目
は盗めなかったんではなかろうか。(笑)

橋を渡ると舗装路と別れて広葉樹の散策路入口へ

 林道を歩く内に100mは登ったんじゃなかろうか。コンクリート道が尽きる所に橋が
あり、左に折れてダート道に入る。橋のたもとのサンショウに赤い実がついてなかなかき
れいであった。マツカゼソウが揺れる中を歩いてダート道も尽き、いよいよ山道だ。右に
小さな谷の流れを見ながらのダート道もやがて尽きて、左にようやく本格的な山道。この
辺りが今回では一番の急坂である。自然木の丸太で作った階段も程よく朽ち始めて自然に
還りつつある。しばらく息を切らせると尾根に出て後はなだらかな登りである。

 忽然と眼前に現れた大きな岩が扇岩。扇を開いた様な形に見えるのだろうか。岩のすそ
を巻く道から、谷の源頭ふうな広がりを持つ小さな広場に降りる。ここが『扇ナリ』と呼
ばれる所だ。『ナリ』とはやはり『ナル』または『ダル』と同意で、なだらかなという意
味だろう。麓から扇を広げた形に見え、村の共同の草刈場だったと説明板は語る。数十セ
ンチの幅の沢にはモリアオガエルが石の間で擬態。「あっ!カエル」と言われても直ぐに
はピンとこない。てっきり落葉色に擬態していると思ったらなんと緑色だったので、頭か
ら抜け落ちていたみたい。それが分かっても青葉が落ちていると勘違いするくらいじっと
しているのだった。

扇ナリの小沢に隠れていたモリアオガエル

 扇ナリの上部はあまり道がはっきりしていないが、兎に角、上の方へ。川原のナツツバ
キと呼ばれる高木がある。見た目にはそれほど大きな木には見えないが幹廻りは1mだと
いう。読売新聞関西版のWEBにも紹介された木だ。ただ、周囲を整備しすぎて明るくな
りすぎているような感じがするがどんなものだろうか。

 常緑樹も多くあって、やや暗かった林もこの辺りまで来ると、カエデやリョウブ類が増
えて、私の好きな落葉樹の雑木林。京都北山の廃村八丁からソトバ峠へ登る道に良く似た
風景が展開する。そして間もなく清々しい庫阪峠へ登り着く。

北山のソトバ峠を髣髴とさせる庫阪峠手前の雑木林

 標高は640mとある。大阪側も清々しい林で500mも南へ辿れば、以前歩いた事が
ある天王から深山に向う林道に、地形図を見れば出合うようだ。そこから登ると最短コー
スかも。(笑) 西尾根に向う道には『マツタケシーズン立入禁止』の文字。他にも『誤解
を招くので、道から逸れないように』の看板が随所にある。残念だが、今日は尾根歩きは
パスだ。
庫阪峠。向こう側が摂津、手前が丹波だ

 ここにも自然に還りつつある丸木階段。周囲にアセビやリョウブ、ミツバツツジが増え
てくる。朽ちた落ち葉が積もる静かな斜面を登りきれば、少し切り開かれて円状になった
広場を持つ舩谷山に出る。本来なら三国山などと名づけられるところであるが、曲りくね
ったリョウブやコナラが茂り、おかげで全く展望もなく地味なこともあって、三府県界に
位置している割には不遇な山だ。ここで標高は730m。庫阪峠からほぼ100m登った
ことになるけれど、何時に間にやらという感じでほとんど標高差を感じない柔らかい斜面
だ。尚、ここは当初歩くはずだった東尾根コースとの出合でもあるのだが、やはり立入禁
止の札があった。

本来なら三国山と名づけられる三府県境の舩谷山山頂

 この先は兵庫県とは別れて大阪と京都の境界を行くことになる。先程の摂丹国境の庫阪
峠から三国国境の舩谷山、深山山頂への続くこの尾根道は数年前に歩いた事がある。この
辺りになるとまだ当時の記憶と同じ雰囲気を残していて、テープもほとんどないが、人が
歩けるくらいの空間がゆったりと東南東の尾根についている。深山にはシバグリの木が多
いのだが、こちらの尾根にも大きな木が枝を張っていて、足元には青いイガがコロコロと
転がっているのだった。
深山山頂から北尾根。中央が舩谷山、三角の山は683m峰

 深山名物のササはこちら側も枯れていて随分と歩き良くなっている。雑木の隙間からは
亀岡方面の山々が青く霞んでいる。そんな雑木林を抜けると山頂直下の笹原。まったく葉
がない茶色の軸のみで、山頂の深山宮の石のモニュメントが下からも良く見える。一登り
して見慣れた深山の山頂。なんと珍しく人っ子一人いないのだった。

 天気もいいし、今日もラジコンマニアがたむろしているかと思いきや、無人の山頂に少
し拍子抜け。日を避ける術とてない山頂は暑いので、レーダー雨量観測所の蔭に移ってま
ずは食事。缶ビールにミカンやブドウの差し入れで今日も満腹です。(笑)

 澄んだ空の下を期待したが、大気がやや白っぽく、視界がそれ程延びないのが残念だっ
たが、それでも北摂や丹波の主だった山々はなんとか同定できる。多紀アルプス、弥十郎
ヶ岳、大野山、高岳、大船山、羽束山、三草山。遠く白髪岳、西光寺山。東に愛宕山、ポ
ンポン山、半国山、掃雲峰といったところが居並んでいる。いつ来てもいい眺め。そうそ
う、初めてこの眺めを目の前にした時は感動物だったことを思い出す。

 直射日光下は暑いのでレーダー雨量観測所の建物の蔭に避けて食事。その間に数組のパ
ーティが上がって来て賑やかになる。林道ゲートからだと20分もあればハイヒールでも
登れるし、ネットで知ったかドライブがてら、訪れる人も増えたようだ。

 帰路。やはり胎内コグリを見物しないで下りる手はない。というわけで、戻った庫阪峠
からは大正古道を辿る事にする。幸い掲示された板は立入禁止ではなく道を外れるなの注
意書きである。

 最初は少し分かりづらい斜面につけられた引っかきみたい踏み跡だが、次第に明瞭にな
る。所々、丸太で修復がなされてある、東尾根をヘつっていく道である。やや分かり難い
部分もあるが、注意すれば問題はない。やがて右手に上がっていく道を見送ると、右手上
方に長く大きな岩が見えてくる。胎内コグリの岩らしい。

 『コグリ』は『クグリ(潜り)』の転かだろう。西光寺山にも『コグリ岩』というのが
ある。しかし、妙なことを思いついた。昔、鎌倉時代に蒙古が襲来した後、里謡に『ムク
リ、コクリ』が来ると子供をたしなめるものがあったと聞く。『コクリ』即ち高麗のこと
だが、それと関係するのではないかとふと頭を掠めたのだ。もとより何の根拠もない。

胎内コグリの岩の中に置かれた五輪塔に似せた石塔

 さて、胎内コグリ岩は大峰の大普賢岳の麓にある『笙ノ窟』に似て、上の岩が庇の様に
なっており、その中には岩片で五輪塔が造られてあるが、潜れるような岩の隙間は見つか
らなかった。コグリ岩の上を歩いてみる。岩の縁に踏み跡がある。立ち木にすがって岩の
上。見晴らしはそれ程でもなかったが、木の間越しに西尾根が見える。はっきりした踏み
跡はないが岩を降りると、すぐに大正古道に合流した。

 ほとんど等高線沿いといった道。時々、東尾根に上がる踏み跡があるが、立入禁止の札
が白々しい。西は深い斜面で谷底に深山古道が走っているのであろう。この跡、幾つかの
沢を横切って『流れ尾』と合流する。最初はきつい斜面だが徐々に尾根らしくなって、赤
松林の明るい道となる。振り返れば、683m山から舩谷山へ続く稜線が覗く。その一番
低い部分が庫阪峠だ。

 広葉樹の散策路に出て、しばらくすると丹波線bV2の高圧鉄塔下。この辺りから雑木
林が植林帯にとって代わり、深山古道との合流が近いことを示す。やがて幅広の舗装道に
出て思わず往路の舗装路と勘違いしたが、標識には『ヒツ谷』とあった。案内図にあるヒ
ツ谷道のようだ。ここは四差路になっていてコンパスがないと方向感覚が少しずれるよう
な気がする場所。まあ、どの方向に歩いても距離を二の次にすれば管理事務所には行き着
くのだけれど。(笑)
隠し田の跡らしい石積み

 とりあえず、ヒツ谷沿いに舗装路を歩く。ここにも隠し田の名残の石垣がある。そして
200mも行かずに往路のコンクリ林道に合流する。例のミツバチの巣がある物置小屋の
辻であった。

突然、エンジン警告灯が点灯したり、立入禁止で当初の道が辿れなかったりと、数々の齟
齬が生じたけれど、なんとか無事、北摂オフは終了。近場にもいいところがあるのを分か
ってもらえたでしょうか。車も大人しく走ってなんとかディーラまで問題もなく行き着く
ことができて何より。でも、大枚7枚は痛すぎるぅ〜。(T_T)




■同行: 幸さん、スナフキンさん、高やんさん、たらちゃん、たるるさん、なかいさん
     ハム太郎さん、みずたにさん、もぐさん(五十音順)

【タイムチャート】
7:20自宅発
7:50〜8:00千里中央駅ローソン前(集合地)
9:55深山古道入口
10:21扇岩
10:22〜10:32扇ナリ
10:50〜10:55庫阪峠(640m)
11:08〜11:15舩谷山(Ca730m)
11:40〜12:25深山(790.5m (三等三角点)(昼食))
12:42〜12:43舩谷山(Ca730m)
12:52〜12:55庫阪峠(640m)
13:04〜13:15胎内コグリ岩
13:32流れ尾
14:48〜14:52黄葉の散策路出合
14:00〜14:10匹谷道出合
14:20公園管理事務所



深山のデータ
【所在地】大阪府豊能郡能勢町・京都府南丹市(旧園部町)
【標高】790.5m(三等三角点)
【備考】
摂丹山塊の最高峰です。頂上周辺は深山高原と呼ばれる
クマザサの原で高木がない為、摂丹の主だった山が一望
で、遠く播磨、若狭の峰々も望めます。春は笹の新芽、
アセビ、スミレ。秋は広葉樹の黄葉が美しく、また、ラ
ジコン機の操縦場所としてもマニアに人気があります。
尚、三角点は深山宮の正面の灯篭の後ろにあります。
【参考】
2.5万図 『埴生』



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