春冬同居の金剛山

カトラ谷のニリンソウ
平成21年 4月26日(日)
【天候】曇り一時雨
【同行】単独


 春爛漫と思いきや、冬に逆戻りの週末。強風も吹き荒れて東北では大雪で高速道路も通
行止めとか。久しぶりに花を愛でに行った金剛山も山頂は気温4℃と真冬並み。冷たい雨
に手はかじかむわ、濡れるわで散々だったが、ニリンソウの原はしっかり迎えてくれまし
た。

 本来はオフで湖北の方へ向かうはずだったのだけれど、爆弾低気圧による大荒れの天気
の余波が残り、北の方はこの日曜も雨が残るというのでオフは中止。でも朝起きたらいい
天気。折角だからどこか軽く、というわけで2年ぶりの金剛山。なんだかだで家を出たの
は9時半近くと遅い。でも1時間と少しで登山口に着けるのが良い。ありゃ?バス停前の
いつも利用する「お多福」の雨戸が閉められている。気さくなおばあちゃん、どうかした
のだろうか?

 石川を渡った時はまだ高曇りで金剛山の頂まではっきり見えていたのに、歩き始める頃
には灰色の雲が急ぎ足で流れていく。風強く、冬に逆戻りしたようで寒い。それでも季節
は春で、いつものように鉄のゲートを縫ってコンクリ林道を登っていくと、山吹が揺れ、
ハナイカダの花やエンゴサク、キケマンなどが林道の脇に咲き乱れている。コンクリート
の堰堤ではサンキライ(サルトリイバラ)が花をつけている。雌雄別種。意外や初めて見
るものだ。良く見ると緑色で目立たぬがちゃんと花びらがあるではないか。

初めてしげしげと見たサルトリイバラの花

 セト分岐を右に折れてカトラ谷の取り付き。ミソサザイが谷中響き渡る声でせわしく啼
いている。今日ここカトラ谷を訪れたのはサイゴクサバノオに会わんが為。でもなぜか見
つからない。ごっそり盗掘にあって減少したという話を耳にしたが、その所為だろうか。
うまく見つけられなかっただけかもしれないが、以前咲いていた辺りにもなかったのは気
に懸かる。シロバナネコノメソウやチャルメルソウはすぐ見つかるのだが...。

 谷沿いを歩いていると、種が上流から流されてきたのであろうかイチリンソウの蕾がチ
ラホラ目に付く。この辺りで蕾なら上は完全に蕾だろうなあ。やっぱり少し早かったか。
今年は花々の出足が早かったけれど、近頃の寒さで例年と帳尻は合ったみたいだ。途中に
あるイチリンソウの群落も蕾固し。ユキザサもまだまだ蕾が出たてである。

 昨夜来の雨で水量の多くなった滝を左にみて右の支谷に入り、更に左の谷をとる。まも
なく水場。ここで一服して古い砂防堰堤の上に出ると、いよいよニリンソウの群落だ。沢
山の花をつけている一面のニリンソウ畑だが、案の定、陽が射さない所為かほとんど蕾、
あるいは開く一歩手前である。それでもニリンソウは蕾の時はほんのり薄紅を帯びてこれ
はこれで興趣がある。地面すれすれから写真に納めておこう。

カトラ谷の源頭はニリンソウの大群落だ

ほんのりピンクがかる

むむ!清楚!

 上から降りてきた小父さん。ヤマシャクヤクはまだまだ蕾だという。とうとう空も泣き
出したこともあって、ヤマシャクヤクの群落には向わないことにした。もっとも道沿いに
一本、ヤマシャクヤクがあるのだ。その蕾もまだ開花には5日程度はかかるとみた。

 カトラの谷の最上部からはきつい登りが待っている。木々を轟々と怖いくらいに唸らせ
て、風が通り過ぎていく中をシャリバテの体を持ち上げる。T字路を左に進むと国見山の
下の広場。ほとんど人はいない。千早本道と合流する山頂広場は流石に人出があるが、や
はり寒さがこたえたのか人数は少ないようである。金剛桜のつぼみは例の如く固いが枝垂
桜はいい塩梅。5月近くになってもまだ花見が出来るとは。今年は1ヶ月以上もなんだか
んだと桜を見させてもらったことになる。

転法輪寺の枝垂桜

もやに煙る転法輪寺。咲いた桜も震える寒さだ

 お守り売り場に本格的になってきた雨を避けて傘を出し、葛木神社の裏手のカタクリを
見ようと転法輪寺の本堂から左手に廻る。先客のお兄さんが一心不乱に撮影している。し
かしこの天気ではなあ。開花株を撮影に昭和の日に又来るんだとか。熱心です。

 保護の甲斐があったのか昔より個体が増えたようで、この付近でも数十株以上が認めら
れる。うれしいことだ。そんな思いを胸にブナ林の方へぐるり。鳥寄せ場には雨にもかか
わらず、ヤマガラが寄って来ていた。

葛木神社横のブナ林

もやに煙ってブナ林は幻想的な風景を見せる。裏参道から葛木神社を巡り、再び転法輪寺
の境内。濡れずに食事できるこれという場所がなく、そのままピストンで降りることにす
る。結局、カトラ谷の取り付きまで降りてしまい、作業場みたいな青テントがあったので
その下に入って食事。コーヒーを沸かす気もおこらず。(笑)

 皮肉な事に山を降りるとえてして天候が回復する。今日も西から明るくなってきた。千
早本道との合流点。例の如くマツマサで木綿豆腐を二丁買う。一丁は実家へのささやかな
土産だ。今日はこれで一杯。楽しみであります。

 時間があるので、赤坂城址に寄ってみた。現在は千早赤坂中学校の裏手になる。バス停
横の広場に車をとめて、校門へ向う坂道を登っていく。楠正成が鎌倉幕府軍を大いに苦し
めた城砦だが、今は切り残されたような高みに、皇国史観華やかなりし戦前に建てられた
大きな石碑があるのみ。曲輪や堀切などは中学校の建設や田畑の開墾によってほとんど痕
跡をとどめていない。が意外に拾い物だったのは皮肉にも、城跡を潰した棚田の風景であ
る。日本の棚田百選にも大阪代表として能勢の長谷と並んで選ばれた下赤坂の棚田が目の
前に広がったのである。もう一ヶ月もして、水を張られ早苗が風に靡く風景はさぞ優雅だ
ろう。聞くところに依ればここでは赤米も栽培されているのだという。少し歩くと青々と
した金剛山と大和葛城山が悠然と座り、遠く岩湧山や和泉葛城の山々を仰ぐ事が出来た。

棚田百選にも選ばれた下赤坂の棚田

 春と冬が同居する金剛山。里に降りてくると蛙の鳴く声がして、やっぱり暦どおりの春
だったのでした。



【タイムチャート】
9:20自宅発
10:30〜10:35金剛山登山口バス停横(駐車地)
11:10セト分岐
11:53〜11:54水場
12:36〜13:20金剛山頂付近
14:10〜14:20セト分岐
14:50金剛山登山口バス停横(駐車地)



金剛山のデータ
【所在地】大阪府南河内郡千早赤阪村、奈良県御所市
【標高】1,125m
【備考】 大阪府と奈良県の県境にあって大阪府の最高峰で、金剛
生駒紀泉国定公園に指定されています。大阪全域から葛
城山と並んで望むことが出来ます。山上に香楠荘があり
宿泊も可能です。近鉄富田林駅、南海河内長野駅からバ
ス便があります。
【参考】
金剛葛城自然歩道ダイヤモンドトレール地図



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