駒ヶ岳〜緑溢れる癒しのブナ尾根を往く

明神池付近の緑が濃くなったブナ林
平成21年 6月27日(土)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】別掲


 高島トレイルの中でも屈指のブナ林がある若狭駒ヶ岳。過去2度訪れているが、春から
初夏の季節にはまだ訪ねたことがない。緑溢れる尾根も格別であろうという事で、トレイ
ルの歩き残しを埋めるべく横谷越から辿り中小屋集落へ降りるコースを仲間で歩いてみた。
静かな尾根は、途中、単独小父さんと遭ったのみで想像以上の癒しの森でした。

 高島トレイルを歩くには車2台がないと難しいことが多い。今回は中小屋集落の木地山
BSに1台をデポして、横谷越から出発という標高差節約コース。暑い季節なのと、何よ
りズボラ山行が身についてしまっているのでお許しあれ。横谷林道を走るのは2度目。先
日の雨で細かい落石はあるが、乗越部分以外は舗装路だから安心だ。その林道を走ってい
る時である。「ホイホイホイ」と綺麗な声が杉林の奥から聞こえてくる。かつて頭巾山で
一度聞いた事があるサンコウチョウの声だ。車外へ飛び出したMさん、Tちゃん、姿を目
撃したらしい。結構大きな鳥なので見つけやすかったのかもしれない。

横谷越の登山口。
この向かいは行者山の登山口

 横谷越。前回と同じ場所に車を置く。少し戻って左の行者山の登山口を過ぎた辺りの切
通しの右手。2m位の土の崖が取付きである。泥土もものかわ、滑りながらも上がってい
くと、直ぐに雑木の生えた斜面となって歩き易くなるが、しばらくは急登だ。風が通らず
暑い。今年一番の暑さを感じる。

 ユズリハが繁茂する斜面まで来るとやや緩やか。風も少し吹き始めて助かる。杉林にな
ると初めて道標が現れた。駒ヶ岳4km、横谷越1.7km。山道は西寄りから北寄りに
変わる。この後も道標は方向が変わる所に的確に設置されてあったのはなかなか珍しい事
だ。(笑)

 歩き始めて40分くらい。何だか丸いイメージがする693mピークは江若国境の中央
分水嶺にある明るい峰だ。ここにも道標があって、それが指し示す西の方角にはこれから
踏む予定の744mピークが見える。その前に涼を入れる為、しばらく小休止だ。

 693mピークを降りるとシダとトリカブトの原となって北側は手入れの行き届いた植
林。ここは以前、明神谷の林道を遡ってきて、途中から傾斜の緩い斜面を見定めて尾根に
上がった場所なので良く覚えている。あの時はトリカブトの茄子紺の花が風に揺れている
季節であった。

 一旦下ってゆるりと登り返すと744mピークで池原山分岐がある。始めて来た時はテ
ープが巻かれているだけで、池原山への踏み跡も少し薄かったけれど、今は駒ヶ岳まで2.
9kmと刻まれた立派な道標まである。ここまで来るともう高原状となって大きな起伏も
ない。まもなく左から林道らしきものが現れる。そしてこの辺りでも目立つ大きなブナが
並ぶ場所に出る。さあここからが本日のハイライト、駒ヶ岳のブナ林である。キャンプ場
を造った際に整備したらしい遊歩道の階段の痕跡を伝いながら往くと、道の両側はブナ並
木といってもいいほど等間隔に、緑が濃くなったブナが佇立している。

明るいブナ林を歩く筆者(画像提供:Tちゃん)

 744m標高点と682m標高点の中間点付近。尾根の北にある池は明神池と呼ぶらし
い。池に被さるような立ち木の枝にはモリアオガエルの卵塊が鈴なりだが、池は梅雨時だ
というのに水がかなり減っていて、孵化したオタマジャクシがうまく水中に落ちることが
出来るかどうかは、これからの雨の降り具合に左右されそうだ。この池の周りも遊歩道の
跡があり、それをぐるりと巡って西側に出たブナの根方で昼食とする。意外に蝿などの飛
ぶ虫が少ないので助かる。

 ロクロ橋分岐には以前にはなかった派手なピンクのペンキがテープの代わりに塗られて
いる。何のことやら「長竹の森」と木の幹にマジック書きがある。降りていく道を少し覗
くと斜面の木の幹にも派手なペンキ。ちょっとやりすぎだなあと思うのは小生だけだろう
か。(-_-#) 縦走路に戻ると向こうから単独小父さん。今日遭った唯一人の登山者である。

 なんだかさっきから手持ち無沙汰だな、などと感じていたことだが、あれ?広島の山で
手に入れた自然木の杖を昼食場所で置き忘れたらしい。出立時にはいつも忘れ物はないか
と指差点呼までするのだがなあ。自然木なので周囲と紛れて気がつかなかったのか。単独
行なら取りに戻っていたかもしれないが、もう往復4、50分は要する場所まで来てしま
っていたし、残念、諦める。(^^;
駒ヶ越付近のブナ林

 尾根は次第に北に方向を変えて、枯れたナラの大木のある682m標高点を過ぎる。こ
の付近のブナの林も素晴らしい。道も遊歩道の名残で林道並みに広い。今は峠道が廃道に
なったような駒ヶ越を過ぎてキャンプ場分岐を見過ごし、Ca750mピークの登りにかか
る。遊歩道を整備した時に植栽したらしい匍匐性の針葉樹の横を登る。緩斜面を進んです
ぐに木地山峠分岐。そこから凡そ30mで若狭駒ヶ岳に行き着く。

 何年かぶりの駒ヶ岳山頂には誰もいない。展望も東側が開けているのみでそれ以外は見
晴らせないが、白っぽい石が露出した周りには何本かのブナが立ち、憩うには良い所だ。
山頂の北の方にもテープがあるが、閉鎖されたキャンプ場かそれへの取付き道路にでも下
りていくのかもしれない。気温は24℃。Mさん持参のコーヒーでアイスコーヒーブレー
ク。旨い。

 しばらく憩ったところで駒ヶ岳の山頂を後にして、30mほど引き返し、木地山峠方面
を示す道標に従って西尾根を辿る。雪の所為で曲った細い木が多い尾根は適度にオフィシ
ャルテープもあって歩きやすい。ヤマボウシがまだ咲いており、二週前に大御影山の頂に
あったのと同じ赤いヤマボウシが一際目立つ。

駒ヶ岳西尾根はこんな感じ

 ところで南の焼尾谷方面へ張り出す尾根には大抵ペンキが塗られている。サブコースが
多くあるようだ。今回下山に使った焼尾の下降点(道標)まで来る間にも確か2箇所ペン
キがあったように思う。それもピンクなど派手なペンキが使われているのはいただけない。
焼尾の下降点にもそのペンキはあって、立ち木に「長竹の森」とマジック書きがあるのは
何だろう。前述の如く、駒ヶ岳南尾根のロクロ橋分岐にも同じ表記があったからどこかの
山歩きの会だろうか。こんなローカルなマジック書きはどうみてもエチケット違反だ。

焼尾谷への下山口

 さて、焼尾を下る道はもっとマイナーでは?と予想していたけれど、何の心配もない一
級の山道である。そしてまもなく右手に林道のような整地帯まで現れた。しかし、どうも
林道ではなさそうで防火帯ではないかと思われる。山道はその防火帯に並行して林の中を
緩やかに降りて行く。途中に大意「広い道を行かず山道を行く」と書かれたかすれたプレ
ートが転がっていたり、方向が変わる要所には必ずオフィシャル道標があって誰でも安心
して歩けそうだ。

 674m標高点で南に方向を変えると周囲は植林帯となっていく。傾斜の緩んだ台地に
は、根が大岩を抱え込んだブナがある。その先で尾根は二俣になっており、しかもどちら
にもテープがあるので注意。ただし中小屋を示す新しい私製道標に従えば大丈夫だ。

大きな岩を抱いたブナ

 杣道の最後の下りはジグザグに高度を下げていく。開けた部分がないので風が通りにく
く、こちらを登りに使うとかなり暑そうだ。油断すると滑りそうな土の斜面。足元を確か
めながらも左右から次第に沢音が高まってくる。そうして植林下、尾根の先端まで忠実に
降りていくと沢に丸木橋が架かかっていて、明瞭な道に合流する。道標があって、県境尾
根2.9km、駒ヶ岳3.5km。駒ヶ岳に向かう焼尾東谷の方を進むと、多分、駒ヶ岳
南尾根にあった轆轤橋分岐に出るのであろうが、この道が本来の駒ヶ越の道で、途中で東
に折れて、一気に尾根へ上がるようになったのではないかと思われるがいかがだろうか?

焼尾谷の合流点に降りてきた

 桧林の中は良く手入れされているので明るい。再び沢にかかった少し腐りかけの小橋
をおっかなビックリ渡ると中小屋の集落の民家が見えてきた。だが最後の難関は麻生川。
左に行っても右に行っても直ぐには渡れないみたい。真ん中は鹿よけネットで囲われた
畑。そこを通らないと橋は渡れない。入ってもいいのかな?(笑)

中小屋登山口と鉄橋.畑の中を歩くので
道標がなければとても入れません(笑)

 石で押さえたネットを潜ると麻生川に架かった鉄橋で対岸になんと登山口の案内がある。
「ええ?これが正規のコース?」案内板には私有地で好意で通らせてもらっているので扉
などきっちりして通れなどと書かれてある。掲示がなければ誰もこんな所からは登らんだ
ろうなあ。(笑) そこは車をデポしたまん前。木地山バス停の前である。高島市営バスは
1時間後しか来ないらしい。

 後は横谷越まで車を回収に向かうだけ。朝聞こえていたサンコウチョウの声が同じ辺り
でまた聞こえてくる。朝と同じ鳥なのだろうか?癒しの森を歩いて未踏部分がまた少し減
った高島トレイル。今度は秋にでも木地山峠まで歩かねば。(笑)



■同行 たらちゃん、みずたにさん(五十音順)

【タイムチャート】
7:00千里中央(集合地)
9:12木地山BS前(車デポ地)
9:30〜9:40横谷越(駐車地)
10:21〜10:31693mピーク
11:06〜11:07744mピーク(池谷山分岐)
11:11〜11:20大ブナ(小休止)
11:35〜12:05明神池の西畔付近(昼食)
12:16轆轤橋コース分岐
12:27682m標高点
12:38駒ヶ越
12:49〜13:05駒ヶ岳(780.1m(三等三角点))
13:27中小屋コース分岐
13:39674m標高点
14:17焼尾谷出合
14:34木地山BS



駒ヶ岳のデータ
【所在地】福井県小浜市、遠敷郡若狭町、滋賀県高島市朽木
【標高】780.1m(三等三角点)
【備考】 百里ヶ岳から三十三間山に到る江若国境山塊のほぼ中間
に位置する峰です。全山ほぼ雑木に覆われ、特に江若国
境尾根はブナを中心とする林で、春の若緑、秋の黄葉は
見事です。登山コースは福井県側の河内、滋賀県側の木
地山からがメインで、静かな山歩きが楽しめます。尚、
アプローチが不便な為、マイカーが無難です。
【参考】
2.5万図『熊川』



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