赤ゾレ山から馬駈ヶ場〜静かな台高を巡る

台高縦走路からやや離れている赤ゾレ山山頂
平成21年 6月6日(土)
【天候】小雨のち曇り
【同行】別掲


 2年前のこの時期にも歩いた事のある木梶山周辺。台高主脈から派生した山域なので、
訪れる人も少なく、それだけに手垢のついていない静かな山歩きを楽しめる。そして梅雨
前の今の時期はシロヤシオの花も咲き、新緑とあいまって山が最も華やぐ時期でもある。
静けさを求めて、再び梅雨前のひと時を楽しむべく歩いてきた。

 5月から梅雨前にかけてのこの時期は山歩きの適期でもある。深まりつつある緑と色と
りどりの花々、そして澄んだ青空と乾いた空気。だがそれと休日とがなかなか一致しない
もどかしさがある。今日もどんよりとした曇り空。大阪近辺では青空も垣間見えたが、金
剛山はガスを被り、案の定、奈良の山間では傘無しでは歩けないほどの雨である。単独行
なら、多分、山行きは中止しているだろうが、何人か集まると「何とかなるんじゃないの」
の意気でとりあえずは登山口へ。とりあえず傘をさしてザックカバーとスパッツ姿に。そ
うするとみんなの一念が天をも動かしたか、取付きに着く頃には上がってしまったからあ
ーら不思議。どんな神通力があるんだろう。(笑)

 今回はMさんの四駆なので、木梶三滝の駐車地から更に林道を入って、鳴滝近くの広場
に車ではいることが出来た。ただ轍が深く掘れた部分もあるダート道だから、普通車では
少々つらいだろう。豪快に落ちる鳴滝を左に見て、橋を渡って20分も歩くと、地蔵谷と
木梶谷の合流点に出る。地蔵谷の片方が山が皆伐されて丸坊主。その不要木が大岩の横に
山積みされている。懸念した水量は平素とほとんど変わらず、濁りもない。ちょっぴりバ
シャバシャやって対岸へ移る。この付近どこが取り付きだかはっきりしない。ま、適当に
高みに取りつけばいいだろう。下る時はとてもこんな風には行かないが、登りの時は高い
方へ高い方へ行けばいいのだから、体はしんどいが頭の方は楽。(笑)

 湿って滑るのでいささか体力を消耗。それを尻目にTちゃんはぐんぐん登っていく。え
らい体力だ。(笑) 標高差100m程度登った頃だろうか、大きなブナの木の下が少し平
坦なので一息入れる。雨は上がったけれどその代わり蒸し暑くなってきた。それに勢いを
得たのか虫がわんさか。ありゃあ、地面に置いたザックに1o〜2mmくらいのぬかのよう
な蚊だか蝿だかわからん虫がわんわん飛び回っている。そうだ、もう虫の季節なのだった。
慌てて虫除けを噴霧。長居は無用とばかり、ザックを背負いなおす。「ブラブラブ〜ラ、
ぶら下げて〜、虫コナーズウ、見えない網〜どぉ〜♪」欲しいなあ。そろそろ団扇もなあ。

 植林と雑木の境目にはいつの間にかテープが現れる。地面には赤白杭。再び傾斜を増し
た斜面を進んで行くと徐々に尾根らしくなり、右手は沢の源頭みたいな柔らかい雑木林だ。
次いでシャクナゲの林が現れる。花ガラが少なく、今年はあんまり花はつけなかったよう
である。
1176mピーク名物?サルノコシカケ

 急坂を登りきると1176m標高点ピーク。見覚えのある巨大なサルノコシカケがある。
今日は雨で濡れていて残念ながら坐れない。高さといい広さといい、丁度いい椅子代わり
なんだがなあ。そうしてこの付近からだろうかシロヤシオの大木が現れるのは。花はもう
ほとんどなく、ちらほら咲き残っているくらいで、代わって目立つはサラサドウダンの紅
白の縞模様だ。

雨に濡れるサラサドウダン

ガスに煙るブナの林(赤ゾレ山山頂手前にて)

 緩急をつけながら尾根は高度を重ねていき、ガスが漂う中にブナやヒメザサが出てくる
と赤ゾレの山頂は近い。次第に明快になった踏み跡を辿った山頂はツクバネウツギや背の
低いカラマツがちらほら立つ草叢の明るい場所で展望もすこぶる良いのだが、今日はガス
が流れて明神平一体の展望は皆無。かろうじて東の国見山の8合目辺りまでが望める程度
なので、一呼吸入れたあとは東向きに降りて池の端に出る。ここから僅かに南に行くと台
高の縦走路に出会う。その縦走路の南にも池がある。赤ゾレ山に池があるのは知っていた
が、二つもあるとは寡聞ながら知らなかった。こちらは木に囲まれて山の中の池という感
じである。畦道ほどのはっきりした縦走道には、ヒメハギの花がレンゲと同じ色で目立っ
ている。その他に多いのはカマツカ。小さいが白くて典型的なバラ科の花をつけている。

赤ゾレ山の南斜面の池

 樹林の中を一登り。朱色に燃えたように盛りを迎えているヤマツツジの生える馬駈ヶ辻
で主脈を離れて左(東)に折れる。ここからしばらくはほとんど高低のないブナやミズナ
ラ、イタヤメイゲツのプロムナードだ。人間を恐れもせず、ホオジロが孤木の天辺で「一
筆啓上・・・」とさえずっている。頃合いも良し。馬駈ヶ辻(1320m)と馬駈ヶ場(
1316m)のほぼ中間地点で昼食。背の低いレンゲツツジが盛りの場所である。ところ
で、さっきから変な声が聞こえていたがなんだったのだろうか?獣の声には間違いないと
ころだが、叫び声か鳴き声か。犬かサルか鳥か?単独だったら不気味だったであろう。

 さて、今日は馬駈ヶ場からはバリエーションルート。昼食時に決めた通り、東へは向わ
ずに北に派生する尾根を歩いてみようということになる。残置テープ類はなく、踏み跡も
ほとんどないが、糞が所々に転がっているのを見ると、鹿が歩くのだろう、うっすら獣道
らしきものは認められる。しかし、なんといってもヤブがないので助かる。そしてここは
何よりシロヤシオ尾根とも呼ぶべき場所。樹齢100年は軽く凌駕するような古木がまだ
少し花をつけて残っていてくれる。右手が開けると、以前に歩いた木梶山に続く稜線。遠
くに高見山のどっしりとした台形が望まれた。

馬駈ヶ場の北尾根はこんな感じ

 尾根を忠実に進んで行くと、この尾根筋で一番位置取りが難しい場所に出る。台地状の
尾根なのでストンと切れ落ちて尾根が不明瞭になり、しかも尾根は手のひら状に三つに分
かれるのだ。最も左の尾根に出ねばならないが、中央の尾根に乗ってしまい、登り返すの
がシャクなので滑る急斜面を左にトラバースしてゆく。その先、本当に尾根に出るのかと
いぶかしみつつ急降下すると、地形図どおりの非常に明快な尾根筋になった。10mほど
登り返すとCa1200mのピーク。コンクリート杭があり、なんとテープが現れた。

 Ca1200mピークでやや左方向(北北西)に進路を変える。適度にテープもあり、ほ
ぼ真っ直ぐ忠実に進んでいけばよい。途中にはヒメシャラの純林やブナの大木が次々と現
れる。

馬駈ヶ場の北尾根はこんな感じ


苔むしたブナ

 急斜面と緩斜面を繰り返す。下るに従って尾根筋は単調な植林となって面白みがない。
しかも伐採木だかを搬出せずほったらかしで、すこぶる歩きにくいのが難点だ。

ひたすら下を目指すのみ。次第に両側から聞こえてくる水音が高くなってくると、植林を
透かして右手尾根下に白い流れも望めるようになる。尾根は左右の谷の合流点で終わって
いるので、突端付近は滑りやすい急斜面。歩きやすい所を探しながら三点確保で最後は左
手の木原谷へ下ると、古いそま道だろうか、谷には良く踏まれたいい道があるではないか。
そこへ降り立ってホット一息。

 木原谷と合流する谷を渡る。トリカブトやハシリドコロがそこいらじゅうに。毒草だら
けや。(笑) 後は木梶谷本流の右岸のはっきりした道を下るのみ。300mも下ると、見
覚えのある新宮山彦の会が立てた木梶山登山口の標識の立つ場所だった。

 スタート地点に戻ってコーヒーブレーク。約4時間半。青空も見え始めている。朝から
こんなだったらと思うがそうそうはうまく行かぬ。尾根では涼しいくらいだったし、歩い
ている間、雨が降らなかっただけでも今日は御の字だ。20分ほど歩いて車の駐車地点。
榛原駅で2名と別れて、途中の吐山のスズラン群生地に寄る。野生のスズランは初見参。
盛りはすぎていたけれどそれでも杉林の下で小さな釣鐘状の花を鈴なりにし、馥郁とした
甘い香りを漂わせていた。可憐に見えるがこれでも毒草なのだそうである。何事も見かけ
によらぬもの。それを知ってか知らずか、アマガエルがチョコンと葉の上に鎮座していた。

ニホンスズラン(吐山スズラン群生地にて)

 思いがけずコケイランも見ることも出来たし(私が近畿で見たのは初めて)、ヤシャビ
シャクも花はないが健在だったし、梅雨入り前の実りある台高の歩きでありました。

足場の悪い斜面に咲いていたコケイラン



■同行 北山さん、たらちゃん、みずたにさん(五十音順)


【タイムチャート】
7:00千里中央(集合地)
9:20〜9:26木梶林道(駐車地)
9:44904m標高点(渡河地点)
10:05〜10:10小休止
10:42〜10:481,176mピーク
11:20赤ゾレ山(Ca1,300m)
11:37馬駈ヶ辻(1,320m)
11:55〜12:20馬駈ヶ辻と馬駈ヶ場中間点(昼食)
12:31馬駈ヶ場(1,316m
13:05木原谷出合
13:55木梶山登山口
14:05〜14:25コーヒーブレーク
14:40木梶林道(駐車地)



 赤ゾレ山のデータ
【所在地】三重県松阪市(旧飯高町)、奈良県吉野郡東吉野村
【標高】Ca1,300m
【備考】 台高山脈主稜上、国見山と伊勢辻山の間に位置するの一
峰です。山腹にザレた部分があるので、山名の由来にな
ったと思われます。また南側に小さな池が二つあり、夏
でも枯れないようです。
【参考】
2.5万図『大豆生』



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