伊勢山〜播磨の面白低山

284mピーク北方尾根から伊勢山と伊勢山西峰(左)
平成21年 1月17日(土)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 JR山陽線に乗っていると、播磨の辺りの平野のあちこちから、三角形の山が湧き出す
ようにニョキニョキと立ち上がっているのに気付く。その多くは低木が主で緑に覆われた
感じはない。それは岩が主で地味が痩せているからだろう。今日のオフの舞台の伊勢山も
そんな感じのする低山で、地形図を見ると大きな岩壁の印がある。実際、西峰には岩屋が
あるのだという。

 今日は風も収まり、山日和。定期券があるので阪急で三ノ宮まで出て、JRに乗り換え
る。すでにDちゃんが電車待ち、後からKさんも現れた。ホームに滑り込んだ新快速には
他のオフ参加者も乗車していて、終点の姫路駅では11名全員が顔を見せる。

 9:10の緑台行の神姫バス。乗客は我々の他は今日から始まるセンター試験の受験者
と、養護学校の関係者らしい人が主で、緑台まで乗ったのは我々だけである。途中、中世
ヨーロッパの城みたいな建物が小山の上に忽然と出現したのには驚いた。まだ建設中らし
かったが、凱旋門みたいな建物もある。一体全体なんだろう。太陽公園とあったが帰宅し
て調べてみると一種のテーマパークなのだそうだ。城はノイシュヴァンシュタイン城であ
る。

 緑台はその名で分かるように新興住宅地。といっても造成されて10年以上にはなる古
株だろう。ほとんど水の枯れた川沿いに取付け道路を直進すると、すぐにバスの転回場の
広場で、乗ってきたバスが時間待ちをしている。トイレの前の案内図には『打越木もれ日
の森』の中心『ヤマザクラ広場』とある。そこから北の方を眺めると小さいが尖った峰が
目に入る。あれが伊勢山の西峰なのだそうだ。

『里山南コース』の遊歩道を往く

 トイレの前から西へ進む。『里山南コース』の表示がある。展望広場へは1.3km。
ヤブツバキ、クマノミズキ、コナラ、ヒサカキなどが混ざった明るい雑木林、下草はベニ
シダだそうである。浅い谷沿いの道は自然に左に折れて、ゆっくりと登り基調。岩がちの
尾根道になると間もなく峰相山との分岐だ。この峰相山の近くにはとんがり山があって縦
走するとおもしろいのだそうだが、まあ、新しい所へ行くとまた面白い所が出てきてしま
うから厄介だ。(笑) 

 ヒサカキやヤブツバキも多い里山の道は良く整備され歩き易い。時折、西の麓の碁盤目
の様な田の間に上伊勢の集落が見える。右前方に284mピークの盛り上がり。一旦、鞍
部に降りて登り返すと、峰相山分岐から10分位で案内標識の立つ284mピーク。展望
広場へは南方向へ100mほどだ。

 小高い所に木製の展望台があって、低いが変化のある山並みの中の主峰である伊勢山本
峰や緑台の住宅街が指呼である。テーブルにジモティーらしい小父さんが一人。折角、静
かに山並みを楽しんでいたのに、10人からの賑やかな連中に静寂を乱されて、さぞや迷
惑だったに違いない。それでも伊勢山へのコースの様子を親切に教えて頂いた。

 展望台を後にして284mピークに戻り北へ進む。ここの下りが撮影ポイント。伊勢山
と西峰が並んで目の前にある。それを目指してジグザグに下りていくと、小さな鞍部には
小父さんに教えてもらった通りベンチがある。右に行く道が明快だが、これはスタート地
点のヤマザクラ広場に戻るものらしく、聞いたとおり桧林の中に直進する踏み跡があるの
でそれを辿る。するとすぐに猛烈な劇下りに出くわした。果たしてこの道でいいの?と思
われるほどだけれど、ピンクのPPテープと虎ロープ迄あるので間違いはなかろう。油断
すると2、3m滑り落ちるので、立ち木にすがりつつ30m程を慎重に下り、やっとの事
で平坦になると、左にいい巻き道がある。「里山コースではありません」と注意書きがあ
ったが、この道はどこへ繋がっているのだろうか? 

 ウラジロやコシダが繁って分かり難い部分もあるがなだらかな尾根道である。だが安心
していると危ない。シダの繁った中に朽ちた丸木橋があるのだ。深さ1m程度の溝。小生
より重いDちゃんが通れたので大丈夫とは思っても、たわむと気持ちが悪いものだ。(笑)
辺りは桧林。等高線とほぼ並行するような小道だが、進むうちに怪しくなってきたらしい。
先行するMOさんの行き足が停まった。伊勢山方向は右前方なので右の高みに登れば何と
かなるのだが何せ急斜面だ。というわけで引き返して様子を見ようという事になる。する
とさっきの丸木橋の手前に、少しシダに隠れているがしっかりした踏み跡がある。南から
来ると右側に戻るようにあるから少々見落とし易い感じがする。小尾根に出るとプロムナ
ードみたいないい道。ともあれ、やれやれ。(笑)

 再び分岐に出くわす。明快な道は右へ。直進路はやや踏み跡が薄い。分岐に赤プラ杭が
あって、『→イセ山』とある。この右の道が正解だったのだが、何せ初めての道。伊勢山
本峰にダイレクトに行ってしまうのではないかと思い直進しのである。登るに従って踏み
跡は怪しくなる。それでも何となくうっすらとした跡があり、たまに歩く人があるようだ。
その証拠に古くなって色がくすんだ紐が疎らだが結ばれているのを見つける。しかも下草
もなく何処でも歩ける。一旦緩まった斜面は右に高度を上げてゆく。しかしその傾斜は徐
々に半端でなくなってゆく。胸突き八丁とはこのことだ。伊勢山西峰の西側は岸壁だとM
さんが脅す。まあ、その時は巻き道があろうとタカをくくって、先人のヒモを目印にジグ
ザグを切って高みを目指す。次第に尾根らしいものも見えてくるが小さな露岩はあるもの
の岸壁らしきものは見えてこない。ただザレた斜面は登りにくい。ずりずり滑りながらも
ようやく山頂に出る。登りついた所が331mの標高点ピークで良かった。岸壁は50m
ほど北側の神座の窟とその南の岩の西側で、オーバーハングなどもあってあれじゃとても
登れんなあ。(^^:
神座の窟がある岩壁。あの下に出たらとても登れません(笑)

 ふうふう言いながら登った甲斐のある大展望である。緑台の住宅街、西は上伊勢の集落。
兵庫県の緑の公社が伊勢山の西の麓を整備してそこから登るのが最短距離らしい。今もな
んだか重機が入っているよう。砕石場もすぐ側に見えている。そうこうする内に正規道に
迂回したMOさんが上がってくる。西から登る途中で大きく南へ回りこんだのだという。
が、ほとんどのメンバは道なき道を登ったようだ。(笑) と、北のオーバーハングの岩に
MIさんの姿。展望台に寄らずに284mピークから先行していたのだが、だいぶ待ちく
たびれたみたいだ。(笑)
上部から神座の窟の内部が覗ける

 「濡れた岩には注意云々」の注意書きや云われが記された説明板を見る。今日の見せ場
の神座の窟は尾根道から分かれ、空木城址への道をすぐ左へ分かれるとある。岩で出来た
巨大なカボチャの中身をくりぬいたみたいな感じで、岩と岩の狭い間隙に体をこじらせて
入ると高さ3m位の空間が現れる。西側が窓のように開いていて上伊勢の集落が見通せる
という不思議な形状をしている。なかなか人間わざでは出来ない造形である。西日が射し
込めば中が赤く染まって西方浄土みたいになるのかもしれない。今の人間がこう感じるの
だから、昔の人はそれ以上に神威を感じたに違いない。岩棚には弘法大師らしい頭を丸め
た結跏趺坐の石仏ほか、役行者、不動明王の三体の石仏が鎮座している。賽銭入れだった
らしいタコ漁に使うような素焼きの壺が割れて転がっている。戻ろうとするとSさんが天
井部分を見上げている。その方向に目をやると直径40cm位の大きなスズメバチの巣だ。
冬だからいいようなものの夏や秋だったらワンワン飛び交っていて、とても窟に入れたも
のではないだろう。何といっても里山専門の山屋にとっては蜂が一番の大敵だ。

神座の窟から上伊勢の集落
西日が射し込むと西方浄土になるのだろうか?

岩段に祀られた役行者石像

 空木城址は往復30分程度らしいが今回はパスして、伊勢山本峰への道に戻り、しばら
く下ると鞍部だ。南方向へ沢コースの分岐があって、立ち木に4つ、目印のテープが巻か
れている。やや南向き、立ち木で風もないのでここで昼食。まあ誰も来ぬだろうと、踏み
跡の周りに陣取る。ここが一番平坦なのだ。(笑)

 小一時間で食事を切り上げて腰を上げる。鞍部から伊勢山本峰まではほんのしばらく。
斜面を登るに従って左手(北)が開けてきて、三角形が見事な明神山の姿がある。その向
こうに少し雪を被っているようなのは雪彦山だろうか。一際大きな山塊は笠形山のように
思える。

 伊勢山本峰はあまり展望が良くないと聞いていたけれど本当だ。南向きの摩滅した三角
点。幾つかの山名プレート。それでも小さな広場になっていて記念写真撮るには手頃です。

 南に向かって立ち木の間に踏み跡がある。良く見ると東尾根コースと小さな私製プレー
トに気付く。西尾根コースほど明快じゃないがそれでも十分ハイウェイ。緩やかな尾根に
は所々に露岩があってそのどれもが展望岩で、こちら側から見えるのは今は姫路市の一部
になっている夢前町である。今は広島へ移ったOさんの生まれ故郷の町である。

 水平に近くなったり、劇下りになったりを繰り返しながら高度を下げていく。表面がザ
レ気味なので下りは非常に滑りやすい。ロープがセットされていてありがたい。以前、劇
下りなので”正露丸”尾根とか馬鹿なことを云っていたものだが、ここは”カッパエビセ
ン”尾根と呼ぼう。その心は?「やめられない、とまらない」からだ。(笑)

 298mピークを過ぎると大きな下り。ここも”カッパエビセン斜面”だ。一旦緩むと
再び劇下りだ。立ち木に乾いた泥が付着しているのに気付いたら、やっぱりヌタ場があっ
た。伊勢山付近に疎らに糞があったので、さしずめ「鹿の湯」といったところか。(笑)

 Ca200mの鞍部にはヤマザクラ広場への近道1kmの標識がある。どうも古い道のよ
うだ。地形図を見ると、夢前町からここを抜けて西へ辿っていくと、往路に見かけた劇下
りの先にあった平坦路に続くように思える。

 ここから登り返し。80mほど高度を稼ぐ必要がある。地形図では登った先に露岩のマ
ークがあるが、確かに長さ50mほどの岩尾根が現れた。規模は小さいが七種薬師の地獄
鎌尾根を思い出す。馬の背というほど鋭いこともなく、岩質は小野アルプスの紅岩等と同
じでザラザラしているので全く危険感はない。振り向くと伊勢山本峰と西峰、往路の西尾
根が見渡せ気分がいい。
伊勢山東尾根コースの岩尾根。奥はCa260m峰

 石庭のように岩が配されたCa270mピークを越えると四等三角点『奥山』がある28
0mピークにやってくる。尾根はここで南東から南南西にほぼ90度向きを変える。雑木
の薄くなった辺りからバスの転回場でもあるヤマザクラ広場が眺められ、往路の尾根筋も
はっきり捕らえられる。流石、里山。イヌの鳴き声も上がってくる。
 急な斜面、平坦を繰り返して徐々に高度を落とす。左右に見える民家の屋根も大分大き
くなってくる。そして約50m程度の水平な尾根を通過するとやがてCa170mの鞍部だ。

奥山(280m)の南からヤマザクラ広場と往路の稜線
左にとんがり山が覗く

 このCa170mの鞍部には多分、里へ下る道があると考えていたが、案の定、東尾根コ
ースはここで里に下りている。直進する明確な踏み跡もあるが、枯れ木を集めてストップ
印。ここは素直に道標に従って右(西)へ。住宅街へは約100mの標高差である。昔な
がら峠道に良くあるジグザグに付けられた踏み跡からして、ここも昔からの道なのかもし
れない。
素晴らしい雑木林の中を緑台中バス停へ下りる

 二次林のいい雑木林だ。厚いおちばで下草はほとんどない。幾つも枝道があるのは里山
ならではである。徐々に道は広くなって林道然としてくると、右手に砂防堤が現れて、H
Pで見た事のあるコンクリートのU字溝と木製階段が民家横の道路へのつなぎとしてある。
こちらから登っていく場合、少しわかり難いが、電柱の「緑台1−26」の標識が目印に
なろう。

緑台の住宅街へ下りてきた
奥の右側にコンクリートのU字溝が積まれてある

 緑台の中央を流れる川沿いのバス道までは直ぐ。バスは生憎出たばかりで1時間近く待
たねばならない。始発場所まで戻って、湯を沸かしてコーヒーを飲んだりおやつを食べた
り、ラジバンダリ。コーヒーを飲んでおしゃべりしている間にバスが来る。

 大方の人は大阪に出て何回目かの新年会。私は所要があるので残念ながら不参加。後で
聞くと、またまた二次会のカラオケで盛り上がった由。まあ、皆さん、元気です。(笑)



■同行 あかげらさん、北山さん、呉春さん、すみれちゃん、だめちゃん、
    二輪草さん夫妻、ハム太郎さん、水谷さん、もぐさん

【タイムチャート】
9:50緑台バス停(神姫バス)
9:55〜10:00バス回転場
10:24峰相山分岐
10:37〜10:38284mピーク
10:40〜10:45展望広場
10:46284mピーク
10:56ベンチのある鞍部
11:45〜11:52伊勢山西峰(316m)
11:56〜12:05神座の窟
12:06〜12:35沢コース分岐(昼食)
12:45〜12:50伊勢山(353m 三等三角点)
13:10298mピーク
13:23ヤマザクラ広場への近道分岐のある鞍部
13:48〜13:50点名『奥山』(280.1m 四等三角点)
13:56Ca260mピーク
14:07Ca190mの鞍部
14:16東尾根コース登山口
14:30緑台バス停(神姫バス)



伊勢山のデータ
【所在地】兵庫県姫路市
【標高】353.0m(三等三角点)
【備考】 姫路市の北方、書写山の西方に位置する里山です。4
00m足らずの低山ですが、露岩の山で西峰と称され
る支峰には「神座の窟」といわれる岩屋があって、役
行者他の石仏が安置されています。姫路駅から神姫バ
ス緑台行きが便利です。
【参考】
2.5万図『姫路北部』『安志』『竜野』



■伊勢山のGPS軌跡(罫線は10秒単位でほぼ300mです)
国土地理院の地図閲覧サービス、カシミールを利用しました

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