半国山〜11年ぶりの記憶なく

655mピークへの尾根道から雑木越しに半国山
平成21年 3月 1日(日)
【天候】晴れ
【同行】単独


 もう昔々のお話になってしまうが、山を歩き始めるきっかけとなったのは北摂随一の名
山剣尾山だ。R173を車で走っていてふと目に付いた登山口の標識。次の休みの日が天
気だったので、ふと行ってみる気になったのが運の尽き?で今日に至っている。その時は
確か運動靴にジーンズ地の小さなザックといういでたちだったように記憶している。地図
も持っていかなかったのではなかったか。(笑) それからはKちゃんやAさんのHPを参
考にしてうろつき始めたのだが、その山歩きのきっかけとなった剣尾山に登ると、東に大
きく根を張る山が望まれる。それが半国山だ。ここは過去2回登ったけれど、山行記を紐
解いてみたら10年以上も前の記録である。そこでふとまた行ってみようという気になっ
た。初めて訪れた時と同じ赤熊から登って宮川に下りるコース。どれだけ変わっているの
か、はたまた自分の記憶はどうなのか。我ながらなかなか興味津々でもある。(笑)

 箕面トンネルが出来て亀岡方面へ出るのに便利になったものだ。9時半近くの出発なの
に10時半頃には現地に着くことができる。R423からR477に移って北上、R37
8へ合流する直前に理髪店の角を西へ折れる。宮前診療所の建物で左折すると金輪寺への
取付け道路だ。その道路沿いにちょっとした空き地を見つけ駐車する。準備しているとジ
モティーのおじいさんが半国山に登るのかと話しかけてくる。この道を登って行くといい
と教えてくれるが、赤熊から登ってこっちへ降りてくるつもりだと答えると、手をヒラヒ
ラさせてあっちは歩き難うてあかんという。道が崩れているのかと少々不安になるがそう
でもないらしい。「歩いた人がゴロゴロ石でどうもあかんと云うとった」そうな。それに
は10年前に来たことがあって大体勝手は分かっているのでと答えておく。その他にも色
々教えてくれる。金輪寺は元天台宗の寺院で、今は聖護院の本山修験宗に属し、前の住職
は80歳を越えて今は現役ではないが、昔は修験に励んだ立派な坊さんなこと。育親中学
校付近へ降りてくる道もあること等々。このままずーッと話が続く恐れもあったけれども、
折り良く軽四輪のおじいさんが通りかかって開放されたのだった。(^^;

 目の前の道を西へ進み、宮川神社と金輪寺の旧参道を左に過ごすと、やがてやや太い道
に出て、15分も歩くと何となく見覚えのある赤熊の集落である。石の鳥居は日慈谷神社。
説明板の記述から歩いて来た旧道は篠山街道との事である。

赤熊コース始点の四つ角。右に延びているのが篠山街道

 四つ角に東本梅村の道路元標があり、並んで半国山の道標がある。それに従って南西側
の山裾に向かう。人家が尽きるとすぐに二股で音羽川ぞいの左の林道を採る。古い案内板
には地図と共に「スズメバチ注意」、「熊の足跡が見つかりました注意」などとおどろお
どろしい文句が並んでいる。秋だったら少しビビッたろう。(笑) 半国山までは4.5km
だ。
赤熊から半国山系。中央の鞍部が音羽渓谷

 一昨日の雨で水量が多いのか音羽川の水音は高い。やや薄暗い桧林と雑木林がない混ぜ
になったような森の中を暫く行くと傍らに祠のある林道終点で車止めもある。

 確か、祠から先は、赤ん坊の頭大の石が転がる川床のような歩き難い道だった記憶はあ
る。奥に入るに従ってそれはひどくなり、その上、水も流れ始めて本当の沢ではないかと
見まごう様相を呈し始める。

雨で水量豊富な音羽渓谷

 車止めから20分ほど歩いて、轟々と音羽川の水音が一際高くなった所が音羽ノ滝であ
る。川原へ降りるでもなく山道の途中から眺めたのだが、3段くらいに分かれた滝は高さ
は10m位であろうか。水は案外きれいで近くの瑠璃渓よりはよほど透明である。岩を覆
う緑の苔とあいまってなかなか風情がある。

 靴が濡れないように滑らないようにと気を使うが、狭いV字状の道ではそうも行かない。
いきおい歩みは遅くなり勝ち。そうこうする内にやっと関電巡視路の火の用心マークまで
やってくる。私製のルート図もあって巡視道でも尾根に出られるそうだ。でもちょっと遠
回りのような気がするのでここは正規ルートを堅持。

 その関電巡視道の分岐からしばらくで道は右に方向を変え、左に見える支沢沿いを登る
ようになる。その支沢もまもなく源頭となって水がなくなり、のっぺりした植林の緩斜面
は少し踏み跡が分かりづらいが、要は高みを目指して歩きやすい所を進めば、自然に落ち
葉が分厚くおり敷いた杉ヶ沢ルートとの出合の峠に出る。ここは二、三度来ているのでま
だ記憶に残っている場所だ。水分補給で一息入れる。

杉ヶ沢との出合の峠から半国山へ向う

 峠からはようやく尾根道で半国山の山頂に向かってほぼ一直線に南下することになる。
少し厳しい登りであるが、ここからが雑木のプロムナード。アセビや松、イヌツゲ、リョ
ウブなどの明るい雑木林である。徐々に木々の間から視界も開けてきて、真正面からは大
分温かみを増した日の光だ。でも今日は体調が本格的でなく、何度か立ち止まっては息を
整える破目になった。

 エッチラオッチラ登った半国山の山頂にはオヤッ?誰も居ない。以前は木々が繁って今
一だったはずの展望も、伐採されて見覚えのある山名板と線刻の不動の石碑の周りは芝生
となっていて南北方向が良く見える。早速、ザックを置いて頭を巡らす。北東は愛宕山、
比叡山に亀岡盆地。雪を被っているのは比良山系だろうか。東にはポンポン山や生駒山。
南は六甲連山に高代寺山や妙見山。なんと大阪湾まで見え、双眼鏡で覗くと大きなタンカ
ーが浮かんでいるのが認められたのには驚いた。
伐採されて展望良好となった半国山頂

 一人静かに食事していると、金輪寺方面からご夫婦、赤熊からご夫婦が上がってこられ
たが、遭ったのは結局この二組と、下山途中に単独兄さんの三組だけ。その内に雲が陰っ
て急に寒くなる。手元の寒暖計を確かめると12℃から10℃以下に一気に降下している。
灰色雲が空を追覆い始めたからにわか雨があるかもと撤収を急ぎ、赤熊からのご夫婦に挨
拶して、そそくさ金輪寺方面へと下山である。

 南に向っての急斜面。コルに降り立つと近畿自然歩道の道標がある。宮前バス停まで5.
5kmだそうだ。そこから300mばかし行くと今度は井手分岐。木立を通して左手に半
国山の姿が望める。道は半国山を巻きながら水平に北へ進んでいく。周囲は植林が何時の
間にやら雑木の林に変わって、落ち葉フカフカの本当に気持ちいい場所である。見覚えの
あるミニ槍ヶ岳みたいな岩を過ごすと655m標高点ピークが前方に見えてくる。てっき
り登るんだと思いきや、山頂の西側をトラバースしていく。やっぱりピークを踏まないと
少し淋しい気がする、なんて殊勝な事を書いているけれど、内心は登りがなくて助かった
と思っているのである。
半国山山頂を南へ降りた辺りの清澄な雑木林

 前回来た時に少し迷った二俣であるが、今は近畿自然歩道の道標があって安心。ようや
く宮前までは4.2kmとなる。(尚、二俣を左に採ると林道に出て、赤熊と宮田の中間
地点付近に出るようだ)

 506mのピークは今度は南の腹を巻いていく。更にジグザグに斜面を降りて、しか
も急激に東方向から南に方向を変えれば、思ったより早く金輪寺への白い舗装路が木々
の向こう側に垣間見えてくる。傾斜が緩んだ辺りは沢状のジュクジュクとした感じだっ
たと記憶にある。プレート程度で道標などもなかったように思うが、今は車道脇に近畿
自然歩道の立派な道標が立っていて、こちらから歩いても取付き探しに苦労する事もな
くなっている。

金輪寺への取付き道路へ出てきた

 前回はここを下ってしまったのだったが、金輪寺までは300m足らずで大した坂道も
ない。お寺の駐車場の前の石段を上がると金輪寺の立派な本堂だ。由緒書を読めば、神尾
山金輪寺は783年創建の薬師如来を本尊とする古刹である。(金輪寺は修験の寺で、山
頂に不動の線刻がある所を見ると、半国山はこの寺の奥の院なのかもしれない。)幕末の
頃の住職、黙仙和尚は勤皇の志篤く、安政の大獄で倒れた頼三樹三郎、桜井頼直の遺髪を
持ち帰って供養塔を立てたとあるので寄ってみよう。本堂の右手に廻ると古い竜吐水が置
かれている。塗装も鮮やかでしっかりしていたが、まさかまだ現役ではあるまい。(笑)

竜吐水。江戸時代から明治時代にかけて使われた消火ポンプ

 一際、立派な石塔が二基仲良く並んでいるのが頼三樹三郎、桜井頼直の供養塔。でも頼
三樹三郎は頼山陽の息子だと知っているけれど、桜井頼直って誰?グーぐっても出てこな
いのも不思議だなあ。(笑) 周囲には馬頭観音の石像などもあって、顔を拝するのも面白
いものだ。

 さて、取付け道路へ戻ると旧参道が見つかる。昔は信者が歩いた道も今はハイキング道
に衣替えして、階段の土止めの交換作業が所々されている様子。それでも所々に残る古い
自然石の石段は風情がある。やがて地形図でも分かる饅頭型の小山に突き当たって左に折
れ、桧の植林帯が明るくなると宮川神社の前だ。延喜式にも記載があるという古社。今は
無人のようだが、チリ一つ落ちていない清澄な境内を歩くと、本殿には出征記念だろうか、
艦名は忘れたけれど、大正時代の軍艦の写真が飾ってあったのは祭神が誉田別命、即ち応
神天皇で八幡神だから武運長久を祈ったのだろう。

頼三樹三郎と桜井頼直の遺髪塔

 神社を出て田畑の間を進むと朝、歩いた篠山街道の旧道に出る。角に金輪寺を示すと同
時に「右 ささやま 左 神尾山」と刻まれた法華塔石があるのでそれが偲ばれる。そこ
を折れて100mも右に辿れば駐車地である。

 荷物を整理しているとボンネットにうっすら黄色っぽい埃状のものが積もっているのに
気付く。やや?花粉らしい。凄い量だなあ。そういえば目頭がかゆいのと鼻道が喉の奥で
合流する辺りがなんだか痛い。花粉の所為か。これだけ飛んでいれば自覚症状のない者で
も駄目だろう。ああいやだ。(^^;

 ところで11年ぶりのコースだ。記憶にあったのは
@赤熊の11年前に車を止めた所
A杉ヶ沢コースとの出合
B山頂の山名板と下山に使った金輪寺コース途中の二俣
C金輪寺の車道に出る手前の湿地
ざっとこんなものであろうか。人間の記憶ってまことにええ加減なものであるなあ。(^^;

 というわけで、無事帰宅して今回のタイムを昔と比べてみた。すると愕然。入口から千
ヶ畑コースとの出合、出合から山頂。それぞれ余分に時間がかかっているではないか。や
っぱり体力衰えているのかなあ。(T_T) とはいえ本当に静かな山、半国山。なかなかお勧
めの山であります。


【タイムチャート】
9:20自宅発
10:20〜10:30金輪寺取付き車道入口(駐車地)
10:45赤熊コース入口
11:00林道車止め
11:21音羽ノ滝
11:45関電ルート分岐
12:00〜12:03杉ヶ沢コース出合のコル
12:25〜13:10半国山(774.2m(三等三角点)(昼食))
13:15瑠璃渓分岐
13:17井出分岐
13:32655mピーク西
13:50506mピーク南
14:02金輪寺取付き車道出合
14:07〜14:15金輪寺
14:32〜14:40宮川神社
14:45金輪寺取付き車道入口(駐車地)



半国山のデータ
【所在地】京都府亀岡市
【標高】774.2m(三等三角点)
【備考】
正確な所在地は口丹波になりますが、北摂山系に連な
る名山の一つ。丹波の半分を見渡せることからその名
があります。当域では珍しく広い裾野を南側に持って
おり、R477本梅付近からの姿は雄大です。主な登
山コースは上記の他に、井出コース、杉ケ沢コース、
千が畑コースなどがあります。交通機関はJR亀岡等
から京都交通バスがありますが、本数が少ないので注
意。
【参考】
2.5万図『埴生』



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