行者山〜高島トレイルの地味な山

高圧鉄塔の切開きから行者山
平成21年 5月25日(日)
【天候】曇り一時小雨
【同行】まきたさん、水谷さん


 以前は中級以上の岳人の遊び場だった江若国境付近の中央分水嶺も、高島トレイルのお
かげで安心して歩けるようになった。三重嶽しかり、湖北武奈ヶ岳しかり。過剰なまでの
黄色いテープは少し煩わしいけれど。(笑)

 高島トレイルの未踏部分を歩かないかというMさんのお誘い。だが寒気の影響で予報は
良くない。某民間予報会社WN社の「雷と昼からはザーザー振り」なるコメントにテンシ
ョンは下がりっぱなし。単独行なら早々中止していたろう。が、夜が明けると灰色ながら
六甲も霞んではいず、何となく持ちそうな雰囲気だ。午前7時に集合して湖西のいつもの
国道を進み、高島市環境センターの南側にある椋川分岐のT字路横の空き地に1台をデポ。
南下して能家への県道を西へ向かう。新道が出来ていてややこしかったけれど、イヌを散
歩させていた女性に尋ねたりして横谷林道を登る。当初は足谷口から池原山に登ってから
との目論見であったが、天候を懸念して横谷越から出発に短縮した次第。標高はもう45
0mにもなるので非常に楽だ。(笑)

 横谷林道は麻生と椋川を結ぶ生活道らしく峠まで舗装路。峠から椋川側の500mほど
がダートだが、落石はあるもののほとんど荒れていないいい道である。そして目立つのは
タニウツギのピンク。かくも多くあるかと驚くくらいの数なのである。

横谷峠。ガードレールの先に登山口

 横谷峠は大きな切通しになっている。東側を覗くと眼下の木々の奥に椋川集落の最奥の
建物らしい建造物が見え、50mほど麻生側へ戻ると行者山への手書きの道標がある。そ
れに従って無理に付けられたような小道を少し登ると、右に古そうな道の痕跡。林道に寸
断された古い尾根道だろうか。

 概して尾根の南東側は桧などの植林、北西側は雑木林が続く。芦生などに多いエゾユズ
リハがここでも目立ち、黄緑色の柔らかい若葉がとても美しい。その間をかき分けながら
の踏み跡はそれらしいのが分かる程度で、いわゆる完全な道にまではまだ至っていない。
高島トレイルが整備される前などは、多分、ジモティーの山仕事の人か余程の好き者でし
か歩かなかったような場所だと思う。でも我々にとってはこのくらいの方が好もしい。と
はいっても全くヤブもなく、公式テープがこれでもかと設置されているので迷う心配は皆
無だ。
エゾユズリハとブナの稜線は緑のシャワー

 緩々と標高を上げて行く中央分水嶺。初めてのオフィシャル道標は532m標高点ピー
クの上。半分桧林、半分雑木林。横谷越0.9km、行者山1.7kmの表示がある。こ
の辺りは明快な尾根で、左手の雑木林の緑が美しい。一旦少し下って再び登りとなって、
15分ほど歩けば536m標高点ピークに立つ。ここにもオフィシャル道標がある。ここ
まで峠から1.7kmだ。

 ほぼ真東に方向が変えての緩い登りだ。ガスが俄かに濃くなってくる。尾根上は赤松や
ナラ、ブナが多いが、ナラ類の枯れが目立つ。ほとんど生きた個体が見られない。例のカ
シノナガキクイムシとかいう虫の仕業だろう。今後まともなナラの樹がなくなるのではな
いか。心配ではある。

 Ca570mの無名ピークを越えると10分足らずで道標のある無名ピーク。正三角形状
に尾根が張り出している。その南東に延びる尾根に行者山の三角点がある。点名『搦谷』、
標高586.8m。ところが、地形図の等高線を見ると550mの等高線から4本の線が
引かれているではないか。とすれば590m以上。どういうことだろうか?国土地理院に
一度聞いてみたいものだ。(笑) 

 正確な意味では中央分水嶺ではないが、行者山までオフィシャルテープが付けられてい
る。その尾根上は植林帯であんまり面白くない。アップダウンもほとんどない中、分厚い
落ち葉を踏んで進むと、200m弱先に綺麗な標石と白い標識の他は高島トレイルの標識
のみの山頂に着く。全く展望はない山頂だが、南の尾根を麻生へ下るテープがあった。

 景色は望めないが落ち着いた雰囲気の山頂で少々憩って、カロリーメイトで虫押さえし
た後はCa590mの無名ピークへ戻って、もう一つの張出し尾根である東北東尾根を進む。

無傷の三角点標石と標識の残る行者山山頂

 北側に椋川の奥地の民家と田畑が覗く。ガスが晴れてきた。コゲラらしい警戒音。去年
だったか芦生でも聞いたことがあるけれど、どこかに巣があるのだろう。しばらく距離を
保ちながら追いかけてくるのだった。新しいアンテナ施設があったのは416m標高点辺
りだろうか。周囲が伐採されて放置された丸太の横に堂前分岐の標識がひっそりとあった。

416m標高点付近の尾根にて

 堂前分岐を後にしてしばらく歩くと今回初めての展望が開ける。東側が皆伐された伐採
地で、錆びたワイヤと滑車が放置されている。小振りの芦生杉一本だけが残されている。
東の高い山は西峰山だろう。南には蛇谷ヶ峰や比良連山がある。この後、展望が得られる
かどうかはっきりしないので、ちと早いけれどもここで昼食とする。雨で立ちながらの食
事も覚悟していたので、石の上に座って食べられるとはラッキーだ。

 今までは明快な尾根だったが、378m標高点ピーク辺りまで来るとやや複雑になって
くる。南に向ってみたり少し北に振ったりして、中級者以上でないとテープがないと分か
り難いだろう。

 テープに導かれて徐々に下っていくと猫鉄塔が現れる。若狭幹線と呼ばれる甲乙並行す
る高圧鉄塔である。この若狭幹線、中央分水嶺とつかず離れずの関係で、高島トレイルを
辿ると、何度かその下を潜ることになる。三重嶽の北の大日岳などでもお目にかかったこ
とがある。鉄塔周辺は切り開かれるので概して展望が良いが、この甲bT5の高圧鉄塔も
ご他聞に漏れずいい展望。ことに麓では余り姿を見ることができないであろう行者山が、
ガスをまとった姿を見せている。もうここまで来ると里も近く、時折、イヌの鳴き声も聞
こえてくるようになり、左下には椋川に向かう県道が延びているのがわかる。その向こう
の山並みは7合目より上はガスの中だ。乙bT2の鉄塔を過ぎると、鉄塔巡視路も兼ねて
いるらしく踏み跡は明快となり、忠実に尾根の先端の275m標高点方向へ辿っていくよ
うだ。古いCATVの装置が放置されているのを横目にして、滑りやすい斜面を下り、最
後の最後に尾根中央から右側斜面に外れると、農道の側に登山口の標識が立っている。県
道に出て気付いたが、そこはサンテラス椋川と呼ばれる別荘地の北側の地点である。

椋川の登山口。行者山まで3kmとある

椋川登山口の尾根遠景。右に猫鉄塔が見える

 県道を東方向へ歩く。霧のような雨が降ってきたがすぐにやむ。ふと気づくと、右手の
耕作放棄されたような野の向こうを流れる小川の流れが逆方向だ。ちょっと面食らうが、
高島トレイルはこの辺りでは自衛隊の演習地が立入禁止の関係上、中央分水嶺から離れて
設定されているのだ。そんなことで1kmくらいだろうか、車道を歩くとデポしたMさん
の車がやがて見えてきた。

 今日はいつもより下山が早かったので、椋川経由で横谷峠に置いた車を回収した後は、
朽木温泉『てんくう』の露天風呂で一っ風呂。土産に新旭の地酒『杣の天狗』を片手に帰
途につく。ついでに桑野橋近くの山野草屋にも道草してナツエビネとイカリソウを購入。
山よりも他のことで散財したよなあ。土産の地酒を冷やしてちびちびやりながら思ったこ
とである。

 日頃の行ないが良い?のか予想に反してほとんど雨にも降られずののんびり山歩。高島
トレイルの中では最も地味な感じがするが、反面、しっとりとした山域でもあった。同行
のお二人、有難うございました。



【タイムチャート】
7:00千里中央(集合地)
9:00〜9:10横谷越(駐車地)
9:30532m標高点ピーク
9:45536m標高点ピーク
9:55Ca570mピーク
10:03Ca590mピーク
10:07〜10:15行者山(586.8m 三等三角点)
10:17Ca590mピーク
10:40〜10:42Ca416m標高点(堂前分岐)
10:58〜11:05伐採地(昼食)
11:30〜11:33378m標高点ピーク
11:40高圧鉄塔(若狭幹線 甲bT5)
11:42〜11:44高圧鉄塔(若狭幹線 乙bT2)
11:53行者山登山口
12:06環境センター南(車デポ地)



 行者山のデータ
【所在地】滋賀県高島市(旧朽木村)
【標高】586.8m(三等三角点)
【備考】 高島トレイルの半ばにあるなだらかなピークです。山頂
は桧の植林帯であまり特徴がなく、ピークハンター以外
にはあまり魅力がないでしょう。登路は高島トレイル経
由の他に南の麻生から直登路があります。
【参考】
2.5万図『饗庭野』



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