堂山〜湖南アルプスの前座峰

五味谷への下山路途中から堂山
平成21年10月25日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 今月のSRCの定例オフはTちゃんの企画で、滋賀県の湖南アルプスの前座の山、堂山。
湖南アルプスは金勝アルプスと並んで花崗岩質の地質は岩場やザレ場が多く、低山の割り
に楽しめる山域で、堂山もその例に漏れず、標高は400m足らずしかないが、露岩の多
い山だそうである。今回はこれに近江の地酒の利き酒会が大津プリンスホテルで開催され
るのと引っ掛けてのオフで、愛飲家のTちゃんならではの企画ではないだろうか。(笑)

 JR石山駅のバスロータリーで待ち合わせ、8:25発の湖南アルプス登山口行きの帝
産バスに乗車。我々以外の乗客は一人のみでほぼ貸切状態である。唐橋を渡り瀬田川沿い
に南下すると、白い地肌を見せる山並みの前の方にピラミッド型の山が見えてくる。あれ
が堂山らしい。

 湖南アルプスは山を始めて間もない頃、太神山に登りにやって来て、この東海自然歩道
にも指定されている道を歩いたことがある。横を流れる天神川にはきれいな水が流れてい
て、バーベキューを楽しむ人が多かったことを覚えている。それ以来だから十数年ぶりだ
ろうか。コンクリートの橋を渡って天神川の左岸沿いに遡る。「マツタケ山につき立入禁
止」の札がやたらに目立つ。そういえばジモティのパトロールとか書かれた軽四輪はその
監視かなあ。でもオフィシャルのハイキングコースだしねえなどと憶測が飛び交うが、そ
の軽四輪は灯明瞬く迎不動のお堂前の鎧ダム分岐に止まっていて、側にいた小父さんに聞
けば脇道に入らねば大丈夫とのこと。疑われるのも何だし、ひとまずは安心という所。

 ここで天神川に若女谷の小さな流れが合流していて、その流れに沿って山襞に分け入る。
花崗岩質なので明るい谷だ。ここらあたりにも白いテープと立入禁止の札が目立つ。階段
状に自然石が置かれた山道はまもなく左手に高さ10m位の階段状の堰堤を見る。どこか
で見た構造である。そうそう、金勝アルプスの麓にあったデ・レーケの堰堤だ。と、山道
の脇に説明板がある。名称は不動堰堤。日本とオランダの交流400年を記念して、明治
時代の日本に近代土木技術を扶植したオランダ人デ・レーケの工法に倣い、2000年に
新たに建設したものとある。最近とみに能力が落ちた我輩の記憶が正しかった訳だ。(笑)

日蘭交流400年を記念して築造された不動堰堤

 イノシシや獅子に似た岩、イースター島のモアイに似た茶色っぽい岩が立つ間を抜け、
雨が降ればまるで雨水を集める溝になりそうな狭い岩道を歩き、幾度か若女谷の細い沢を
渡る。目に付くピンクの小さい花はミミカキグサ。センブリも岩陰に白い星型の花を垣間
見せる。こうして100m程度は標高を上げただろうか。視界が広がり、天神川の谷間の
向こうに笹間ヶ岳らしい姿が見えてくる。

 いつの間にか傾斜が緩んで平坦な山道が続くようになる。やがて白っぽい説明板が木の
間に現れるのに前後して鎧ダムの堰堤が目に入った。古い堰堤は新しいコンクリートの堰
堤の向こう側にあって不動堰堤と同様、オランダ様式で明治22年完成の日本で最古の砂
防堰堤なのだという。整然とした不動堰堤の積み石に比べて流石に不揃いだが、百年以上
の風雪に耐えたその姿は一見の価値がある。

明治22年に築造されたオランダ堰堤とも呼ばれる鎧堰堤
平成の不動堰堤と積石を比べて下さい

 ところでここでちょっと目が点になる。地形図には鎧堰堤で堰き止められたダム湖が水
色で記入してあるのだが、驚いたことに現実は砂に埋まって大きな砂地に変貌してしまっ
ている。砂に吸い込まれるのか、水はほとんど無く、わずかにちょろちょろと流れるだけ。
因みに、ここで水晶や宝石のトパーズが見つかるのだというので探す人がいるらしい。さ
て、1ヘクタールはあるその広い砂場で小休止。小腹が空いたのでカロリーメイトを1本。

 一息ついたところで、この先はと...。痩せた潅木に結ばれた赤い布を目印に左手の
茂みを注意しながら進むと、植林した小松の間を進んだ先の繁みに道標が見つかる。砂地
の細い流れを左にして、まばらな笹の茂る平坦な雑木林を西方向に向かう。途中に東大津
高校山岳部の道標が茂みにぽつんとある。ウメモドキの鈴なりの実が赤く鮮やかである。

 いつの間にか小さな尾根上を行くようになっている。地形図を見てもこの辺りはどこが
尾根でどこが谷だかよく判らない複雑な形状を示す。おそらくこの尾根も地形図には載ら
ない程度しか高低差が無いのであろう。やがて、再び東大津高校の標識を見つけた所は、
小さなピークで直進を示すテープもあるが、堂山へは右に折れるようだ。

 この辺りは元々は豊かな森林だったという。それが奈良時代に都造営の為に伐採され、
以後、花崗岩質の痩せた地質は風化を早めて現在の荒々しい姿になったのだという。ザレ
た花崗岩の尾根を下ると、ようやく木々の間から、400mにも届かぬ低山にもかかわら
ず、露岩に囲まれた荒々しい堂山の姿がある。

ようやく姿を現した堂山

堂山前衛と笹間ヶ岳

 風化してオットセイか鯨のモニュメントみたいな岩や、押せば落ちそうな岩が乗る尾根
が見える。しかし近づいて新免への分岐辺りに来ると、どれがどれだか。(^^; ふと見れ
ばその新免方面の稜線沿いを降りて行く小さな人影がある。さっき我々以外の人声が聞こ
えたような気がしたが、きっとあの人達の声だったのであろう。

堂山の前衛へ岩場を登る

花崗岩の巨石の間を進む。頂上の人影と比べて下さい

 何度かこれが頂上だと思わせながら、巨岩の間をすり抜けたり、乗り越えたり。一寸し
たロックガーデンだ。そして幾つ目かのピークに立つ。すぐ向かいには、今度こそ堂山の
山頂らしき小広場に石柱が見えているのだが、こちら側との間に深いキレットが隔てる。
行って行けない事はないらしいが、少し戻ると南側に巻き道が見つかるのでここは安全策。
少し岩場を下ってキレットを迂回して登り返すとまもなく狭い山頂に到着する。早速、先
ほど見えていた石柱を確かめる。ところが当然、三角点だと思っていたものが間近で眺め
るとただの石柱ではないか。グラグラしているので動かしてみたら、その下は基準点を示
す金属標識が埋まっているのみ。周囲を探してみたが、結局、今は擦れて不明だが、例の
「三角点を大切にしましょう」の白い木柱と思しきものがあった以外、三角点の手がかり
は発見できず。(帰宅して検索したが点の記も未登録でありました) 残念! (^^; 

岩に囲まれた堂山山頂
中央の石標は三角点ではありません

 少し早いがランチタイム。その間に単独小父さんがやってきた。広くもない山頂を占領
して恐縮だけれど、店を広げてしまっていたので撤収も出来ず失礼しました。ところで今
日持参したのはマルタイラーメン。ここ一ヶ月ほどご一緒していないMさんのご推奨だが、
なかなか美味。卵とネギを持参してフウフウ云って食べました。もうラーメンが美味い季
節なのですなあ。

 堂山の山頂には少し潅木があるので露岩の上に登ると良い。少し頭を傾げた笹間ヶ岳や
下山路の途中にある天神川堰堤、東には矢筈ヶ岳になだらかな太神山。遠くは鶏冠山など
金勝アルプスの山並み。北は草津や大津市街の向こうに琵琶湖が薄っすらと。風がないの
で靄がかかり、惜しいことに比叡山や比良の山並みまでは見通すことはできなかった。

 40分ほどまったりと過ごしたのち、下山は少し往路を戻って新免方面も面白そうだっ
たけれど、当初の予定通り堂山の西尾根を天神川方面へ向かうことにする。山頂から若干
下ってしばらくはミツバツツジのトンネルのような平坦路。そして突き当りを左に向かっ
て高度を下げて行く。目の前に笹間ヶ岳の長い稜線。東に目をやると、先程眺めた矢筈ヶ
岳と柔らかな感じの太神山があり、振り返れば今しがたまでいた堂山。眼下には砂防堰堤
や高圧鉄塔があって、低山ながらなかなかの展望が得られる下山道だ。しかしそれに気を
取られていると、露岩とザレた砂に足を取られるから油断がならない。しかし低山なので
そんな緊張もしばらくの間で、やがて落ち着いた尾根を行く小道に変わり、頂上から見え
ていた砂防堰堤に出る。標識は『天神川四号堰堤』とある。正面から眺めると人がアカン
ベエをした顔に見えるから面白い。
御仏河原への下山路。シダに覆われた五味谷左岸を行く

 ここから下はシダの繁る五味谷と呼ばれる谷沿いの道である。最初はチョロチョロとし
た水が流れる幅1m程度の小沢。青紫のリンドウが群れ咲く沢沿いを辿ると次第に谷らし
くなって行く。柱状節理というのか、まるで人工的に切り出したかのような四角柱が転が
り、ささやかな滝を懸ける小渓谷。何度か渡り返して下るに従って、ウラジロシダの生い
茂る小道となって、周囲は里山らしくヌルデやカキの葉はもう赤く色づいている。

 地形図を確かめるともうそろそろ林道が出てきても可笑しくないのだけれど、いっかな
現れない。(結局最後まで林道には出くわさなかった)そうして歩いている内に、浅見尾
根・五味谷分岐という道標が現れた。浅見尾根とは良く分からないが、ひょっとすると、
往路の東大津高校の道標のあった尾根に繋がっているのかもしれない。

 やがて木々の向こう側からオートバイの音が聞こえてきはじめた。そろそろ天神川に出
る頃だ。往路の舗装路を走るオートバイの爆音かと思いきや、川原の砂地で遊んでいるモ
トクロスバイクの音であった。

天神川の御仏河原へ無事出てきた

 飛び石伝いに天神川の向こう岸に渡る。振り返ってみるとこちらには標識もなく、一度
歩くか、経験者と来ない限り、登山口とは分かり難いようである。ここから舗装路を戻っ
て、バス停まではほんの15分足らず、時刻は12:55である。石山行きのバスの出発
時刻きっかり。停まっていたバスは、またもや貸切状態でJR石山駅へ走る。続いてはも
う一つの目的、大津プリンスホテルでの利き酒会だ。JR膳所駅まで戻って20分ほどの
距離。湖畔を歩き、おりしも帰港したミシガンを眺めて、ホテルのエントランスへ。会場
には予想を超えた沢山な人で、こんな盛大な会とは知らなかった。勝手知ったる人はおつ
まみ持参。(本当は食べ物持込禁止だそうですが (^_-)) こちらも負けじと、日頃は飲
めもしない純米大吟醸ばかりを頂く。十年寝かせた琥珀色の吟醸酒もあったが、紹興酒に
似た味だったなあ。そんなこんなで入場料千円のもとはしっかり取りました。あくまでせ
こい我輩である。

 少々野暮用があったので反省会をやるという面々とは会場前でお別れ。ホテル差し回し
のマイクロバスに便乗してJR大津駅に出て、夕刻前には無事帰宅。土産に買った純米『
大治郎』で一杯やったのは云うまでもない。同行の皆さんに感謝して今日の筆はここまで。



■同行: 北山さん、たらちゃん、二輪草さん夫妻、ハム太郎さん、みずたにさん、
     ランナーさん (五十音順)

【タイムチャート】
8:15JR石山駅(集合地)
8:50〜8:53湖南アルプスバス停
9:22〜9:30迎不動(堂山登山口)
10:00〜10:10鎧ダム(小休止)
10:17堂山取付き口道標
10:51新免コース分岐
11:15〜11:55堂山(384.0m 三等三角点(昼食))
12:20〜12:25天神川4番堰堤
12:42御仏河原登山口
12:55湖南アルプスバス停



 堂山のデータ
【所在地】滋賀県大津市
【標高】384.0m (三等三角点)
【備考】
 滋賀県南部の大津、守山、草津市街の東側に位置する
湖南アルプスの前衛峰です。湖南から金勝アルプスと呼
ばれる山域は、奈良時代、都造営の為に木材が伐り出さ
れた後、豊かな森林が荒廃したと伝えられ、花崗岩質の
地味は痩せ、風化が進んで、低標高ながらも荒々しい姿
を見せます。堂山だけでは物足りないという向きには、
近くの太神山や笹間ヶ岳等と結べば充実した山歩きが楽
しめるでしょう。
【参考】
2.5万図 『瀬田』



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