雨山〜久々に泉州の里山へ
展望台から眺める下永楽池と雨山(左)

平成21年 2月 8日(日)
【天候】晴れ
【同行】単独


 もう2月だというのに今年は里山ばかり。標高も400mさえ越えていない。それも正
月のオフ以外は播州の低山へ連続で出かけている。こうなると播州も少しタネ切れという
わけで、今回は久々に和泉山脈の前山へ向うことにする。

 数年前にお菊山という泉州の里山を歩いた事があるがそれ以来だろうか。近畿道、阪和
道と乗り継げば自宅から1時間半弱の道のりである。貝塚ICで降りて、R170で少し
西行し、阪和道を潜って高田の集落へ向えば永楽ダムが見えてくる。

 ダム湖の西側にトイレつきの立派な駐車場がある。そこに車をとめて準備。するとどこ
からともなく野良猫が2匹やってくる。餌が欲しいらしい。ザックの中からおやつのアン
パンを出してやると、ムシャムシャとやりだした。

駐車場横の西コース取付き

 ジョギングする地元の方々が時折通り過ぎる。さて取付きを探さねばならない。しかし
あちこち探す必要はなく、駐車場を出た直ぐ横に丸木階段がある。案内は出ていないが多
分これだろう。そして登リ始めるとすぐに西ハイキングコースると書かれた道標が見つか
る。

 尾根に出るまでは少し急登。およそ70mの標高差をがまんすれば尾根に上がれる。早
くも右手には雨山らしい姿がある。が直ぐにそこに向かうわけではなく、アプローチは小
屋谷を真ん中にU字を描きながらのコースである。良く手入れされた明るい山道は関電の
巡視道を兼ねているようだ。時々現れる露岩にステップが切られているほどだ。そして全
山ほぼ雑木なのもいい。やがて泉南東大阪線bWの高圧鉄塔直下に出る。ダム湖を挟んで
もう、東ハイキングコースのシンボルの展望台とほぼ同じ高さになった。

鉄塔付近から眺める関空。りんくうタワーゲートが良く見える

 小さなアップダウンをこなしながら徐々に高度を上げて行き、泉南東大阪線bXの鉄塔
を過ぎれば分岐が現れる。右に折れて少し登ると小屋谷の表示が出る。「小屋谷頂上」と
あるが正確には「小屋谷ノ頭」なのでしょうねえ。

登山路途中から雨山と土丸(左)

 最初は西に向かう尾根道。大木の集落を眼下にして306m標高点付近でようやく北へ
振り始めると、前方に土丸と雨山が瓢箪を横にしたような、あるいは猫が獲物を狙ってう
ずくまっている様な形を見せる。低山だがなかなか山らしい形をしている。尾根には小松
が多い。そして特筆すべきはウバメカシが多いこと。やはり温暖な土地ならではだ。その
他にはネズ、ミツバツツジ、コナラ、ソヨゴなどだろうか。ザレ場で左に折れると、雨山
は直ぐそこだ。少し急だが短い登りで月見亭跡と案内のあるテラスの様な台地から樹林の
中に入ると、左に井戸跡、右に千畳敷の広場(二の丸、馬場跡といわれる)に分かれる。

雨山城の本丸跡らしい千畳敷。

 まずは千畳敷の方へ。町制35年の記念碑も立つ広場は「住民の森」として整備されて
ベンチも置かれている。但しあんまり展望は良くない。千畳敷から西の少し高台の方へ行
くと、立派な休憩所。さらにクラオカミを祀る雨山神社がある。クラオカミのクラは谷、
オカミは水のことらしく、従って、雨乞いの神様である。これが山の名前の由来であろう。
因みにこの神が祀られている有名所では京都の貴船神社がある。

 さて、さっきの山の姿を見たら土丸へも行きたい。が、どっちだろう。西の方向に木の
間隠れに土丸の峰が望めるのだがそれらしい道がない。千畳敷の北側に太いみちがあるけ
れど、丁石があるのをみるとこれは山頂の神社の参道らしいので違うようだ。トイレや神
社の裏を見てみるがやっぱりない。そのうち、なけりゃないでまあいいかという気になっ
て折角なので井戸跡を見物しようしたら、いい道が奥へ続いているではないか。なおも辿
ると山頂部をぐるりと巻いて小さな鞍部に出た。雨山城址付近の案内図があり、土丸城址
への小さなプレートが足下にある。それに従って左に折れて急坂を登る。すると5分ほど
で東西に長い台地に出た。そこが土丸城址で石の鳥居と石碑。北側は建物があったらしい
平地だが、イノシシが耕した?ものか到る所がほじくり返されている。足元に注意して平
地の北の端に出てみると、これがまあ大展望で大阪湾まで遮るものはなく、紀州街道や粉
河街道を進む軍勢を見張るには最高の場所であろう。しかも南側は樫井川が蛇行して雨山
や土丸の山脚を洗い、天然の堀をなしている。南北朝時代に橋本正督がここに拠って和泉
守護の山名氏清と戦ったとか。石碑はそれら南朝への貢献を記念するものだそうである。

 さて、食事はテーブルもあって、かねがね目をつけていた月見亭で摂ることにした。幸
い誰も占有しておらず、早速ザックを広げてレトルトのきつねうどん。生卵入り。それに
塩たれマグロご飯と豪華版?だ。月見亭とは上手く名をつけたもので南側が開けているの
で煌々とした月の光を肴に酒を酌むのもおつなものだろう。でも本当は月を愛でる場では
なくて見張り所のような無粋な場所だったに違いない。直下に大木の集落が手に取るよう。
和泉山脈の犬鳴山方面に向うのかバスがゆっくり走っていくのが見えた。

 さて、コーヒーも飲んだし、そろそろ腰を上げよう。小屋谷分岐まで来た道を戻って、
今度は分岐を南にとる。巡視道でもあるのでいい道。アップダウンもさほどなく、左手に
これから向う東コースが眺められる。白いのは露岩らしく、あっちも距離は短いけれどな
かなか良さげだ。

西コースから眺める東コース。露岩が多いのが分かる
左の建物は展望台

 尾根道は風がやや強い。泉南東大阪線bP0の鉄塔を抜けると急降下の階段。コルに下
って細尾根の登り。右手に上永楽池の西にある池が見えてくる。更にジグザグに急降下し
ていくと上永楽池の堰堤の端に出る。江戸時代に造成された池は農作業が永らく楽になる
ようにとの願いを込めて命名されたとのこと。雨乞いの山といい、溜め池の名前といい、
雨が少ない瀬戸内海沿岸の昔の暮しを髣髴とさせるではないか。

西コースの終点、上永楽池の堰堤横

 堰堤を渡ると秬谷への車道に出るが今度は東コースの取付きを探さねばならない。左手
の山の斜面に注意しつつ、環境センターの取付け道路まで歩いて行くが、それらしいのが
見つからず来た道を戻る。(本当はもう少し行けば取付きがあったようだ)さっきの上永
楽池の堰堤を過ぎてしばらく行くと一台の車が停まっていて、その横に階段が見つかった。
待望の取付きだ。(笑)

 急傾斜の斜面の右手は小さい沢で、水量は少ないがほとんど滝の様な斜度で水が流れて
いる。小さい砂防堰堤がある。コースは向って左手から堰堤を巻くと、その上の平坦な荒
地に出る。左にカーブしながら再び急登。一段の高さが人間の足の長さに合わない丸木階
段。こちらは歩く人が少ないのか少し雑草が繁り気味だな。と一人ごちていると人声が降
ってきた。柴犬を連れたご夫婦である。
「展望台までどのくらいでしょう?」
「うーん。20分位かなぁ」
実際、そんなもんでした。有難うございました。(笑)

 峠に出る。十字路になっていて直進は芝生広場で右に行くと斎場とある。ここからはも
うルンルン道。ほとんどアップダウンはない。花崗岩質の白っぽいザレた馬の背道である。
左手に歩いてきた西コースの全貌と雨山。展望台も300mほど先の独立峰の上。小松も
多くてさながら日本庭園の趣きである。こんな尾根好きだなあ。

まるで日本庭園のような東コースの尾根

 泉南東大阪線bP1の鉄塔近くまでやってきた時である。奇妙なものを発見する。消火
栓の鉄の蓋である。こんな所に消火栓があるのが不思議だと思うが(多分、山火事か何か
の備えか?)、なんとその鉄の蓋に『駐車禁止』とあるのだ。
「おいおい、こんなとこに駐車する奴はおらんやろ〜」思わずこだま・ひびきになってし
まう小生。全部同じ規格で注文したものであろう。この辺りだけ別のを注文すると高くつ
いて税金の無駄使いだもの。納得。
こんな尾根の上に駐車する奴っていないって...(笑)

 ササやシダが被る道からヒョイと左に折れると展望台の台地で、2階へ上がれば全周の
大展望が迎えてくれる。生憎霞んで明石海峡大橋は望めなかったけれども、大阪湾、淡路
島、関西新空港、六甲山。金剛から和泉山脈が延々と繋がり、それは和泉葛城山から犬鳴
山、雲山峰へと抜けていく。眼下には永楽池の青い水面。300m程度の低山とは思えな
い贅沢な展望ではある。

 縦走路に戻って更に北へ潅木帯を行くと二俣に出くわす。道標はないが右に下っていく
道がオフィシャルのようで丸木の階段だ。でも尾根から外れてぐんぐん降りていくのが少
し頭の中のイメージにしっくりこない。立ち止まって地形図を眺めると林道に下りていく
ようだ。もう少し尾根を辿った方が良かったかなと心中後ろ髪を引かれるが、もとより登
り返す気は毛頭ない。(笑) ジグザグにうす暗い道をぐんぐん降りると、10分足らずで
ダート林道に降り立った。林道湯谷線だ。

 人の話声がする。へえ、こんなところを結構人が歩いているものだ。実は奥山ハイキン
グコースのルートなのだった。この奥山自然公園の区域内には、先程の展望台とは別にも
う一つ展望台があるのだそうだ。この先はもうテクテク急ぐのみ。10分位は歩いただろ
うか。車止めのある永楽ダム周回路との合流点に出る。前から犬を連れたお二人。なんと
東尾根を登り始めた時に遭遇したお二人だった。
「えらい早いねえ」
「いやぁ、それ程でも...」

林道湯谷線起点

 永楽ダムの堰堤を渡ってダム湖の西側へ。桜並木に左手が広場。まもなく朝取付いた階
段が見えてきて駐車場はすぐそこである。ザックを下ろしてアンパンを頬張っていると、
何処からともなくまたまた猫が現れる。今度はやらないよ。久方ぶりの泉州の里山のひと
コマである。


【タイムチャート】
9:40自宅発
11:00〜11:10永楽ダム湖駐車場(駐車地)
11:10西コース登山口
11:35鉄塔(泉南東大阪線bW)
11:45鉄塔(泉南東大阪線bX)
11:48小屋谷分岐
12:12月見亭跡
12:15〜12:32雨山(312m)
12:40〜12:45土丸城址
12:55〜13:26月見亭跡(昼食)
13:47〜13:50小屋谷分岐
13:53鉄塔(泉南東大阪線bX)
14:07上永楽池堰堤(このあとうろうろ)
14:18東コース登山口
14:30〜14:31
14:37鉄塔(泉南東大阪線bP1)
14:42〜14:46展望台
14:53林道湯谷線出合
15:00ダム周回路出合
15:10永楽ダム湖駐車場(駐車地)



雨山のデータ
【所在地】大阪府泉南郡熊取町・泉佐野市
【標高】312m
【備考】 和泉山脈が和泉平野に山脚を没する辺りで最後に盛り
上がる山々の一つで、山頂には南北朝時代の山城跡と
ともに雨乞いの神が祀られており、それが山名の由来
のようです。東側の永楽ダム周辺は奥山自然公園とし
て整備されており、ダム東側の展望台からは関西空港、
大阪湾をはじめ、六甲山、明石海峡大橋、淡路島と大
パノラマが眼前に広がります。
【参考】
2.5万図『樽井』



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