大谷山〜快適尾根と粟柄越古道

南側の縦走路から眺める大谷山
平成20年10月18日(土)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 先週、乗鞍岳へ登って大展望を満喫していたら、大谷山から赤坂山の稜線がおいでおい
でしているような気がした。(そんなはずはないでしょ)と理性は反対する(そんなもの
あったかいな?)けれど、要するに秋の大谷山を縦走したいだけ。仕事も切れ目ができた
し、Mさんのお誘いに乗りましょう。

 近江側からのアプローチよりも1時間は余分にかかるであろう。先週、下山した乗鞍岳
の麓、愛発越をして敦賀市内に入る。R8、R27と乗り継ぐとJR美浜駅近くで新庄へ
の標識が出る。南へ伝う県道に折れればまもなく右に雲谷山、関電嶺南変電所が見えてく
る。

 最奥の集落が大日岳の登山口でもある松屋。ここで左に曲がり栗柄谷の本流沿いに上が
って行く。この林道は今日とは反対のコースである抜土から三十三間山の西の麓、能登野
まで歩いた時に一度来ているが記憶が曖昧。ただ関所跡の碑があったのを覚えているのみ。
すると少し広まった路肩に萬霊碑と共にその碑が立っているのを見つけて安堵。これでこ
の道に間違いない。なにせ2台ともナビ無しなのだ(笑)

 折戸谷の林道分岐に1台をデポ。1台の車で更に山道を登って行く。抜土まではまだ数
kmはあろう。途中の橋から綺麗な二段の滝が眺められた。

 高島トレイルになって訪れる車は増えたに違いない。今日は3台が先着している。通行
禁止の鎖ゲートの前に空きを見つけて車を止める。

少し荒れた感じの高島トレイル登山口から出発

 抜土から大谷山へのルートは二つある。登ってきた林道を少し戻った所から取り付くの
と、車止めの数m先の案内標識からとの二つである。本来の道は前者なのだろうが、高島
トレイルはあくまでも中央分水嶺にこだわっているらしい。(笑) だから後から無理やり
つけた為か、踏み跡はまだ不明瞭。炭焼窯跡のある小さな沢沿いに斜面を登っていくこと
になる。やや盛りが過ぎて花弁の散り始めたトリカブト。イワウチワに覆われ、ホウノキ
やトチノキが多い急斜面である。雌のキジが逃げて行ったらしいがチラと茶色い影が見え
ただけである。
明るいブナ林は最高だ

 薄い踏み跡もエイエイと尾根に出れば明瞭な踏み跡が現れる。下草もなくやや赤く色づ
いたハウチワカエデ、コナラ、ブナ、リョウブ。広葉樹の林である。柔らかく湾曲した沢
の源頭は落ち葉が一杯。多分ここも春にはカタクリが咲くのだろうなあ。

 左から来た尾根と合体する辺りは、林道を戻った所から上がる本来の道との合流点にな
っている。道はここで益々明瞭となって北方向の明瞭な尾根を延びてゆく。本当に静か。
朝日が射し、木漏れ日となる中、シジュウカラが梢の高みで鳴き交わしている。

抜土から大谷山へ尾根の自然林

 古い道らしい洗掘された溝が現れた。時々途切れながらトレイルの横をつかず離れず。
ピークを上手く外してながら尾根が細まった地点で再び寄って来る。そんなブナ林を抜け
ると潅木帯。それも抜けると突然、目の前が開けてミヤコザサの原に出る。カレンフェル
ドのような白い岩の埋まる丸い小山に上がると、周囲を見渡せる広々とした景観が眼前に
展開する。そこを後にして50mも進むと、あーら、懐かしや石庭からの道と合流点にや
って来た。去年のGWに石庭から登ってきて、背の高い木々もなくヒメザサで覆われた稜
線に感激したものだ。今はあの時より道標が増えているような...。(笑)

 北に鎮まる大谷山。人が立っていると見間違えるような標識の立つ山頂に、今日は先着
の本物の人が立っているらしい。一旦、下って登り返す。石庭からの展望コースと合わせ
て山頂手前の高みを越えた先にある山頂は、三等三角点が埋まり、白い露岩の先ほどのピ
ークに勝る展望地である。振り返れば大御影山の長い稜線が意外に近い。マキノ側はあの
メタセコイヤの並木が一直線に眺められる。先週より靄っているが、辛うじて琵琶湖の向
こうには伊吹山の姿がある。目の前にはどーんと乗鞍岳がある。北には敦賀市街に日本海。
全く見飽きない風景だ。朝早立ちであったので一寸早いがここで昼食タイム。おっと座り
こもうとしたら鹿の糞だ。(笑)
大谷山から三国山方面。左奥が三国山、中央左の
白いザレ場が明王ノ禿、右奥は乗鞍岳

 笹原がのたりと寒風の峰まで続いていて、中に一筋の白いトレース。春はカタクリ街道
と化す道である。鹿もこの道を歩くらしくやたらと糞が転がっている。気温は25℃。暑
いくらいだが、風が乾いているので心地いい。琵琶湖を右手に一旦鞍部に下って登り返す。
ゆっくり歩いて寒風までは30分ほどだ。流石にこの辺りまで来るとマキノや粟柄越から
大谷山を目指すハイカーとちょくちょくすれ違うようになる。

 841m標高点ピークの東の肩への登りが少々きついけれど距離は短い。この辺り、マ
キノ側は切れ落ちていて土砂崩れの防護柵が目立つ。切れ落ちた谷の水を集めた調子の滝
はその下流にある。アップダウンが少ないので歩は捗る。赤坂山も見る間に近づいてきて、
多くの登山者が山頂にたむろしているのがはっきり分かるようになってきた。

 旧KDDのアンテナに似たノッポのアンテナ塔の回りはススキの穂波に覆われている。
足元が見えないから根っこなんかが隠れていたらつまづきやすいので要注意だ。続いてネ
コ鉄塔の下を降りていけば粟柄越の峠。マキノコースとの出合だ。

ススキが光る折戸谷分岐

 手元にあるテラピスト今津で購入した地図では十字路になっているが、地形図では変形
十字路である。マキノからの道と出会って20m程度北に歩くと赤坂山と折戸谷との分岐
がある。丁度、馬頭観音の置かれた岩の近くである。右、即ち東の馬頭観音方面に行けば
赤坂山である。マキノ側から交通の便も比較的良く、整備されていることもあってこの時
刻に登って来る人もいる。分岐で休憩していると単独おじいさんが山頂へ向かって行った。

 小憩後、赤坂山には寄らずに北の折戸谷へ進む。ススキなどがやや鬱陶しいが、すぐに
林道くらいも幅のある道が現れた。「ええ?こんな山中になんで」思わず声を出てしまう
ほどのハイウェイだ。幅は1m以上はあるだろうか。荷物を背負った牛馬も往来していた
のであろう。峠に馬頭観音があったのもむべなるかな。東側は赤坂山の雑木林。西は谷。
山腹をへつりながら徐々に高度を下げて行く。近江坂を髣髴とさせるようななだらかさで
ある。昔からかなり利用されていた道なのだろう。岩盤が固い部分は深く掘れてU字型を
示している部分も多い。関所が置かれた理由も分かろうというものだ。美浜山遊会の道標
が時折方向を示してくれる。
若狭側の粟柄越の古道。こんないい道

 ところでこのような古い道を歩いていていつも思うのだけれど、本当に上手くつけたも
のだとほとほと感心する。険しい箇所がほとんどないにもかかわらず、何時の間にやら高
度を稼いでいるのだから。

 沢音がかすかに聞こえてくる。大きくヘアピンカーブを曲ると小さな谷に細流が現れた。
湯ノ花谷かウツロ谷の源流らしく、道はこの谷を横切って大きく曲りこむと、以後この谷
にほぼ沿いながら続いて行く。

 トチノキとカエデ系統が目立つ。なかなか大木も多く、もう少し秋が深まれば見事な紅
葉、黄葉だろう。このあたりだったか右手がポッカリ空いて、三国山らしき端正な山が見
えた。

古道はウツロ谷の源流だろうか?この後、小沢を巻く

 大分深くなった谷を再び横切る。このあたりは倒木や、沢の中を少し歩かねばならず、
少し荒れた感じだが、やがて尾根の上を忠実に辿るようになると、両側はかなり深い谷筋
だ。左が湯ノ花谷、右がウツロ谷。かなり下から沢音が響いてくる。深く掘れた道筋に横
たわる倒木に牛の乳房に似た白いキノコがぶら下がる。なぜか木の根を保護したような板
組を踏んでしばらくすると468m標高点は近い。これより台形形の平坦な尾根は終わっ
て、いよいよ最後、折戸谷へ急降下していくことになる。

 といっても急傾斜の部分はない。あくまでも古道。ジグザグに降りて行く。が、杉林の
土むき出しの斜面は雨で流されて踏み跡が一部消えかかっており、やや歩き難い。だがこ
の裸地で目立つのはトリカブトの群落。やや色が薄いものが多く、青みがかった藤色とい
うところ。
林道出合近くに咲き乱れていたトリカブト

 何度かジグザグを繰り返すと杉林が現れた。その中を右に左に稲妻型に歩けば、最後は
コンクリートの細い階段で、林道に降り立った所には赤坂山と大きな看板が掲げられてい
る。「赤坂山1.5h、大谷山4h」と目安が書かれているが、赤坂山はともかく、大谷
山は3h位じゃないかろうか。(笑)驚いたのはその横に、なんと、Mさんが車を回して
くれているではないか。お蔭で林道歩きが30分は節約できただろう。感謝、感謝。

折戸谷の林道登山口

 ダートだがあまり荒れていない林道を2kmも下ると河内粟柄谷林道との出合。最初に
車をデポしていた場所だ。ここから再び林道を登り車を回収に抜土へ。車の前を一頭の野
猿が慌てて横切った。やや傾いた陽射しがさす抜土には、もう車はわが愛車と手前の駐車
広場にあった1台のみであった。

 さあ、あとは”お疲れさん”のアルコールが待つ大阪へ戻るのみ。Mさんちで鍋しよう
ということになる。それなら早く帰らねば。(笑) 熊川宿から朽木経由で先を急ぐ。懸念
された渋滞名所?の湖西バイパスもそれ程いらいらする事もこともなく抜け、6:20に自
宅着。荷物を整理して再び千里中央へと取って返したのである。ブナ林の尾根、草原の展
望、古道歩きと一粒で三度美味しい山歩き。お相手していただいた皆さん有難うございま
した。



■同行 あかげらさん、水谷さん、もぐさん(五十音順)

【タイムチャート】
6:00千里中央(集合地)
8:22〜9:30抜土(駐車地)
9:55尾根に乗る
10:06〜10:08旧登山道出合
10:30〜10:35石庭コース出合
10:53〜11:35大谷山(813.9m(三等三角点))(昼食)
12:08〜12:10寒風
13:05マキノスキー場コース出合(粟柄越)
13:06〜13:12折戸谷コース分岐
13:59〜14:00468m標高点
14:18折戸谷コース登山口
14:40抜土(駐車地)



大谷山のデータ
【所在地】福井県美方郡美浜町・滋賀県高島市マキノ町
【標高】813.9m(三等三角点)
【備考】 江若国境を形成する山々の内、赤坂山の南に連なる峰の
一つです。山頂付近は笹原で、360度の大展望が展開
し、琵琶湖と日本海を望む事が出来ます。メジャーな赤
坂山に較べて格段に静かですが、最近は訪れるハイカー
が増えています。登山道はマキノ町石庭(いしば)や寒
風経由等、幾つかのルートがありますが、今回は若狭か
ら抜土、折戸谷のルートを利用しています。
【参考】
2.5万図『海津』



大谷山山頂から北方向を見る。大御影山(左)と雲谷山(中央)その向こうは日本海だ

   トップページに戻る

inserted by FC2 system