春きざす西尾根から桶居山
 
東尾根から桶居山。東西いずれから見てもピラミダルだ
平成20年 3月 2日(日)
【天候】晴れ
【同行】もぐさん


 今日はMLメンバの皆さんは、鈴鹿の雪山へ大挙出動中である。雪嫌いの小生、この時
期は専ら低山徘徊であるが、今日もご多聞にもれずMさんと播磨の低山。目的地は播磨ア
ルプスの域内だけれど、少し外れた桶居山。二度目の訪問は未踏の西の尾根からのアプロ
ーチである。

 この山域は本来里山なので到る所に取付きがある。今回、その取付きに選んだのは西に
ある深志野集落。山陽道姫路東ICを降りて東に見える山の端沿いに南下すると、やがて
深志野集落に入り、登山口の目印であるJOMOが見えてくる。神姫バスの深志野バス停
もすぐそこだ。
深志野の登山口。今では道標が整備されている

取付きは民家の間の路地だ

 人家の多い所ではなるだけ路駐は避けることにしているので、深志野バス停付近を物色
したがいい所がない。少し下山箇所に近い方へ移動して、人影が見えた木工団地の中にあ
る合板工場の空き地をお借りすることにした。

 準備を終えて深志野集落へ戻る。風も余りなく、ぽかぽかと暖かい。一週間前の氷瀑見
物が嘘の様だ。あちこちで白い煙が上がっているのは溜め池の土手を焼く野焼きの煙であ
る。大阪でこんな事しようものなら、即、苦情殺到だろう。まだまだ長閑な農村風景が残
っている。石段が立派な白髭神社に寄ったりしてぶらぶらと再び深志野へやってくる。取
付きが判り難いとのことであったけれど、今は私製の道標も架けられていて迷うこともな
い。

 民家の庭先を掠めるようにするとすぐに竹やぶで、それを抜けると明るい岩がちの斜面
だ。コシダが繁茂しヒサカキやツツジ、背の低い松、ネズ主体で高い木がないので、登れ
ば登るほど視界が広がってゆく。播但連絡道が南北に。遠くに姫路城も望め、新幹線の列
車が高速で走り去って行く。要所で立ち止まっては振り返って眺望を楽しむ。しかし暑い。
セーターを脱いでシャツ姿になろう。吹く風を心地よいと思うのは何ヶ月ぶりだろう。

 低山なので急登は短い。6、70mの標高差をこなしたら傾斜も落ち着いて、南の方の
景色も広がり始める。黄砂の影響なのかも知れないが、何となく白っぽい風景の中で、播
磨灘の霞んでいる姿も視界に入る。
覗き岩に立つ (画像提供 Mさん)

 現れた分岐を右に50mも行くと覗き岩だ。大きな岩が虚空に張り出していて、鷹ノ巣
山や高御位山の稜線が眺められる先端に立つと体がむずがゆい。岩には金属環が打ち込ま
れていて、クライミングを楽しむ人も多いようだ。なんだか左方向から声がしたのでそち
らを眺めれば、桶居山の南尾根突端の大きな岩の壁に、蟻みたいに人間が取り付いている
のが目に入る。
馬の背の西尾根から桶居山

 このあたりからようやく桶居山のピラミダルな姿が遠めに姿を現し始め、鉄塔手前の1
77m標高点のピークが斎藤山。多分、これは斎藤さんの持ち山なのだろうな。更に小さ
な鞍部から、再び50m程度の急登をこなすと、斎藤山より高い200mピーク。それを
越えると、一転、目の前に広がったのは茶色っぽく荒涼とした世界である。数年前の山火
事の跡は相変わらずアメリカ西部の荒野みたいだ。狭い吊り尾根に高圧鉄塔(姫路東支線
bR)が立つ。その向こうに桶居山の全貌がある。その近辺だけ切り取れば甲斐駒に似て
おり、デジカメに収めたいのだが、なにせ鉄塔が邪魔だ。 (^^; 吊り尾根を過ぎれば最後
の登りだ。達磨落しの岩を揺すったり(人力で揺すっても動くはずもないが)して遊ぶ。
右に砂防堰堤の谷と二つの池、左に夕陽ヶ丘へ延びる荒れた尾根を見つつ三等三角点の頂
上に立つ。ほぼ予定通りの12時03分だ。

桶居山山頂から東方向。赤白鉄塔の向こう側の尾根が下山路の巡視路尾根

 相変わらずの大展望。登り始めた時より視界が延びたようだ。何か背の高い塔の上に立
ったみたいにぐるりと四周が見渡せ、南の播磨灘には幾隻も貨物船が浮かんでいるのまで
わかる。淡路島が見えているので、高御位山がなければ明石海峡大橋も見えるに違いない。
東にはつい最近登った志方城山や平荘湖湖畔の飯盛山がある。北には一直線所上の道らし
き切り開きを持った山がありあそこも行ってみたい誘惑に駆られる。更に遠くには山陽道、
笠形山の姿もうっすら確認出来る。

 少し風が気になったので、山頂のやや北の斜面で食事とする。今日はきつねうどん。ね
ぎ、卵などの持参の具を追加する。やっぱりねぎを入れないとうどんらしくないものだ。

 桶居山は西側に比べて東側の方が傾斜がきつい。ややザレているので注意しながら下る。
尾根尾根には全て道があるといっても過言ではない。今しも頂上直下のエメラルド色をし
た池へ降りて行く尾根を歩く2人組がみえる。夕陽ヶ丘への尾根もなかなか魅力的である。
黒焦げの立ち木など、まだ数年前の山火事の痕跡が所々残っている。岩が剥離しやすいの
もそれが原因かも知れない。

 221mピークを過ぎたら下山路に選んだ尾根が現れるはずなので右側に注意する。す
ると関電の巡視路表示があるY字路に出た。左が鉄塔の立つ小さなピークを巻いている鷹
ノ巣山への主稜線への道だ。ここを右にとって鉄塔を目指す。鷹ノ巣山ルートからの道が
向こう側からも上がってきているが、それを併せて登りきると姫二火力線bR5の高圧鉄
塔の下である。そして途端に銃声が山肌にこだまする。谷間のクレー射撃場からの音は、
眼下、直線距離では300mくらいだろうか。レンガ色のクレーが小山のように積みあが
っているのがわかる。的が歩く尾根とは逆の向こう側だからまだいいものの、やっぱり銃
声は気持ちのいいものではない。

 思ったよりもいい道がついている。関電巡視路だから当然か。10分ほど歩けば姫ニ火
力線bR4の鉄塔下。えらいものだ。山肌が壁になるのか、一山越えると、銃声が全く聞
こえない。小休止。さっきまでいた桶居山をこちら側から見るのは初めてだ。頂上で人が
動いている。少し丸い感じがする。かえってその西の、鉄塔のある吊り尾根で隔てられた
ピークの方が槍の穂先のようだ。

 露岩を下る。その岩に面白い文言。『注 変態』。「なんだ?こりゃ?」他には『貸』
と書かれたタイル状の標識が打たれてある。これは関電が借りている土地の範囲を示すの
だろう。

 148mの標高点ピークにはbR3の鉄塔が立つ。尾根先端の池も大分近づいてきて、
左手の射撃場に通じる車道もはっきりしてくる。bR2の鉄塔付近からは潅木の中。しば
らくすると関電標識。地形図の点線路は姫ニ火力線の巡視路を表しているらしく左に見え
る鉄塔を目指して下りて行くが、ここまできたら尾根の突端まで行ってみようということ
で、これを見送って直進する。こちらには姫一火力線の鉄塔があるが、それを過ぎると、
途端に道は細くなった。まあ、これが本来の踏み跡で今までが良すぎたのだが...。

巡視路尾根を佐土新へ下る。モデルはMさん

 展望もないので細い木に巻かれているPPテープを追ってぐんぐん下れば、飛び出した
のは墓地への道の途中で関電巡視路の標識がある。粗大ゴミが捨ててあるのはいただけな
いが、すぐに佐土新の溜め池の端に出ると、そこは今日歩いてきた稜線が一望できる場所
なのだった。

 池には鴨やカワウが飛来していて水面に浮いている。ここから方向確認は白髭神社の裏
山の岩壁の方向を目指せばいいので楽。それを確めて池の土手から佐土新の集落の中の旧
道を辿る。更に別の池の端から田んぼの畦道を縫う。もうナズナやオオイヌノフグリ、カ
ンサイタンポポ、ホトケノザ、ハコベが花を咲かせ、ユスリカなのか蚊柱も立って、辺り
はもう早春の雰囲気がムンムンである。

 車を止めた工場に戻ると建物の外に姿が見えた小父さんに駐車のお礼。すると小父さん
近づいてきて、
「大阪からわざわざこんな所に登りに来たの?なにか面白い所あるん?」
「いやあ、展望もいいし、岩も多いし面白いですよ」
山火事の時は大変だったそうで夜でも周辺は明るかったそうな。そのおかげで今、展望を
楽しんでいるのだが...。

 少し気になって帰途は少し寄り道。桶居山の山頂から北に眺めた一直線の登山路だ。そ
の山を探索せんと、県道65号だったかに舵を切る。最寄の路肩の膨らみに車を置いて、
怪しい2人、工場の敷地に入って小父さんに誰何されたりなんぞしながら、頂上で見えて
いた池の端にようやくたどり着く。土手をくるりと廻って近づいてみると、それは登山路
ではなくて防火帯の切り開きかなんぞのようだ。しかし、ある。透明なPPテープが。や
っぱり登っている好き者の輩がいるのだ。そして、爪先上がりの切り開きの斜面にはステ
ップが切ってあり、虎ロープまで用意されているではないか。サンダル履きの小生は中途
で諦めたが、先まで登ったMさんに確めるといい尾根道が続いているそうである。帰宅し
て確めると高山に続く尾根まで道が続いていて、ロバの背といわれる岩稜もあるなどと画
像入りの紹介しているHPもある。やっぱりみんな考えていることは一緒なのだねえ。(苦
笑) 因みに高山の尾根はシダ藪なのだそうな。尚、後で池の横の掲示板に気付き、見れば
自衛隊の射撃訓練場があるので注意とある。「ええ?」ちょっとビックリだが、土日は行
なわれていないから念の為。

 それはともかく、半日遊ばせて貰った播磨アルプス、何時来てもなかなか面白い山域で
ある。


【タイムチャート】
8:10自宅発
10:05〜10:10家具団地内の某木工工場(駐車地)
10:15〜10:20白髭神社
10:30深志野登山口
11:05〜11:12覗き岩
11:19斉藤山(177m)
11:40高圧鉄塔(姫路東支線bR)
12:03〜13:00桶居山(247.6m 三等三角点)(昼食)
13:20221mピーク
13:27高圧鉄塔(姫一火力線bR7)
13:48〜13:55高圧鉄塔(姫二火力線bR4)
14:07148mピーク
14:30佐土新登山口
14:50家具団地内の某木工工場(駐車地)




桶居山のデータ
【所在地】兵庫県姫路市
【標高】247.6m(三等三角点)
【備考】 播磨アルプスの主稜線から北に派生する尾根上にありま
す。鹿嶋槍に似たピラミダルな山容で良く目立ちます。
山火事の為、周囲は荒涼とした眺めが展開し、主縦走路
から離れている為、歩く人が少ないですが、谷にあるク
レー射撃場の銃声が少しうるさく感じられます。
【参考】2.5万図『加古川』




佐土新の溜め池から歩いてきた尾根を見る

   トップページに戻る

inserted by FC2 system