御池岳〜春浅き鈴鹿の最高峰
ガスから顔を出した丸山。御池岳の
最高峰だ(1182m標高点ピークから)
平成20年 4月12日(土)
【天候】うす曇り
【同行】別掲


 鈴鹿の山域はなぜか今まで縁遠く、周辺部を含めても雨乞岳、綿向山、霊仙山、高畑山
程度しか足を伸ばしていない。その中にあって御池岳は鈴鹿の最高峰。やっぱり一度はと
思い、このGWにでもと考えていたのだが、Mさんから声がかかる。ツツジ見物がてら播
磨の低山へと検討していたのから文字通り方向転換。花時を迎えた鈴鹿へと車に便乗させ
て頂いたのでした。

 節約の為に八日市ICから多賀町を抜けてR306を進む。鞍掛峠はR477の武平峠
には劣るが生駒山に匹敵する標高640mの峠である。大君ヶ畑(おじがはた)を過ぎる
と、国道はその峠に向って犬上川の支流沿いにぐんぐん高度を上げる。桜もこの辺りにな
るとまだ蕾で、まだ梅が咲いていたりする。

 大峰の弥山登山口に似て、御池岳の登山口も県境の鞍掛トンネルを真ん中に滋賀県側と
三重県側と両方にある。着いてみると人気の山だけにいずれの駐車場はもう満杯状態。路
肩に停め始める車も見かけられる状態である。幸い先着していたNさん夫妻やHさんがス
ペースを確保してくれていたので助かる。
鞍掛トンネル東口(三重県側)風景

 10℃以下の気温だろうが無風で寒くない。今日は鞍掛峠から鈴北岳、御池岳、コグル
ミ谷というオーソドックスコース。用意を整えて砂防工事で固められた小さな谷に架かる
橋を渡って取り付く。いなべ市の設置した登山届用のボックスを横目に、若い桧林の間を
ジグザグに登っていく。準備運動にしては急坂。息が切れる。(^^; あっという間に駐車
場は小さくなって、国道を行き交う車の音だけが下から這い上がってくる。

 桧の林を抜けて登って行くに従って背後の山並みが広がり、頂上付近にペアのネコ型鉄
塔を載せた一際大きな山がフクジュソウで有名な藤原岳だ。雑木はまだ芽出し寸前だが、
スミレはもう花を開き、まもなくやって来る花一杯の季節の到来を告げている。少し汗を
かいて三重東近江線の高圧鉄塔横を抜ける。左手前方の稜線が撓んだ所が鞍掛峠らしい。
もうひとふんばりだ。

鞍掛峠。右(北)は三国岳、直進は鞍掛トンネルの
滋賀県側、鈴北岳へは左(南)へ

 鞍掛峠は意外に小さな峠だが、なかなか峠らしい峠である。北に行けば三国岳で、江濃
勢の国境に出るようで、中電の巡視路も兼ねた登山道がある。トンネル西口からの登山道
も合流してきていている。少し新しい様子だが石地蔵の祠もあって、その前を通るのが鈴
北岳に向かう県境尾根沿いに南下するポピュラー道である。

 ハウチワカエデかイタヤメイゲツの林の下は季節が来ればカタクリのお花畑だろう。し
かし今は斑のある小さな葉が1、2枚出始めた所。かえって目立つのがバイケイソウの初
々しい美味そうな若緑の葉だ。
県境尾根はイタヤカエデとカタクリのプロムナード
5月になればカタクリ街道だろう

 尾根は思ったより風が強い。汗ばんだ体が一気に冷える。が、1枚着込めば暑いし、脱
げば寒いしで「中途半端やなー」。こんなのギャグにした漫才があったっけ。兎に角歩い
たら寒さを忘れるだろう。三重東近江線の高圧鉄塔 乙1を過ぎる。こちらの鉄塔は関電
の管理下らしい。団体さんと入れ替わり立ち替わりで進む。10時前、登山道を少し外れ
て、まだ芽吹き前の木立の中で小休止だ。さっき追い抜いた団体さんが横を通る。

 木立が途切れて笹原が現れる。前方の1056mピークへ登る団体さんが見える。これ
から以後、鈴北岳までは高い木がない。

 一登りして1056mピーク。眼前に鈴ヶ岳から鈴北岳、御池岳と続く山並みがバッと
一気に広がる。これぞ鈴鹿、雄大な景色。しかも航空母艦と呼ばれるだけあって、扁平な
山容は面白い。と思うまもなくガスが流れて行く手を隠す。振り向けば伊勢平野が眼下に
霞んでおり、中里ダム湖やゴルフ場が手に取るようである。一方、滋賀県側は山また山で、
それを縫うようにR306がくねっているのがわかる。

県境尾根の1056m峰から残雪の右に鈴ヶ岳、中央に鈴北岳、左奥に御池岳
航空母艦の形容がピッタリだ

 鈴北岳に近づくにつれて徐々に傾斜は強くなる。左に長く延びた雪渓はタテ谷の源頭で、
コグルミ谷へ合流する谷なのだそうだ。そこを歩いている2人の登山者はコグルミ谷から
上がってきた人なのであろうか?そんなよそ見をしていると、ズルリと行きかねない。雪
解けなのか滲みだした水なのか、登山道はぬかるみ状態。アッと思った瞬間には泥の中に
もう手を突いていた。(^^;
鈴北岳直下を行く。タテ谷源頭に雪が残る

 鈴北岳山頂は丸くて広い。その北側にある直径10mほどの擂鉢状の穴はドリーネとい
われる石灰岩地帯特有のものである。先着者の話し声が響く頂きに三角点はなく、山頂を
示す白い木柱が立つ。その周りで10人以上の登山者が休憩中。その中に混じって小憩を
摂って、お次はカルスト台地散歩だ。東南方向の御池岳の最高峰に向かう。

鈴北岳から御池岳方向
枯れザサにカレンフェルトが目立つカルスト台地だ

 羊にも見える大小の石灰質の小岩が群がっている。こんな岩がゴロゴロしている平地を
カレンフェルトと呼ぶ。大小のドリーネの中には、動物達の公衆浴場?と化しているもの
もある。この辺り、秋にはトリカブト(カワチブシ)やアケボノソウが咲くらしい。

 真ノ谷と日本庭園の分岐は日本庭園を指し示す方へ右折する。笹原に明瞭に付いた踏み
跡を辿ると、いつしかイタヤメイゲツの林の下、苔むした岩と落ち葉の絨緞。さながら京
にでもある古寺の庭の雰囲気で、この辺りを日本庭園と呼ぶのだろうか。でも今まで枯れ
たシダやササの中にあれだけ明瞭だった踏み跡がいつの間にやら薄くなってきた。と、ガ
スも濃くなってくる。ありゃりゃ何だか踏み跡がなくなったぞ。というわけで"伝家の宝刀"
地形図とGPSを確めて方向修正。どうも1182m標高点ピーク付近をぐるりとリング
ワンデリングしていたらしい。ガスが出なければ御池岳の位置も良くわかったのだろうが、
高低差もほとんどなく地形的特徴の乏しいカルスト台地のこと。ガスが出ればやはり注意
が必要だ。
苔むす岩とイタヤメイゲツ。幻想的な風景

 少し歩くと1182mピークらしい高みに到達。またガスの切れ間が現れて、お椀を伏
せたような御池岳が柔らかい姿が垣間見える。今の時期はブッシュがなくどこでも歩ける。
残雪を踏み、御池岳の名前の由来となったといわれるドリーネの池を左に見て、ほぼ一直
線で御池岳方向へ進む。疎らにテープが現れるので、適当に歩く人もいるようだ。

 県境尾根や鈴北岳であれだけ賑やかだったのが、日本庭園からこっちは鹿の警戒音くら
いなものでいたって静かなものだ。御池岳に近づいても話し声が聞こえなかったので、誰
も居ないのかと思ったら甘かった、やっぱり10人位の先着者がいる。(笑) ゴロゴロ石
が転がる山頂を北側に廻って、石灰岩が石段の様になっている場所で少し早めに食事だ。

御池岳(丸山)にて筆者

 食後は勿論ボタンブチへ。東方向にボタンブチへの標識がある。白い石がゴロゴロ転が
る歩きにくい道である。やがて木々が途切れて枯れた笹原が現れ、ガスの向こうに高みが
現れた。誰だか人間が立っているのが見える。

枯れザサの中をボタンブチへ

ボタンブチで記念撮影(画像:Mさん提供)

 生憎のガス。ボタンブチは南方向が切れ落ちていて、御在所岳や雨乞岳はじめ鈴鹿の主
稜上の主だった山々が見渡せるはず。しばらく待っても一向に晴れず、おかげでその高度
感も味わえずじまい。惜しいかなT字尾根の姿も拝めない。奥の平の最高峰1241m峰
を右に見て引き返す。

ボタンブチ付近からガスが流れる御池岳方面を見る

御池岳の北側はまだ多くの雪が残る

 再び御池岳山頂。昼時、あれだけ賑わっていたのが誰もいない。さっき食事したすぐ横
の道標に従って、今度は北方向の踏み跡を歩く。北の斜面に入ると途端に残雪の量が増え
る。次第に傾斜も増して非常に滑りやすい。しかも雪が腐って空洞を作っているところも
あるから、油断するとズボッと深みに落ちて捻挫しかねない。雪解けのぬかるみで山靴は
注意していてもドロドロだ。しかしコガラだかヤマガラだか野鳥がさえずる周囲の雑木林
は素晴らしい。ほぼ一直線で降りてゆくとようやく雪は少なくなり、鈴北岳からの直コー
スとの合流点に出た。三岐鉄道の立てた道標がある。

真ノ谷源頭の分岐。カタクリ峠へは左の斜面を行く

 合流点を右に折れるとまもなくコグルミ谷と真ノ谷の分岐で「八合目」の道標が立つ。
道祖神に似せた石仏も置かれている。ちなみに真ノ谷は愛知川の源流の一つなのだそうだ。
コグルミ谷は員弁川となって伊勢湾に注ぐからこの辺りは分水嶺。河川争奪の現場なので
あろう。

 左の斜面に付けられた踏み跡は次第に真ノ谷と離れて行く。廻り込むと前方が開けて伊
勢平野が眼下に霞んでいる。そして山腹道から支尾根の道に変わった時である。先頭を行
くMさんの声がする。ミスミソウを発見したらしい。突如、皆さんは行き倒れ状態。ミス
ミソウの花の近くに寝転んでしまう。それほど小さい花々で、葉の幅も1cm程度、花も1
cm足らずで、半月ほど前に見た能登のオオミスミソウに比べたら大人と子供くらいの差が
ある。しかも花は白花のみである。仲良くバイカオウレンも一輪。カタクリやイワカガミ
も見られたので、5月末まで次々と花が咲くのではあるまいか。

 支尾根を降り切るとV字状の窪地となって、登山者が三々五々休憩中。カタクリ峠だ。
直進すれば白瀬峠(白船峠)から藤原岳まで縦走できるという。ここで北向きに方向を変
えて尾根から離れジグザグに降りて行く。まもなく大きくV字の地形となって、そこを左
から下ってくる沢がコグルミ谷の上流らしい。その谷へ降りるのは急な斜面を引っかいた
ような道で、ここは慎重に足元を確めながら下らねばならない。転がっている大きな岩や
崖のくぼみにはネコノメソウの仲間が花を開いている。ニリンソウも蕾はほのかに紅をさ
したようである。谷には水はほとんどなく、白い岩がゴロゴロ転がっているのみ。エアリ
アに依ればこの辺りに"長命水"があるはずなのだが、これは見落とした。

 道は谷の左岸を縫って行く。フクジュソウが咲いていたのは谷の壁近くの岩の上で、上
から見て黄色い斑点があるのでようやくわかったくらいなので、コグルミ谷を遡ってきて
いたらとても発見できなかったろうという場所である。八重以外のフクジュソウ(つまり
園芸種)しか見た事がないというDちゃんも自慢のカメラで。私もコンデジで一枚。

 タテ谷の標識を過ぎると、やがてバイクの音が遠くに響くのが聞こえ始める。国道が近
づいてきた証拠だ。岩が重なる枯れ沢を横切り、植林の下に入ると路肩に止めた車が見え
た。丁度、車道拡幅の記念碑の横で、なぜだかキクザキイチゲが沢山咲いていた。

 コグルミ谷の登山口からは1.5kmほどの車道歩き。ぼつぼつ下山して逆に歩いてくる
人もいる。その中に親切な小母さんがいて、カタクリが咲いていたと教えてくれる。それ
も車道沿いだという。本当かな?道路のガードレールの向こうはゴミが到る所に捨てられ
ているのに、少し眉唾ものではと思ったが、なんと本当だった。500mも進んだ所で、
ガードレールから1mくらいの場所に一輪、そこから1m離れた所にまた一輪。御池岳で
はまだまだ蕾もなかったのに、よほど日当たりが良いのだろう。あまり美人ではなかった
が、贅沢は云えぬ今年の初物。とりあえずデジカメに収める。(笑)

 トンネル東口の駐車場は流石に車の数も減っている。今日も無事に戻って来れた。5月
はもっと花の数が多くなるのだそうだ。久方ぶりの近畿百名山をあとに、多賀SLパーク
のD51と満開の桜も見物して今日のオフも終了。滋賀では満開の桜も、大阪では花いか
だでした。


■同行 だめちゃん、たらちゃん、二輪草さん夫妻、ハム太郎さん、みずさん

【タイムチャート】
7:00千里中央ローソン前
9:05〜9:15鞍掛トンネル東口(駐車地)
9:32鞍掛峠
9:37関電鉄塔(三重東近江線 乙1)
9:55〜10:00小休止
10:151,056m標高点ピーク
10:36〜10:40鈴北岳(1,182m)
10:46真ノ谷・日本庭園分岐
11:081,182m標高点ピーク
11:27〜11:57御池岳(丸山)(1,247m)(昼食)
12:05〜12:15ボタンブチ
12:25御池岳(丸山)
12:52鈴北岳、御池岳分岐
13:20〜13:23カタクリ峠
14:28〜14:55コグルミ谷登山口
14:25鞍掛トンネル東口(駐車地)



御池岳のデータ
【所在地】滋賀県東近江市(旧永源寺町)
【標高】1,247m
【備考】 鈴鹿山脈の北部に座る大きな台地状をなし、鈴ヶ岳、鈴
北岳、丸山等をあわせた総称で鈴鹿最高峰でもあります。
山頂はカルスト地形でカレンフェルトやドリーネが見ら
れ、ドリーネに水が溜まった池が多いことが山名の由来
といわれます。オオイタヤメイゲツの群落と笹の台地は、
鈴鹿の「雲の平」とも呼ばれますが、ガスの濃い場合は、
良く似た植相、地形の為に迷いやすく、コンパスと地形
図は必携です。
■近畿百名山■関西百名山
【参考】
2.5万図『篠立』


GPS軌跡 罫線は10秒(凡そ300m) 作図は国土地理院、カシミールを利用しています

   トップページに戻る

inserted by FC2 system