中山谷山〜しばし若丹の静謐を愉しむ

中山谷山山頂手前
平成20年 8月24日(日)
【天候】雨のち曇り
【同行】別掲


 今年は7月末からの暑い盛りに珍しくも少し夏バテでもしたのか、常に無く食欲が落ち
た時期があった。盆が終わって朝夕は随分と涼しくなってきてほぼ回復した感じだけれど、
なんだか山も本格的なアルプスデビュー以来、ガシガシ歩く気がせず、軽いトレッキング
に終始している。今日もお誘いに乗ってぶらりと若丹国境の稜線散歩。標高600mの五
波峠からだから楽チン。(^^)/ それでも少々三角点フェチの小生、未踏の中山谷山(点名
『田歌』)の三角点標石はきっちりと拝んで参りました。(^^;

 予報より天気の回復は遅れているようだ。大阪近辺では僅かながら雲の切れ間もあった
が、北に行くにつれてどんよりした曇り空で、南丹市の美山町ではとうとうポツポツとき
た。雨は徐々に勢いを増し、五波峠に着いた頃は、強くはないものの傘なしで歩くのはど
んなものかと思えるほどになる。

 強弱を繰り返す雨の様子見を、到着して1時間ほどもしていたろうか。その間、誰も来
ず、我々以外は誰もいない。基本的に回復基調だし、風もあるので雨もこれ以上はひどく
はならないはず。京都方面から来るSさん一行も後から追いつくだろう。少し小降りにな
ったのを見計らって出発することにした。今日は長靴を用意してやって来たが、大正解だ
った。(笑)

五波峠からの若丹尾根。歩き易い尾根だ

 前回来たのは12月だったから8ヶ月ぶりの五波峠。石碑の陰の木にナイロン紐が結ば
れ、尾根上を踏み跡が緩々と東方向に高度を上げて行く。前回は晩秋の赤、黄色主体の景
色も、今は深いがやや季節的に疲れた感じの緑を羽織った木々が主体だ。それでも雨で濡
れた葉は照りを取り戻し、生き生きとした風情である。踏み跡はどんどんはっきりしてい
る感じがする。笹が枯れて歩き良くなって、旅行社のツアーも増えているに違いない。だ
が、八ヶ峰に比べればまだまだ格段に訪れる人は少なかろう。

 黄色テープに導かれてやや南に振りつつゆっくりと高度は上がる。周囲は杉の植林とブ
ナやハウチワカエデ、リョウブ、ミズナラなどの雑木の混交林だ。大きなブナにはヤドリ
ギが取り付いている。

 小さな鞍部ではテープがやや錯綜していてややこしい感じもするが、テープが無い右手
に見える尾根に上がっても、自ずから中山谷山との分岐に到達する。ここは標識がなけれ
ば権蔵坂へ向うには少し判り難い所だろう。権蔵坂の方へは急斜面を下らねばならず、や
やもすれば尾根沿いの中山谷山の方へ引き込まれがちになるからだ。それにしても誰が作
ったか立派な標識である。
中山谷山分岐の標識

 そろそろお昼時。うまくいけばSさん一行ともここで邂逅することが出来る。というわ
けで昼食は中山谷山分岐で摂ることにして、直径50cmくらいのブナの木の下で店を広
げると途端に雨が強くなってきた。(笑) 樹幹流というのだそうだが、幹を伝って雨水が
地面に吸い込まれていく。そういえばNHKだったか、樹冠すべてが水を受ける漏斗の役
目をしており、幹を伝って水を根元に流すのだと聞いた覚えがある。と、頭上に目がまん
丸になるものが。長さ20cmはある巨大なナメクジが、立ち上がった時の頭の少し上付
近の幹を這っているではないか。木の枝で突いたら結構硬く、英文字のIからJ、Uと悠
然と体の形を変えて行く。しかしこんなに大きいものは見たことがない。調べたら”ヤマ
ナメクジ”という種類。青紫色に照り光る巨大なミミズも見たことがあるが、山に行けば
色々なものに出遭うものである。

 そんなこんなで遊んでいると、人声がしてSさん一行4名がやってきた。食事はまだと
いう事で、Sさんたちもここで食事だ。

 中山谷山方面へはヤブと標識にマジック書きが付け加えてあるが、今はササも枯れて小
道がついている。ユズリハの繁みを抜けると緩い斜面を一登りで747mピーク。小さな
道標が一つだけぶら下がっている杉林のピークである。

 747mピークを過ぎれば尾根は明瞭で、枯れササの間に、苔に覆われたサルノコシカ
ケがびっしり付着した朽木もある。ツルリンドウが早くも咲き、空の雲と同じく、花々も
徐々に秋に向っているようだ。

 尾根筋の高みは南東に方向を変え、少しの登りで中山谷山の山頂に至る。一寸した丸い
広場には三等三角点。残念ながら誰の仕業か標石の角が大きく欠けている。困ったもんだ。
静かな山頂で休憩中に少し確かめてみたが、中山谷山を越えても踏み跡は続いている。多
分、オクノタンまで繋がっているのかもしれない。但し、テープ類は見逃したのか目に触
れることは無かった。
三等三角点(『田歌』)を拝む(笑) 
画像:Aさん提供

 山頂から少し降りたところでだった。Aさんから小さな悲鳴が上がる。指を蜂に刺され
たという。現場を見てみると、細くて華奢な姿のべっ甲色をした虫が10匹程度、枯れた
笹の間を飛び回っている。(帰宅して図鑑で調べるとホソアシナガバチの仲間と判明。巣
を不用意に揺らしたりして驚かせると向ってくる攻撃性もあるそうだ)巣は確認できなか
ったが近くにあったのだろう。小さい蜂なので毒の量も少なかったのが不幸中の幸いだっ
た。

 下山は左(西南西方向)に引き込まれないようにして北東方面へ戻らねばならない。こ
こが唯一少しややこしい所だろうか。雨も上がったのであっちにフラフラ、こっちにフラ
フラしながら分岐点に戻ると、ガスが上がってくる。落ち葉に覆われた芦生特有の浅いU
字型の谷の源頭に忍び寄る白いとばり。幻想的な風景である。林道を走るのかバイクの音
が聞こえてくれば、取り付きの峠も近い。

ブナがガスに包まれ幻想的な風景

 峠に我々以外に車が1台増えているのは、途中で一切誰にも会わなかったから、八ヶ峰
へでも登っているのだろう。雨は完全に上がっている。静かな若丹国境、癒しの森に未踏
の三角点も踏めていう事なし。こんな山行きが最高。戻った大阪では快晴の正しく秋晴れ
の天高い空でした。



■同行 あかげらさん、さかじんさん、幸さん、だめちゃん、たるるさん、なかいさん、
    ひろぴぃさん、まきたさん、みずたにさん、もぐさん、Yukinkoさん(五十音順)

【タイムチャート】
7:30千里中央駅(集合地)
9:45〜10:45五波峠(駐車地)
11:45〜12:16中山谷山分岐(昼食)
12:26747m標高点ピーク
12:49〜13:05中山谷山(791.8m(三等三角点))
13:44747m標高点ピーク
13:55中山谷山分岐
14:35五波峠(駐車地)

※道草が多いので上記の時間はあてになりません


中山谷山のデータ
【所在地】京都府南丹市(旧美山町)
【標高】791.8m(三等三角点)
【備考】 京大芦生研究林地域の西側に位置します。五波峠から杉
尾坂と繋がる若丹尾根のやや南側にあり、ブナやリョウ
ブの自然林が包みます。数年前はササが覆っていました
が、花が咲いたとかで、今は枯れて歩きやすくなってい
ますが、歩く人もまだ少なく静かな山歩が楽しめます。
【参考】
2.5万図『中』



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